秋田三味線を聴きながら、男鹿の海の幸に舌鼓「福の家」

2016.10.16 更新

秋田音頭でも「秋田名物 八森ハタハタ、男鹿で男鹿ブリコ♪」と歌われるように、冬のハタハタ漁をはじめ、漁業が盛んな男鹿半島。男鹿・北浦漁港で揚がったばかりの海の幸を、秋田三味線や民謡も楽しめる「福の家」で味わってきました。

北浦漁港から歩いて2、3分の場所にある「福の家」。こちらは、新鮮な磯料理を男鹿の秋田三味線を聞きながら楽しめることで評判のお店です。店主の伊藤善春(よしはる)さんによると、なじみの漁師さんが複数おり、この地の利を生かして、季節ごとに新鮮な海の幸を地元ならではの食べ方で提供しているそうです。
▲北浦漁港からほど近い場所にある

磯の香りとパリパリ&もっちりの歯ごたえ。名物「棒アナゴ」の美味しさに驚き!

まずは、男鹿半島の幻の珍味として知られる「棒アナゴ」があると聞きさっそく注文。「男鹿でアナゴといえば、この棒アナゴです。いわゆる普通の真アナゴも食べますが、男鹿の珍味の代表格ですね」と伊藤さん。それだけ美味しいということなのでしょうか?
▲棒アナゴについて説明してくれる伊藤さん。棒アナゴの話になるとなんだか顔がほころびます

ほどなくして、こんがり焼けた「棒アナゴ」が出てきました。
▲「男鹿産あなご焼き」(税別1,900円)。大根おろしに一味唐辛子と醤油をかけたものを一緒に食べます。レモンはお好みで

口に入れると、パリッパリの皮がとってもいい音を立てます。それに対して、中の身はもちもちとした歯ごたえ。噛めば噛むほど脂が出てきて、なんだかお肉のようにも感じるジューシーさ。でも、確かに海の幸。磯の香りが口いっぱいに広がります。そして皮は最後までパリパリと音を立てているんです。
こ、これは……、ビールに合う~!

「この棒アナゴを食べるために、わざわざ県外から来てくださるリピーターのお客様もいらっしゃいますよ」と伊藤さん。
「棒アナゴ」は、たしかに唯一無二の食材としての存在感を放っていました。

男鹿半島の幻の珍味「棒アナゴ」、その正体とは?

▲この不思議な形からは味が想像できません

この「棒アナゴ」と呼ばれている魚の正体は、「クロヌタウナギ」というもの。“ウナギ”と名が付いているものの、ウナギではなく、厳密には魚類でもないといいます。

アナゴでもなく、ウナギでもない、この黒い生き物。脊椎動物の起源ともいわれ、「生きた化石」とも呼ばれています(シーラカンスでも、もちろんありません!)。深海に生息し、ヤツメウナギと同じ無顎類に属しているのだそう。
▲通称「棒アナゴ」の頭側。目もなければ、ウロコもない!

この不思議な生き物「棒アナゴ」を、男鹿では昔から一夜干しにして、炭火などでこんがり焼いて食していました。ツボのような仕掛けを海の底に沈めて獲るそうですが、今ではこの漁ができる漁師さんは、男鹿でもたった1人になってしまい、地元でも珍しい食材となっています。

そんな珍しい棒アナゴ、見た目はちょっとグロテスクですが、ぜひ一度は食べてみる価値ありの美味しさですよ。

「福の家」では、他にも男鹿の海の幸メニューがいっぱい

生まれも育ちも男鹿・北浦の伊藤さんは、子どもの頃から海に親しみ、若い頃は遠洋漁業船に乗ってアラスカまで漁に行っていたんだとか。

そんな、元漁師の伊藤さんが作る男鹿ならではの海の幸を使った料理の数々は、「棒アナゴ」以外もここでしか味わえない絶品揃いです。
▲右手前の「男鹿産あなご焼き」から時計回りに「自家製ハタハタ寿し(530円)」「ハタカバ丼(1,000円)」「男鹿産くろも(650円)」「男鹿のしょっつる焼きそば(750円)」※すべて税別

もずくのような見た目のクロモは海藻の一種。男鹿ではポピュラーな海藻で、三杯酢や汁物に入れて食べます。とても香り高く、歯ごたえがシャキシャキで独特のぬめりがあるのが特徴です。
「北浦のクロモは、よそのクロモとやっぱりちょっと違いますね」(伊藤さん)
▲北浦産のクロモはツルツルとしたのどごしに、歯ごたえもいい

また、男鹿といえば秋田音頭にも歌われる通りハタハタが有名です。ハタハタ漁は11~12月に行われるため、「福の家」ではその時期に獲れたハタハタをマイナス50度で急冷凍し、さまざまな料理にアレンジしていつでも提供できるように保存しているそう。
▲保存食としてポピュラーな「ハタハタ寿司」。3枚に下ろしたハタハタを麹、生姜、にんじん、ふのり(海藻の一種)などとともに漬け込み、発酵させたなれずしの一種。くさみもなく、とってもいいお味です
▲蒲焼きのハタハタの上にブリコ(ハタハタの魚卵)を散らしてある「ハタカバ丼」。甘辛のタレがハタハタに合う
▲「男鹿のしょっつる焼きそば」は、あんに秋田のご当地調味料として知られるハタハタの魚醤「しょっつる」が使われている。子どもから大人まで食べやすい味付け

取材に訪れたのは9月上旬。アワビ、サザエ、岩ガキに天然のホヤなどの旬の食材は、水揚げされたばかりのものが、一番おいしい食べ方で提供されました。
▲サザエは定番のつぼ焼きのほか、刺身でも(写真提供:福の家)
▲岩がきは夏が旬の海の幸(写真提供:福の家)
▲ほやも貴重な天然物でひとあじ違うそう。このようにさまざまな夏の海の幸が楽しめる(写真提供:福の家)

秋田三味線と秋田民謡に酔いしれて…

そして、ここ「福の家」のもう1つの魅力は、なんといっても『秋田三味線ミニライブ』を食事と一緒に楽しめること!

店主の伊藤さんは秋田三味線の名手としても知られ、地元の小・中学生を中心にしたこども民謡教室や民謡クラブの指導を30年もつづけているといいます。

また息子の伊藤福実都(ふくみつ)さんは、なんと秋田三味線で日本一に輝いたこともある腕前の持ち主。お2人はその腕を買われて、あの映画『釣りバカ日誌』シリーズの『釣りバカ日誌15 ハマちゃんに明日はない!?』(2004年、松竹)に本人役として親子共演しているほどなのです。
▲店内には三味線演奏中の写真の他、賞状やトロフィーも
▲メニューのなかに「秋田三味線ミニライブ」の案内も

三味線ミニライブは1日2回、20:00と21:30から。お座敷やカウンターに座ったお客さんの真ん中に椅子を据えて演奏されます。

この日の演目は秋田荷方節、秋田音頭など。秋田三味線は津軽三味線に比べて、ベベンと弾くというよりも繊細な音使いが特徴なのだそうです。こんなに近くで三味線を聞く経験などなかなかありませんね。
▲お客さんとの距離にして約1.5m。三味線の迫力を生で感じられる

最後はお客さんも一緒に、秋田ではおなじみ「ドンパン節」を歌って盛り上がります。
▲難しいところは伊藤さんに任せて、わかるところだけ歌っても十分楽しい!「ドーンドーンパーンパーン、ドーンパーンパン」
▲温泉客も一緒ににぎやかに盛り上がる三味線ライブ(写真提供:福の家)

男鹿温泉郷のなかにある「福の家」。ひとっ風呂浴びたあと、男鹿の海の幸と秋田の日本酒を堪能しながら、日本一の秋田三味線と秋田民謡に耳を傾ける一夜は、きっと思い出に残ること請け合いです。
▲伊藤さんと奥様が温かく迎え入れてくれる
▲座敷、カウンターどちらもくつろげる店内

写真:高橋 希
伊丹直

伊丹直

編集者、ライター。東京で10年間の出版社勤務ののち、2013年春から秋田へ移住。生活文化ジャンルの雑誌で執筆のほか、地域情報を発信するメディアなどで企画、編集を行う。 (編集/株式会社くらしさ)

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

こちらもおすすめ

もっと見る
PAGE TOP