日本三大うどんの「水沢うどん」を歴史あるパワースポット・水澤観世音の門前町で堪能する!

2016.08.20

「水澤観世音(みずさわかんのん)」は、群馬県渋川の伊香保温泉から車で約10分のところにある歴史ある寺。その門前町の名物「水沢うどん」は、讃岐、稲庭と並んで日本三大うどんのひとつとされ、その昔、「水澤観世音」の参拝客に振る舞われたのがはじまりと言われています。現在では、「水澤観世音」の眼前に13店が軒を連ね、遠方からおいしいうどんを求めてやってきたお客さんで連日大賑わい。「水澤観世音」を参拝し、元祖・水沢うどんのお店で、400年以上の伝統とこだわりが詰まったうどんをいただきました。

JR渋川駅からバスで約20分。「水沢」のバス停をおり、坂道を1分程のぼると、「水澤観世音」の参道入口が見えてきました。

「水澤観世音」は、1300年以上前の飛鳥時代に朝鮮半島から渡来した、慧灌(えかん)僧正によって開山されたといわれる寺。開山当時は、御堂が30以上、御仏は1,200体にも及んだそうですが、再三の火災で焼失してしまったんだとか。

現在の本堂や仁王門などは、おもに宝暦~天命(1751~1789年)の前後に建立されたと記録が残っています。江戸時代には徳川幕府の祈願寺として名を馳せ、本堂の屋根には葵の御紋が確認できます。
▲渋川市指定重要文化財の仁王門には仁王尊と風神・雷神が祀られている。江戸時代の天命7(1787)年に建立された

仁王門を抜け、境内につづく石階段をさらにのぼります。石段は参道の入り口から97段あり、「苦(9)をな(7)くす」という意味があるそう。

階段をのぼりきると、そこは広々とした境内。97段の石段を一気にのぼったので、運動不足の私はすこし息切れしてしまいました。
木々に囲まれた境内でひとつ深呼吸をすると、澄んだ空気が体にしみわたります。

まずは境内右手奥の鐘楼堂へ。鐘を撞くのは、参拝のご挨拶。金運アップのご利益もあるとのことで、いざ……!
ゴォ~~ン…………鐘の音が心地よくあたりに響きます。
ちなみに、お参りの最後に撞くのは、「戻り鐘」と呼ばれ、縁起が悪いそう。撞く場合は参拝のはじめに!
▲鐘楼堂。ご住職によると、いつでも、だれでも自由に撞くことができる鐘楼は珍しいそう

ご本尊は伊香保姫の伝説が残る観音様

「水澤観世音」の御本尊は、十一面千手観世音菩薩(非公開)。伊香保姫の御持仏(ごじぶつ)で、姫を救ったとされる伝説が残っています。

伊香保姫は推古天皇のころに栄達を極めた、高野辺左大将家成(こうのべさだいしょういえなり)の三女。家成の奥方が亡くなり、後妻としてやってきた継母に姫君3人は妬まれ、家成が都へ上っているうちに姉2人が殺されました。そして、伊香保姫も川に沈められそうになったところに、姫の懐から御持仏の千手観音様が現れ、姫を助けたのです。

その後、伊香保姫は都にいた慧灌僧正に頼み、御持仏を御本尊として御堂を建立したとされています。
このことから、「水澤観世音」の御本尊は、難を滅して福を呼ぶ「七難即滅七福即生」のご利益がとくに強いそうです。
▲渋川市指定重要文化財の本堂。柱に巻き付く龍の彫り物は躍動感があってかっこいい!

3回まわして運気UP!?六地蔵が安置される「六角堂」

境内の右手に位置する六角二重塔(六角堂)は、とても珍しい回転式の御堂で、群馬県の重要文化財に指定されています。

通常の回転式の御堂は、内部がお経の入った蔵になっており、それを回すことで蔵に入ったお経を読んだのと同じご利益がもらえるというもの。一方、この六角堂は、内部に地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間界、天人界を守る六地蔵が安置されています。これを回してお参りすることで、よりよい世界に生まれ変われる、「開運」のご利益があると言われています。
▲六角堂(別名「開運六地蔵尊」)の2階にはすべての仏様の頂点である大日如来が安置されている

心のなかで願いごとを唱えながら、ゆっくりと左方向に3回まわします。
六体の地蔵が安置されているとあって、ずっしりとした重み。周回を重ねるごとに、なんだかすがすがしい気持ちになってきて、パワーが湧いてきました。

「水澤観世音」の境内には、このほかにも「龍王弁財天」や「豊家一神(ほうかいちじん)」など、厄除けや一家繁栄などにご利益があるといわれるたくさんのパワースポットが。境内の澄んだ空気を吸いながら、ゆっくりとお参りしていると、心が洗われて、新たなパワーが注ぎ込まれるような気がします。
▲十二支の守り本尊。自分の干支の仏様に開運・厄除けを祈って
▲渋川市指定天然記念物の「水沢の観音杉」。推定樹齢は約700年、幹囲1.8m、樹高38mにもなる立派な杉

いざ水沢うどんの元祖・「田丸屋」へ

参拝が済んだところで、さらなるパワーを求めて「水沢うどん」“元祖”の店をめざします。
「水澤観世音」の参道からそのまま坂を下っていくと、すぐに本日の目的地「田丸屋」の看板が見えてきました。この先は「水沢うどん街道」といわれ、わずか1kmの間に、13軒もの水沢うどん専門店が集まっています。

水沢うどんが有名になったのは、約50年前。群馬と香川出身の政治家が「水沢うどんがうまいか、讃岐うどんがうまいか」という“うどん談議”を繰り広げたことを、当時の番記者に取り上げられたのがきっかけだったとか。
▲参道入口から見た「水沢うどん街道」

この日伺った「田丸屋」は、水澤観世音のもっとも近くに位置するお店。水沢うどんの元祖として知られる、天正10(1582)年創業の老舗です。
▲元祖「田丸屋」。写真左手の大きな布袋様がお出迎えしてくれる
▲店に入るとテーブル席がずらり
▲廊下を進んだ先には座敷席もある

400年以上の歴史を持つ「水沢うどん」

水沢うどんは、「やや太めでコシがあり、透き通る感じの白い麺」、「原料は小麦粉と塩と水沢の水のみ」、「冷たいざるうどんでの提供が多い」、「つゆは主にしょうゆとゴマ」などなどさまざまな特徴がありますが、どんな決まりがあるのか、改めて元祖の店である「田丸屋」で伺ってみました。

「水沢はその名のとおり、水の豊富な土地。春から夏にかけては、朝は寒く霧も出るが、昼間は暖かい。そんな水沢の風土のなかでつくるうどんを『水沢うどん』と呼んでいます。麺ひとつとっても、小麦の種類や製麺方法など、とくに決まりはないんです。だから、13軒の水沢うどん店はみんな作り方も材料も違う。それぞれの水沢うどんを提供しています」と専務取締役の田中敏彦さん。

代名詞ともいえる、三角形の笊(ざる)も「田丸屋」で水切りが良かったので使い始めたものが広まっただけなんだとか。
▲水切れの良い、独特の三角形の笊

「田丸屋」では、400年以上もの間、つねにお客さまのためにうどんをつくる、ということを信条に、その時代に合ったうどんを追求していると田中さんは言います。

「毎日決まったことをやって料理を提供しているのではなく、お客さまのために、毎日、一番おいしいものを提供するための最善を尽くしています。ひとつひとつの素材からこだわり続けている、すべてのメニューが自慢の一品。おすすめのメニューは全部です」(田中さん)
▲うどんは大きな釜にたくさんのお湯を沸かして茹でる。料理長の高橋さんはその日の気候に合わせて、うどんの太さなどを微調整し、その日のベストで提供している

しなやかでありながら強い「田丸屋」のうどん

今回いただいたのは、自慢の料理が一膳にそろった「布袋様福膳(二色つゆ)」1,700円(税別)。もりうどんと天ぷら、小鉢2品のセットです。胡麻と醤油、二種類のつゆでいただきます。
▲「布袋様福膳(二色つゆ)」。小鉢はうどんに合うメニューを日替わりで提供している。この日は「なすのオランダ煮」と「マイタケの南蛮漬け」 

うどんの麺は、しなやかさとコシの強さとの絶妙なバランス!讃岐うどんと比べるとやわらかな口当たりなのですが、噛んでいくとしっかりとしたコシがある。「讃岐うどんのしっかりとしたコシを男うどんとすると、こちらは、しなやかなんだけど芯がある女うどんというイメージ」と田中さんは話します。
▲つやのある「田丸屋」のうどん

うどんというと気軽にサッと食べるようなイメージが強いですが、「田丸屋」のうどんは「ご馳走」という言葉がぴったりな上品さ。

そもそも、群馬県は「うどんを打てないとお嫁に行けない」というほど、うどんが日常的に食べられている土地だったそう。親族での集まりでも、うどんを囲んで宴会をするほどでした。そのため、一般家庭にも「名人」と呼ばれる人がいるのが当たり前。その名人を感激させるような、特別なうどんを極めていったことが、今日の「田丸屋」のうどんを誕生させたのです。
▲たっぷりのお湯で茹でるのがポイント

「讃岐うどん、稲庭うどんとの麺の違いは、塩分濃度が高く、水分が多いところ。水分の多いやわらかい生地から鍛えていきます。熟成期間として24時間から48時間置くのも、ほかにはない特徴。この製法によって、やわらかいけれどコシの強い麺ができあがります」(田中さん)

うどんをひきたてる究極の「つゆ」

「田丸屋」を語るうえで外せないのが、「つゆ」。
醤油つゆは、昆布とかつおの本枯れ節でだしをとったシンプルな味。熟成した本枯れ節ならではのかつおの酸味は、ふだん使っているかつおだしとは一味も二味も違った深みがあり、かつおをそのまま食べているような気にすらさせます。
▲昆布とかつおの本枯れ節

胡麻つゆは、丁寧に炒った最高級の金胡麻をすり、にんじん・たまねぎ・しょうがを絞って醤油つゆと合わせたもの。「うどんに胡麻つゆ?」と思っている方も、まずは食べてみて。新感覚の味にいい意味で裏切られます。胡麻の香ばしさと野菜の甘みが複雑に組み合わさったつゆは、一度食べるとやみつきになってしまう人も多く、「販売していないんですか?」と聞かれることも多々あるそうです。
▲厳選された金胡麻を炒ったものを丁寧にする

つゆの味を楽しむためにも、薬味は調整程度に少しずつ、の心がまえで。田中さんおすすめの薬味はしょうが。すこしだけ加えると、醤油つゆはきりっと、胡麻つゆはさらに深みが加わります。
▲胡麻つゆと醤油つゆを食べ比べられる「二色つゆ」がおすすめ

オリーブオイルと塩でいただく全粒粉のうどん

群馬の一般家庭ではうどんを日常的に食べる文化があった、という話をしましたが、それは群馬県が小麦の生産に適した土地だというのが理由の一端。水沢も小麦の産地でした。数十年前までは、農家の縁側で自家製の小麦を石臼で製粉し、ふるまっていたこともあったそう。
▲古伝・喜利麦1,000円(税別)。温かい釜揚げスタイルでの提供

そんな昔ながらのうどんの原点に立ち返り、新鮮な自家製粉のうどんを食べてもらおうという思いで作られたのが「喜利麦(きりむぎ)」です。毎日、石臼でじっくり挽かれた自家製粉の全粒粉を使った麺は蕎麦のような色で、群馬の郷土料理「おっきりこみ」を思わせる太さ。一目見ると「これがうどん?」とびっくりしてしまいます。
▲太く、ずっしり重みのある麺

「喜利麦」には、さまざまな小麦を食べ比べたなかから、長野県産「ユメセイキ」という小麦を使用しています。小麦そのものの味を楽しむために、つゆではなくオリーブオイルと塩のみで食べるのだとか。どんな味なのか想像がつきません。
▲オリーブオイルと塩でいただく。どちらかだけをつけても、合わせてつけても◎

器に麺を取り分けて、まずはオリーブオイルを麺全体に絡む程度に垂らしていただきます。口に含むと、オリーブオイルと香ばしい小麦の香りがふわっと広がります。

次は、塩をひとつまみ。塩はその日の麺にあわせて、全国各地の塩のなかから料理長が決めています。この日は沖縄産。ほどよい塩味は小麦の味を邪魔せず、引き立ててくれます。

最後に、オリーブオイルと塩の両方をあわせて。オリーブオイルと塩が互いに引き立て合い、さらにぜいたくなお味。噛めば噛むほど小麦の風味が広がり、目を閉じて、いつまでもじっくり噛みしめていたくなってしまいます。

あたたかいうどんやサイドメニューも要チェック

「田丸屋」は、冷たいうどんだけでなく、あたたかい「かけうどん」も絶品です。かけつゆは、めじまぐろ節と白醤油を使っていて、余計なものが一切なく、体にすーっとしみわたっていくような優しい味。本物の「だし」を追求した結果、行きついたのだそう。いつまでも飲んでいたくなってしまいます。

サイドメニューの「桜えびの天ぷら」や「ばら干し焼き海苔」もうどんと一緒にいただくと、お互いを引き立て合い、味わいがさらに深まります。
▲桜えびの天ぷら1,200円(税別)。静岡県駿河湾で獲れた産地直送の桜えびを使ったさっくさくの天ぷらは、そのまま食べるのはもちろんかけうどんにもぴったり

道路を挟んだ向かいには売店もあります。生うどんと半生うどん(醤油つゆ付、4人前1,200円・税別)が販売されていて、お土産にぴったりです。
▲駐車場に隣接している売店

「田丸屋」は、休日のお昼時にはとくに混雑しますが、席数が多いため、思いのほかすんなり案内してもらえます。並んでいるからとあきらめる前に、一度待ち時間を確認してみてください。

由緒ある観音様を参拝し、おいしいうどんを食べたら、近くの伊香保温泉にも寄ってみて。目一杯パワーチャージできること間違いなしです。
和田めぐみ

和田めぐみ

編集者、ライター。出版・編集プロダクションデコ所属。医療・健康フリーマガジン『からころ』や、その他小冊子、ウェブ媒体の編集・執筆などを手がける。編集を担当した本に『I Love クラシックカメラ』『リンゴをほめるだけでアイデアが豊かになる本』(ともに技術評論社)、『はじめてのレコード』(DUBOOKS)などがある。

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