鉄道グルメと駅内温泉、名物駅長に会う山形線&山形鉄道の旅/古谷あつみの鉄道旅 Vol.12

2016.11.03

みなさん、こんにちは!古谷あつみです。これまでさまざまな鉄道旅を提案してきましたが、みなさんの旅の楽しみとはなんですか?今回は、グルメにスポットを当て、山形県の「駅グルメ」を巡ります!鉄道ライターの土屋武之さんと、レイルマンフォトオフィスの村上悠太カメラマンと一緒に、「乗って美味しい鉄道旅」を取材してきました。

今回の見どころはここ!

1.昔懐かしい、立ち売り販売
2.米沢駅の名物駅弁!
3.え!?駅の中に温泉が!?
4.山形鉄道フラワー線、宮内駅の名物駅長

1.昔懐かしい、立ち売り販売

▲JR福島駅からスタート!

旅の始まりは福島駅。新幹線に乗れば、東京からあっという間に到着です。
ここから山形県へと向かいます。さぁ、どんなグルメと出会えるのでしょうか?
▲自分でボタンを押して乗り込む

まずは福島から、米沢に向かう奥羽本線(福島~新庄間の愛称は「山形線」)の普通列車に乗り込みます。
押しボタン式の半自動扉は都会では珍しいので、旅の気分が高まって、なんだかワクワクしちゃいますよね。
▲山深い板谷峠を走る山形新幹線「つばさ」※「つばさ」は峠駅には停車しません

まず目指すは峠駅。
その名の通り、福島・山形県を分ける板谷峠の頂点に近いところにある駅で、標高626mと、奥羽本線で最も高い地点にある駅でもあります。
列車は私たちを乗せて、急勾配をどんどん登ってゆきます。窓の外には、ちょうど実も食べごろなっている梨畑と、美味しそうなお米が実る田んぼが広がります。
▲ところどころに、廃止されたスイッチバックの痕跡が残る

1992(平成4)年に山形新幹線が開業して「つばさ」が奥羽本線へ直通するようになるまで、急勾配に対応するため赤岩・板谷・峠・大沢と連続する4駅が「スイッチバック式」になっていました。廃止された当時の引き込み線が一部、今も残っているのが見えます。
なんだかガレージのような建物ですね。
▲峠駅のホームはスノーシェルターの中にある。以前はスイッチバックするための分岐点を覆っていたもの

目的の峠駅に到着です!
こちらも不思議な造りの駅。ホームを覆う建物は、スノーシェルターといい、雪深い気候から線路や列車を守るためのものなんだそうです。
▲峠の力餅はホームで立ち売りされている!停車時間は約30秒しかないので注意!

扉が開くと、どこからともなく男性の声が聞こえます。
「峠の力餅~。」
大きな声なのに、どこか優しい声。
そう、ここでは昔懐かしい駅での立ち売りが今でも行われているのです!
▲「峠の力餅」を買うのなら、1,000円札をあらかじめ用意しておき、停車したらすぐ声を掛けよう

ホームでの立ち売りから購入するのは、人生初体験!
なんとなく、私の顔が緊張しているのがわかりますか?

なお、「峠の力餅」の立ち売りがあるのは、基本的に峠駅発8時台~18時台の上下各3本の普通列車発着時。土・日・祝日は7時台の列車でも販売するとのことです。
休みはありませんが、売り切れてしまった場合は、その日の販売を終了します。
▲峠の力餅(1,000円)

古くから、この駅の名物になっている「峠の力餅」は、駅前の「峠の茶屋 力餅」が製造しているものです。
「峠の力餅」は米沢駅近くや山形新幹線の車内でも購入できますが、峠駅のものとは価格や味が違うそうです。まさに、ここでしか味わえない味なんですよ!
ふわふわのお餅に包まれた餡子は、くどくなく、優しい甘みで、どこか懐かしい味わいです。甘いものが苦手な私でも、ペロッと食べてしまいました。

さぁ、美味しい鉄道旅が本格的に始まりました。

2.米沢駅の名物駅弁!

▲米沢駅に飾られている米沢牛の大きな像

さて私たちは、峠駅に続いて米沢駅へやってきました。
米沢といえば…美味しいお米と、美味しいお肉!!食いしん坊、古谷あつみの血が騒ぎます!
▲米沢駅1番ホームに並ぶ、2軒の駅弁売店。右が新杵屋で左が松川弁当店。位置は、毎日交代するとのこと

米沢駅の新幹線ホームには、「牛肉どまん中」が名物の新杵屋と、「すきやき弁当」が名物の松川弁当店の売店が並んでいます。
▲米沢駅の名物駅弁、「牛肉どまんなか」(1,250円)と「すきやき弁当」(900円)

私は「牛肉どまんなか」を、土屋さんは「すきやき弁当」を買いました。どちらも有名な駅弁なので、美味しいのはわかっています。早く食べたくて、早く食べたくて…。
▲「すきやき弁当」(左)と「牛肉どまんなか」(右)の中身

見てください!どちらも凄いボリュームです!お肉がふんだんに盛り付けられていることが、見てもわかりますね。

古谷「うん!この、甘辛く味付けされたお肉がたまらなく美味しいです。牛そぼろと、牛肉煮の二種類の味が楽しめるのが嬉しいです。お米も美味しいし、付け合わせのおかずも、気が利いているものばかりで、お箸が止まりません!土屋さんの『すきやき弁当』はどうですか?」

土屋「今でこそ『牛肉どまんなか』が知られているけど、国鉄時代からの伝統がある米沢駅弁といえば『すきやき弁当』だよ。中学生で初めて東北を鉄道で旅した時、これを買うのが楽しみでさ~。あれから何十年も経ったけど、昔から変わらない甘辛い牛肉のすきやきと、味がしっかり染み込んだシラタキがなんといっても美味しい!」
▲「三味牛肉どまんなか」(1,250円)

「牛肉どまんなか」は、今や東京駅の駅弁売店でも購入できるのですが、こちらの「三味牛肉どまんなか」は、米沢駅限定なんだそうです。スタンダードな牛肉どまんなかに加え、塩味と、みそ味の牛肉も楽しめるお得な逸品です。

3.え!?駅の中に温泉が!?

古谷「山形県の鉄道って、美味しいですね…。」
土屋「いや、鉄道自体は美味しくないだろ…。」
古谷「でも、もうお腹いっぱいで入りません。」
土屋「腹ごなしをするのに、ちょうどいい駅があるんだ。行こう!」
▲駅と温泉が一つになった高畠駅

土屋さんが教えてくださった駅とは、高畠駅のこと。
米沢から山形方面行きの列車に乗って、12分ほどのところです。
外観は普通のオシャレな駅ですが、腹ごなしをするのにちょうどいいとは、どういうことなんでしょうか?
▲改札口のすぐ脇に温泉の入口がある!その隣りは観光案内所

なんと、この駅のなかには天然温泉があるんです!
改札の隣に見えているのが、駅内温泉「太陽館」。とっても不思議な光景ではないですか?駅の電光掲示板と温泉の暖簾…。なんだかアンバランスなように思えて、しっくりきている組み合わせです。
お風呂に入れば、お腹が空くということ。興味津々で、お風呂に入ってきます!
入浴料は300円!これはひと浴びしない訳にはいきません。
▲電車を降りて、すぐ温泉に入れる!

ふぅ~!サッパリしました。温泉から列車が見える訳ではないのですが、時折、列車の音が聞こえるんですよ。利用客も、地元の方が多いように思いました。地域から愛される温泉なんですね。
泉質はアルカリ性単純泉で、サラッとしたタイプ。お湯は少し熱め。列車の待ち時間に入るには、ちょうど良いお湯でした。もうポカポカです!駅前で涼んでいると気持ちよく、お腹が減ってきました(笑)
という訳で次のグルメです。
▲高畠駅にも「高畠グルメ駅弁」があった!

こちらは、高畠駅名物の「高畠グルメ駅弁」です。今、話題になっている駅弁なんだそうですよ!

高畠町内の焼肉店「りんご苑」が製造しており、駅舎内の売店で購入可能。第7回地産地消給食等メニューコンテストの外食・弁当部門で東北農政局賞を受賞した、高畠の地元グルメがいっぱい詰まったお弁当です。
人気があってすぐ売り切れるので、前日までの予約をお勧めします。
▲話題の駅弁をいただきます!

では、いただきまぁ~す!こんなにボリュームがあるのに、1,080円なんですよ!
高畠産のお米、つや姫を使用したおにぎり、高畠産のお漬物や、ボリューム満点の高畠産豚カツ。山形牛カルビめしのソースには、高畠産のラ・フランスでつくられたステーキソースが使用され、とことん高畠産にこだわった駅弁です。
豚カツは本当にやわらかくボリュームがあり、食べ応え抜群です。カルビめしは、口いっぱいにソースのいい香りが広がります。
高畠駅に来たならば、外せない駅弁です。

4.山形鉄道フラワー線、宮内駅の名物駅長

▲山形鉄道赤湯駅は、ログハウス風

さぁ、山形の駅グルメを目いっぱい楽しんだ私たち。土屋さんが、最後に会わせたい駅長がいるということで、山形鉄道へ向かいました。
始発の赤湯は高畠の隣りの駅。普通列車に5分ほど乗れば、到着です。

古谷「会わせたい駅長って誰ですか?」
土屋「名物駅長がいるんだ。」
古谷「名物駅長って…。ネコ駅長とか…イケメン駅長とかですか?」
土屋「もしかするとイケメンかもね。」
古谷「イケメン!?すぐ行きましょう!」
▲ベニバナをあしらった山形鉄道のラッピング車

赤湯から名物駅長がいる宮内駅までは、この可愛らしくラッピングされた、山形鉄道フラワー長井線の列車で移動します。描かれているのはベニバナで、この沿線の名産なんだそうです。

土屋「駅長には勤務時間があるから急ごう!」
古谷「あら。定時に帰るんですか?残業はしないんですね。」
土屋「そう、残業できない駅長なんだ。」
▲夕暮れ時に宮内駅に到着!

目的地の宮内に到着したのは、ちょうど夕暮れ時。田畑と住宅街のなかにある宮内駅は、駅舎の反対側から通り抜けできる構造になっており、地元の子供達や、犬の散歩までしている人もいて、なんだかホッコリする雰囲気です。
でも、モタモタしていられません。駅長が帰ってしまうので、急がねばなりません!
▲宮内駅舎内に駅長がいる…

さぁ、いよいよ駅長とご対面です。駅長は駅舎のなかにいるとのこと!

古谷「あれ…イケメン駅長はどこですか!?って…まさか!」
土屋「そう、君の好きな…。」
▲「もっちぃ駅長」にご対面!

古谷「ウサギじゃないですか!!かわいい!!名物駅長って、ウサギのことなんですね。」
土屋「隣にいるウサギたちは、駅員なのさ。」
古谷「可愛すぎます!ネコ駅長は知っていましたが、ウサギ駅長は初めて知りました。」

ウサギ愛好家の私としては、たまらない!この駅の名物駅長はウサギだったのです。そして、イケメン…ではなく、可愛らしいウサギの女の子、もっちぃ駅長です!
ウサギ駅長は、もっちぃが初めてなんですよ。
▲ぴーたーは、おくつろぎ中…

あらあら、扇風機の風で気持ちよさそうに涼んでいるのは、名物駅員のぴーたーです。とっても愛らしい表情ですね。
こうして、駅長と駅員さんの3羽が勤務しています。ウサギは、とってもデリケートな動物なので、触れることはできませんが、皆さんを可愛らしく迎えてくれます。

なお、もっちぃ駅長たちと会えるのは10時~17時だけ。水曜日はお休みです。
▲宮内駅では、いろいろなグッズも販売

駅構内では、可愛らしい「もっちぃ駅長グッズ」も販売。ぬいぐるみや、タオル、Tシャツなどがあります。旅の記念におひとついかがでしょうか?
▲スタンプにも、ウサギがあしらわれている

駅スタンプも、もちろんウサギ柄。思わず、たくさん押したくなりますね。
それにしても、なぜウサギ駅長なんでしょうか…。
▲山形鉄道を救った?ウサギたち

山形鉄道は元国鉄の長井線。1988(昭和63)年に第三セクター鉄道に転換されました。
しかし、2004(平成16)年公開の映画「スウィングガールズ」のロケ地として有名にはなったものの、もともと少なかった利用客は、さらに減るばかり…。お客さんを増やすためには、何か鉄道をPRする手段を考えなければなりません。

そんなとき、ひとりの新入社員の女性が、駅にミニ動物園を作ってはどうか?と提案しました。しかし、出てくるのは消極的な意見ばかりです。
女性社員は、ウサギだけでも飼ってみてはどうかと、懸命に掛け合います。そしてようやく、山形鉄道にある白兎(しろうさぎ)駅にちなんだ1羽の白ウサギと、2羽の茶色いウサギを飼育することになりました。
▲駅の出入口脇にも、ウサギの像が置かれている

しかし白兎駅は無人駅で、駅舎の構造や管理などの問題があったため、有人駅の宮内で飼育することになりました。
けれども宮内は一見、ウサギと何の関係もなさそうで、周囲を説得できません。
どうしようか悩んでいたところへ、熊野大社の伝説を知ります。宮内駅にほど近い熊野大社には、本殿の裏手の彫刻にウサギが3羽、隠し彫りされており、すべてを見つけることができると幸せになれるという言い伝えがあったのです。
こうして、宮内駅と3羽のウサギが、ひとつに結びついたのです。
▲宮内駅で日が暮れた

駅長に就任したもっちぃ駅長は瞬く間に人気者になり、フラワー長井線への注目度も大きくアップしました。

古谷「なんだか感動しました。女性社員さんの想いが通じたんですね。」
土屋「利用客に笑顔になってもらいたい。そんな強い思いが感じられるね。」
古谷「今日は、お腹いっぱい、心も体もポカポカです。」
土屋「そうだね。今日はいい一日だった。」
▲取材も終わって、夕暮れ時の宮内駅でちょっとしんみり…

駅での立ち売りとの出会いから始まり、豪華駅弁と珍しい駅ナカ温泉を堪能した今回の鉄道旅!
山形鉄道を守ろうという人々の思いにも触れ、最後は珍しくしんみりムードで終わりました…。
でも、感動の鉄道旅はまだまだ続きます。

次回、古谷あつみの鉄道旅 Vol.13は、熊本・鹿児島県の「肥薩おれんじ鉄道」へ!

※記事内の価格表記は全て税込です

土屋武之(鉄道ライター)

鉄道を専門分野として執筆活動を行っている、フリーランスのライター・ジャーナリスト。硬派の鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」メイン記事を毎号担当する一方で、幅広い知識に基づく、初心者向けのわかりやすい解説記事にも定評がある。
2004年12月29日に広島電鉄の広島港駅で、日本の私鉄のすべてに乗車するという「全線完乗」を達成。2011年8月9日にはJR北海道の富良野駅にてJRも完乗し、日本の全鉄道路線に乗車したという記録を持つ、「鉄道旅行」の第一人者でもある。
著書は「鉄道のしくみ・基礎篇/新技術篇」(ネコ・パブリッシング)、「鉄道の未来予想図」(実業之日本社)、「きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)、「鉄道員になるには」(ぺりかん社)など。

古谷あつみ(鉄道タレント・松竹芸能所属)

古谷あつみ(鉄道タレント・松竹芸能所属)

小学生の頃、社会見学で近くにある車両基地へ行き、特急電車の運転台に上げてもらったことがきっかけで、根っからの鉄道好きとなる。 学校卒業後は新幹線の車内販売員、JR西日本の駅員として働く。その経験から、きっぷのルールや窓口業務には精通している。 現在はタレント活動のほか、鉄道関係の専門学校や公立高校で講師をしている。2015年には、「東洋経済オンライン」でライター・デビューし、鉄道旅行雑誌「旅と鉄道」等で執筆活動中。

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