十勝のファームインで酪農家体験。素朴ながら贅沢なカントリーライフを楽しむ

2016.09.22 更新

北海道十勝地方は大規模な機械化農業が行われている、日本有数の食料供給地。農家1戸あたりの平均耕地面積は東京ドームの面積の約8倍、約38ヘクタールあり、全国平均の24倍もあります。広大な農地や牧草地が広がるこの地で牛舎を見学したりトラクターを運転したり、ちょっとだけ酪農家気分を体験。ファームインを楽しみました。

ファームインとは農場や牧場の宿のこと。農場や牧場の敷地内に泊まり、農村や田舎暮らしを味わうことができ、酪農体験や収穫体験などを楽しめることも。

今回訪問したのは、北海道鹿追町(しかおいちょう)にある「カントリーファーマーズ藤田牧場」。牧場や畑などが広がる農村地帯にあり、十勝地方の中心都市、帯広市街からは車で約50分、とかち帯広空港からは約70分で行くことができます。
この牧場では約140頭の乳牛を飼育し生乳を生産するとともに、観光客や修学旅行生向けに牧場見学やバターづくり体験などを楽しめる「酪農教育ファーム」の運営と、コテージでの宿泊の受け入れもしています。

今回、「酪農教育ファーム」の中で、牧場見学、トラクター試乗体験、バターづくり体験に挑戦し、コテージに宿泊してみました。
▲半オープンの体験ハウス。ここで牧場見学のレクチャーやバターづくり体験をします

牛の一生の話にホロリと涙。牛乳ができるまでを学ぶ牧場体験

乳牛が飼育されている場を見ることができる牧場見学(1,600円・税別)。実際に現場へ行く前に、まずは施設内にある体験ハウスで、牧場スタッフによるレクチャーがあります。
▲今回案内してくれたのは牧場主の藤田均(ひとし)さん

「牛は生後24~25カ月でお産します」
「1頭の牛から、1日約30リットル、牛乳パック30本分のお乳が出ます」
牛の生態、飼育方法、牛乳が生産されるまでを、パネルなどを用いてわかりやすく教えてくれます。でも、こんなちょっと辛いお話も。

「オスはお乳が出ないので、生まれてきたら1~2週間で肉牛を育てる牧場に行ってしまうのです。お乳が出なくなったメスも行きます」
「牛は生き物なので、牧場の仕事は365日休みがなく、私たちは毎朝4:30に起きてエサやりと掃除と乳しぼりをしています」
命の尊さやありがたみも学んでもらえるようにと、せつないお話や厳しいお話もしてくれます。牛の一生を知りホロリと涙が落ちそうになりつつ、日々口にしている牛乳や乳製品は命の恵み、大切に味わわなくてはと感じました。

15~20分ほどのレクチャーが終わると、いよいよ牛舎へ。

牛たちとご対面。飼育現場へGO!

▲牛の鼻息を感じる位、間近で見ました~!

最初に訪れたのは搾乳牛舎。お乳をしぼる牛たちが暮らす牛舎です。牧場全体で約140頭いる牛のうち、約75頭がここにいます。残りの牛は子牛やお産前後の牛など搾乳をしない牛なので別の建物にいます。
乳しぼりを手でするのは昔の話。現代は機械化されていて、朝と夕方の1日2回、牛の乳房からチューブのような機械で吸い取るようにお乳をしぼり、原乳を集めます。

ここでは実際にしぼっている場面は見学できませんが、牛たちが休んでいる姿や食事風景を目の前で眺めることができます。食べている干し草がこちらに飛んでくるのではとヒヤヒヤしながら、牛の息づかいを感じるほど間近で眺めました。

次に訪れたのは、牛のエサを作る施設。
小麦ロールや牧草ロール、牧場内で刈り取った牧草やデントコーン(牛のエサ用のとうもろこし)など、牛のエサとなる飼料を気温や湿度などに応じて配合し、エサを作る場所です。牛の給食室といったところでしょうか。
この後は、若い牛が暮らす育成牛舎をはじめ、お産前後の牛などが暮らす乾乳牛舎や、生まれたての牛やヤギが飼育されている場所などを案内してもらい、体験ハウスへ戻りました。
▲目が合っちゃった!?
▲生まれて間もない赤ちゃん牛、かわいい~!!

通常、牧場見学の最後には牛乳とオリジナルアイスクリームを味わうのですが、今回はこのあとバターづくり体験をするので、その時までしばしおあずけ。

トラクターを運転して、牧草地や農場をドライブ

牛舎などを見学した後は、牛のエサを育てている牧草地や農場のドライブ!農家さんの必需品、トラクターを体験試乗(2,000円・税別)しました。
今回運転したのは、「MASSEY FERGUSON(マッセイ ファーガソン)」というフランス製の大型トラクター。公道で運転するには大型特殊免許が必要ですが、私有地内なら免許不要!子どもでも運転することができます(子どもは保護者同伴)。
▲運転席までステップが4段。かなり高い位置に座って運転します
▲高さがある運転席からの視界は良好!

運転席に座ると、操作レバーなどの多さにびっくり。ギアの変速だけでも主変速と副変速があり、さらにトラクターがけん引する耕運機などを操作するレバーなどが多数。
▲素人には何をどう操作すればよいのか、さっぱりわかりません…

でも、心配無用、藤田さんが同乗し、基本的な動かし方を教えてくれるので安心です。

トラクターは基本的には片手運転。ハンドルに突起が出ている部分を左手で握り、右手でギアや耕運機などの操作レバーを操るそうです。
体験では耕運機などはけん引しないので、ギアを操作する時以外、右手はフリー。左手でハンドルを切り、ブレーキは足元のペダルを操作し、進んでいきます。
人が小走りすれば追いついてしまうほどの超低速で進んだので、ハンドル操作はすぐに慣れました。慣れてくると、高い運転台から眺める景色や、迫力あるディーゼルエンジンのうなる音などを楽しむ余裕も。
牛のエサとなるデントコーンを栽培している畑の脇などを走り、20分少々の乗車体験を楽しみました。大規模農場ならではのスケール感がありました。

農業に関わっていない限り運転する機会がないトラクター、これは貴重な体験です!

命の恵みを命がけでシェイク!バターづくり体験

体験ハウスへ戻り、今度は牛の恵みを加工する、バターづくり体験(1,600円・税別)をしました。まず、用意されたボトルに牛乳と動物性生クリームを入れてフタをしめます。
▲北海道のメーカー製の牛乳。「藤田牧場」の生乳もこのメーカーへ出荷しています
▲牛乳と生クリームの分量を量って、ボトルに入れます

そのあとは、ボトルを上下にひたすら振り続けます。これが意外と大変…。
▲う、腕…辛いっす…

「ボトルの上と下に液体を思いきりあてるように振ってくださいね、そうすると美味しいバターができますよ」

軽くシャカシャカ振っていたらそんなアドバイスを受けました。それならば、と気持ちを入れ替え命がけで!?シェイク!シェイク!
▲10分ほどひたすら振り続けると、中の液体が黄色い塊になりました

フタを開け、ろ紙で水分を濾して軽く絞ると、無塩バターのできあがり!
この体験には、クラッカーと牛乳、オリジナルアイスクリームがつきます。バターはクラッカーにつけて試食できます!
塩気のあるクラッカーにちょうどよく合い、口直しに飲む牛乳にもピッタリ!自分で作ったバターは世界一美味しい!そんな気分になりました。
作ったバターは保存がきかないため、残念ながら持ち帰ることはできませんが、この後ここのコテージに宿泊する人のみ、室内に冷蔵庫があるので持ち帰ることもOK!

せっかく気合を入れて作ったバター、いろいろな食べ方で楽しみたいですよね。そこで、この後はコテージに移動して、バターを使った簡単なアウトドア料理に挑戦してみました!

コテージに泊まり、カントリーライフを楽しむ!

ここ、「藤田牧場」のコテージは2棟あります(1泊1名6,000円、3歳~小学校未就学児まで3,000円・各税別)。
▲4~6名用のA棟
▲1~4名用のB棟。今回はこちらに宿泊

室内にはトイレやシャワールーム、キッチンがあり、調理器具や皿類なども揃っています。卓上コンロがあるので室内で調理することもできますが、コテージ前にテーブルや椅子があり、バーベキューコンロも借りられるので、屋外で食事を楽しむのもオススメです!
▲一部がロフトになっていて、ロフトにはベッドがあります
▲電子レンジやトースターもあります

食材さえ事前に準備しておけば、あとはほぼ不自由なく過ごせるのです!ランタンなどキャンプグッズを持参できるなら、さらに魅力的なコテージライフを楽しめます。

スーパーやコンビニ、ホームセンターはここから車で10~15分程度、鹿追町の町中にあるので、ここへ訪れる前にひととおり買い揃えておくのがベター。歩いて行ける範囲に売店などは一切ないので、買い忘れなどないように。

今回作った料理は4品で、すべてバターづくり体験で作ったバターを使用。料理名は勝手に命名してみました。

1品目:炭火蒸し焼きジャガイモのバター添え
▲ジャガイモをアルミホイルで包み、バーベキューコンロの炭火の中に入れて蒸し焼きにして、自作バターをのせて塩を軽くパラッとふりました

ホクホクなジャガイモにバターがとろ~っと染みこみ、しっとりした食感。バターの濃厚な風味でジャガイモの甘さがより増した印象でした。

2品目:とかちマッシュ(十勝産マッシュルーム)や地元野菜と卵のオムレツ
▲炭火コンロにアルミホイルを敷いて、フライパンでバターを溶かします(フライパンは備品にもありますが、写真は持参したキャンプ用のものを使用しました)
▲みじん切りにした野菜類をバターで炒めます
▲生クリームとバター、塩などを入れて溶いた卵をかけ、弱火で焦げないよう焼いたら完成

野菜たっぷり!野菜の甘さとクリーミーな風味を感じつつ、バターの香りがほんのりと。形は崩れてオムレツというよりスクランブルエッグになってしまったものの、我ながら味は絶品!

3品目:醤油バターソース漬けの北海道産豚ヒレ肉と十勝和牛モモ肉のバーベキュー串焼き
▲醤油にバターを入れて溶かし、ぶつ切りした肉を浸して味を染み込ませます
▲ホームセンターで買った串に肉と野菜を刺して、炭火でじわじわ焼いたらできあがり。残った醤油バターは余りのとかちマッシュに塗り、串焼きにしてみました

お肉に醤油バターが染みこみ、しっかり焼いても肉質はやわらかく、中までよい味わいがしっかり!バターのコクがありつつも、お肉の脂が炭火焼きで落ちたためか、こってり感もなく食べやすかったです。

4品目:シナモンが香るリンゴのバターソテー
▲切ったリンゴに軽く砂糖をかけてバターで炒め、最後にシナモンをふりかけて完成

食後のデザートにピッタリ!リンゴがとってもまろやかな味わいになりました。

自作のバターを活かして地元食材で作った料理、どんな一流レストランの味よりも美味しく感じてしまいます。自己評価は五つ星!
▲十勝の自然の恵みに感謝!最高の素材を美味しく食べて、お腹パンパン!

ぐっすり眠りにつき、酪農家のように4:30に起床…はできませんでしたが、朝靄(あさもや)が立ち込める牧場の目覚めは気分爽快!とても健康的な朝を迎えた気分です。
▲昨夜の残りをおかずに、バターを塗ったパンと牛乳でモーニング

生産者と触れ合い、牛を間近で見て、農村の風土を感じることができた貴重な一日。

普段何気なく口にしている牛乳やバターなど、牛の命の賜物だと思うと、とても尊いものに感じました。そして、365日働いている酪農家の努力の賜物でもあると考えると、感謝しながら味わいたいとも感じました。
そんなことを思い巡らせながら、「藤田牧場」を後にしました。
日本の食料基地とも呼ばれる十勝地方を訪ね、普段なかなか目にすることがない広大な生産地に足を踏み入れることができました。
ファームインを体験すると、食べ物のありがたみを感じるとともに、心が清々しくなる気がします。皆さんも一度、十勝地方の牧場で一夜を過ごしてみませんか?きっと何か感じるものがあるはずですよ。
川島信広

川島信広

トラベルライター・温泉ソムリエ・イベントオーガナイザー/横浜市出身、札幌市在住。北海道内の全市町村を趣味で訪ね歩くうちに北海道の魔力に惹かれ、都内での雑誌の企画営業と執筆業務を経て北海道へ移住し独立。紙媒体やweb媒体などで主に観光や旅行、地域活性をテーマにした取材執筆と企画・編集を手がける。スイーツ好きの乗り鉄、日光湿疹と闘う露天風呂好き。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

こちらもおすすめ

もっと見る

今おすすめのテーマ

PAGE TOP