空と海と渓谷が一望に!小豆島の寒霞渓でダイナミックな自然美を満喫

2016.10.12

日本三大渓谷美のひとつと称えられる、小豆島の「寒霞渓(かんかけい)」。昭和9(1934)年に、香川から広島にかけての瀬戸内の美観を守るため、霧島や雲仙とともに日本最初の国立公園に指定された「瀬戸内海国立公園」を代表する景勝地です。ロープウェイと登山道という2つのルートで、その自然美を心ゆくまで堪能してきました。

寒霞渓は、瀬戸内海に浮かぶ、香川県の小豆島にあります。およそ1,300万年前の火山活動によって誕生し、長い年月の間に地殻変動や浸食が進んだ結果、多種多様な奇岩や崖地から成る渓谷美が創り上げられました。

空と海と渓谷を一望にできるロープウェイ

春の山桜、夏の新緑、秋の紅葉、冬の渋い岩肌など、季節ごとに違う表情を楽しめるのも魅力。ダイナミックなパノラマビューを満喫するなら、空中から360度の眺望が見晴らせるロープウェイがおすすめです。
▲11月上旬から下旬にかけては、紅葉の見頃。ロープウェイから見下ろす景色は、華やかな絨毯のように美しい(写真提供:寒霞渓ロープウェイ)

寒霞渓には、ロープウェイのほかに、3つの登山道が整備されています。今回は、行きをロープウェイ、帰りを登山道というコースで、空中と地上の両方から楽しむことにしました。
山麓の「こううん駅」までは、車やタクシーだけでなく、草壁港から路線バスの神懸(かんかけ)線でもアクセスできます。
※バスは季節便のため運行期間が限られます。運行期間、時刻等については小豆島オリーブバスのホームページでご確認ください。
▲標高295mにある山麓の「こううん駅」。背景には荒々しい渓谷の姿が垣間見える

寒霞渓ロープウェイは、昭和38(1963)年に開通。標高612mの「山頂駅」まで、全長917m、標高差317mのルートを、約5分間かけて上ります。四方がガラス張りになったゴンドラに乗り込むと、開いた窓から気持ちいい風が入ってきます。それでは、空中散歩へ出発!
▲こううん駅の乗り場。40人乗りのゴンドラは、視界良好!ゴンドラ内にはベンチシートもある

動き出したゴンドラは、思ったよりスピードが速い!みるみるうちに上昇していき、眼下に渓谷の絶景が現れます。
まず目を見張ったのは、左手に現れる「錦屏風(きんびょうぶ)」。その名の通り、屏風を立てたような垂直の岩肌がそびえ立っています。屏風の上に、ヒヨコのような小さな岩が、ちょこんと乗っている様子がユニーク。これも自然の営みが成せる業なのです。
▲巨大な屏風の上に、小さな岩が乗っている「錦屏風」。紅葉時には、まさに錦のような光景となる

それにしても、自然が創り出した渓谷の迫力は圧巻です。小豆島の地質の大半は、下から花崗岩、火山角礫(かくれき)岩、安山岩という3層構造になっていて、真ん中の火山角礫岩層が軟らかいため、年月による風化や浸食が進むうちに、奇妙な形の岩や崖が構成されていったそうです。
▲途中で、上から降りてくるロープウェイとすれ違う。遥か上に、頂上駅が見えてきた

だいぶ上昇してきたところで後ろを振り返ってみると、息を呑む絶景が広がっていました。切り立ったワイルドな渓谷、白くたなびく雲と青い空、そして彼方には瀬戸内の島々が浮かぶ海。さすが、日本で唯一、空と海と渓谷を一度に眺望できるロープウェイ。まさに大自然の中に浮かんでいるような感覚になりました。
▲ロープウェイから空・海・渓谷を一望に見晴らす。眼下には草壁の町も見える

山頂で楽しめる小豆島グルメと大パノラマ

絶景に見とれているうちに、あっという間に山頂駅へ到着。寒霞渓の渓谷美のうち、とりわけ見事な20の景観は、表12景、裏8景と称えられ、それぞれを巡るルートが、「表登山道」「裏登山道」として整備されています。また、南北朝時代に山城があった跡に通じる「星ヶ城登山道」もありますが、今回は見どころを間近に臨める場所が多い「裏登山道」を辿って降りることにしました。
▲山頂駅構内に貼られた寒霞渓周辺マップ。ロープウェイから見えた「錦屏風」は、表12景のひとつ

とはいえ、せっかくの山頂、すぐに降りるのはもったいない!まずは展望台へ。山頂駅のすぐ奥にある「第1展望台」からは、ロープウェイの中から垣間見えた大パノラマを、心ゆくまでのんびり眺めることができます。茫洋とした風景を見ているうちに、自然と晴れやかな気持ちになってきました。
▲第1展望台からの眺め。写真でははっきりしないが、この日は遠くに四国本土と淡路島まで見渡せた

展望台のすぐ脇には、レストランや売店もあります。売店には、オリーブ商品や醤油など、小豆島の名産品がずらり。小豆島で一番高いところにあるレストラン「楓」にも、地元の素材を使ったメニューがたくさんあります。
▲明るく広々としたレストラン「楓」。曲線を描く窓が心地よい開放感

おすすめメニューのひとつが、カレーうどんならぬ「カレーそうめん(650円・税込)」。小豆島の名産品のひとつ、素麺が主役です。食べてみると、細麺なので喉ごしがすごくいい!料理長自慢の、じっくり煮込んだカレールーもコクがあり、細麺によく絡みます。
▲素麺とカレーの愛称は抜群。メニューには普通の素麺もある

売店には軽食コーナーもあり、ここでも地元ならではのメニューが楽しめます。「オリーブ牛コロッケバーガー(400円・税込)」は、香川県のブランド牛である、オリーブ牛を使ったコロッケをサンド。バンズからはみ出すほど大きなコロッケを頬張れば、牛肉とジャガイモの旨みが口いっぱいに広がります。
▲ボリュームたっぷりの「オリーブ牛コロッケバーガー」。売店横のテラスでのんびり頬張りたい

もうひとつのおすすめが、「オリーブソフト(300円・税込)」。一見ふつうのソフトクリームに見えますが、よく見ると薄いグリーンの粒々が。この粒はオリーブペーストで、ひとくち食べると、ミルクの甘味の後に、ほのかにオリーブの風味が漂います。
▲人気の「オリーブソフト」。オリーブのコクと塩気が、甘味の中で絶妙なアクセントに
山頂駅の目の前には、涼しげな緑が並ぶ店もあります。「小豆島の植木屋さん」という看板に惹かれて近づくと、オリーブの苗木などの木々のほか、たくさんの山野草が並んでいました。

聞けば、ここの女性店主はなんと3代目。お祖母さんの代から、ここで植木屋を営んでいるのだといいます。むろん、ロープウェイの開通する前。「昔は、お客さんが馬や籠に乗って上がってきたそうです。茶店もたくさんあって、頂上で一服しながら景色を楽しんでいたようですよ」
昔の風流な旅に思いを馳せつつ、改めて眺める絶景も格別です。
▲店先に並ぶ山野草の数々。軽石に植えられ、風情豊かな佇まい

この店には、寒霞渓らしい植物もあります。たとえば、秋にピンク色の花を咲かせる、多肉植物の「ミセバヤ」。寒霞渓に自生するものは、環境省による絶滅危惧種に指定されるほど稀少ですが、ここでは園芸用のものが売られています。可愛らしい丸い葉は、秋になると紅葉するそう。
▲軽石に植えられたミセバヤ(1,000円・税込)。ミセバヤという名は、「見せたい」という意味の古語が変化したもの
▲寒霞渓に自生するミセバヤの花。登山道や山頂駅周辺にも生えているが、見つけても採取は厳禁(写真提供:寒霞渓ロープウェイ)

植木屋さんと同じく、昔からここで店を構えるのが、「第2展望台」の近くにある「かわら投げ」屋さん。かわら投げとは、開運や厄除けなどの願いをかけて、「かわらけ」と呼ばれる土器を、渓谷に向かって投げるというもの。ストレス発散にもなりそうです!
▲第2展望所の脇に佇む、かわら投げの店。「かわらけ」は、一組5枚で200円(税込)
▲せんべいのように丸い形をした「かわらけ」。直径6cm弱で、思った以上に軽い

では、さっそくかわら投げにチャレンジ。第2展望台の眼下の渓谷に立っている、金属の輪を狙います。うまく輪の中をくぐったら御利益があると聞き、張り切って投げましたが難しい!手首にスナップを利かせて、フリスビーのように投げるといいらしいですが、結果は5発0中。残念でしたが、不思議とスカッとした気分になりました。
▲左手奥に見える輪を狙って、いざ投てき。この景色の中で投げるのが気持ちいい

山頂にはもうひとつ、伝説に彩られた展望台があります。表12景に向かうルート上にあるのですが、足を伸ばしてみました。第2展望台から5分くらい歩いたところにある「鷹取(たかとり)展望台」。ここからの眺めも、素晴らしいのひと言です。
▲鷹取展望台からの眺め。ここは、映画「八日目の蝉」のロケ地にもなった。左手に見える赤い屋根の周辺は第2展望台

ここは、紀元3~4世紀に在位したとされる応神天皇が、寒霞渓を訪れた際に鷹狩りをした地だという伝説が残されています。この時、岩や木に鉤(かぎ)を掛けながら登ったことから「鉤掛山」、それが転じて「神懸(かんかけ)」となり、長く「神懸山」と呼ばれていたそうです。そういえば、寒霞渓の住所も「小豆島町神懸通(かんかけどおり)」ですから、歴史が息づいているのですね。

間近に見える奇岩やお堂は大迫力!

では、そろそろ山頂駅まで戻って、裏8景を巡る帰路へ。ゴツゴツした石がラフに敷かれた裏登山道は、急勾配ということもあり、運動不足の身にはなかなかハードです。前半は緑の木々が茂る中をひたすら下るので、ちょっと不安になりましたが、要所要所に標識が立っているので、目安になります。
▲裏登山道の下りの前半は、ラフな石畳が続く。落ち葉も多く滑りやすい場所もあるので、スニーカーは必須
▲所々にこうした標識が立っているので、迷うことはない

景色が開けて海が見えてきたところで、何ともユニークな岩に遭遇。「松茸岩」の名の通り、キノコのような形をしています。上の部分の硬い安山岩は浸食されずに、下の軟らかい火山角礫岩が浸食されてこうなったのだとか。別の岩を乗せたように見えますが、れっきとしたひとつの岩なのです。
▲見晴らしのいい場所に立つ松茸岩。間近まで近づけるので、迫力が体感できる。高さ4mはありそう

しばらく下ると、またしてもすごい景観が現れました。巨大な岩が門のようにくり抜かれた「石門(せきもん)」です。ここも、柔らかな火山角礫岩の層が浸食されてできた形。自然のダイナミズムに圧倒されました。
▲周りの木が生い茂っていて分かりにくいが、侵食で真ん中がぽっかりくり抜かれている

石門をくぐって坂道を少し下ると、今度は荘厳な景観の登場です。岩場を人の手でくり抜いて作った洞窟寺院「大師洞(たいしどう)」は、その昔、弘法大師が修行をしたという言い伝えが残るところ。四国八十八ヶ所霊場は広く知られていますが、小豆島にも八十八ヶ所霊場があり、ここは第18番札所にあたります。
▲ゴツゴツした岩肌に、朱塗りの柱が映える。岸壁に鎮座する、石造りの不動明王も迫力満点

江戸末期から明治にかけて、観光地としての評判が高まっていった寒霞渓ですが、それ以前は信仰の場として長く敬われてきました。小豆島には、大師洞のほかにも、険しい岩山や洞窟に堂を構える山岳霊場がいくつも残されています。

さらに、裏登山道では様々な奇岩を臨むことができました。のぼりのような形をした「幟岳(のぼりだけ)」、山伏が吹くほら貝にたとえられた「法螺貝岩(ほらがいいわ)」など、どれも長い年月が創り出した、自然の芸術です。
▲四角い形がのぼりに見立てられた幟岳は、「天柱岳」の別名もある
▲ソフトクリームのようにも見える法螺貝岩。右下部分には洞窟もある

大師洞から先は、コンクリートのなだらかな道になるため歩きやすく、しばらく下ると登山道は終点となり、猪谷(いのたに)のバス停に到着しました。
ちなみに、裏登山道の所要時間は、案内によると1時間とのことでしたが、ゆっくり歩いたので1時間30分くらいかかりました。
ここからこううん駅の駐車場までは、上り坂に変わります。車道脇の歩道を1kmほど歩くことになり、いい運動になりました。

さすがにヘトヘトになったので、こううん駅のすぐ上手にある、表登山道入口の「紅雲亭(こううんてい)」でひと休み。ここは谷あいの清流の上に佇む東屋で、涼しい木陰が疲れた身体を癒してくれました。
▲生い茂る木々と清流が心地よい紅雲亭。下の河原は、素麺が流れているような眺めから「素麺流し」と呼ばれる

今回のルートは、なかなかハードでしたが、見応えは抜群でした。緩やかな道が続く表登山道をチョイスしたり、往復ともロープウェイを使って頂上から鷹取展望台までを歩いたりと、体力やスケジュールに応じて、自分のペースで寒霞渓めぐりを楽しんでみてください。ダイナミックな自然美は、きっと心に深く刻まれるはずです。
puffin

puffin

東京でのライター生活を経て、現在は縁あって香川県在住。四国のおおらかな魅力と豊かな食文化に触発される日々。取材で出会うモノ・コトの根幹に流れる、人々の思いを伝えたいと願っている。

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