“おばぁ”たちが生きた100年近い時間を伝える「笑味の店」
大宜味村(おおぎみそん)は那覇市から80km以上離れた沖縄本島北部に位置し、やんばる(山原)の山々と海の狭間にある長寿の村だ。畑として耕せる土地はごくわずかだが、なければないなりに工夫をしてきた先人がいる。村で暮らす“おばぁ”たちの家の庭先や畑では、ニガナ(苦菜)やウンチェー(空心菜)、カンダバー(サツマイモの葉)、青パパイヤなど、数々の島野菜が少しずつ顔を見せ、いずれも独特の苦みや香り、ぬめり、色など、強烈な個性を放っている。土や海とともにある“おばぁ”たちの暮らしのリズム、生きる知恵を伝え残していこうと、平成2年(1990年)、金城笑子さんは「笑味(えみ)の店」をオープンした。
90歳になっても、畑へ、海へ
“おばぁ”たちはすこやかに老い、80歳になっても、90歳になっても、生涯現役で、畑へ、海へと出かけて行く。



畑のすみっこにあった島野菜
だが、笑子さんが店をはじめようとした1990年頃、“おばぁ”たちが育てる島野菜は、市場に出回ることはなく、ひっそりとつくられ、ひっそりと食べられているだけだった。
「なんかさー、そういう畑のすみっこにあるような野菜を見ているとさ、工夫して料理してみたいという気持ちにさせられたわけね」
同時に、今と違い、島野菜への理解もまったくなかった時代といっていい。
学校給食では時間や設備などに制限があると感じ、店を開くという笑子さんに対し、“おばぁ”たちはいっせいに反対した。
「安定した公務員なんか辞めて、何考えてるねー?!」
「私らが買ってまで食べんような野菜を、誰がお金を払って食べてくれるねー?!」

おばぁたちは自分が育てた野菜に値段をつけることはできないと思っているけれど、彼女らがゆったりとしたリズムのなかで育てた野菜は、飽食の時代に失われてきたものを思い起こしてもらうきっかけになる。大宜味村こそお年寄りの知恵が生かせる場所。おばぁたちは畑の野菜に誇りを持ってほしい。

“おばぁ”に惚れ、島野菜に惚れた人が素直に作りつづけている料理をいただく時間は幸福だ。
聞き書きして綴る『百年の食卓』
“おばぁ”たちの家々を一軒一軒訪ね、ふだんのごはんを作ってもらいながら、昔のことや暮らしの話を聞き取りすること。その静かな記録は小冊子『百年の食卓 -おばぁとおじぃの暮らしとごはん-』として綴った。

笑味の店
【住所】 沖縄県国頭郡大宜味村字大兼久61
【営業時間】9:00~17:00(食事は11:30~、L.O.16:00)
【定休日】火・水・木曜日
【電話】0980-44-3220

アイデアにんべん
沖縄・読谷村を拠点に、パンフレットやリーフレット、パッケージなどの企画制作を承る事務所。ものごとの本質をよく見て、何を「伝える」のか、どうすれば「伝わる」のかを、人との関係性の中でともに考えていきます。(編集/株式会社くらしさ)
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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