甦る国宝!日本三景・松島の古刹、瑞巌寺へ

2016.10.09 更新

宮城県の景勝地である松島は、松尾芭蕉も息をのむほどの美しさもさることながら、霊場としての厳かさも感じられる場所です。今回は、「霊場・松島」の中核となる瑞巌寺(ずいがんじ)へ。2016年4月に拝観が再開した本堂を中心に、瑞巌寺の僧侶・千葉洋一さんに案内していただきました。

1000年以上の歴史を紡ぐ、荘厳な瑞巌寺へ

瑞巌寺は、JR松島海岸駅から歩いて10分ほど。松島湾の程近くにあり、松島観光では絶対にはずせないスポットです。
▲本堂と庫裡(くり)が国宝に指定されている瑞巌寺
本堂へ行く前に、千葉さんが案内してくださったのが「法身窟(ほっしんくつ)」。こちらは瑞巌寺の変遷を語る上で、重要な場所なのだそう。
▲今回、瑞巌寺を案内してくださった千葉洋一さん
瑞巌寺の正式名称は「松島青龍山瑞巌円福禅寺」で、天長5(828)年に慈覚大師円仁が開創した天台宗の延福寺が前身だと伝わっています。
鎌倉時代中期には、鎌倉幕府5代執権の北条時頼の命令で臨済宗円福寺と改称。法身窟は、北条時頼と開祖・法身禅師が出会ったといわれる場所です。ここから瑞巌寺の前身・円福寺が始まりました。
▲たくさんの供養塔が納められている岩窟「法身窟」
鎌倉・室町時代に発展した円福寺でしたが、戦国時代には衰退の一途をたどることに。その窮地を救ったのが伊達政宗でした。この地を治めていた政宗は、寺社仏閣の造営にも積極的に取り組み、円福寺の再興にも尽力。慶長13(1608)年、寺名を瑞巌寺と改めました。
▲鎌倉~江戸時代に納骨や供養のために掘られた洞窟群も霊場・松島を物語る貴重な遺構
瑞巌寺は2008年11月~2018年3月頃まで「平成の大修理」が行われていますが、修理の際に見つかった遺構から、現在の本堂の場所に円福寺があったことが確認されました。

これまでに多くの修行僧が訪れ、信仰を集めてきた松島、そして瑞巌寺。
「修行僧だけでなく、この地に自分の大切な人をおまつりしたい、という思いをもった多くの方々が、松島まで足を運んだ歴史があります。東日本大震災で比較的被害が少なかったのは、不思議な力で守られていたからではないかと思うんです」と千葉さんは話します。

数々の歴史がこの荘厳な雰囲気を醸しているのだと実感しながら、向かうはいざ、国宝の本堂へ。

生まれ変わった国宝・本堂

2009年9月から続いた約7年間の工事を終えて、拝観を再開した本堂。
今回の「平成の大修理」は地盤沈下による建物のゆがみなどを直すことが目的で、瓦や壁、建具の解体・修復、さらに耐震補強工事なども行われる大がかりなものでした。
▲伊達政宗が慶長9(1604)年から約5年かけて造営し、完成した本堂
大屋根の瓦は5万枚以上あるうちの約3万枚を新たに葺き替えたそう。そして、新たな鬼瓦も加わりました。
▲鬼瓦は創建当時のものを再現して作成されています
▲創建当時の鬼瓦を再現して作成されました
「当時、瓦屋根の本堂は大変珍しいものでした。政宗はどうしても瓦屋根にしたい、と言っていたそうです」と千葉さん。屋根にまで政宗のこだわりがあったと知り、驚きです。

政宗の思いがつまった、安土桃山文化を伝える美術・建築

本堂に入ると、すぐに現れるのが「室中孔雀の間」。仏間には本尊・聖観世音菩薩立像、政宗の位牌、政宗の子・忠宗の位牌が安置されています。
▲法要などが営まれる「室中孔雀の間」は本堂の中心となる部屋
注目すべき点が、襖絵と天井。「室中孔雀の間」の襖絵には孔雀が描かれており、極楽浄土を表したものといわれています。そして天井は格子模様で、中央に牡丹や菊の彫刻が施されるなど、意匠を凝らした造りです。
「本堂には10の部屋がありますが、部屋によって襖絵と天井の造りが違います。襖絵に込められた意味や願いもそれぞれ異なるんです」とのこと。
▲現在の襖絵は復元されたもの。オリジナルは瑞巌寺の宝物館に収蔵されています
「室中孔雀の間」の左隣には、伊達家一門(親戚)用の「文王の間」、その奥には藩主用の「上段の間」、さらに奥には皇族用の「上々段の間」があり、たしかに趣が異なります。
▲「文王の間」の襖絵には中国の周の文王と太公望呂尚(たいこうぼうりょしょう※紀元前11世紀ごろに活躍した軍師)の出会いなどが描かれています
▲厚さ9cmもの手縫いの畳が敷かれている「上々段の間」。襖絵には紅白椿などが描かれています
瑞巌寺は、紀州熊野から取り寄せた木材を使い、京都から宮大工を呼び寄せて造られたもの。政宗は宮大工に対して、土足を禁じ、誤って落とした釘などは使ってはいけないと命じたそうです。「伊達家代々の菩提寺を造りたいという、政宗の意気込みが感じられますよね」と千葉さん。
▲一流の宮大工が手がけた建物は質素ながら造りは豪華
▲修復されることなく、当時のまま残る貴重な彫刻も必見!

大修理が行われましたが、創建当時の建材や彫刻は至る所に残っています。政宗の時代から受け継がれる桃山建築は、見ごたえ十分。時間をかけて、じっくり見学しましょう。

瑞巌寺境内の拝観所要時間は40分程度。本堂のほか、国宝の庫裡、約3万点の絵画や書、資料などを展示する宝物館などもおすすめ。
▲寺の台所である「庫裡」にも彫刻が施されており、政宗の美意識の高さをうかがい知れます
▲宝物館の入口に展示されている創建期の鬼瓦。その大きさにびっくり!
▲旅の記念には身代り健康御守、臥龍梅幸運守(各500円)、御朱印帳(1,200円)を
「平成の大修理」を経て、さらに新たな魅力を再発見できる瑞巌寺。今こそ出かけてみませんか。
加藤亜佳峰

加藤亜佳峰

編集者・記者。編集プロダクションMOVE所属。仙台を拠点に、企画・編集・取材・執筆を担当。旅行誌を中心に、情報誌やムック、書籍、パンフレットなど幅広いジャンルの印刷・出版物を手がける。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
PAGE TOP