砥部焼だらけの町で、絵付けとお茶と町歩き
松山ICから車で南へ約15分。砥部(とべ)焼の里、伊予郡砥部町には焼き物の窯元が約100軒、軒を連ねたエリアがあります。温かみのある白磁に大胆に藍色の呉須(ごす)を使った絵付けが特徴で、町内には歴史を学べたり、陶芸体験ができたりする施設のほか、見学ができる窯元などもあり、焼き物好きにはたまらないスポットです。

変わらぬ文様と斬新なデザインが共存する砥部焼の里

今回はまず、陶工や作家たちの工房が集まる陶里ヶ丘にある人気の窯元のひとつ「東窯」を訪ねてみました。白磁に藍色の定番モノとはがらりと趣の変わった作品が特徴の窯元です。

自然をモチーフにした作品が並べられている店内も、作品の世界観にマッチ。パステル調で統一された女性らしいかわいい店内は、砥部町を見下ろせる高台にあり、気持ちのよい風が店内を吹き抜ける静かでのどかなギャラリーです。

ガーデンに咲く花々を取り巻く風景の瞬間を切り取り、そこに暮らす鳥たちや水辺に集う生き物、咲き誇る花々や果物などを題材に描かれているそう。すべての作品が自然や生き物をテーマに、器という一つのキャンパスの中で美しい庭園を表現しています。
女性を中心に人気があり、県内だけでなく、東京などでも個展が開かれるほどの人気です。
作品の原点でもある「ナチュラルガーデンシリーズ」を中心に、他にも多くのシリーズが誕生しています。

独特な世界観と色彩の作品を作る窯元の主は、大東アリンさん。独特の作風と色彩感覚は、アリンさんがフィリピンのご出身であるからでしょうか。生まれ育った国で見た風景、ご本人にとっては懐かしい風景が作品へと転写されています。

ふんわりとした絵付けも「東窯」が人気の窯元の一つである理由。和紙塗りと言われる、原画を和紙で切り抜き、その和紙に顔料を垂らして染付を施す技法は、輪郭がふんわりと仕上がり、作品をより幻想的な雰囲気へと導いています。併設の工房にも立ち寄って、手間暇の掛かった作品づくりを見学するのもおすすめです。
東窯
愛媛県伊予郡砥部町五本松885-21
[営業時間]10:30~18:30
[定休日]年末年始
089-962-7156
砥部焼づくりに挑戦してみよう

専門施設「砥部町陶芸創作館」はふらっと立ち寄っても体験できるメニューもあり、できあがった作品は旅の記念にもなります。
体験メニューは、「絵付け体験」、手で土をこねて平らな皿などを作る「手びねり体験」、ロクロを回して椀などの丸みのあるモノを作る「ロクロ体験」の3メニューからセレクト。手びねり、ロクロ体験は事前に予約が必要です。

今回は、予約のいらない絵付け体験を実際に体験してみました。
まずは、素焼きが施された器をセレクトします。やはり書きやすいのは平べったいお皿など。小さいお子さんなどでも書きやすいと人気です。素焼きの状態とできあがりではサイズが違うので、焼き上がり見本などで確認しながら選ぶと、イメージ通りの作品ができあがります。どの見本も素晴らしいできばえにびっくり。陶芸経験のある施設のスタッフが作ったものだそうです。

ちょっと背伸びをして茶碗に挑戦。筆づかいや濃淡の出し方などのレクチャーを受けチャレンジスタートです。アイデアがなかなか出てこない場合は、イラスト集を参考にしてみても。
顔料は、絵付けの段階ではこげ茶色のような色。焼き上がると鮮やかな藍色に変化します。所要時間は約30分ほど。後日スタッフが釉(うわぐすり)をかけ本焼きをしてくれます。絵付けをしてから焼き上がりまでは2~3週間。できあがった作品は引き取りに伺うか、送料600円~(税込)を払って郵送してもらうこともできます。
砥部町陶芸創作館
愛媛県伊予郡砥部町五本松82
[営業時間]9:00~17:00(入館は16:00まで)
[料金]絵付け300円~(器によって異なる)、手びねり1,500円~、ロクロ1,500円~ ※価格はすべて税込
[定休日]木曜(祝日の場合営業、翌金曜休み)、12/29~1/3
089-962-6145
砥部焼の器を使ったカフェでひと休み



隠れ家的なこのカフェでは、現在約20軒の窯元の砥部焼の器を使用。中でも人気ナンバー1メニューの「とべりてプレートセット」は、「とべりて」という女性の陶芸家7名のグループが作成した、7種類のプレートのいずれかで提供されます。使ってみたい作家さんのプレートがあれば、リクエストすれば叶えてくれることも。今回は白磁にすっきりとした藍色の花をあしらった、「陶房くるみ」さんのプレートをチョイスしてみました。

スイーツは、バームクーヘンとチーズケーキ。いずれも酒粕の香りがしっかりとする、少し大人の気分を味わえる、ただ甘いだけじゃないスイーツです。
スイーツにセットできる飲み物は、オーガニックコーヒーをはじめ、地元産の七折(ななおれ)小梅を使ったソーダなど8種類から選べるということで、店おすすめの、アイス甘酒をセットにしてみました。

濃厚すぎずサラッと飲み干せる甘酒は、もちろん蔵元の麹を使用したもの。飲んだあとは、スプーンですくって食べ尽してしまうほどのおいしさです。甘酒の濃厚さや独特な香りが苦手な人でも飲める(実際に苦手な私が飲んだので間違いなし)一杯です。
女性ならではの感性とアイデアを活かした「とべりて」の作品は、今、砥部焼の中でも新たな作風として注目されています。7名それぞれの個性が光る器は、実際に購入することもできます。
酒蔵カフェ はつゆき
愛媛県伊予郡砥部町大南400
[営業日時]金・土・日曜・祝日の11:00~15:30(5月~10月は~16:00)
[定休日]月~木曜(祝日の場合は営業)
089-962-2717
町内には、砥部焼がいっぱい

砥部町内を走る国道33号の中央分離帯に設置された、大型の壺の砥部焼モニュメント。玄関口から砥部焼の中心地へといざなうように設置されています。交通量の多い国道沿いに設置されているので、中央分離帯への侵入や、車を止めての撮影は厳禁です。

砥部町内の3カ所の郵便局に設置されたポスト限定のモニュメントです。ポストに直接、陶器のモニュメントが設置されているのは、全国でも珍しいそうです。郵便物はモニュメントに入れても届かないので、必ずポストに投函を。



何気ない道が、アートで変身を遂げた「陶板の道」と呼ばれる約500mの遊歩道。町内の陶工による作品が約580枚使用されているので、坂道ながらぜひ散策しておきたいスポットです。壁面だけでなく、足元にも陶板が埋め込まれているので、視線を上げたり下げたりと、ちょっぴり忙しい散策になるかもしれませが、見ごたえ満点です。
遊歩道の先には、「陶祖ヶ丘(とうそがおか)」があり、公園になっているので休憩しながら陶板を鑑賞できます。



砥部焼の散策の起点となる「砥部焼伝統産業会館」前の通りには、伝統的な文様である唐草紋をアレンジした車道外側線が数十m設置されています。短い区間のみの粋な演出なので、見落とさないように!

窯元が多く集うエリアからもっとも近い大南商店街の店先には、56基のモニュメントがずらりと並んでいます。

壺や大皿などからアート感満載のモニュメントまで、趣の変わった作品一つ一つに作者の想いが綴られたプレートがはめ込まれているので一読してみても。見つけづらいところもあるので徒歩がおすすめです。
長い歴史を経ても変わらない作風を貫く窯元と新たな作品に挑戦する窯元。いずれも砥部焼という焼き物を通じ、毎日の食卓をより楽しく、色鮮やかなに彩ってくれるモノばかりです。料理が楽しくなる器を探して、窯元巡りを楽しんでみてはいかがでしょうか。

長山 歩
純粋愛媛っ子のフリーライター。4人の子ども達が騒ぐ中、一人別世界にトリップし原稿を書き上げる能力に長ける。取材で知った美味しいお店、楽しいスポットに一緒に出かけ、子ども達に尊敬してもらうのがこの上なく嬉しい。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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