江戸東京博物館で江戸の歴史と現代の東京を探検する
江戸東京博物館は1993年に開館して以来、江戸時代から現代にいたる約400年の歴史を一度に見られる博物館として人気を集めている。2015年3月には大幅なリニューアルを果たし、常設展に新しい展示物が加わった。1階で開催される特別展(年5、6回開催)もおもしろいが、今回は5階と6階でいつでも見ることができる常設展に的をしぼって、その魅力に迫る。

6階の常設展入口を入ると、まず「江戸ゾーン」がスタートする。最初に現れるのが江戸時代後期の姿に復元された日本橋だ。長さは当時の2分の1だが、幅は当時と同じというこの橋を渡って江戸の世界に入っていく。なんとも粋な趣向である。


橋を渡ると1630年代(江戸前期)の日本橋界隈の町並みのジオラマが目に入る。1630年代というと徳川家康が江戸幕府を開いてからわずか30年ほどだが、すでにかなり賑やかな町だったことがわかる。精巧な人形模型たちがいきいきと町を歩いているのが楽しい。

江戸城に“城”はなかった!?
御殿はきれいに色が塗られているのに対して、天守閣は簡素な白木のままなのが気になるが、これにはわけがある。なんと明暦3(1657)年以降、江戸城には天守閣がなかったのである。

明暦3(1657)年に起きた「明暦の大火」は、江戸市中を焼き尽くし、一説には死者10万人とも言われるが、そのときに天守閣も焼失した。「天守閣の再建よりも町の復興にお金をかけるべき」「平和な時代になったのだから威圧的な建物は不要」という判断から、幕府はその後の200年の間、ついぞ天守閣を建てることはなかった。
というわけでジオラマの天守閣は、残されていた設計図(1700年代前半に再建計画はあり、そのときのもの)から復元した幻の天守閣なのである。
この江戸城のジオラマのまわりには、ディスプレイがついていて「大名の登城ルート」などを映像で見ることができておもしろい。

肥桶をかつぐという稀有な体験


江戸時代はリサイクル社会だったことはよく知られているが、便所の大便も近隣の農家が回収にきて肥料として畑に撒いていた。と思って見渡してみると、ありました、肥桶(こえおけ)が!
リニューアルによって体験展示が増えているが、この肥桶も担ぐことができる。さっそく担いでみたが、26kgの重さに膝がふらつき、天秤棒が当たる肩が痛い。現代人がこれを運んだら、必ずひっくり返して大惨事が起こるだろう。


江戸の娯楽といえば歌舞伎であり、この5階にも歌舞伎関連の展示が充実している。日本橋から見えた芝居小屋・中村座の正面部分が原寸大で復元されているほか、芝居小屋の内部構造がわかるミニチュア模型、「東海道四谷怪談」の仕掛けを再現した模型などが目を楽しませてくれる。



歌舞伎のコーナーを過ぎて日本橋の下をくぐると、時代が進んで明治維新後の「東京ゾーン」となる。
まず目を引くのがガラス張りの床下に設置された「鹿鳴館」の模型である。明治政府の欧化政策の象徴である「鹿鳴館」では、外国人を招いた舞踏会が頻繁に開かれていたが、この模型も天井がスライドして、音楽とともに人形模型が優雅に踊り出す。


「東京ゾーン」はその後、大正時代の浅草の賑わいや関東大震災、昭和前期のモダンな暮らし、東京大空襲についての展示が続き、昭和39(1964)年の東京オリンピックに関する資料が陳列される。リニューアル前はここで終わっていたそうだが、リニューアル後は「現代の東京」というコーナーが追加された。ゴテゴテしたパーツがついていた子供用のスポーツ自転車などが展示され、「ああ、あったねぇ」などとつぶやくお父さんが熱心に資料をのぞき込み、思いのほか人気コーナーとなっている。2020年の東京オリンピックが終われば、また新たな「現代」が追加されるにちがいない。



常設展の展示はこの「現代の東京」コーナーをもって終了である。
帰りはレストランやミュージアムショップへ
しっかりとした料理だけでなく、飲み物や甘味も充実している。大きな窓からは両国国技館の屋根や遠く新宿副都心の高層ビル群が眺められて、現代の東京に思いを馳せることができる。



【閉店】和食処 桜茶寮
東京都墨田区横網1-4-1 江戸東京博物館7階
[営業時間]11:00~18:00(土曜は~20:00)
[定休日]江戸東京博物館の休館日に準ずる
03-5611-5550


江戸東京博物館の常設展は、けっこう数が多いので、ひとつひとつの展示をじっくり見ていくと、丸一日はかかるだろう。「江戸ゾーン」をゆっくり見すぎると、「東京ゾーン」を見る時間がない……なんてこともありうる。5階から6階に戻ることもできるので、ひととおり全部見てから、気になる展示に戻ってじっくり見るというのもおすすめだ。
ちなみに午前中よりは午後3時以降の遅い時間のほうが比較的すいていることが多いそうだ。
江戸東京博物館
東京都墨田区横網1-4-1
[開館時間]9:30~17:30(土曜は~19:30。入館は閉館の30分前まで)
[休館日]月曜(月曜が祝日または振替休日の場合は開館、その翌日休館)、年末年始
[常設展観覧料]一般600円、大学生・専門学校生480円、中学生・高校生300円(すべて税込)※小学生以下および都内在住・在学の中学生は無料
03-3626-9974

大塚真
編集者・ライター。出版社兼編集プロダクションの株式会社デコに所属。近年編集した本は、服部文祥著『アーバンサバイバル入門』、『加藤嶺夫写真全集 昭和の東京』シリーズの「4江東区」「5中央区」(ともにデコ)ほか。ライターとしては『BE-PAL』(小学館)などで執筆。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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