彦根「せんなり亭伽羅」で極上の近江牛を頬張る口福なひととき

2016.08.27 更新

滋賀県は日本三大和牛の一つと言われる「近江牛(おうみうし)」の産地。昔から米の生産や農業が盛んで、牛を飼育するための環境に恵まれていると言われています。今回は最高品質の近江牛を「せんなり亭伽羅(きゃら)」で思う存分いただきました!

近江牛の美味しさを知り尽くす名店

「千成亭(せんなりてい)」は滋賀県内で10店舗を展開している近江牛の名店。
昭和32(1957)年に彦根の地で近江牛肉の販売を始めました。

今回訪れたのは千成亭の2店舗目として、平成9(1997)年にオープンした「せんなり亭伽羅」。彦根城すぐそばの「夢京橋キャッスルロード」にあり、ゆったりとした雰囲気の中で近江牛の美味しさを楽しめると、県内外の方に人気が高いお店です。
▲彦根城の城下町の中でも老舗の佇まい

暖簾をくぐり、石畳の小道を通って店内に入ると、「近江牛」指定店の登録証がお出迎え。
▲特上の「近江牛」を扱うお店だけに与えられる登録証

近江牛は松阪牛や神戸牛と同じ黒毛和牛がルーツ。
滋賀はもともときれいな水と良い飼料が豊富なことから、牛の肥育に最適な土地だと言われており、そこで育った近江牛のきめ細かい肉質はプロの料理人からも高い評価を受けています。

「千成亭」では提携牧場のほかにも自社牧場があり、大麦、麦ぬか、米ぬか、ふすま、大豆、稲ワラなど化学飼料は一切使わない伝統的な肥育で育てられています。
▲広い牛舎でのびのびと愛情を込めて育てられた近江牛が出荷されています

その日使われる肉は牧場からの個体識別番号つき。どこでどのように育った牛が使われているのか、一目でわかるようになっているのも自信と安心の証ですね。
▲取引は一頭単位。品種や育てられた場所はもちろん、どんな飼料を与えられていたかまで記録されています

厳格な品質管理のもとで育てられた近江牛の料理、これは期待が高まります。

お茶で食べる近江牛のしゃぶしゃぶ!

「せんなり亭伽羅」の名物の一つが近江牛の「茶しゃぶ」。
名前の通り、お茶が入った出汁でしゃぶしゃぶをいただきます。
▲「極上近江牛肉 茶しゃぶ」は1人8,300円~(税込・2名より)※写真は2人前

「茶しゃぶ」に使われる肉は最高級のサーロイン。ステーキ用の肉としても有名なこの部位は赤身と脂のバランスが絶妙なのです。
▲神々しい程の美しさ。このサシの入り具合はもはやアート

まずは下準備。昆布でとった出汁が沸いたら、鍋にお茶を注ぎます。お茶は滋賀県信楽名産の「朝宮茶(あさみやちゃ)」。1200年以上前から作られている国内でも古いお茶で、「日本茶のロマネコンティ」とも言われています。そんな朝宮茶に含まれている成分・タンニンにより、肉をたくさん食べても胃もたれを防ぐのだそうです。
▲沸いてから注ぐのは、お茶の風味をより引き立たせるため

お茶を注いだ後の出汁は緑がかった黄金色になりました。立ち上る湯気からほんのりと爽やかなお茶の香りが漂ってきます。
▲お茶を入れることでアクも出にくくなるのだそうです

さぁ、ここでいよいよ肉の出番。光り輝く出汁の中に肉をくぐらせていきます。
入れた瞬間から脂がじんわり溶けていくのは、脂の融点が低い牝牛の肉にこだわっているから。
▲肉のエキスが逃げてしまわないよう、ゆらしすぎないのがコツ
▲表面の色が変わる寸前で引き上げます。これくらいで火入れは十分。もう待ちきれません
▲タレはポン酢とゴマだれの2種類。最初はポン酢でいただきます

例えるなら、まるで口の中が肉の布団で包まれていく感じでしょうか。ずっとこの心地よさに包まれていたいのに、いつの間にか溶けてなくなってしまい、肉の幸せな余韻だけが残ります。
一枚食べる毎に炸裂する満面の笑み。肉の甘みと旨みにノックダウン寸前です。
▲ニヤニヤが止まりません

しかし、いくら肉好きのひとでも食べ進めていくと次第に胃が重くなってくるもの。ところが、この「茶しゃぶ」だと後味がさっぱりしているので、いくらでも食べることができそうな気がします。
これぞお茶の効果!ご年配の方も最後まで美味しくいただくことができるメニューですよ。

近江牛の恨みは歴史も動かす!?

近江牛がこんなにも美味しいことはよくわかりました。しかし、なぜ日本でも有数の和牛の産地になったのでしょうか。次の料理を待つ間に、その理由を「千成亭」専務取締役の上田勝之(かつゆき)さんにうかがいました。

「食肉として牛肉が食べられるようになったのは、日本では近江が最初だと言われています。もともと牛は農作業に活躍する家畜として扱われていたり、仏教の『殺生禁止』の教えがあったりしたことから、食べることはタブーとされていたんですね。ところが彦根藩は陣太鼓に使う牛の皮を幕府に献上するのが慣例で、江戸時代には唯一公式な屠殺(とさつ)が認められていた場所でした」

その後、彦根の牛肉は“滋養に効果がある薬”として「反本丸(へんぽんがん)」という名で流通するようになり、次第に食べられるようになったのだそうです。幕府のお偉い方も牛肉の美味しさの虜になり、彦根から全国に届けることもあったのだとか。
▲「昔は牛にゴマを食べさせると便秘になり、身体中に脂がまわって美味しくなる、とも言われてたんですよ」と上田さん

日本の歴史の中でも有名な「桜田門外の変」は実は近江牛が原因という説もあり、彦根藩の井伊直弼(いいなおすけ)が、近江牛の味噌漬けが好きだった水戸藩主の徳川斉昭(なりあき)に肉を贈らなかったことから起こったとも言われています。

いやはや、食べ物の恨みは恐ろしいですね。

究極の食べ方でいただく近江牛は数量限定!

最近は規制が厳しくなり、生の牛肉を提供するお店は滅多にお目にかかることができませんが、「せんなり亭伽羅」は、近江牛を生でいただける貴重なお店でもあります。

最高の品質の肉を刺身で食べられるなんて…幸せすぎます。
▲近江牛鮮肉トロ刺身、1,980円(税込)

トロと聞いて脂がしっかり乗っているイメージがありましたが、こちらは驚くほどきめが細かくて繊細。同じトロでもマグロと比べると近江牛の方があっさりしていて、先ほど食べたしゃぶしゃぶの肉とはまた違った美味しさを感じることができます。

そして、日によって入荷しないこともあるという稀少な部位「タン」の刺身。
▲近江牛鮮肉タン刺身、1,980円(税込)

これを目当てに来店されるお客さんもいらっしゃるとのこと。
同じタンでも部位によって歯ごたえがまったく違い、舌先の部位になるにつれて歯ごたえのある独特の食感を楽しむことができます。

そして最後は近江牛の生肉がお寿司になって登場!
まさに日本人ならではの肉の楽しみ方です。
▲左から近江牛のトロ、たたき、タン、トロ柚庵(通常は各2貫で880円~、税込)
▲まずは牛トロの握りから、思い切って一口でパクリ

牛トロはまるでシルクの糸がほどけていくようなやさしい口溶け。タンは海鮮の寿司にはないような歯触りを楽しむことができます。
たたきはさっと表面を炙った肉を、トロ柚庵は肉をやさしく蒸したものが握られていますが、繊細な火の通し方の違いでこうも食感が変わるのかとビックリ!口の中でじんわり溶けた肉の脂とシャリのマリアージュに感動すら覚えます。

刺身や握り寿司は最高の鮮度が求められるため、毎日数量限定です。部位によっては入荷がない日もあるため、事前に電話で問い合わせをするのがおすすめですよ。

「せんなり亭伽羅」は個室の座敷席から広々としたテーブル席など、少人数から大人数に対応した席が充実。
築300年の蔵を改装したモダンな雰囲気の特別室などもあり、用途に応じて選ぶことができます。
▲特別室はちょっとした宴会にもぴったりです

彦根に足をのばす際は、ぜひ近江牛を堪能してみてくださいね!
石原藍

石原藍

ローカルライター。 大阪、東京、名古屋と都市部での暮らしを経て、現在は縁もゆかりもない「福井」での生活を満喫中。「興味のあることは何でもやり、面白そうな人にはどこにでも会いに行く」をモットーに、自然にやさしく、心地よい生き方、働き方を模索しています。趣味はキャンプと切り絵と古民家観察。

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