現代に蘇った江戸の味。東京名物「深川めし」を食べ比べ

2016.10.12

江戸時代から深川漁師の船上料理として親しまれてきた「深川めし」。ふつう深川飯と聞くと、あさりをネギなどと一緒に炊きこんだものを思い浮かべますが、その他にもいろいろな種類があるのだとか。それぞれのお味を食べ比べるべく、深川めし誕生の地である東京は深川を訪ねました。

どこか懐かしい、下町情緒ただよう町並み

「富岡八幡宮」の門前町として、江戸時代より栄える深川。東京メトロ東西線「門前仲町駅」を出るとそこには下町情緒あふれる商店街が。今は、たくさんのお店やビルが立ち並ぶエリアですが、昔は干潟が広がっており、漁業が盛んな街だったのだそうです。

深川めしは、江戸時代にそんな深川の漁師たちが、船上で簡単に食べられる料理として広まりました。その後埋め立てがはじまり、現在の姿になったのだと考えると、何だか感慨深いですね。
駅から2、3分程歩くと深川の名所のひとつ、富岡八幡宮に着きます。寛永4(1627)年に創建されて以来「江戸最大の八幡様」として広く庶民に親しまれてきた富岡八幡宮。江戸の三大祭りとして数えられる「深川八幡祭り」や毎月1日、15日、28日に開かれる縁日は大変な賑わいになります。

元来の味を再現。こだわりの食材で作る深川めし

富岡八幡宮の正面鳥居をくぐってすぐ左側、日本地図の始祖であり、この神社ともゆかりがある「伊能忠敬」像の横に「深川宿 富岡八幡店」はあります。歴史を感じさせる看板に、涼しげな藍色の暖簾……。江戸情緒が感じられる店構えですね。
▲参道の深い緑にいだかれた入り口。深川宿は2016年で創業28年を迎える

店内は、木のぬくもりが温かい和風のつくり。席は、テーブル席かお座敷席を選ぶことができます。
深川めしができるまでのあいだ、特別に調理場をみせてもらうことに。「深川宿 富岡八幡店」では、その日の朝に築地から仕入れた国産のあさりを使用しているとのこと。見てください。このぷりっぷりのあさりの身!
▲その日の朝仕入れたあさりをたっぷりと使用

こちらでは、炊き込みタイプの他にぶっかけタイプの深川めしがいただけます。写真は、ぶっかけタイプの深川めしを作っているところ。

まずは、あさりを味噌汁に加え、ひと煮立ちさせます。
次に、あさり入りの味噌汁をご飯にかけます。うーん、いい匂い。
なんとも美味しそうですね。これは、期待が高まります。

どちらが好み?ぶっかけ、炊き込み2つの味を食べ比べ

いただいたのは、ぶっかけと炊き込みの両タイプの深川めしを食べ比べできる「辰巳(たつみ)好み(2,150円・税込)」。
ちなみに「辰巳」とは、南東の方角を表す語。つまり、江戸の南東にあった深川のことを指します。この「辰巳好み」はそんな深川の芸者たちが好んで食べたであろう深川めしを再現したものなのです。

まずは、ご飯にあさり入り味噌汁をかけた、ぶっかけタイプをひとくち。濃厚で滋味豊かな味わいが広がります。アツアツでコクと甘みのある味噌汁は、ごはんと相性抜群。肉厚なあさりのエキスがジュワっと広がって、これはやみつきになりそう……。磯の香りを感じる海苔や、シャキシャキとした歯ごたえが特徴的な白髪ネギが深川めしの美味しさをさらに引き立てます。
▲赤味噌と白味噌を絶妙なバランスで調合した「ぶっかけ」タイプの深川めし
続いて、あさりをネギなどと一緒に炊きこんだ、炊き込みタイプをいただきます。濃厚なぶっかけタイプに比べるとこちらは、さっぱりとした上品な味わい。ほんのりとした醤油の香りが、あさりのやさしい味わいを引き立てています。ぶっかけタイプも炊き込みタイプもどちらも甲乙つけがたい美味しさです。
なんでも深川めしは元々、深川の漁師たちが漁の合間に手早く食べられる料理としてうまれたもの。漁で穫れた新鮮なあさりやアオヤギなどを味噌汁と一緒に煮込み、ごはんにかけて食べていたのがぶっかけタイプの起源です。それにヒントを得て、木場などで働く職人が弁当用にアレンジしたのが、炊き込みタイプの始まりだと言われています。

深川の埋め立てが進むにつれ漁ができなくなり、衰退していった深川めし。「深川宿 富岡八幡店」では、そんな古くからある味を再現すべく、地元の漁師に調理法など確認してもらいながら、元来の深川めしの研究に励んだそうです。この美味しさは、お店の方のたゆまぬ努力の結晶だと思うと、より味わいに深みが感じられました。

新しい深川めしの定番!?「深川あさり蒸籠蒸し」に舌鼓

伝統的な深川めしを堪能したあとは、蒸籠(せいろ)蒸しの深川飯と魚介の炭火炉ばた焼きで有名な「門前茶屋」へ。和風の建物が下町情緒漂う深川の街と見事にマッチしています。
▲創業約40年になる「門前茶屋」の入り口
扉を開けると「いらっしゃい!」という威勢の良い声とともにスタッフの花岡さんが出迎えてくれました。

店内には大きな丸炉や角炉があります。また、奥の棚には厳選された日本酒がズラリ。夜にもぜひ訪れて炉端焼きも楽しみたいところです。
▲使い込まれたテーブルがいい味を出している「門前茶屋」の店内

さて、気になる蒸籠蒸しの深川めしとはどのように作られているのでしょうか?厨房をのぞかせていただくと、そこにはなんと、蒸籠が並んだ大きな鉄の台が……!いったいこれは何なのでしょうか?

聞いてみるとこれは、蒸籠を蒸すために使う高温高圧の蒸し器とのこと。この機械を使い蓋をした密封状態のまま一気に深川めしを蒸し上げることで、あさりが硬くならず芳醇な味わいが増すのだそうです。美味しいと評判の深川飯の背景には、こんな工夫があったのですね!
▲注文を受けてから一つ一つ丁寧に蒸し上げる

さて、蒸しあがった深川めしをさっそくいただきます。こちらが人気メニュー「深川あさり蒸籠飯(1,180円・税込)」です。
▲青のりの緑色が美しい「深川あさり蒸籠飯(1,180円・税込)」

ふわっと漂ってくる青のりの香りが、食欲を刺激します。青のりの下には、あさりがたっぷり。一口食べると、やわらかく蒸し上げられたあさりと、出汁がよくきいたごはんの味わいが口の中に広がります。
この繊細な味わいの秘密は、伝統的な日本料理の「炊き合せ」という手法。炊き合せとは、それぞれの食材の持ち味をいかすため、別々に煮たものをひとつの器に盛り合わせることを指します。

この店では、炊き合せの手法にヒントを得て、あさり、葱、油揚げと、ごはんを別の工程で調理。お互いがよりおいしく仕上がったものを、蒸籠の中で合わせます。
あさり、葱、油揚げはすでに熟成させているので、旨みもたっぷり。それらが最後の工程で蒸される際、ご飯に広がり、一体感も生まれるのです。

このこだわりがあるからこそ、多くの人がこちらの深川めしを求めて暖簾をくぐるのでしょう。
▲ふっくらしたあさりがやさしい味わいの「門前茶屋」の深川めし

「より美味しい深川めしをお客さんに味わって欲しいということから、この蒸籠蒸しの深川めしがうまれました」と、花岡さん。この言葉には、伝統や地元の味を大切にしつつも、より高みを目指そうという料理人の探究心が感じられました。
「ぶっかけ」、「炊き込み」、「蒸籠蒸し」……。同じ深川めしなのに手法の違いでこんなにも多彩で美味しいものになるのですね。お店の方々の熱い想いが感じられる料理でした。深川に来た際は、ぜひ深川めしを食べてみてください。
立岡美佐子

立岡美佐子

編集プロダクション・エフェクト所属の編集者&ライター。好きなものは、旅行とごはん。おいしいものやステキな景色のためならば、日本といわず世界各国どこへでも! 住まい、旅、食、街などジャンルを問わず執筆中です。 編集:山葉のぶゆき(エフェクト)

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