砥部焼だらけの町で、絵付けとお茶と町歩き

2016.10.30 更新

松山ICから車で南へ約15分。砥部(とべ)焼の里、伊予郡砥部町には焼き物の窯元が約100軒、軒を連ねたエリアがあります。温かみのある白磁に大胆に藍色の呉須(ごす)を使った絵付けが特徴で、町内には歴史を学べたり、陶芸体験ができたりする施設のほか、見学ができる窯元などもあり、焼き物好きにはたまらないスポットです。

▲藍色の呉須で絶妙な濃淡をつけた唐草紋やなずな紋を描いた定番の砥部焼

変わらぬ文様と斬新なデザインが共存する砥部焼の里

江戸の中期、大洲藩の保護を受け開窯した砥部焼は、1976(昭和51)年には国の伝統的工芸品に、2005(平成17)年には県の無形文化財に認定され、現在では230年を越える伝統ある工芸品です。町内で採掘される砥部磁土を使用した磁器で、素朴な白磁に藍色の呉須とよばれる顔料を使った絵付けが基本。唐草紋という昔から変わらない文様は、一筆書きで生き生きと描かれています。
▲窯元とは思えないオシャレな店構えの「東窯(ひがしがま)」

今回はまず、陶工や作家たちの工房が集まる陶里ヶ丘にある人気の窯元のひとつ「東窯」を訪ねてみました。白磁に藍色の定番モノとはがらりと趣の変わった作品が特徴の窯元です。
▲高台のギャラリーからは、砥部の町並みも一望できる

自然をモチーフにした作品が並べられている店内も、作品の世界観にマッチ。パステル調で統一された女性らしいかわいい店内は、砥部町を見下ろせる高台にあり、気持ちのよい風が店内を吹き抜ける静かでのどかなギャラリーです。
▲代表作の「ナチュラルガーデンシリーズ」。右下より時計回りに茶碗(中)3,024円、浅鉢5寸3,132円、マグカップ3,132円、サラダボール(大)5,400円 ※価格はすべて税込

ガーデンに咲く花々を取り巻く風景の瞬間を切り取り、そこに暮らす鳥たちや水辺に集う生き物、咲き誇る花々や果物などを題材に描かれているそう。すべての作品が自然や生き物をテーマに、器という一つのキャンパスの中で美しい庭園を表現しています。
女性を中心に人気があり、県内だけでなく、東京などでも個展が開かれるほどの人気です。

作品の原点でもある「ナチュラルガーデンシリーズ」を中心に、他にも多くのシリーズが誕生しています。
▲左が本焼き前、右が完成したマグカップ。色に深みがでる

独特な世界観と色彩の作品を作る窯元の主は、大東アリンさん。独特の作風と色彩感覚は、アリンさんがフィリピンのご出身であるからでしょうか。生まれ育った国で見た風景、ご本人にとっては懐かしい風景が作品へと転写されています。
▲工房は、事前の申し込みがなくても見学可能

ふんわりとした絵付けも「東窯」が人気の窯元の一つである理由。和紙塗りと言われる、原画を和紙で切り抜き、その和紙に顔料を垂らして染付を施す技法は、輪郭がふんわりと仕上がり、作品をより幻想的な雰囲気へと導いています。併設の工房にも立ち寄って、手間暇の掛かった作品づくりを見学するのもおすすめです。

砥部焼づくりに挑戦してみよう

砥部焼の里巡りのタイムスケジュールの中にぜひ入れておきたいのは、砥部焼作りの体験。
専門施設「砥部町陶芸創作館」はふらっと立ち寄っても体験できるメニューもあり、できあがった作品は旅の記念にもなります。
体験メニューは、「絵付け体験」、手で土をこねて平らな皿などを作る「手びねり体験」、ロクロを回して椀などの丸みのあるモノを作る「ロクロ体験」の3メニューからセレクト。手びねり、ロクロ体験は事前に予約が必要です。
▲絵付け体験で使用できる器は平皿だけでもサイズ、形が様々。その他茶碗や湯のみなどもあり

今回は、予約のいらない絵付け体験を実際に体験してみました。
まずは、素焼きが施された器をセレクトします。やはり書きやすいのは平べったいお皿など。小さいお子さんなどでも書きやすいと人気です。素焼きの状態とできあがりではサイズが違うので、焼き上がり見本などで確認しながら選ぶと、イメージ通りの作品ができあがります。どの見本も素晴らしいできばえにびっくり。陶芸経験のある施設のスタッフが作ったものだそうです。
▲鉛筆で下書きをしておくと書きやすい。鉛筆の線は本焼きの際、消えてしまうので心配なし

ちょっと背伸びをして茶碗に挑戦。筆づかいや濃淡の出し方などのレクチャーを受けチャレンジスタートです。アイデアがなかなか出てこない場合は、イラスト集を参考にしてみても。
顔料は、絵付けの段階ではこげ茶色のような色。焼き上がると鮮やかな藍色に変化します。所要時間は約30分ほど。後日スタッフが釉(うわぐすり)をかけ本焼きをしてくれます。絵付けをしてから焼き上がりまでは2~3週間。できあがった作品は引き取りに伺うか、送料600円~(税込)を払って郵送してもらうこともできます。

砥部焼の器を使ったカフェでひと休み

休憩に立ち寄った、町内の老舗の酒蔵である協和酒造。酒蔵からのいい香りがする2Fスペースには、金曜~日曜、祝日限定オープンの「酒蔵カフェ はつゆき」があります。お酒は飲めないけれど、雰囲気は味わいたいという人向けの、酒粕を使ったメニューが揃います。
▲ギシギシと音を鳴らす床も一つの味わい。店内窓際の席がおすすめ
▲洗面ボールも砥部焼に。ここだけでなく、町内の公共施設などでよく見られる

隠れ家的なこのカフェでは、現在約20軒の窯元の砥部焼の器を使用。中でも人気ナンバー1メニューの「とべりてプレートセット」は、「とべりて」という女性の陶芸家7名のグループが作成した、7種類のプレートのいずれかで提供されます。使ってみたい作家さんのプレートがあれば、リクエストすれば叶えてくれることも。今回は白磁にすっきりとした藍色の花をあしらった、「陶房くるみ」さんのプレートをチョイスしてみました。
▲「とべりてプレートセット」500円(税込)+飲み物代。スイーツと季節のフルーツ、好きなドリンクがセットに

スイーツは、バームクーヘンとチーズケーキ。いずれも酒粕の香りがしっかりとする、少し大人の気分を味わえる、ただ甘いだけじゃないスイーツです。

スイーツにセットできる飲み物は、オーガニックコーヒーをはじめ、地元産の七折(ななおれ)小梅を使ったソーダなど8種類から選べるということで、店おすすめの、アイス甘酒をセットにしてみました。
▲年中提供されている酒蔵のノンアルコール甘酒(アイス)。ホットもあり。夏場には甘酒かき氷も登場

濃厚すぎずサラッと飲み干せる甘酒は、もちろん蔵元の麹を使用したもの。飲んだあとは、スプーンですくって食べ尽してしまうほどのおいしさです。甘酒の濃厚さや独特な香りが苦手な人でも飲める(実際に苦手な私が飲んだので間違いなし)一杯です。

女性ならではの感性とアイデアを活かした「とべりて」の作品は、今、砥部焼の中でも新たな作風として注目されています。7名それぞれの個性が光る器は、実際に購入することもできます。

町内には、砥部焼がいっぱい

松山から砥部に向かって走ると、砥部町に入ったとたんに、焼き物のモニュメントなどが登場し、気分を盛り上げてくれます。なかでも目を引くスポットを紹介します。
▲砥部焼を代表する窯元の力作が並ぶ

砥部町内を走る国道33号の中央分離帯に設置された、大型の壺の砥部焼モニュメント。玄関口から砥部焼の中心地へといざなうように設置されています。交通量の多い国道沿いに設置されているので、中央分離帯への侵入や、車を止めての撮影は厳禁です。
▲砥部郵便局横に設置された砥部焼モニュメントポスト

砥部町内の3カ所の郵便局に設置されたポスト限定のモニュメントです。ポストに直接、陶器のモニュメントが設置されているのは、全国でも珍しいそうです。郵便物はモニュメントに入れても届かないので、必ずポストに投函を。
▲砥部焼のかけらをはめ込んで作られた壁画
▲砥部焼を大胆にもほぼそのまま埋め込んだ作品
▲壁画だけでなく、足元にも埋め込まれているので要チェック

何気ない道が、アートで変身を遂げた「陶板の道」と呼ばれる約500mの遊歩道。町内の陶工による作品が約580枚使用されているので、坂道ながらぜひ散策しておきたいスポットです。壁面だけでなく、足元にも陶板が埋め込まれているので、視線を上げたり下げたりと、ちょっぴり忙しい散策になるかもしれませが、見ごたえ満点です。
遊歩道の先には、「陶祖ヶ丘(とうそがおか)」があり、公園になっているので休憩しながら陶板を鑑賞できます。
▲「陶板の道」を越えた先、「陶祖ヶ丘」には、町内1、2を争う数の陶板が揃う
▲町内には窯元までの道を案内する看板が点在
▲歩いていないと見つけられない車道外側線砥部焼バージョン

砥部焼の散策の起点となる「砥部焼伝統産業会館」前の通りには、伝統的な文様である唐草紋をアレンジした車道外側線が数十m設置されています。短い区間のみの粋な演出なので、見落とさないように!
▲大南商店街のモニュメントの一つ「砥部焼の神髄」。「Aコープ砥部店」近くの交差点に設置

窯元が多く集うエリアからもっとも近い大南商店街の店先には、56基のモニュメントがずらりと並んでいます。
▲大輪の花をイメージしたモニュメント。衣料品店「サンまつだ」前に設置

壺や大皿などからアート感満載のモニュメントまで、趣の変わった作品一つ一つに作者の想いが綴られたプレートがはめ込まれているので一読してみても。見つけづらいところもあるので徒歩がおすすめです。

長い歴史を経ても変わらない作風を貫く窯元と新たな作品に挑戦する窯元。いずれも砥部焼という焼き物を通じ、毎日の食卓をより楽しく、色鮮やかなに彩ってくれるモノばかりです。料理が楽しくなる器を探して、窯元巡りを楽しんでみてはいかがでしょうか。
長山 歩

長山 歩

純粋愛媛っ子のフリーライター。4人の子ども達が騒ぐ中、一人別世界にトリップし原稿を書き上げる能力に長ける。取材で知った美味しいお店、楽しいスポットに一緒に出かけ、子ども達に尊敬してもらうのがこの上なく嬉しい。

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