神秘的なパワースポット。富士山の澄んだ雪解け水が湧く忍野八海を巡る

2016.08.09

世界文化遺産「富士山」の構成資産のひとつ、「忍野八海(おしのはっかい)」は、富士山を水源とする「出口池」「お釜池」「底抜池(そこなしいけ)」「銚子池」「湧池(わくいけ)」「濁池(にごりいけ)」「鏡池」「菖蒲池」の8つの湧水池のこと。江戸時代には、富士山に入山する前に身を清めるために訪れる巡礼地でした。今回は当時の巡礼者にならって8つの池を巡り、そのパワーをもらってきました!

▲六番霊場「濁池」

まずは観光案内所に立ち寄って「忍野八海」の歴史を知る

富士急行線富士山駅から路線バスに乗り約15分。バス停「忍野八海(大橋)」で下車し、まずは徒歩5分の忍野村観光案内所に立ち寄ります。「忍野八海」の歴史や文化的な価値、巡り方のポイントなどを、スタッフの方が地図を見ながらじっくり説明してくれます。

「忍野八海」は、もともと富士山信仰の巡礼地だったため、一番霊場から八番霊場まで禊(みそぎ)の順番が決まっているんだそう。スタッフさんのおすすめも、この順番に沿って巡るルート。「すばらしい景色だけでなく、そこにある歴史や思想も一緒に感じることで、より強くパワーをもらえる」とのことでした。
▲忍野村観光案内所。最も有名な「湧池」など、7つの池が集まるエリアから徒歩約3分の場所にある

「池」だけど「八海」というその名前の由来

「忍野八海」の名前は、8つの池がとても神聖なもので、「池」というにはもったいないほど尊いから「海」と付けられたんだそう。

その尊さのひとつは、「忍野八海」は占星術により、「出口池」を北極星として、そのほかの池を北斗七星の形に見立てたというもの。地図をじっくり見てみると、たしかに似ています。

そしてもうひとつは、それぞれの池に祀られた「八大竜王」。仏教の経典のなかでもとくに重要とされる「法華経」が釈迦によって説かれたときに聴衆として参加した、水や雨を司る八種の竜王のことです。それぞれの池にはその竜王が住んでいるといわれ、池のそばにある石碑には、和歌とともに竜王の名前が刻まれています。
▲「忍野八海」の地図

八海のなかでもっとも大きい「出口池」

いよいよ、一番霊場の「出口池」から巡礼の旅はスタートです。
「出口池」があるのは、ほかの7つの池からは歩いて20分ほど離れたところ。周囲には売店などもなく、民家や畑の中を進むので、この道で合っているかすこし不安になりますが、観光案内所から数えて2つ目の点滅信号を向かって右に曲がると、標識が見えてきます。
▲「出口池」への標識。標識はそれぞれの池の近くにあり、標識上部に現在地がわかる地図がある

標識を過ぎてしばらく歩くと、民家の横に現れる大きな池が「出口池」です。
「出口池」は、どっしりと落ち着いた雰囲気の池。昔からの自然な姿をそのままに残し、辺りには人が少なくのんびりと景観を楽しむことができる、八海のなかでもおすすめの池です。池のまわりをぐるりと回ることができるのでゆっくり散策してみて。
池を見下ろす林の中に建つ、出口稲荷大明神へのお参りも忘れずに!
▲「出口池」。透き通っていて、水の中の様子がよく見える
▲池の周りの林には階段が整備されている
▲木陰から見た「出口池」も趣がある。水面に映る空と木々が美しい

「出口池」の周回道を歩いていると、ちょうど真ん中あたりに「湧水入口」という立て看板を見つけました。池のほうにおりていく階段があります。
▲湧水入口の看板。木々に埋もれて、すこし気づきにくいかも

階段をおりると、一番霊場の石碑が立っています。この霊場は、江戸時代からそのままの姿を残しているんだとか。石碑のすぐ横で水が湧いていて、「富士山に登るときにこの水を携えると無事に登山ができる」といわれていました。水の流れる音と木々の葉のこすれる音が心地よいです。
▲一番霊場の石碑。当時の巡礼者に思いをはせる

7つの池が集まる「忍野八海」の中心地へ

「出口池」から来た道を戻り、バス停「忍野八海」の前の角を曲がらずにまっすぐ進むと、川が見えてきます。橋を渡って右に曲がると、川辺の道がしばらく続きます。
▲静かな川沿いの道は、散歩にうってつけ

川沿いを1分ほど歩くと、左手に二番霊場の「お釜池」があります。右手のきれいな川の流れに気を取られて、一度気づかずに通り過ぎてしまいました。「出口池」以外の7つの池は、ここから徒歩約10分圏内の距離に密集しています。
▲「お釜池」の目印はこの水車

「お釜池」は、八海のなかでもっとも小さな池ですが、小さいからと言って侮るなかれ。湧いてくる水量は豊富で、池の底に開いた大きな穴の、吸い込まれるような青色が幻想的です。
▲透き通った池の底に深い穴が開いている

次は、三番霊場「底抜池」へ向かいます。道中、四番霊場「銚子池」と六番霊場「濁池」の横を通ります。
▲四番霊場「銚子池」。ある家の花嫁が身投げをしたという悲しい伝説がある池だが、今日では「縁結びの池」と伝えられている
▲六番霊場の「濁池」。みすぼらしい行者がこの池の地主の軒先で一杯の水を求めたが断られてしまい、その際に池の水が急に濁ってしまったという伝説が残っている

「底抜池」は、「榛(はん)の木林資料館」のなかにあります。入口で入場券を買い、資料館の敷地に入ると、眼前には大きな「鯉の池」が広がり、周囲の景観と相まって開放感抜群です。敷地の最奥にあるという「底抜池」を目指して、順路に沿って進みます。
※資料館は有料。大人300円、子ども150円(ともに税込)。
▲資料館の入り口。2階は展望台になっていて、資料館の敷地全体を見渡せる
▲大きな「鯉の池」。近づくとたくさんの鯉が泳いでいるのがわかる

古民具などを展示する資料館の建物を通り過ぎると、木が生い茂った、一層ひっそりとした場所が見えてきました。そこに「底抜池」はあります。昔の姿をもっともそのまま残しているといわれ、その透き通った青色の美しさは、どこか神秘的で心が洗われるような透明感です。時間を忘れて、いつまでも見ていたい!
▲ひっそりとした「底抜池」は、ほかの池に比べると水深が浅い。息をのむほどの透明感で魚が泳ぐ姿もはっきり

そんな「底抜池」には、「洗い物を落とすと消えてしまい、しばらくすると『お釜池』から浮き出てくる」という伝説が語り継がれているんです。この伝説から、地底で「お釜池」と水脈がつながっているのではないかといわれています。

八海一の湧水量をほこる「湧池」

資料館を出て、目の前の橋を渡ると、五番霊場「湧池」が見えてきます。湧水量が毎秒2.2立方メートルと八海の中でもっとも多く、「忍野八海」を代表する池で、もっともにぎわいを見せている場所。昭和58(1983)年には、NASAが宇宙で雪をつくる実験に、この「湧池」の水を使用したというから驚きです。
▲鯉が池の水面を揺らす

透き通った水のなかに揺れる藻の緑と、水の青とのコントラストがきれいで、ずっと見ていても飽きません。橋の上から池をのぞきこんでいる人もひっきりなしです。
世界遺産・富士山の構成資産に認定されてからは、世界中からさらに多くの人が訪れるようになったんだとか。
▲この藻のさらに奥に、55mもつづく水中洞窟があるんだそう。私も一生懸命のぞきこんでみたけど、見えなかった……

「湧池」周辺には、食事処や土産店などが多く立ち並びます。名水を使った豆腐のほか、草餅や大きなせんべいなど食べ歩きできるものも多く、目移りしちゃいます。「湧池」向かいの水車小屋では、水車でそば粉を製粉していました。そのそばは向かいの「池本茶屋」でいただけます。
▲食事処や土産屋がならぶ、もっともにぎやかな通り
▲水車小屋でのそば粉製粉の様子
▲「池本茶屋」の「あつもりそば」(税別800円)。麺だけがあったかいそば

美しい湧水口をのぞく人気の「中池」

「湧池」から七番霊場の「鏡池」に抜ける道の左手に、大きな池があらわれました。ここも八海のひとつ?と思いきや、「忍野八海」とは関係のない人工池の「中池」。しかし、八海にもひけをとらないほどの雄大さと美しさは、一見の価値ありです。
▲「中池」。橋がつながっている島のようなところに湧水口がある

池の中央にある湧水口周辺は、昼前後にはとくに混雑しますが、うっとりするほど深い青の美しさは見ないと損!ぜひのぞき込んでみてください。
▲湧水口をのぞき込むと、コバルトブルーの水のなかを鯉が泳いでいる
▲「中池」の湧水口に向かう途中にある名水。だれでも飲めるようになっている。ペットボトルに入れて持ち帰るのもOK

富士山と縁の深い「鏡池」と「菖蒲池」

「中池」を通り過ぎてすぐ、左手に見えてくる三日月のような縦長の池が「鏡池」です。湧水が少なく、ほかの池と比べると濁っていますが、天候などの条件がそろうと、見事な「逆さ富士」を見ることができるため、「鏡池」という名前がついたそう。
▲「鏡池」。この日「逆さ富士」は見られなかった
▲「鏡池」にうつる逆さ富士(写真提供:忍野村役場)

さらに奥へ進んでいくと、第八霊場「菖蒲池」に到着。この池の菖蒲を体に巻くと、病気が治るという伝説が残っています。初夏には美しい菖蒲の花が咲き、天気が良ければ、富士山のビュースポットでもあります。
▲「菖蒲池」。すこしわかりづらいが中心に見える石碑が目印
▲「菖蒲池」ごしにうっすらと富士山が見える(写真提供:忍野村役場)

イチイの古木が見られる「忍草浅間神社」

「忍野八海」を訪れたら、少し足をのばして「忍草浅間神社(しぼくさせんげんじんじゃ)」にも訪れたいところです。富士山の噴火を鎮めるため、延歴21(802)年に建立された歴史ある神社で、境内には16本ものイチイの大木が並んでおり、県の天然記念物に指定されています。ほかにケヤキの大木もあり、力強い巨木を見ていると、包み込まれるような安心感を感じられます。
▲1200年以上も前に創建された「忍草浅間神社」。鳥居の両側にも立派なイチイの木がある
▲イチイの木の根元には大きなうろがあり、長い年月を感じさせてくれる
富士山信仰の巡礼者が身を清めたという「忍野八海」の美しさは、写真では感じきれないもの。山梨の澄んだ空気と一緒に、その厳かで神秘的な湧水池を自分の目で見て、全身で感じに行ってみませんか?
和田めぐみ

和田めぐみ

編集者、ライター。出版・編集プロダクションデコ所属。医療・健康フリーマガジン『からころ』や、その他小冊子、ウェブ媒体の編集・執筆などを手がける。編集を担当した本に『I Love クラシックカメラ』『リンゴをほめるだけでアイデアが豊かになる本』(ともに技術評論社)、『はじめてのレコード』(DUBOOKS)などがある。

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