言わずと知れた日本屈指の霊場・恐山には、極楽の風景と温泉があった!

2016.09.01

比叡山や高野山と並び日本三大霊山の一つとされ、日本三大霊地ともされる青森県の恐山。心霊やオカルトなどの噂やイメージが先行していますが、一体どんな場所なのでしょうか。実際に行ってみました。

▲霊場恐山と書かれた山門入口

故人を思い人々が訪れる、あの世に最も近い場所

恐山は青森県の本州最北の下北半島の中心に位置する標高800m以上の活火山で、山全体が霊場になっています。その正式な呼び名は「恐山菩提寺」で、恐山という名の山は実は存在しません。(以下、本記事内では「恐山菩提寺」を「恐山」と表記)

霊場とは古来より信仰の対象となり、修験者らが巡礼を行う場所のこと。さらに恐山はあの世に最も近いとされ、故人を思う場所として全国から多くの人たちが訪れています。
▲恐山の駐車場手前に流れる「三途川(さんずのかわ)」と「太鼓橋」

恐山へのアクセスは、最寄りのJR下北駅からバスで約40分。車ではむつ市内から約20分。恐山の入口に着くと、最初に「三途川」が目の前を流れています。三途川といえば、ご存じ、あの世と現世を分ける境目にあるとされる川。赤い太鼓橋を渡れば、ここから先が、いわゆる「あの世」ということになります。
▲恐山の入口にある山門

三途川を渡り、入山料を支払って恐山へ入山すると、目の前にどーんと構える山門が現れます。意匠を感じさせる立派な造りですが、その前にはこじんまりとしたお地蔵様があり、まわりにはカラフルな風車(かざぐるま)が。お地蔵様と風車と山門のギャップに、独特な雰囲気を感じずにはいられません。
▲山門前にある地蔵とそのまわりに飾られた風車

山門を入ってすぐ左手には「角塔婆(かくとうば)」と呼ばれる、大きいものでは5mもある角柱形の卒塔婆(そとば)がありました。これは仏教の世界では「功徳(くどく)を積む」と言われ、高ければ高いほど願いが叶うとされています。全国的にみてもこの高さの角塔婆は珍しく、故人のために有志たちで建てるケースもあるそうです。
▲約20~30本の角塔婆が並ぶ

136もの「地獄」を巡る1周3kmの参拝コース

恐山の境内は1周3km程度の参拝コースがあり、徒歩約40分で巡ることができます。その境内には火山岩で形成された136の「地獄」があり、現世で犯した罪の罰を受ける地獄を表しているのだとか。

最初に広がるのは、「賽(さい)の河原」。石が多く積まれ、別世界に誘われたような気持ちになります。
▲石が積まれた「賽の河原」

これらの石は、親より先に亡くなった子どもたちが、あの世で親不孝を詫びるために、自分の身長まで積み重ねていくという苦行を表現していると言われています。しかし、石は身長に達する前に鬼に踏み壊されてしまい、永遠に石積みを続けなければいけないとされ、これは古くから続く日本独特の信仰だと言われています。
▲積まれた石には風車が立っている

風車はそんな地獄でも遊べるようにと、残された親たちが子どもたちに贈るおもちゃ。また、辺りに生えているコメススキの穂先は、子どもたちを妨害する鬼を転ばせるために現世の親たちによって結ばれているそうです。
▲鬼を転ばせるために穂先が結ばれているコメススキ

その他にも「無間(むげん)地獄」「重罪地獄」「賭博地獄」といった地獄に見立てられた複数の場所があり、それぞれに深い謂れがあります。その中には、自分に当てはまるようなドキッとする地獄もあるかもしれません。
▲「金堀地獄」と見立てられた場所
▲「重罪地獄」と呼ばれている場所

異界に迷い込んだような火山岩の光景は、まさに地獄。恐山の地獄めぐりは生きたまま死後の世界が楽しめるテーマパークのような場所でした。

美しいエメラルドグリーンの湖は、まるで極楽

恐山には地獄だけでなく極楽もありました。恐山菩提寺に隣接する「宇曽利山湖(うそりやまこ)」は白い砂浜が南国のビーチのように広がり、極楽になぞらえ、極楽浜とも呼ばれています。砂浜を歩いていると、心地よい風が吹き、まさに極楽にいるようでした。
▲宇曽利山湖。奥に見えるのは下北半島で一番高い「釜臥山(かまふせやま)」
▲まるで南国のビーチのような砂浜が広がる

しかし、この湖の湖水はpH3.5という弱酸性。生息している魚類は酸性に適応力があると言われるウグイのみで、ほとんどの生き物は生息していないそうです。この美しい風景からは想像できませんが、生き物が生息していないという意味では、ここも「地獄」なのかもしれません。

秘湯としての魅力、そしてイタコ

恐山は、霊場として知られる一方、実は恐山温泉と呼ばれる秘湯でもあるんです。境内には4つの湯小屋があり、「古滝の湯」「冷抜の湯」「薬師の湯」は山門をくぐってすぐ、「花染の湯」は宿坊の裏手にあります。
▲案内看板が立てられている

恐山で温泉というのは想像できないかもしれませんが、境内を参拝する前に身を清めるためにかつては参拝客全員が入浴していたとか。また、湯治場としても知られ、入湯した人の中には皮膚炎が治ったといった例があるそうです。

「冷抜の湯」「古滝の湯」「薬師の湯」は男女別となっており、月替わりで入浴可能な湯が変わるとか。「花染の湯」は混浴で、どの湯も入浴は無料です。今回は「花染の湯」に入ってみました。
▲混浴と書かれた「花染の湯」入口
▲「花染の湯」。清潔感があり、窓から入ってくる風が心地よい
▲細かい湯の花が少し浮いているものの、透明感のある湯

恐山の湯は酸性が強く肌荒れを起こす可能性があるため、入浴時間は3分~10分に、という注意書きがあります。しかし、湯に入るとさらっとした肌触りで体の芯まで温まる熱めの湯加減が心地よく、つい長湯をしたくなってしまいます。恐山が死後の世界を表しているのであれば、この温泉は極楽を表しているのかもしれません。
▲長湯しないことと書かれた貼り紙

ちなみに、境内には「御法の湯」という温泉もありますが、こちらは宿坊利用者向けの温泉なので一般参拝者は入浴できません。しかし、5つの温泉はそれぞれ源泉が異なり、効能も違うため、せっかくなら宿坊に泊まって5つの湯を巡ってみるのも楽しいですね。

美しい紅葉スポットとしても人気。年に2回大きなお祭りも

恐山は秋の紅葉が美しく周囲の山々が一斉に色づくため、近年、紅葉スポットとしても注目されています。
▲紅葉の恐山

また、年に2回行われる恐山の大祭「大祭典」(毎年7月20~24日)と「秋詣り」(毎年10月の体育の日を最終日とする3日間)の期間中には、亡くなった人を偲ぶために全国から多くの参拝客が訪れます。中でも、大祭典の時に行われる、山主の乗った籠が先頭を進み、県内外から集まった僧侶や信者が続く「山主上山式(さんしゅじょうざんしき)」と呼ばれる行列は、毎年多くの見物客でにぎわいます。
▲大祭典の山主上山式の様子

最後に、恐山といえばやはり死者を呼び寄せることができるというイタコの口寄せが有名ですが、現在、そのイタコの人数は数えられるほど減少。大祭時にはイタコが常駐するため、口寄せをお願いしたいと、長蛇の列ができるということです。
▲取材に訪れた7月上旬にも、イタコの案内はありました

全国から参拝客が訪れる恐山は、霊場としての側面だけでなく、紅葉や温泉といった観光スポットとしての楽しみ方もありました。恐山という名前や噂に惑わされず、実際に訪れ体験してみてはいかがでしょうか?
なお、恐山を訪れた際には、ガイドさんが恐山の歴史や文化的背景などを説明しながら一緒に巡ってくれる恐山境内ガイドもあるので、ぜひ利用してみて下さい。
くどうたける

くどうたける

東京でウェブライターを経験し、2012年に青森へ移住。地域新聞や地域の情報を発信するお仕事をいただきながら、田舎でせっせと暮らしてます。(編集/株式会社くらしさ)

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