絶景また絶景の連続!日本の鉄道最東端・花咲線の旅!/古谷あつみの鉄道旅 Vol.8
鉄道ライターの土屋武之さんと巡る、古谷あつみの鉄道旅!今回は、いよいよ日本の鉄道の最東端へ!JR花咲線(はなさきせん)の愛称で親しまれる、北海道・根室本線釧路~根室間を旅してきました!カメラマンは、鉄道専門誌で活躍中の若手、村上悠太さんです。さて、どんな景色と出会えたのでしょうか?

今回の見どころはここ!
2.日本の鉄道最東端で記念撮影!
3.村上カメラマンの車窓撮影テクニックを学ぶ!
4.北海道開拓の歴史をたどる旅
5.鉄道旅をさらに楽しむ乗り物!?

1.まるで映画の世界!車窓に驚きと感動が

古谷「朝だよぉ~!釧路の朝は寒いですね。」
土屋「朝晩の寒暖差が激しいよね。」
古谷「だから、こんなにも霧が凄いんですね。それにしても、張り切って朝早く出過ぎじゃないですか?」
土屋「花咲線は、列車の本数が限られているからね。上手く回ろう。」

古谷「わ!ほら!まだ5時だから、駅も開いていませんよ…(涙)」
土屋「張り切りすぎたね、ごめんごめん。冬は、駅のオープン時間に気を付けた方が良いね。」
古谷「真冬だったら凍え死んじゃいますよぉ…。」
花咲線は列車の本数が少ないため、張り切って早めに駅に到着した私と土屋さん。少々、張り切りすぎたみたいです。ワクワクしながら、始発列車を待ちます。
釧路駅は花咲線のターミナルで、札幌からの特急も発着。
コンビニやカフェなどの施設も充実しているので、駅で出発前の準備もできます。

古谷「初めて花咲線に乗ります。日本最東端の駅だなんで、ワクワクしちゃいますね!」
土屋「東根室までの車窓は素晴らしいよ。」

古谷「わぁ!ホームも凄い霧!列車が魔法の乗り物みたい!」
土屋「また子供みたいな感想を…。季節にもよるけど、幻想的だね。」
古谷「土屋さんは夢がないなぁ…。」
土屋「…。」

釧路駅を出発した列車は、住宅街を駆け抜けます。
都会を走るのかと思いきや、出発して10分も経たないうちに、車窓は突然、原野へ変わっていきます。

なんとビックリ!釧路からそんなに離れていない場所で、早くも野生のエゾシカに遭遇です。
北海道では珍しいことではないそうですが、野生の動物たちには目を見張らされます。
土屋「列車が、何もなさそうなところで警笛を鳴らすと、線路に鹿がいたりするんだ。」
古谷「こんなにたくさん鹿がいるなんて、ビックリです!」

古谷「あれ?今度は、海が見えてきましたね!いきなり海だったからビックリしました。」
土屋「霧が深いからね。もうすぐ厚岸(あっけし)だ。厚岸は、釧路と根室の間では、いちばん大きな町なのさ。」
古谷「たしか、カキが有名なんですよね!?」
土屋「その通り!君はアレルギーで食べられないだろうけど、厚岸のカキは本当に美味しいんだ。」

厚岸を出ると、原野と湿原がどこまでも続く大地のなかを、列車はひたすら走ります。車窓を眺めていると、そこには人工的なものなど、ひとつもないかのようです。
見えるのは、線路だけ。
深い霧のせいもあってか、幻想的でおとぎ話の世界に迷い込んだかのようです。

車窓いっぱいに広がる湿原は、とにかく大きい!
ここが日本であることを忘れてしまうくらいに。

古谷「それにしても、素敵ですね。」
土屋「だろぉ。霧の雰囲気も良いけど、晴れていても、また素敵なんだ。」
古谷「真冬なんかも素敵でしょうね。」

古谷「普段の忙しさや、仕事の事も忘れちゃうくらい雄大ですね。」
土屋「自然を感じられるだろう。」
古谷「なんだか、数千年前にタイムスリップしたような…。そんな景色です。」

古谷「駅が見えてきましたね。茶内…。高校生がたくさんいますよ!」
土屋「観光列車じゃないからね。花咲線は、地元の人たちの足なんだ。きっと、根室の方まで行くんだろう。」
古谷「これが通学列車!?こんな景色を毎日見られるなんて贅沢!」
土屋「でも、これが日常だからね。なんとも思わないんじゃないかな?感動は、非日常のなかにあるから。」

古谷「つ、土屋さん!鹿だけじゃなく、ポニーまでいます!」
土屋「あれは誰かが飼っているんだろう。」
古谷「動物園でしか見たことなかったです…。東京じゃ、絶対に見られない景色ですね。」
土屋「花咲線の車窓から見ることのできる野生の動物は、エゾシカだけじゃない。キタキツネや、鳥も見えるよ。」
古谷「キタキツネ!?それは見てみたいです!」
古谷「こんな高いところで撮影するんですか!?」
土屋「鉄道写真に限らず、普通に風景としても綺麗で、特に冬が絶景だよ。」


古谷「ポニーの次は、牛!?何だかわけがわからなく…。」
土屋「あれは、牧場で飼われている牛だよ。このあたりは酪農が盛んなんだ。」
古谷「花咲線の旅、始まったばかりなのに、朝から凄い光景ばかりです…。」
土屋「さあ、そう言っているうちに、もうすぐ根室の街が見えてくるよ。」
2.日本の鉄道最東端で記念撮影!

古谷「日本最東端の駅、東根室到着ですね!あっという間でした。」
土屋「まだまだ。今日はもっと感動するぞ!」
8時ちょうどに東根室に到着した私たち。私はなんだか、打ちのめされたような気分でした。
実は私、全47都道府県を旅してきましたし、他の人より鉄道に乗っているので、ちょっとだけですが、知った気になっていたんです。
でも実は全然知らなかったことに気付かされました。日本には、まだまだ素敵な車窓がたくさんあるってことを。

古谷「やっぱり、記念撮影したくなっちゃいますね!」
土屋「君はどこでも撮影したがるじゃないか…。」
古谷「そんなことないですよぉ。でも、こうして最東端と書かれていると、やっぱり嬉しくなります。」
土屋「そうだね。せっかくだし、花咲線の終点にも行ってみようよ。」

古谷「最東端駅は東根室でも、終点は根室なんですね。」
土屋「花咲線は、根室の市街地の南から、いったん東側へ大きく回り込んで、少し西へ戻るように敷かれているからね。」
古谷「だから東根室駅の方が、東になるのか…」
土屋「根室は日本でいちばん東にある市でもある。終点だから、面白いものが見られるよ!こっちだ!」

古谷「ここで線路が終わっていますね!本当に端まで来たんですね!不思議!東京から1,600km…。なんだかもっと離れているような気もします。」
土屋「こうして鉄道で旅をすると、日本を大きく感じるからね。」
古谷「それが鉄道旅の魅力のひとつですね。こうしてひとつひとつ周ると、本当にそう思います。」

古谷「霧も晴れてきましたし…。次はどこへ行きましょうか?」
土屋「この地域の開拓の歴史を見に行こうか。それならば、茶内駅だ。」
古谷「開拓の歴史!?」
土屋「行けばわかるさ。茶内まで戻ろう。車窓も綺麗だし、車内で撮影講座もしてもらうといいよ。」
古谷「レッツゴー!茶内駅!!」
3.村上カメラマンの車窓撮影テクニックを学ぶ!
村上カメラマン「こちらこそ!それでは古谷さん、車窓を自由に撮ってください!」
古谷「こ、こんな感じかなぁ…。」

村上カメラマン「そうですね…車窓を綺麗に撮るにはどうしたら良いと思いますか?」
古谷「一生懸命、撮る!」
村上カメラマン「…。気持ちも大切ですが(笑)、せっかく列車の車窓を撮るんです。走ってる雰囲気を写真に出したいですよね!?」
古谷「わかった!シャッタースピードを遅くすれば良いんだ!」
村上カメラマン「正解です!そうすると、さらに景色が流れて臨場感が出ますよ!」

村上カメラマン「例えば、こういうふうに…」
古谷「わぁ!すごい!列車のスピードが感じられて、迫力がありますね。」
村上カメラマン「もう一つは、できるだけ広角で撮ること。そして、線路を真ん中に持ってくるとバランスが悪くなります。構図にも気を付けてください。」
古谷「こんな感じ…かなぁ…。」

村上カメラマン「うん!なかなかいいですよ!」
古谷「やったー!らりほ~い!」
村上カメラマン「??」
村上カメラマンの車窓撮影テクニック!これならすぐに実践できます。
お見せした写真は、一眼レフで撮影したものですが、ミラーレスカメラでもとっても綺麗に撮れました。
みなさんも是非、綺麗な車窓を撮影してみてくださいね。
4.北海道開拓の歴史をたどる旅

古谷「開拓の歴史って…どこにあるんですか!?」
土屋「その扉のむこうさ。」
古谷「ふれ茶内館(ふれちゃうかん)!?なんだか怪しいですね…。」

古谷「あ、あ、開かないです。鍵がかかってます(泣)」
土屋「そうそう、鍵は駅前の畠山金物店で借りられるよ。」
古谷「早速行ってみます!」

古谷「この扉の向こうになにがあるんですか…。不思議。」
土屋「ゆっくり説明するよ。まずは開けてごらん。」

古谷「中は資料館になっていたんですね。」
土屋「浜中町営軌道。つまりは、ここを走っていた簡易軌道の歴史について展示されているんだ。」
古谷「簡易軌道ってなんですか?」
土屋「簡易軌道とは、明治から昭和のはじめにかけての北海道の開拓時代、道路がまったく整備されていない頃に盛んに建設された、その名の通り簡単な造りの鉄道のことだ。」
古谷「道路がなければ、花咲線みたいな、ふつうの鉄道で移動すればいいじゃないですか?」
土屋「トラックなどがない時代、できた農作物などを運ぶにしろ、生活用品を手に入れるにしろ、そもそも駅まで出ることすら難しかったんだよ。」
古谷「それは大変!」
土屋「道路の代わりだったんだね。近くの公園に面白いものがあるよ」

土屋「これが、浜中町営軌道で使われていたディーゼル機関車さ。」
古谷「なるほど!これだったら農作物も運べますね!」
土屋「そういうこと。昔の北海道には、こういった簡易軌道が沢山あったんだけれど、次々に廃止されてしまった。最後まで残っていたのが浜中町営軌道だったんだ。廃止されたのは1972(昭和47)年のことだ。」
古谷「北海道の人たちの生活を支えていたんですね。」

土屋「この、簡易軌道に乗って通学していた人たちもたくさんいたんだ。人の足としても活躍していたんだ。」
古谷「なるほど。でも、どうしてなくなったんでしょうか?」
土屋「道路が徐々に舗装されていき、自動車がどんどん普及したからね。必要なくなったんだよ。」
古谷「う~ん。でも、乗ってみたかったです。簡易軌道…。」
土屋「そうだね。でも、こうして歴史をたどるのも面白いじゃないか。」
古谷「はい!とっても面白かったです。」
土屋「さて…そろそろ帰るか。帰りは鉄道には乗らないよ。」
古谷「どういうことですか!?」
5.鉄道旅をさらに楽しむ乗り物!?

古谷「いや、この企画は古谷あつみの鉄道旅ですよ?鉄道で移動しないって…。鉄道旅じゃなくなりますよ!」
土屋「まぁまぁ(笑)。帰りはね、バスを楽しもうよ。」
古谷「バ、バス!?それ、バス旅じゃないですか!」
土屋「乗ればわかるよ~」
古谷「土屋さん、この企画を土屋武之のバス旅に切り替えようとしてますね!(怒)」
土屋「まさか~」

土屋「これに乗るよ。」
古谷「霧多布温泉行き…。温泉に入りに行くんですか?」
土屋「温泉には入らないよ。景色さ、景色。」
古谷「景色~!?」
と、いうわけでまずは浜中駅前から「霧多布温泉ゆうゆ」まで、くしろバスで移動!
しかし霧が深く、土屋さんの言う景色とはいったいなんのことかわからなかった…。

古谷「ちょっと~!なんにも見えなかったじゃないですかぁ!鉄道で帰っていれば…。」
土屋「ご、ごめんよ。でも、ここからが本番なんだ!」
古谷「なにが見えるっていうんですか!?」
鉄道で帰りたかった私は、土屋さんに怒りつつも、釧路行きの「霧多布線」のバスに乗り込みました。
バスが走り出して数分。土屋さんの言葉の意味がすぐに分かりました。

古谷「なんだか景色が綺麗になってきましたよ!」
土屋「鉄道ばかりにこだわらないのも、実は、上手な鉄道旅のやりかたさ。」
古谷「面白いですね!釧路から東には花咲線しか鉄道がないから、変化もつく…」
土屋「そうだろう?それにこの景色は最高だろう!?」



この日は霧が深い区間があったものの、車窓には絶景が広がっていました。
バスの運転士さんも、いつもはもっと綺麗なのに…。見せたかったです!と悔しがっていましたが、これ以上に綺麗な景色が見れるなんて!と、驚くほどの景色でした。
古谷「感動しました…。こんな旅もあるのか…って。」
土屋「もちろん、鉄道で旅するのも良いんだけど、こうして行きと帰りでルートを変えると、また違って楽しいだろう?」
古谷「はい!これは、あのまま鉄道で帰っていたらわからなかったことです。」

古谷「今回は私の惨敗ですね…。やっぱり土屋さんのアイデアはいつも本当に面白いです。」
土屋「一応、アドバイザーだからね!」
古谷「悔しい…。」
土屋「まぁまぁ…(笑)。これからも、良い鉄道旅を発信していこうよ。」
古谷「負けません!」
土屋「何に???」
こうして、土屋さんのアドバイスで、よりいっそう深みを増した、古谷あつみの鉄道旅は続くのでした…。
次回、古谷あつみの鉄道旅 Vol.9は、峠に挑んだ歴史を感じに、群馬・長野県の「碓氷峠」と「しなの鉄道」へ!

土屋武之(鉄道ライター)
鉄道を専門分野として執筆活動を行っている、フリーランスのライター・ジャーナリスト。硬派の鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」メイン記事を毎号担当する一方で、幅広い知識に基づく、初心者向けのわかりやすい解説記事にも定評がある。
2004年12月29日に広島電鉄の広島港駅で、日本の私鉄のすべてに乗車するという「全線完乗」を達成。2011年8月9日にはJR北海道の富良野駅にてJRも完乗し、日本の全鉄道路線に乗車したという記録を持つ、「鉄道旅行」の第一人者でもある。
著書は「鉄道のしくみ・基礎篇/新技術篇」(ネコ・パブリッシング)、「鉄道の未来予想図」(実業之日本社)、「きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)、「鉄道員になるには」(ぺりかん社)など。

古谷あつみ(鉄道タレント・松竹芸能所属)
小学生の頃、社会見学で近くにある車両基地へ行き、特急電車の運転台に上げてもらったことがきっかけで、根っからの鉄道好きとなる。 学校卒業後は新幹線の車内販売員、JR西日本の駅員として働く。その経験から、きっぷのルールや窓口業務には精通している。 現在はタレント活動のほか、鉄道関係の専門学校や公立高校で講師をしている。2015年には、「東洋経済オンライン」でライター・デビューし、鉄道旅行雑誌「旅と鉄道」等で執筆活動中。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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