のんびりゆったり。水郷と商人の街・近江八幡を舟上から楽しむ旅

2018.07.17 更新

琵琶湖からほど近い滋賀県近江八幡市は、古くから水郷をはじめとしたのどかな里山の風景が広がり、一方で近江商人発祥の地として独自に発展してきた町並みが残されている場所です。今回は自然豊かな水郷と、人々の生活の場であった「八幡堀(はちまんぼり)」の景色を手漕ぎ舟とエンジン船、二つの舟の上から楽しんできました。

「重要文化的景観」にも選ばれた風景

その昔、琵琶湖に数多くあった内湖(ないこ)。内湖とは琵琶湖周辺の水域のことで、水路が張り巡らされ、琵琶湖と自由に行き来できるようになっていました。明治41(1908)年の地形図には40箇所以上の内湖が記載されていましたが、これらの多くが干拓事業によって姿を消し、今では整然とした水田が広がっています。

こうしたなか、干拓事業の水域で残った近江八幡市の西の湖(にしのこ)は、現存する内湖の中では最大規模を誇り、今では全国でも珍しい水郷地帯を形成しています。

この水郷地帯の一番の特徴は、「ヨシ」というイネ科の植物が群生していること。希少種を含むさまざまな種類の生き物や水田、ため池や水路など、緑豊かな里山の風景を生み出していることから、平成18(2006)年に「重要文化的景観」の第1号に選ばれました。
▲琵琶湖八景(びわこはっけい)の一つとしても有名な水郷(写真提供:水郷のさと まるやま)

網目のように入り組んだヨシの間を、ゆったり手漕ぎ舟で楽しむのが「水郷めぐり」。
船頭さんとの会話を楽しみながらのどかな船旅に出かけましょう!

ヨシの迷路を手漕ぎ舟でめぐる

今回、乗船したのは「水郷のさと まるやま」。
定期船は4月~11月まで毎日10時から運航しており、最大8名まで乗船することができます。(貸切船は年中無休・要予約)
▲JR近江八幡駅から車で15分ほど進むと到着
▲船内は広々。この舟を船頭さんが竿一本で操作していきます
▲竿の長さは約4m。ずっしりと重い

この日、案内してくれたのは、この道13年のベテラン船頭・石橋さん、73歳。
60歳を目前に船頭の道に入り、多い時では一日4~5回舟を運航することもあるそうです。
▲船頭の石橋さん
いざ、ヨシの迷路へ!
網目のようになっている水路を、ヨシの壁に沿ってどんぶらこどんぶらこと進んでいきます。この日は猛暑日だったにもかかわらず、舟に乗ると風が気持ち良く爽やか。手漕ぎのリズムが心地よく、ついうとうと…と、まどろんでしまうほどの気持ち良さです。

簾(すだれ)や葦簀(よしず)の材料としても有名なヨシ。成長が早く、1年で4m以上の高さにまで伸び続けます。

「ここのヨシは春に新芽が生え、夏には青々と生い茂り、秋には黄金色に変化します。冬に刈り取った後は西の湖が見渡せるほど見晴らしが良いんですよ。ヨシの景色や気温のことを考えると、水郷めぐりは春と秋が一番おすすめですね」と石橋さん。
▲風が吹くとササササ~と涼しげな音が鳴るヨシ

また、「水郷めぐり」の楽しみの一つが生き物探し。豊かな生態系が残されている水郷地帯は琵琶湖とつながっているため、希少な魚や鳥を見ることもできます。
▲カモやカイツブリ、ヨシキリ(渡り鳥の一種)など生き物を間近で見られるのも楽しい

また、水郷地帯に架かる橋は時代劇の撮影に使われることが多いので、運が良ければ乗船中に撮影に出くわすことがあるかもしれません。
▲船頭さんが撮影スポットなども教えてくれます

定期船の船内はペットボトル飲料程度の軽い飲食のみOK。しかし、貸切船の場合は食事を楽しみながら水郷をめぐることも可能です。
四季折々の景色を愛でるもよし、生き物を探すもよし、食事と一緒に贅沢な時間を過ごすもよし。
皆さんならどんな風に楽しみますか?

近江商人の生活の場「八幡堀」をエンジン船でめぐる

今度は近江八幡市の中心部にある「八幡堀」に場所を移しましょう。
「八幡堀」は安土桃山時代、琵琶湖と市街地を連結するために造られた人口の水路。この水運によって船や人の往来が増えて商業が発達し、全国的に有名な近江商人が生まれるきっかけとなりました。
▲「八幡堀」の周りには白壁の土蔵や昔の趣きを残した屋敷が立ち並んでいます
▲伝統的な「八幡瓦」の産地でもある近江八幡。通りの至るところでさまざまな種類の瓦を見ることができます

全長約5kmの距離を35分かけて進んでいく「八幡堀めぐり」。
八幡堀沿いに立つ「かわらミュージアム」から徒歩1分のお食事処「和でん」にある乗船場からスタートします。
▲お食事処「和でん」の裏から階段を降りると乗船場に到着

「八幡堀めぐり」の船は定員11名。春から秋は1週間前までの予約がおすすめですが、当日予約なしの乗船も可能です。ただし、団体予約の状況により待ち時間が長くなってしまう場合もあるので、混んでいない時間帯を電話で確認しておくと乗船がスムーズですよ。(12月~2月は当日予約でも可能)
▲エンジンを巧みに操作しながら幅3mほどの細い水路を進んでいきます

町中にある水路のため、水の流れは穏やかで揺れることはまったくありません。エンジン船のポンポンポンという軽快な音と共に早歩き程度のスピードでゆったりと進んでいきます。
▲ここから琵琶湖にもつながっています

人々の生活の場、交流の場として栄えた「八幡堀」。堀沿いからは日牟禮八幡宮(ひむれはちまんぐう)や旧家を眺めることができるほか、春は桜、夏には柳、秋には紅葉、冬は雪景色など季節によって異なる風景を楽しむことができます。

船内に流れるアナウンスでは近江八幡の歴史も紹介してくれるので、景色を眺めながら当時の生活の様子を想像してみるのもいいかもしれません。
▲散策する時間がない!そんな人も手軽に「八幡堀」の雰囲気を堪能できるのが船の良いところですね
▲船の荷揚げ場として用いられている「新町浜」。テレビのロケにも使われることが多いそう
▲こちらも時代劇で登場することが多い「明治橋」

情緒のある町並みが続く「八幡堀」。高度経済成長時代を経て、一時は水質悪化により埋め立ても計画されていたといいます。しかし、今もこうして情緒あふれる景色が残されているのは、地元住民による地道な清掃作業があったから。

「八幡堀」では毎年秋に「八幡堀まつり」が開催され、約3,000個の灯りで水路を照らします。この時期限定の企画展やスタンプラリーなども行われるなど、昼とは違った様子を楽しむことができますよ。
▲2018年度の「八幡堀まつり」は10月13日(土)、14日(日)に開催(18時~21時)写真提供:(公社)びわこビジターズビューロー
ヨシが繁る四季折々の水郷、生活の営みが垣間見える八幡堀、同じ舟でもまったく違った景色を見ることができるのは近江八幡ならでは。
さわやかな風が心地よい舟めぐりをぜひ楽しんでみてください!

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石原藍

石原藍

ローカルライター。 大阪、東京、名古屋と都市部での暮らしを経て、現在は縁もゆかりもない「福井」での生活を満喫中。「興味のあることは何でもやり、面白そうな人にはどこにでも会いに行く」をモットーに、自然にやさしく、心地よい生き方、働き方を模索しています。趣味はキャンプと切り絵と古民家観察。

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