圧倒的スケールの壺畑と桜島の絶景を眺めながら、「坂元醸造」の黒酢料理を楽しむ
一面に広がる壺、壺、壺。「壺畑(つぼばたけ)」と呼ばれるこの敷地では、美容や健康の面でも注目を集める黒酢が醸造されています。今回は、今でも伝統的な壺づくり製法で黒酢を製造する「坂元醸造」を訪れました。

江戸時代から続く、黒酢の歴史
福山町で黒酢の生産が始まったのは1800年頃(江戸時代後期)のこと。とはいえ、当時はまだ「黒酢」という呼び名はなく、「壺づくり米酢」と分類されていたそうです。福山町は三方を丘に囲まれ、一方が南向きで海に面していて、冬は暖かく、夏は海からの風で比較的涼しいため、「発酵」に最適な土地と言えます。
三方を囲む丘の中腹から良質な水が豊富に湧き出ていることや、大隅半島から藩へ上納される米がこの地に集積されていたため、原料となる米が豊富にあったこと、さらに、壺づくりに欠かせない「薩摩焼」の壺が入手しやすかったことも、この地で黒酢の生産が盛んになった理由の一つです。
現在、「薩摩焼」の壺は生産が難しいため、坂元醸造では、これまで大切に受け継いできた「薩摩焼」の壺に加え、特注の「信楽焼」の壺を使用しているそうです。

こうして福山町では、長きにわたり、壺づくり製法による米酢づくりが行われていましたが、太平洋戦争前後の原料不足や合成酢の台頭により、戦前にあった24軒の醸造所のほとんどが廃業してしまいました。そんな中、原料の米をサツマイモで代用してこの伝統的な製法を守り続けたのが、坂元醸造の現会長・坂元昭夫氏の父、坂元海蔵(かいぞう)氏なのだそう。
その製法を坂元昭夫氏が継承し、昭和50(1975)年に“壺づくりの米酢”のことを「黒酢」と名づけました。昭夫氏は「黒酢」を商標登録しなかったこともあり、昨今の健康ブームによってその名は全国に知られることになったのです。

黒酢の管理は職人の経験がものを言う
彼らは、壺を敷き詰めた敷地のことを「壺畑」、管理のことを「子育て」、発酵・熟成中の壺の蓋を開けたときの黒酢の液面のことを「顔色」、出来上がった黒酢を壺から出すことを「収穫」と表現します。発酵食品である黒酢はまさに生き物。職人の黒酢への深い愛情が伝わってきますね。

黒酢を仕込むのは毎年、春と秋の2シーズン。下から米麹、蒸し米、地下水、米麹(振り麹)の順番で壺に注ぎ、発酵させた後、熟成させてつくります。使用する壺は3斗(54L)分の容量が入るサイズですが、発酵しやすいように表面積が最も広い胴の部分、つまり7分目までしか原料を入れないのだそう。

水面の振り麹が下に沈むと発酵が終わった合図。ここから熟成に入ります。職人は毎日「撹拌棒(かくはんぼう)」と呼ばれる先が分かれた竹の棒を壺に入れて、透明度や色、匂い、「顔色」などを確認しながら「収穫」に最適な時期が来るまで撹拌作業を行うのです。
坂元醸造では仕込みから「収穫」まで1年半以上もの時間をかけ、「坂元のくろず」をつくります。
「屋外でつくられる壺づくり黒酢は、壺ごとに発酵や熟成の進み方が違います。だから同じ日に仕込んだからといって『収穫日』も同じとは限りません。品質を安定させるためには、『収穫』の時期を正確に判断することが職人にとって最も大切なんです」と藏元さん。

工場で大量生産できる時代に、伝統的な壺づくり製法にこだわるのは、伝統を守って“本物の味”を伝えたいという思いがあるから。
「現在、JAS法で定められている『米黒酢』は、原料や色、成分量の観点のみで定義されていて、製法までは明記されていません。でも、黒酢特有の美しい琥珀色や深い味わいは、通気性の良い壺の中でじっくりと時間をかけて醸造しないと生み出せないんです」と藏元さんは言います。

坂元醸造には最長で3年熟成させた黒酢商品があります。熟成期間が長くなるにつれて、琥珀色は一層深みを増し、味わいも深くまろやかになっていきます。それもこれも、職人が愛情を持って日々、黒酢を「育て続けた」証なのです。

絶景を眺めながらいただく絶品黒酢料理

まずご紹介するのは「彩りランチ」。「エビの黒酢入りチリソース」など7種類のメイン料理(季節により変更あり)の中から好きなものを選ぶことができ、他に食前酢、前菜盛り合わせ、点心3種盛り合わせ、サラダ、ご飯、スープ、ザーサイ、さらにドリンク付きと食べごたえ満点の内容です。今回は一番人気の「くろず酢豚」をチョイスしました。
レストランではほとんどのメニューに黒酢を使用しているそうですが、どれもこれも不思議と酸味が前面に出ることはなく、むしろ深いコクと爽やかな酸味が食欲を刺激します。これが壺づくり製法の黒酢の魅力なのでしょう。

辛いもの好きな方におすすめなのは、「特製酸辣湯麺(サンラータンメン)」。酸辣湯麺の魅力といえば、いわゆる「酸っぱ辛い味わい」に尽きますが、こちらは黒酢特有のマイルドで角がない酸味に黒胡椒とラー油がピリっと効いていて、箸がどんどん進みます。
一般的に黒酢は1日に30ml摂取することを推奨されていますが、この酸辣湯麺には何と100ml以上の黒酢を使っているそうです。そんなにたくさん入っているとは思えないほどの食べやすさです。

くろずレストラン「壺畑」
鹿児島県霧島市福山町福山3075
[営業時間]10:00~17:00(L.O.16:00)※10:00~11:00はデザート・ドリンクタイム
[定休日]なし
0995-54-7700
試飲も楽しめる物販コーナーも併設
りんご黒酢と水を1対4で割ったものと、坂元醸造おすすめのりんご黒酢と牛乳を1対4で割ったものを試飲させていただきました。牛乳割りには少し抵抗があったものの、実際に飲んでみると、「飲むヨーグルト」のような味わいでビックリ。これなら子どもでも気軽に黒酢を飲むことができます。

さらに、物販コーナーの一角では「くろずソフトクリーム」も販売しています。こちらもヨーグルトのような味わいで、さっぱりといただけます。黒酢の配合率を決めるのに試行錯誤を繰り返したという逸品は、ランチ後のデザートに最適ですよ。

物販コーナーには、坂元醸造の全商品がラインナップされています。大量生産が難しい坂元醸造の黒酢商品がすべてそろうのは、ここと鹿児島市内にあるアンテナショップのみ。時間をかけてじっくり選んでみてください。

くろず情報館「壺畑」
鹿児島県霧島市福山町福山3075
[営業時間]9:00~17:00
[定休日]なし
[入場料]無料(団体は要予約)
0120-707-380
鹿児島中央駅近くにあるアンテナショップ

お店のオープンに先駆けて、新ブランド「Kurozu Farm」を立ち上げ、カフェでは主にこのブランドの商品を使ったメニューを提供しています。黒酢ドリンクのほか、スムージーやパフェなど常時30種類ほどのメニューが揃い、広々とした店内でゆっくりと楽しむことができます。

特に人気なのは「黒酢スムージー」。定番人気のパイナップル&小松菜フレーバーは、甘酸っぱい風味が口いっぱいに広がり、旅の疲れを癒やしてくれそう。スイーツを楽しみたいなら、「くろみつサンデー」がおすすめです。こっくりとした黒蜜ときなこの風味に黒酢のほのかな酸味が効いて、さっぱりといただけますよ。
メニューによって黒酢の配合率が違うので、酸味が苦手な人はマイルドなものをスタッフに聞いてみてくださいね。

物販スペースには、「Kurozu Farm」の商品がずらり。整然としたディスプレイが美しく、時間をかけてじっくりと選びたくなります。


ほかにも黒酢ピクルスや黒酢香辛料など、珍しい商品も多数揃っています。「Kurozu Farm」の商品は、食酢としての枠を超えた新しい黒酢の楽しみ方を提案してくれるものばかり。保存料や着色料も使用していないので、子どもからお年寄りまで安心して口に入れることができます。
壺づくり製法で職人が大切に「育てた」黒酢は、様々な商品に姿を変え、毎日の食卓においしさと笑顔を届けてくれます。「健康に良いから」という理由だけで黒酢を取り入れる時代はもう終わったのかもしれません。皆さんも、おしゃれでおいしい黒酢ライフを始めてみませんか。
Kurozu Farm CAFE&MARKET
鹿児島県鹿児島市上之園町21-15
[営業時間]10:00~19:00
[定休日]なし ※正月は除く
099-204-9511
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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