今も未来も恋せよ乙女!100年後も色褪せない縁結びの神社

2015.06.17

年間800万人の参拝者が訪れる太宰府天満宮から徒歩30分、宝満山(ほうまんざん)のふもとに縁結びの神様として知られる竈門(かまど)神社があります。玉依姫命(たまよりひめのみこと)を主祭神にまつる竈門神社には、「お参りすれば恋が叶う!」と恋する女子が恋愛成就を祈願しに訪れています。竈門神社では、2013年に、「1350年大祭」の大きな節目を迎え、社務所の建て替えが行われました。社務所の一角、お札やお守りを渡す授与所のデザインを手掛けたのは、ワンダーウォール代表のインテリアデザイナー、片山正通さん。千年以上の歴史を刻む神社と世界的デザイナーのステキな”ご縁”から生まれた今話題の神社を訪ねました。

竈門神社の本殿

恋色に染まる縁結びの神社にときめく!

「大宰府政庁があった場所から北東の方角、つまり、鬼門の方角にあるのが宝満山です。その頂上付近で鬼門封じの祭り事がなされたのが竈門神社の起源とされています」と教えてくださったのは、権禰宜(ごんねぎ)の森大郎さん。歴史の教科書に登場する人物も、命がけの航海の安全を祈願するため宝満山に登り、「方除け」や「厄除」の信仰をしたと伝えられています。また、竈門神社の主祭神は、良縁の神様として知られる玉依姫命です。「この地域では、江戸時代から昭和の初期頃まで、16歳になると宝満山に登り成人の報告をする”十六参り”と呼ばれる習わしがありました。男性なら、社会に出て身を立てていけるように、女性なら、良き人に恵まれて幸せになれるように願いを記した短冊を山頂付近の木に結び、山を降りると成人のお祝いをしていたそうです」。今でも十六参りの頃、4月16日近くの日曜日になると「縁結び大祭」が開かれています。
1350年大祭の節目を迎えるにあたって、築70年以上経つ社務所を建て替える計画をしていた竈門神社から授与所のデザインを依頼されたのは、世界に名を馳せるインテリアデザイナーの片山正通さんです。建て替えると100年はそのまま受け継がれることになる社務所。竈門神社の西高辻(にしたかつじ)宮司がテーマとして依頼したのは、「100年後のスタンダード」です。「50年、100年と愛され続ける場所として、100年後も色褪せない空間にしたい」という西高辻宮司の想いを受けて片山正通さんがデザインしたのは、思わず「かわいいーーー!」と声を上げてしまうほど、これまでに見たことのない授与所でした。神社が持つ清潔感、そして、恋愛成就の神社らしく女性の可愛らしさを表現したという授与所には、全国各地から建築ファンやカップルが訪れています。
竈門神社の名前の由来は、かまどのような姿をしている宝満山の別名に因んだものだといわれています。そこで、片山さんが授与所のコンセプトにしたのは、かまどを囲む”土間”です。かまどを囲んで家族が団らんする土間のように、人々が集まり、温もりを感じられる場所にしたいという思いが込められています。ガラスの自動扉までカーブを描くこだわりようですが、その丸みを帯びた空間が、訪れる人を優しく出迎えてくれます。
かまどを囲むように壁一面に並ぶのが、白や淡いピンク、濃いピンクの色をした天然の大理石です。色やカタチが異なる天然石がランダムに並べられているのは、訪れる人々のそれぞれの願いの違いを表現しているそう。あえてパターン化せずに短冊状の石を並べた壁の仕上がりには、片山さん自身もすごくこだわり、時間をかけやっとのことで配列を決めたそうです。外見の期待を裏切らず、授与所にはやっぱり、「かわいいーーー!」とお持ち帰りしたくなるセンスのいいお守りや可愛らしい縁起物が並んでいました。
授与所の奥の壁と天井一面にあしらわれている花のモチーフは、竈門神社の御神紋(ごしんもん)の山桜です。ふと天井を見上げると、アクリルの素材でつくられた桜の表面に、まわりの木々の緑が映り込み、自然の気配を感じることができます。「秋には紅く染まった紅葉が映り込みます。それぞれの季節の色を楽しめるのはもちろん、室内にいても御本殿をすぐそばに感じることができるようにとガラス張りにしています」と森さん。秋の風景をイメージするだけで、ため息がこぼれます。
「女心と秋の空」なんて言われますが、女性は感情豊かな生きものです。その豊かな心の表現を色で表してもらおうと、絵馬を描く台にもカラフルなペンセットが用意されていました。こんなところにも、仕掛け人たちの遊び心が施されているんですね。陶芸やファブリック、版画などを中心に手掛けるアーティスト、鹿児島睦(かごし まこと)さんが、つがいの干支をデザインした絵馬も、女性たちのハートを射止めています。
もうひとつ、見逃せない場所があります。それは、授与所の裏手、太宰府の街並みを見渡す展望テラスにある「ラブベンチ」です。作者は、世界的に有名なイギリスのプロダクトデザイナー、ジャスパー・モリソンさんです。自由に向きを変えられる回転式の椅子は、愛し合う二人の関係性のリアリティをカタチにしたもの。それにしても、外に設置されている御影石の椅子が回転するなんて、驚きですよね。もちろん、作者からすれば、その驚きも狙い通り。楽しい思い出と一緒に神社を訪れた時の記憶を刻んで欲しいという計らいがあるそうです。
片山正通さん、ジャスパー・モリソンさん、そして、神社建築で有名な種村強さん(社務所の建築設計を担当)の錚々たる顔ぶれで実現した世紀の一大プロジェクトから、伝統と最先端を見事に融合した新しい社務所が完成しました。その場所にすっかり魅せられ、「ここで挙式したい!」というカップルも急増しています。「古いもの、伝統的なものを大切にしながら、信仰を感じられる新しい”和”を創りあげていきたいという思いが私たちの根底にあります」と語ってくれた森さんの言葉に、これからもステキな”ご縁”から新しい魅力が生まれそうな予感がします。もちろん、恋が叶う予感も!
隠岐ゆう子

隠岐ゆう子

大学でデザインを学んだ後、大手印刷会社に入社。制作ディレクターとして5年勤めた後、フランス・パリに語学留学へ。現在は、九州・山口を中心に編集・ライターとして活動している。無類の旅好きで、暇とお金さえあればヨーロッパを中心に旅する行動派。旅、温泉、スイーツのキーワードに目がない。

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