東京できのこ狩り!原木栽培の採れたてシイタケは本当にうまい

2016.10.14 更新

秋といえばきのこの季節。東京でもきのこ狩りを楽しめるスポットがある。青梅市の「内沼きのこ園」だ。ここではシイタケを原木栽培していて、採れたてを炭火焼きで食べることができる。暑さの残る9月の某日、さっそく体験に行ってきた。

▲原木で栽培されたシイタケ

「内沼きのこ園」に行くには、JR青梅線の東青梅駅南口からバスに乗る。都営バスの「梅74甲 成木循環」に30分ほどゆられて「成木一丁目四ツ角」バス停で下車。目の前の四ツ角を右に曲がると「内沼きのこ園」への案内板が現れる。周囲はのどかな里山の風景である。案内板にしたがって歩けば、5分ほどできのこ園に到着する。
▲「内沼きのこ園」

きのこ栽培は究極のオーガニック

現代表の内沼秀夫さんがシイタケの栽培をはじめたのは約30年前のことだ。
「もともと地元で農業をやっていたのですが、当時は有機農業がブームで、自分も何か新しいことをやってみたかったんです」と内沼さん。

シイタケの栽培には、農薬や化学肥料は必要なく、菌を育てるための原木(コナラなど)があればいい。原木のコナラは、幹や枝を切っても切り口から芽が出て育つため(萌芽更新という)、18~20年もすればもとの大きさに育つ。古くなった原木はオガクズとして利用される。
▲シイタケの原木(コナラ)

「持続可能で、環境を破壊することがない。究極の有機作物なんですよ。本場大分県のクヌギの原木を使ったシイタケ栽培は、国際連合食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産にも登録されているくらいです」(内沼さん)

15年ほど前からは、一般のお客さん向けに収穫体験を実施するようになった(予約制)。
▲内沼秀夫さん

内沼さんの案内で、裏の森へ原木を見に出かけた。原木には小さな穴があけられている。ここにシイタケの菌が埋め込まれ、オガクズとロウで蓋をされている。菌は台風のあとの気温が下がった日などに活性化して、白い幼菌として表面に現れる。
▲穴の右上に見える白い小さな突起部分がシイタケの幼菌

原木を井戸水につけて菌を刺激する

このままでもシイタケは育つには育つのだが、9月上旬のいまはまだ気温が高いので安定して育たない。だから、「内沼きのこ園」では、順調に育てるために、白い幼菌の出てきた原木を井戸水のなかに放り込んでしまう。

「菌を成長させるためには物理的な刺激が必要なんです。なかには原木をトンカチで叩くという人もいるんですよ。うちの井戸水の水温は18度。気温との温度差と水圧という刺激を与えて菌を活性化させます。もちろん水分補給の役割もあります」(内沼さん)
▲井戸水を満たした水そう

水そうから出した原木は、こんどは20度に設定した冷蔵庫に入れる。

「菌は夏から秋になったとだまされるわけです(笑)」(内沼さん)

冬は反対に暖かいビニールハウス内に入れることによって温めて、春だと思わせて菌を活性化させる。こうした温度管理によって、内沼きのこ園では一年中シイタケが収穫できるようにしている。ただし、朝晩の気温差が大きいほうがおいしくなるので、朝に冷え込む秋がやはり旬といえる。
▲原木を入れる冷蔵庫

冷蔵庫から出した原木はビニールハウスへ移動する。
ビニールハウスのなかに入ると空気がひんやりしていて驚いた。ビニールハウスというと暖かいという印象があるが、ここではクーラーをかけて冷やしている。

この日のビニールハウス内は23度(適温は18~23度)。クーラーは井戸水を循環させた手作りのシステムというから驚きだ。エアコンだとシイタケが乾いてしまい、よくないのだという。暑かった今年の8月でもビニールハウス内は26度までしか上がらなかったそうだ。
▲ビニールハウス。約2,500本の原木が並ぶ。左上が井戸水循環式クーラー

傘が開き切った大きいシイタケがうまい

ビニールハウスのなかの原木にはさまざまな大きさと形のシイタケが生えている。
「傘がきゅっと丸まったものではなく、大きく開き切ったものを収穫してください」と内沼さんが教えてくれた。

「シイタケのうまみ成分であるグアニル酸は傘の内側にできます。だから傘が開いているほうがおいしいんです。私はこれを‶完熟シイタケ‴と呼んでいます。グアニル酸は酸化しやすいので、収穫したらなるべくはやく食べたほうがいい。スーパーで売られているシイタケのほとんどは丸まった状態ですが、あれは流通過程でグアニル酸が酸化しないように、グアニル酸があまり生成されないうちに収穫してしまっているんです」
▲傘が大きく開き切ったおいしいシイタケ。傘のふちにある白い毛は「リンピ」と呼ばれ、新鮮なシイタケの証拠
▲横から見たシイタケ
▲完熟していない丸まったシイタケ
▲完熟しているシイタケは、軸をつまんで左右にゆらせば簡単に採れる

なお、いま一般的に販売されているシイタケの9割は原木栽培ではなく菌床栽培だという。菌床栽培はオガクズに栄養剤を注入して栽培するので成長がはやく、値段も安い。

「でも密度が低く、加熱すると縮んでフニャッとした食感になる。一方、原木栽培はゆっくり育つので密度が高く、加熱しても縮まずにサクッという食感がある。菌床栽培のものは傘を割って生で舐めるとピリッと苦い味がするから、すぐにわかりますよ」と内沼さん。

収穫したシイタケをおそるおそる舐めてみると、ほとんど味はせずほのかに甘かった。
▲傘を割って舐めてみた

焼くときは最初に内側を

収穫したシイタケは100g=320円(税込)で持ち帰ることができる。
屋根つきの炭火焼きコーナーも用意されていて、七輪で焼いて食べてもいい(炭火代200円・税込)。
▲これで約400g

焼いて食べるときは、まずはハサミで石突きを切り落とし、次に軸と傘を切り離す。石突きは食べられないが、軸は食べられるので手で半分に裂いておく。
ちなみにシイタケは水で洗わないほうがいい。グアニル酸は水溶性なのでうまみが逃げてしまうそうだ。
▲石突きを切り落とす
▲軸と傘を切り離す
▲軸を縦に裂く

焼くときは、最初は傘の内側を下にしてグアニル酸をとじこめる。トングで裏返してみて内側が黄色くなってきたら、こんどは外側を下にして焼く。傘の内側に小さい水泡(それがグアニル酸!)がでてきたら食べごろだ。このあとにまた裏返すと水泡が落ちてしまうので要注意。焼き時間は5分といったところだろう。
▲内側が黄色くなったものは裏返す
▲中央のシイタケの右上に小さな水泡が光るのが見えるだろうか

シイタケ嫌いがシイタケを好きになる味

調味料は塩としょうゆを用意してくれる。まず塩で食べてみた。
ひと口噛むと塩で引き立てられた甘さが口の中に広がる。じつは私はしいたけのにおいが苦手なのだが、まったく気にならないどころか、香ばしいにおいにすぐにふた口目が食べたくなった。
しょうゆのほうは、しょうゆのうまみも合わさってバーベキューで肉を食べたような濃厚さを感じた。
食感はコリコリ、プリプリとしっかりしている。
▲焼きたてに塩をふる

「内沼きのこ園」では、シイタケ以外のきのこも栽培している。
マイタケはコナラの原木を土に埋めて菌を育てる。マイタケは本来標高800mくらいの霧の出るような土地に生えるので、菌が育ってきたらビニールで覆って内部を霧で湿らせる。

このほかクリタケやヒラタケ、ナメコ、霊芝(レイシ)などを栽培しているが、これらシイタケ以外のキノコは、その年の気候によって収穫時期が異なり、それを予測するのがむずかしいのと、収穫量が少ないこともあって、収穫体験の対象にはしていない。
ただし、ちょうど収穫時期にあたれば、併設のカフェ「ぴるつ」で食べることができる。
▲ここの地面にマイタケの原木が埋まっている

カフェで本格的なきのこ料理を堪能

「ぴるつ」では名物のピザを食べてみた。スライスしたシイタケ(4~5本分!)とベーコン、青ネギのみというシンプルなピザだが、うまみは十分で物足りなさはない。ピザペーストには乾燥シイタケの粉末(袋入りを購入できる)を入れている。レシピはフレンチのシェフのアドバイスを受けたそうで、料理は内沼さんの娘さんが担当している。
▲「きのこたっぷりぴるつ特製ピザ」(Mサイズ、1,100円・税込)
▲「ぴるつ」の店内
▲乾そうシイタケも販売

「内沼きのこ園」のよさは、シイタケを採って食べられるだけでなく、よいシイタケの見分け方や上手な焼き方を知ることができることだと思う。
シイタケを持ち帰る場合は、紙袋のような通気性のよい容れ物に入れる。その日に食べられないならば、密封袋に入れて冷凍するとグアニル酸が損なわれず、3か月くらいはおいしく食べられるそうだ。
大塚真

大塚真

編集者・ライター。出版社兼編集プロダクションの株式会社デコに所属。近年編集した本は、服部文祥著『アーバンサバイバル入門』、『加藤嶺夫写真全集 昭和の東京』シリーズの「4江東区」「5中央区」(ともにデコ)ほか。ライターとしては『BE-PAL』(小学館)などで執筆。

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