~湯河原「エルルカン・ビス」~自然に囲まれた、和の精神が息づくフレンチレストランへ

2016.11.01 更新

古き良き日本情緒が残る温泉街、神奈川県湯河原。この地に、和食の技法や地元の食材を取り入れた有名フレンチシェフのお店があると噂になっています。地元の人にも愛され、また遠方からわざわざ足を運ぶ人までいるというこちらでは、いったいどのようなお食事をいただけるのでしょうか。さっそく行ってみることにしました。

まるで「隠れ家」。竹林のなかに佇む、瀟洒なレストラン

JR湯河原駅から車で約15分。若草山の急勾配の坂道を登ったところにフレンチレストラン「エルルカン・ビス」はあります。観光客で賑わう駅前の喧騒から離れたこの場所で聞こえてくるのは、木々のさざめきと鳥の囀りだけ。まさに「隠れ家」といった雰囲気です。
玉砂利のアプローチを歩きお店へと向かいます。道脇の灯籠や、お店を囲む竹やぶがさりげなく和の情緒を醸しだしています。

お店の入り口には、スタイリッシュな暖簾と南国風の置物が。定番のフレンチレストランとはまた違った素敵な入り口に、入店前からいったいどのようなお料理をいただけるのかワクワクしてきます。
ドアを開けると、このお店のオーナーでもある伊東淳一シェフが笑顔で出迎えてくれました。パリの名門レストランをはじめ、ベルギーやイタリアなど欧州各地で料理の腕を磨いたという伊東シェフ。日本料理についても数年間学んだ経験があるのだとか。こういった多くの経験があったからこそ、和の技法を取り入れたフレンチが生まれたのですね。
こんな素晴らしい経歴を持つシェフが、湯河原にこだわる理由は、その豊かな自然と情緒あふれる町並みなのだそう。
「湯河原の美しい自然や日本らしい趣があるところに惹かれたんです。なので、恵比寿でやっていたお店をたたみ、ここでお店を開くことに決めました」と、伊東シェフ。

洋風の空間に息づく“和”の精神

日本らしさにこだわるという伊東シェフの想いは、お店のいたるところにうかがえます。その代表的なものが、店内から見える美しい竹林。青々とした竹林は日本人としての心をすっと呼び起こしてくれます。
▲今回、ご用意いただいた窓辺の席。大きな窓から竹林をのぞめる

また、茶色と黒を基調とした素敵な内装にもシェフの意図が。窓枠や梁、床、椅子に茶色や黒を使い「土の色」を表すことで「湯河原の地に根ざしている」という意味を込めているのだそうです。
▲開放感あふれる店内。ゆっくりと景色やお料理を楽しんでもらうため、テーブルとテーブルの間はわざと広めに空けている

店内を拝見した後は、料理ができるまでテラスで竹林を眺めることに。テラスに出てみると、なんとそこには足湯が!さすが温泉の街、湯河原です。

こちらの足湯は「Vacances de pied(ヴァカンス ドゥ ピエ)」と名付けられていました。“足の休日”という意味だそうで、なんだか可愛らしい名前ですね。
さっそくお店のスッタフにお声がけしてタオルを貸していただき、足湯につかることにしました。
風に揺れる竹林のさざめきを聴きながら足湯に入っていると、日頃の忙しさを忘れ、なんだかふわっと心がほどけるような感覚に。う~ん、ずっとここにいたい。ちなみにこの足湯には、美肌の効果もあのだとか。女性には、なんともうれしいお湯です。

和の技法が冴える、絶品フレンチ

店内に戻ると、さっそくお料理が運ばれてきました。今回は、ランチメニュー「Saveur(サブール)陽射しの中で宵の趣を」(5,000円・税サ別)をオーダー。まずは一品目の前菜「自家農園産の冷たいナスのフランとモンサンミッシェルのムール貝のエスニック」からいただきます。
最高級品といわれるモンサンミッシェルのムール貝は、とろけるようななめらかな舌触り。ほんのりと甘みがある濃厚さです。
ナスのフランは、和食のナスの揚げびたしを連想させるやさしい味が特徴的です。そして、奥にあるナスのブランマンジェをひとくち食べると……予想に反して、魚介の出汁やピリ辛の青唐辛子などオリエンタルな味わいが!
そっとお皿に添えられているレモングラスがトムヤムクンを連想させます。
この複雑で濃厚、かつ爽やかな味わいはやみつきになりそう……。

この他、二品目の前菜「自家農園産 里芋のローストと鱈の白子のポワレ」をいただき、次は魚料理の「天然真鯛の焼き蒸し こがしバターとシェリービネガー」をいただきます。
鯛漁でも有名な相模湾。今朝水揚げされた新鮮な鯛と自家農園産の季節の野菜を使用した贅沢な一品です。微かにバターの香ばしいにおいが漂ってきて、食欲が刺激されます。
軽く焦げ目のついた皮は香ばしさがあるものの、身と同じくしっとりとして柔らかな口当たりです。ほんのりと脂ののった白身は、華やかで上品な味わいです。

実はこちらの料理にも和食の技法が取り入れられています。皮に細かく包丁を入れ、軽く炙ってから、それを日本酒で蒸しているのだそうです。普通のフレンチなら白ワインで蒸すところですが、酸の入っていない日本酒で蒸すことでこの柔らかな食感を出しています。
ここで、いくつかおすすめのワインを見せていただきました。「エルルカン・ビス」の特徴のひとつは、できるだけ自然に近い食材を使用すること。ワインも農薬などをなるべく用いずに育てた葡萄を使用したビオワインが揃えられています。

このあといただいたメインの肉料理、「フランス産 仔鴨のロースト 赤ワインソース」と小さなごはんもの「鱈のミルクリゾット」も絶品でした。
最後にデザートの盛り合わせをいただきます。左から、いちじくのパウンドケーキ、和三盆を使用した大学芋とコリアンダーのアイスクリーム、ローストしたさつまいものティラミスの三品。
いちじくのパウンドケーキは、しっとりとして食べごたえ充分。また、手前のアイスクリームは芋独特の甘みの中にコリアンダーの爽やかさを感じられます。そして、さつまいものティラミスも芳ばしさのあるやさしい味わいが特徴的でした。どことなく秋の訪れを感じる季節感の演出も和食に通じるところがありますね。
お店では、今回いただいたランチのコースの他にも「Rayons(レイヨン)木漏れ日のランチ」(3,500円)を提供。ディナーも「Harmonie(ハーモニー)旬菜と旬魚のハーモニー」(5,500円)や、「Saisons(セゾン)」(9,000円)、「Couleurs(クルール)シェフの色彩 おまかせ料理」(12,000円)などがあります。※価格はすべて税サ別

一皿一皿にシェフのこだわりや遊び心を感じる料理と、あたたかいおもてなしの心。「エルルカン・ビス」が人気の理由がわかりました。都会の喧騒を忘れる非日常の空間のなかで、絶品フレンチをいただいてみてはいかがでしょうか?
立岡美佐子

立岡美佐子

編集プロダクション・エフェクト所属の編集者&ライター。好きなものは、旅行とごはん。おいしいものやステキな景色のためならば、日本といわず世界各国どこへでも! 住まい、旅、食、街などジャンルを問わず執筆中です。 編集:山葉のぶゆき(エフェクト)

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