森で過ごす大人の休日。「森のホテル もりのす」と「森林セラピー」に癒される

2016.09.27

島根県飯南(いいなん)町は面積の約90%を山林・原野が占める里山。町の南東側、広島との県境には散策コースが整備された森があり、森の入口にはしまね和牛ディナーを堪能できる「森のホテル もりのす」があります。喧騒から離れた静かな森の中で、宿泊&森林セラピーを満喫してきました。

▲まわりを森に囲まれた隠れ家のような「森のホテル もりのす」

出雲縁結び空港から車で1時間半。島根県中南部にある飯南町は、周囲を1,000m級の山々に囲まれた高原地帯。山野草や野鳥と触れ合える自然豊かな森は、NPO法人森林セラピーソサエティが独自の基準で定める「森林セラピー基地」に認定されています。
▲森の中を流れる清流。水が流れる音を聞いただけで癒される

「森林セラピー」とは、科学的・医学的に検証された森林浴効果のこと。森林セラピーガイドや森林セラピストの案内のもと、森の中で呼吸法やヨガ、アロマテラピーなど体験者の要望に合わせたプログラムを実施することで、健康増進やリラックス効果を得ることができると言われています。
▲「森のホテル もりのす」の夜のラウンジ

森林セラピーの拠点となる「飯南町ふるさとの森」にはセラピーロードが整備されています。そこは、飯南町の里山をどんどん奥へと進んだ正真正銘の森の中。そして、セラピーロードの入口には「森のホテル もりのす」があります。1日目はここに泊まってディナーや星空鑑賞を満喫し、翌朝に森林セラピーを体験することにしました。

360度を森に囲まれた隠れ家ホテルで“森ごもり”

「もりのす」は、島根県内でイタリアンレストランを展開する飲食店グループがプロデュースするホテル。こんな山奥にも関わらず、本格的なディナーが楽しめるのが特徴です。
▲宿泊客でなくても11:00~16:00の間ならセルフサービスで利用できるラウンジ(有料、定休日あり)
▲周りの自然を満喫できる気持ちのいいテラス。天気が良ければ、ここでお茶するだけでも贅沢気分に
▲ホテルの目の前には綺麗な川が。オートキャンプ場も併設されており、アウトドア好きにも人気のスポット

しまね和牛と地元の新鮮野菜をグリルスタイルで

自慢のディナーは、しまね和牛や飯南町産の野菜など、地元で採れた食材がグリルスタイルで提供されます。
▲ディナーもラウンジで。客室が全10部屋なので、混み合うこともなく優雅な気分

野菜のラインナップは日によって違いますが、この日はパプリカ、ナス、インゲン、小松菜、甘トウガラシなど旬の野菜がお皿いっぱいに。これらの野菜は、ホテルの店長兼シェフの古田太一さんが毎朝、地元の道の駅で買いつけた採れたてだそうです。
▲飯南町の高原で育った野菜。シャキシャキとして味が濃く、野菜だけでおなかいっぱいになるほどのボリューム

大ぶりの舞茸としいたけは、こちらも地元の飯石森林組合から購入したもの。肉厚プリプリで焼くと一層ジューシーです。そして、お肉は奥出雲産のしまね和牛。島根生まれ&島根育ちの黒毛和種のブランド牛で、島根に来たらぜひ食べてもらいたいご当地食材です。
▲口に含んだときの旨みが長く持続するのがしまね和牛の特徴。赤身ももちろんやわらか
▲しまね和牛を美味しくいただくためには焼き加減が大切。最初は店長自ら焼いてくれる
▲包丁ですっと切れるほどやわらかく焼き上がったお肉。このままいただいても、切った後にもう少し焼いても美味しい

お肉は自家製のソースやトッピングと一緒にいただきます。地元・島根で広く知られている「井ゲタ醤油」の醤油や、特製きのこソース、バルサミコソース、岩塩、西洋わさびなど、その種類もさまざま。お好みでニンニクをつけても美味しくいただけます。
▲最後はお客さん自身で好みの焼き加減までグリルして

肉自体に旨みがあるので、シンプルに岩塩だけでいただいても充分おいしく、噛むほどに味が出ます。脂身も程よくあっさりしているので、ぺろっと食べてしまい、自分でもびっくり。このお肉を食べるためだけにまた来たいと思うほどの美味しさでした。
▲焼きたてのパンはほんのり甘く、ふわふわモチモチ。自家製というから驚き

そのほか、マッシュポテトやフライドポテト、70種類ものワインもあり、大人がワイワイと夜を過ごすのにぴったりのディナーでした。滅多に食べる機会のない美味しいお肉で、おなかも心も満たされました。

森の夜、星空鑑賞で“デジタルデトックス”をしよう

ディナーが終わると外はすっかり暗くなり、空には星が出ています。「もりのす」は標高約570mの高原にあるので、空気が澄んでいる上に人工的な灯りも少なく星空鑑賞にぴったり。これも森のホテルならではの楽しみです。
▲庭の芝生の上に寝転がって星空鑑賞。普段話さないような事まで語りたくなってしまう雰囲気

テラス席や前庭の切り株に腰掛け、コーヒーやワインを片手に星空鑑賞会をするのは最高の気分。流星群のピークに予約を取って、星を目当てに宿泊するのも楽しそう。
▲寝るまでの時間、ラウンジから持ってきたハーブティーを飲みながら読書をして過ごしても

「もりのす」の客室にはテレビがありません。それが逆に非日常の静かな時間を演出してくれます。携帯やパソコンもオフにして、静かな森の中で時には“デジタルデトックス”をしてみるのもいいでしょう。

初めて訪れても自分の家のようにリラックスできるため、店長の古田さん曰く、「お気に入りの別荘のように毎年利用される常連客もいらっしゃる」そうですよ。

森林セラピストと一緒に、いよいよ森の中へ!

翌日、朝食を食べたら、約3時間の森林セラピーへ出発します。肌を枝、植物、虫、紫外線などから守るため、服装は長袖・長ズボンがおすすめ。靴は履き慣れたスニーカーやトレッキングシューズを用意しましょう。
▲ホテル目の前のスタート地点から、きれいな小川を横目に出発。川のせせらぎと鳥のさえずり、木の葉のこすれ合う音が心地良い

森林セラピーは、要望に応じて4つのコースから選ぶことができます。清流・小田川の水音を聞きながら進む「小田川コース」、森林の変化を感じられる「才谷コース」、原木しいたけのほだ木を間近に通る「きのこ園コース」などがありますが、今回は自然との一体感を最も感じられるという「山野草コース」を選びました。

希望によっては、森の中でのヨガやアロマテラピー体験をプランに組み込むこともできるそうなので、申し込みの際に相談してみましょう。
▲セラピーロードには、足腰の負担軽減のためにウッドチップが敷き詰められた道も。五感を大切にする森林セラピーでは、足裏の感触や木の香りも重要だそう

出発して早々に気付いたのが、歩くスピードがかなりゆっくりだということ。全長2.3kmのコースを約3時間で歩くのですが、これは今まで経験した登山やトレッキングより明らかにスローペース。きれいな山野草を見つけたら立ち止まって観察したり、ガイドさんの説明を聞きながらゆっくりと森を進みます。

森の中には、普段食卓に登場するような身近な野草から珍しいものまでたくさん生えています。途中でヤマイモやサンショウ、ミョウガなどを見つけました。
▲ヤマイモの葉をかじってみる

「(ミョウガの群生を指して)江戸時代にこの辺りに住んでいた人たちが植えたとみられるミョウガです。この辺には江戸時代頃までたたら製鉄の集落があったと言われています」とは、今回ガイドして下さった森林セラピストの塚本要(かなめ)さん。
▲かわいい!と思ってシャッターを切ったこちらの植物は薬草のトチバニンジン
▲さらに進むと原木しいたけの「ほだ木」が。ここで育つしいたけは美味しそう

塚本さん曰く「森林浴の恩恵を受けるには、なるべく長い時間、森の中で過ごすことが大切」だそう。樹木が発散する「フィトンチッド」という揮発性物質には、免疫力向上やヒーリング効果が立証されており、ガン予防効果なども注目されています。
▲歩いている途中に美しい小川を通りかかる
▲森の中には多くの野鳥もいるので鳴き声を楽しみましょう。鳥の他にも、様々な小動物が姿を現してくれることも

ガイドさんお手製の野草茶で休憩。そして森の中でお昼寝

▲イスとテーブル付きの休憩スポット。ピクニックできるのがうれしい

1時間ほど歩いたところで、休憩スポットに到着しました。塚本さんが、水筒に入れて持参した薬草茶をふるまってくれました。山で取ったクワとササを干して煎った、手作りのお茶だそうです。
▲手前は塚本さんのお手製ウメの漬物。甘酸っぱい味がおやつにぴったり

そして、得意だという竹笛を披露してくださいました。この笛も、なんと塚本さんのお手製だそうです。笛の音が森にこだまして神秘的な時間が流れました。小さな森の音楽会。塚本さんの粋な計らいに楽しませていただきました。
▲笛の腕前もプロ級な森林セラピーガイドの塚本さん

お茶を飲み終わると「シートを敷いて、しばらく草の上で横になりましょう」と塚本さん。用意してくれていたビニールシートを敷いて、各々が好きな場所でしばらく寝てみようという提案です。
▲好きな場所にシートを敷いて横になる。初めての体験!
▲視界には360度、緑が広がる

「30分ほど好きに過ごしてください」ということなので、澄んだ森の空気の中で仰向けになり、目を閉じました。小鳥のさえずりや虫の声が四方から聞こえてきます。それが子守唄のようになって、気が付くと20分ほど寝ていました。森の中で眠るのがこんなに気持ち良いとは驚きです。
▲3時間の森林セラピーを終え、切り株に座って、森の余韻に浸る

森林セラピーを受ける前と後では、体内の空気が入れ替わったように感じました。森の新鮮な空気で浄化されたのか、心もカラダもスッキリです。
ゆっくりとしたペースで散策し、立ち止まって植物を観察したり、座って休憩する時間もあるので、3時間という道のりも歩き疲れることはありませんでした。
一泊二日の“森ごもり”は、自然と一体となって心身をゆるめる贅沢な時間でした。静かなホテルや森で過ごす時間全体がまさにセラピー。登山ともトレッキングとも違う、あたらしい森の楽しみ方。飯南町で体験してみませんか?
小島有加里

小島有加里

島根県在住のグラフィックデザイナー。島根県の観光情報サイト、フリーペーパーなどでライターも務める。山陰のおいしいもの・楽しいこと・素敵な場所を発掘するのが趣味。(編集/株式会社くらしさ)

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