九州ブランド食材の代表格「呼子のイカ」。人気店「萬坊」で旨さの背景を知る

2016.10.19 更新

佐賀県唐津市呼子町(よぶこちょう)――。小さな港町ながら、その名を全国区にしたのは名物の「呼子のイカ」。波の高い玄界灘で獲れる「呼子のイカ」は、身がしまって弾力があり、その食感と甘みは格別。そしてその新鮮なイカを生きたまま姿造りにする「活造り」を食べようと、呼子は多くの観光客が訪れる人気観光地になりました。今回は、名物「呼子のイカ」の人気の秘密を探りに海中レストラン「萬坊(まんぼう)」を訪れました。

「萬坊」は、「呼子のイカの活造り」と同じく名物となった「いかしゅうまい」発祥の店でもあります。お店は、なんと海の上!駐車場から橋を通って、その名も「海中レストラン」へ進みます。

海の中で食事?水族館感覚で楽しめる海中レストラン

「海中レストラン」は、フロントを通って、海に面した1階の「広間」と、地下(海中)にある「テーブル席」と「小上がり席」があります。
▲「広間」は、障子を開ければ海!という眺望の良さ。通常はついたてにより仕切られていますが、大人数の予約などにも対応できます
▲「小上がり席」。席から海の中が直接見えます!
▲“海中”にも貸切ができる個室があります

「テーブル席」と「小上がり席」は、なんと各席から海中の生け簀を眺められる造りになっています。実はこのレストランは、ぐるりと生け簀を中心に囲むように設計!日本で初めての海中レストランなのだそう。大きな生け簀の前には、生息(?)している魚が図鑑風に書かれていて、水族館感覚も味わえちゃいますね。

「萬坊」が人気店たるヒミツ…
それは海をそのまま利用した生け簀にアリ

今回、ご案内いただいたのは料理長の林田宗雄(むねお)さん。「萬坊」で25年イカをさばき続けていらっしゃる大ベテラン。特別に、生け簀と調理場も見せていただきました。
▲優しい笑顔の料理長・林田さんです

「生け簀」と聞いて私がイメージしていたのは、室内にある水槽で泳ぐ魚たち。
しかし、「萬坊」の生け簀は違いました!何と、海をそのまま利用したものだったのです。
レストランを海に浮かべた理由の一つはコレにありました!
▲調理場の裏にある生け簀

8網あるうち4網がイカ用の生け簀。一つの網に約120kg(約360匹)を泳がせているので、4網とも使用していれば480kgものイカが泳いでいることになります!!
▲生け簀で泳ぐイカ。カメラを向けると緊張したのか怒ったのか、体がみるみる真っ赤に!

「萬坊」では、仲買のほか、個人の漁師さんからも直で仕入れているそう。
「今日、よー獲れたけん」と、漁船から直接この生け簀に卸していかれるのだとか。海にある生け簀ならではですね!

さばき、包丁を入れ、活造りにする…
その時間わずか2分!

生け簀から揚げたイカは、すぐ調理場に。手袋を着けた板前さんが、見事な手さばきでぬめりを取り、内臓を取り、皮を剥いでいきます。
さばく際に使用するこの蛇口。水ではなく、海水が出ているんです。真水を使用すると白く変色するのが早いため海水にしたそう。これもなるべく活きが良い状態でお客様に提供するため。へぇ~!!

皮を剥いだ後は、別の板前さんにチェンジ。手袋などを外して包丁を握るまでの時間をロスしないため、と聞いて…もう何だか、その職人魂に感動です…。美味しくいただけるようにこれだけ工夫してもらって、イカも嬉しかろうよ…。
別の板前さんが包丁を引きます。が、イカが透明すぎて見えない!
カメラマンさん、アップで撮ってくださ~い!
アップで撮影したのがこちら。この透き通った身に、素早く包丁を引いていきます。
そして完成した活造り。これをお皿に盛りつけて、お客様のもとへ!
生け簀から調理場に運んできて、この間およそ約2分。(カメラマン泣かせ!)
イカの鮮度を守るため、この2分に様々な工夫がなされていました。
美味しさの裏にはこんな創意工夫があったのですね。

いよいよ食事タイム
新鮮なイカをいただきま~す!

職人さんの技と工夫と努力の賜物、「イカの活造り」。さっそくいただきます!
一番人気はこちらの「いかコース」2,860円(税込)。

来ました来ました!透き通ったイカが~!!
もちろん、まだ生きているので足や身はうねりを作り動いています。
七色に光る眼は新鮮さの証!う~ん、美味しそうっ!
美しい包丁の目が入った白く透き通った身を、箸で持ち上げるとイカの身を通して後ろの背景まで見えます!

九州の甘い醤油を付けて、ぱくっ!

コリッコリの食感と、甘み、そして噛むほどに口に溢れる旨みに、しばし悶絶…。
もちろん呼子で何度も食していますが、その度に「やっぱり呼子のイカ、最高~」と言わずにいられません。
▲うねうね動くケンサキイカ

「呼子のイカ」は、イカの種類を限定していません。4月から11月下旬まではケンサキイカ(ヤリイカ)、12月~3月まではササイカやアオリイカが提供されます。いずれも鮮度抜群のため美味に変わりはありませんが、人気はケンサキイカの方が高いそう。

林田料理長曰く、9月~11月にかけてがケンサキイカの一番美味しい時期だそうなので、旬の今こそお勧めです!

活造りだけじゃありません。カラリと揚がった天ぷらも絶品です。サクッと噛めば、中にはプリッと弾けるイカの身。「萬坊」では天つゆが付いてきますが、希望があれば塩でもOKです。
▲サックサク、アツアツの天ぷら

「呼子のイカの活造り」は“後造り”してもらえるのが特徴。後造りとは、活造りで身を食べた後のゲソや残った身を、天ぷら・塩焼き・煮付けにしていただけます(店舗によって異なります)。「萬坊」では、3つとも味わえるので、さっき食べた天ぷら以外の2つで悩んでいたら「2つとも良いですよ」と料理長のお言葉!

どれか1つを選ぶと思っていたので驚き!中には1杯分を3等分して、天ぷら・塩焼き・煮付け全部ください!って方もいらっしゃるそうです。
「じゃあ、塩焼きと煮付け、両方お願いします!」

しばらく待つと、到着しましたよ。「塩焼き」と「煮付け」が!
▲さっぱり荒塩をまぶして焼いた「塩焼き」
▲甘辛い「煮付け」。ご飯にぴったり!

どちらも美味ですが、個人的にはお酒を飲んでいたら「塩焼き」、ご飯と一緒に食べるなら「煮付け」がぴったりかと。

刺身だけではなく、味を変えて楽しませてくれる「呼子のイカ」。「いかコース」は、活造りと天ぷら以外にも、小鉢・御飯・お吸い物・香の物・フルーツ…そして忘れちゃいけないのがそう、「萬坊」発祥の「いかしゅうまい」も。この「いかしゅうまい」、今や博多の明太子と人気を二分する九州土産とも言われています。
▲コースにつく「いかしゅうまい」。辛子を付けてどうぞ

あの「いかしゅうまい」の誕生も、
先代料理長の創意工夫から

「いかしゅうまい」が誕生したのはおよそ30年前。イカが余る冬場に、無駄にせず何か作れないかと当時の料理長が考えたから。
そこで、イカと魚のすり身、玉ねぎ、そしてふっくらとした食感を生み出す「卵のもと」(卵と油を混ぜ、攪拌したもの)を入れたしゅうまいを作って、店舗で提供したところたちまち評判になり、お土産や贈答用の商品にも展開。現在に至ります。
▲お土産用は、大まるサイズ8個入りで1,188円(税込)で販売(写真はイメージです)

自宅でも美味しくいただけますが、やっぱり店内で食べる蒸し立ての「いかしゅうまい」は格別ですよ!
ちなみに、「いかコース」のご飯は、土日祝日のみ追加432円(税込)で、うにご飯もしくは鯛ご飯に変更できます。(数に限りあり)

最後にちょっと違う「萬坊」の楽しみ方を。
ココ「萬坊」、人気店かつ土日祝日は予約ができないため待ち時間が長いことも。
そんな時には、海中レストランの奥にある「観賞用生け簀」はいかがですか?

石鯛やイサキ、アジなどが放たれた生け簀に沿って観賞スペースが設けられており、利用客が自由に観賞できるようになっています。魚の餌(1袋200円・税込)もありますよ。
▲呼子大橋を背に、生け簀に餌やり

素材の良さだけじゃない
職人さんの技と工夫を知るなら現地で!

正直、今では九州各地はもちろん、関東や関西でも「呼子のイカ」を食すことができます。もちろん、そこで食べる「呼子のイカ」も美味しいんです。

でも、現地で食べる「呼子のイカ」は感動が違う、と言えます。
少しでも新鮮で美味しいものを提供できるように、と努力し創意工夫している板前さんたちに出会い、そう断言できるようになりました。

これから一番美味しい時期になります。
“本物”の「呼子のイカ」を食べに、ぜひ足を運んでみてください。
桑野智恵

桑野智恵

フリーの雑誌ディレクター/ライター。福岡生まれ、福岡育ちの博多女。3つの出版社を渡り歩き、雑誌編集歴20年弱。食育アドバイザー、フルーツ&ベジタブルアドバイザー。

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