徳島に秋の訪れを告げるボウゼの姿寿司

2016.10.03 更新

ボウゼという魚をご存じですか?全国的に見てもあまり食卓にのぼる機会のない魚ですが、徳島では秋の風物詩として昔から親しまれてきた魚で、しかも他県ではまずお目にかかれない「姿寿司」でいただくのが一般的。超ローカルなこの料理、秋の徳島を訪れた時には外せません!

徳島で姿寿司といえば、まずボウゼ

秋になると徳島の魚料理店やスーパーに並ぶ、ボウゼという魚。徳島県以外では食べられることがあまりありませんが、一般的には「イボダイ」という名前で呼ばれ、けっして徳島近海でしか獲れないというわけでもないそうです。

こんな美味しい魚なのに、食べないなんてもったいない!…ということで、徳島の食材を和食ベースの創作料理で味わえる「うまいもん処 木の葉」さんにお邪魔して、ボウゼの代表的な食べ方である姿寿司について取材し、その美味しさも味わってきました。
▲手のひらほどの銀色の魚、これがボウゼ

まず見せてもらったのは、今日水揚げされたばかりのボウゼ。形は鯛のような楕円形で、銀色の魚体がキラキラと光る美しい魚です。
「今日のボウゼはちょっと大きめですね」。そう話すのは店主の手塚進さん。
▲県外客からのリクエストで、ボウゼのフルコースを作ったこともあるとか

徳島北部に位置する鳴門市が故郷の手塚さんも、子どもの頃にはよくお婆さんが作ってくれたボウゼの姿寿司を食べたそう。
「秋祭りの時期には決まってこの料理が出てましたよ。料理の修業で大阪にいた頃は、むこうの料理人に『徳島ではイボダイなんか食べるのか』とよく笑われたもんです」。
思い出話をしながらも、姿寿司作りに取りかかる手塚さん。
▲まずは水洗いしたボウゼをまな板に乗せ、背中側から包丁を入れます
▲開いたら内臓や目玉を抜き取り、再びしっかりと水洗い
▲背びれを挟んだ反対側からも包丁を入れて、中骨を取り外します

さすがプロ、魚の下処理はあっという間に完了です。
ここで水気を切ったボウゼに塩を振って、30分から1時間ほどおきます。「塩はボウゼの水分を抜いて旨味を凝縮させるだけでなく、鮮度の落ちやすいボウゼを長持ちさせる役目もあるんです」。
▲頃合いを見て水洗いしたら、今度はお酢に浸けます

お酢に浸ける時間はわずか5分から10分ほどで、長く浸けるほどに骨も柔らかくなるそうです。「お酢もボウゼを保存するための知恵ですが、冷蔵の技術が発達した今では昔ほど長く浸け込む必要もないですから、うちでは浅めに浸けるようにしています。でも年配の方が家で作る時は、今でも昔のレシピどおりに酸っぱい姿寿司にしてるようですよ」。

そしていよいよシャリの登場!「今日のボウゼは大きいので、一つの姿寿司に茶碗一杯分くらいのシャリを使います。でも好きな人は二つ三つはペロッといきますね(笑)」。
ボウゼのお腹にシャリを詰め、食べやすい大きさにカットすれば、ボウゼの姿寿司の完成です!
▲ボウゼの大きさや仕入れ状況にもよりますが、こちらでは大きなものなら1尾1,000円ほど、小さなものは580円ほどで提供しています(いずれも税込)

県外から来たお客さんは、まず誰もがこの見た目に驚くそうです。
「どうやって食べればいいの?」と聞かれることも多いこの料理ですが、小さなものはお酢のおかげで骨まで柔らかいので、頭ごとガブリといくのが地元流。今回のように大きなボウゼの場合や、骨が気になるようなら頭や背びれ、胸びれなどを手で外してどうぞ。この辺は、同じ姿寿司でもメジャーな存在である鮎などと共通ですね。
▲添えられた徳島特産のスダチは、上から絞りかけるもよし、一緒に食べてもよし

もともと淡泊な味の白身魚ですが、塩で凝縮された旨みは口の中でボウゼという魚の個性をしっかりと主張。臭みなどはまったく無く、程よく引き締まった身はシャリとともに口の中にほろほろとほどけていきます。

滋味深い味わいはお酒のアテにもいいし、ご飯ものなのでこの味を噛みしめるたび、しみじみと「徳島にも秋が来たな~」と思わせてくれる料理です。

徳島でボウゼが味わえるのは、毎年9月の始め頃から年内いっぱいまで。獲ろうと思えば一年中獲れる魚なのですが、産卵に向けて栄養を蓄える秋が最も美味しいため、漁師さんがボウゼを狙って船を出すのもそのシーズンに集中しているんだそうです。
魚好きならもちろんのこと、そうでなくても秋の徳島に来たなら、この郷土料理をぜひ一度は味わってみてください。
青井 康

青井 康

地元徳島のタウン誌で勤務後に独立し、現在フリーのライター兼グラフィックデザイナー。なぜかやたらと人から道を聞かれやすい体質。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

こちらもおすすめ

もっと見る
PAGE TOP