大分県立美術館・OPAM。出会いと五感のミュージアムは必見のスポット

2015.06.17

2015年春、待ちに待った大分県立美術館 OPAM(オーパム)が誕生!大分の街は高揚した雰囲気に包まれていました。それもそのはず、西武美術館・セゾン美術館やフリーランスの学芸員として注目される新見隆(にいみりゅう)氏を館長に迎え、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞などの受賞歴を誇る坂 茂(ばん しげる)氏が建物を設計。日本のデザイン界をリードするCDL(コミュニケーションデザイン研究所)の平野敬子氏、工藤青石(あおし)氏がシンボルマークを担当するという錚々たる顔ぶれに、「大分県にできる美術館がすごいらしい」と話題だったのです。今、国内で最も熱い視線を注がれているミュージアムを訪ねました。

美術館は心の遊び場! 人々が自由に回遊する場所

“街に開かれた縁側としての美術館”をコンセプトに建築された外観は、大分県の竹工芸をイメージさせる斬新なデザインが人目を引きます。メイン通りに面した南側の壁面部分は、開閉できるガラス水平折戸になっていて、開かれるとまるで縁側のように開放的な空間に様変わりします。一般的に美術館という場所は、中で何が行われているのかがわかりにくいブラックボックスのようなもの。でも、本当はもっと多くの人が楽しめる場所であるはず――という坂氏の思いから、展覧会に興味がない人でも日常的に利用できるスペースが多いのもこの建物の特徴です。
エントランスを抜けると、巨大なタマゴ型をした作品が突如現れます。しかも、ゆらゆら揺れているではありませんか。こちらは、アムステルダムを拠点に世界的に活躍するデザイナー、マルセル・ワンダースの「ユーラシアン・ガーデン・スピリット」です。
続いて、アトリウムを奥に進むと飛び込んでくるのは、またもや天井から吊り下げられた巨大なオブジェです。「ユーラシアの庭『水分峠の水草』」と題された作品は、日本を代表するテキスタイルデザイナーとして数多くの作品を発信してきた須藤玲子の作品です。その奥には、「世界は届けい・セカイハトドケイ 大分の中心で家内安全を叫ぶ」、「水府、覆水難収・フクスイオサメガタシ」、「もどる場所があるということ」、「おかえりなさい。」の4つの作品から構成されたミヤケマイによる「大分観光壁」があります。
館長の新見氏がめざしたのは、世界の美術と大分の文化がぶつかり合う、大分にしかない美術館をつくることです。「豊後南画(ぶんごなんが)」で知られる田能村竹田(たのむらちくでん)や、日本画をモダンに描いた福田平八郎、高山辰雄をはじめ、美術館が所蔵する作品は約5,000点。大分が誇る作家や伝統文化を紹介しながら、グローバルでローカル、伝統的でモダン、コンテンポラリーな出会いの場にしたいという思惑が随所に感じられるコレクション展は、その型にはまらない展示方法も見どころのひとつです。目線の高さを一定にしないことで、観る人が能動的に面白いものを探すような仕掛けがされていたり、大分出身の作家と世界の巨匠の作品が出会ったり。
たとえば、高山辰雄の日本画が展示されている部屋の中央に、ライト・アートで評価を得た吉村益信の作品、「HOW TO FLY1」がピカピカと点灯しているなど、これまでに出会ったことのない不思議な感覚を覚えます(写真のコレクション展は、2015年6月2日まで。年5回の展示替えが行われます)。オープニングを飾る企画展(2015年7月20日(月・祝)まで開催)でも、開館記念展vol.1 「モダン百花繚乱『大分世界美術館』―大分が世界に出会う、世界が大分に驚く『傑作名品200選』」と題して、パブロ・ピカソ、ワシリー・カンディンスキー、アンリ・マティス、北大路魯山人、奈良美智などの世界や日本を代表する作家の作品と、大分県出身の作家の作品が数多く出会いました。次の企画展でも、どんな新しい出会いがあるのか、ワクワクしてしまいますね。
また、3階で思わず立ち止まるのが、現代工芸作家によるインスタレーション、「天庭(あまにわ)」です。ぽっかりと大きな穴が空いたような天窓から注がれる陽の光が、自然のスポットライトのように作品を照らします。四季や天候そのものをゆったりとした時間のなかで体感できる空間を演出するのは、日本の現代工芸をリードしてきた徳丸鏡子、礒﨑真理子、高橋禎彦の作品です。天井には、流れるような曲線の杉の木組が施され、坂氏と現代工芸作家たちの感性が響き合う空間は、遊び心にあふれていました。
フレキシブルな新しい美術館の設計をめざしたという坂氏の言葉通り、サイン表示やショップ、カフェなど、すべての家具や什器は移動式で、レイアウトを自由に変えることができます。坂氏が手掛ける紙管を使った空間の魅力を強く体感できるのが、2階の情報コーナーです。美術館情報を得たり、端末を借りて調べものをしたり、蔵書を自由に閲覧したりすることができます。その奥には、ワークショップなどの創作活動を行うアトリエや体験学習室があります。

OPAM×大分産のコラボレーションが面白い!

五感で感じるミュージアムとあって、グルメも楽しむことができます。情報コーナーと同じく、坂氏の独創的な空間でカフェを営むのは、久住高原に農場を持つ「cafe Charite(カフェシャリテ)」です。豊後牛のステーキ(カットステーキ2,052円~・税込)、大分の新ブランド「かぼすブリ」のりゅうきゅうボウル(972円・税込)、杵築市守江湾直送の釜揚げジャコボウル(972円・税込)など、大分の自慢のグルメとともに、館長の考案したスペシャルメニューが楽しめます。国産黒毛和牛と大分県産豚を絶妙なバランスで混ぜ合わせたジューシーな肉の旨みが味わえるシャリテ・ハンバーグ(1,058円・税込)も人気メニューです。久住高原の新鮮な野菜たっぷりのサラダと一緒にいただきます。
刺激をいっぱい受け、興奮冷めやらぬまま、おみやげを探しに1階のミュージアムショップへ。ここでも、アート色に染まるグッズとの楽しい出会いがありました。大分が誇る老舗和菓子店「但馬屋老舗(たじまやろうほ)」と美術家ミヤケマイのコラボレーションによる「さいコロがし」(1,728円・税込)は、すごろくが楽しめるユニークなお菓子です。また、アキ工作社によるペーパークラフト「d-torso(ディー・トルソー)」には、土地柄にちなんだOPAMオリジナルの「狛犬段(こまいぬだん)」(2,052円~・税込)が登場。そのほかにも、思わず手にしてしまう素敵なグッズが並んでいます。こんな素敵な場所が近くにあるなんて、最後の最後まで、大分県に住む人たちに嫉妬してしまう、そんな一日でした。
隠岐ゆう子

隠岐ゆう子

大学でデザインを学んだ後、大手印刷会社に入社。制作ディレクターとして5年勤めた後、フランス・パリに語学留学へ。現在は、九州・山口を中心に編集・ライターとして活動している。無類の旅好きで、暇とお金さえあればヨーロッパを中心に旅する行動派。旅、温泉、スイーツのキーワードに目がない。

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