童話の世界を散策!宮沢賢治ゆかりの地「イーハトーブ」を訪ねる

2016.10.27 更新

『雨ニモマケズ』や『銀河鉄道の夜』などの作品で広く知られている詩人で童話作家の宮沢賢治。賢治が生まれ育った花巻市にはゆかりの地や童話のモチーフなどが点在し、遠方からも賢治ファンや旅行客が訪れている。今回は、そんな「イーハトーブ」(賢治が「理想郷・岩手県」という意味で使っていた言葉)を巡った。

▲宮沢賢治ゆかりの地めぐりに出発!花巻農業高校内にある賢治の銅像にまずは挨拶

賢治童話の世界を楽しく学べる「楽習」施設「宮沢賢治童話村」へ

花巻市は盛岡市から電車で約40分。新幹線の駅や空港も有り、北東北の玄関口とも言える。
まずは、JR新花巻駅から車で約3分の場所に位置する「宮沢賢治童話村」(入村無料)へ。こちらは、大人も子供も賢治童話の世界に楽しく触れることができる施設だ。
映像や音などでファンタジックな童話の世界を体感できる「賢治の学校」(有料)をはじめ、童話に出てくる動植物について詳しく学べる「賢治の教室」、散策路の「妖精の小径」や「ふくろうの小径」「山野草園」などがある。
▲童話『銀河鉄道の夜』に登場する銀河ステーションを再現した童話村の入り口!この門をくぐると一気に童話の世界
▲まずはメインとなる「賢治の学校」に行ってみよう
▲「賢治の学校」へと続く、星座が散りばめられた道

「賢治の学校」の中に入ると、すぐに開放的な空間「ファンタジックホール」が現れる。植物や雲の形をした椅子に座り耳を澄ますと、スピーカーからは、子供の笑い声や木々のざわめきが聞こえてきて一気に空想の世界へと誘ってくれる。
▲真っ白な世界のファンタジックホール。銀河が描かれた木の壁画がある

この他、学校内は4つのテーマゾーンに分かれている。大きな万華鏡の中に入って満天の星空を感じることができる「宇宙の部屋」、昆虫の目線を体験できる「大地の部屋」、花巻の街の上空を飛んでいるような感覚を味わえる「天空の部屋」、童話『やまなし』の世界を彷彿とさせるような、川の流れとせせらぎを感じられる「水の部屋」がある。部屋に入った瞬間のワクワク、次の部屋へ進むドキドキを味わってみて。
▲巨大万華鏡でできた「宇宙の部屋」。あ、さそり座発見!
▲「大地の部屋」では大きなバッタがお出迎え~!
▲「賢治の学校」エリアから出て「妖精の小径」へ。森の中を1kmほど散策できる。あちこちに設置されたスピーカーから、童話の朗読も聞こえる

次に向かったのは、5棟のログハウスからから成る「賢治の教室」。童話に登場する植物、動物、星、鳥、石について楽しく学べる場所だ。
▲5棟のログハウスが並んで建っている「賢治の教室」

花巻の大自然は賢治作品にとって欠かせない要素。花巻に生息する動植物がどの童話にどのように登場しているのかを立体的な展示で知ることができる。突然部屋が暗くなったかと思うと光が瞬いたり、動物や鳥の鳴き声が聞こえたり…。ビジュアル的にも楽しめるので宮沢賢治初心者におススメ。
▲こちらは「星の教室」。賢治童話にとって星は欠かせない存在
▲童話村内のショップ「白鳥の停車場」には、マニア心をくすぐる鉱石や化石がいっぱい

初めて訪れた宮沢賢治童話村。名前のイメージから子供向けなのかな?と思いきや大人も十分に楽しむことができる。賢治をちょっぴりしか知らなくても大丈夫!まずはこの童話村から賢治の世界を覗いてみよう。

賢治の世界にどっぷり浸かれる「宮沢賢治記念館」

次に訪れたのは、賢治の愛した山、胡四王山(こしおうざん)の中腹にある「宮沢賢治記念館」。ここはじっくりと賢治を知りたい人におススメ。賢治の世界との出会いの場とされ、作品に至るまでの創作過程、最新の研究成果などが展示されている。
▲童話『猫の事務所』に登場する「書記」が入口で待っている
▲平成27年春にリニューアルされた展示内容は見ごたえたっぷり

詩人や童話作家として有名な宮沢賢治だが、化学、芸術、宇宙、宗教、農業にも深い理解を抱き、実践していたことを貴重な資料から垣間見ることができる。見どころは常設展示室。賢治の自筆の原稿や愛用品を目の前にすることで、賢治の感性を感じられる。大スクリーンには賢治の心象世界が映し出されている。
▲賢治と妹トシが実際に使用していたチェロとバイオリンも間近に見ることができる
▲館内で自由に押せる『雨ニモマケズ』のスタンプ。猫の形の用紙はスタッフさんお手製

平日でも来館者が途切れることはほとんどなく、中には数時間かけて見ていくファンも多いとか。童話村では童話と楽しく触れ合い、記念館ではじっくりと賢治に向き合う。両施設は徒歩10分程しか離れていないので両方訪れてみて。

童話の世界を再現した「山猫軒」で地元の食材をいただく

記念館から徒歩3分程で行けるレストランが、童話『注文の多い料理店』の中に登場するレストランと同名の「山猫軒」。道に迷った狩人2人が、偶然見つけたレストランで食事をするつもりが、逆に山猫に食べられそうになる、という物語。もちろん、こちらのお店では山猫に食べられることはないのでご安心を…!
▲童話の中から飛び出してきたような可愛らしい外観にテンションが上がる!
▲童話の中でお店の前に書かれていた文章まで忠実に再現
▲店内は落ち着いた雰囲気。食事の他にカフェメニューも豊富
▲1番人気は地元の食材をたっぷりと使用した「イーハトーブ定食」(1,550円税込)。ふっくらとおいしいご飯もついています(季節により一部内容は変更)

人気の「イーハトーブ定食」には、花巻産の白金豚(はっきんとん)が使われている。白金豚の名前の由来は、賢治が童話『フランドン農学校の豚』の中で豚を白金と同等のものだと例えたことから。肉質がやわらかく、しっとりとしている。他にも「すいとん」や「じゅんさい」など地元ならではの味を楽しむことができる。
▲「でくのぼう」(660円税込)は、つきたてのお餅が小豆、ゴマで楽しめる。地元花巻の漬物「金婚漬」となますもついてくる

『雨ニモマケズ』の一節からとったユニークな名前のセット「でくのぼう」は食べ方も面白い。地元で「みご」と呼ばれる稲穂の中心部分を交差させることで、お餅を一口サイズに切っていく。ほんのり甘味があり柔らかいお餅を2つの味で楽しむことができる。
▲「みご」を使った切り方は、刃物などを使用せずにお餅をキレイに切ることができる花巻に昔から伝わる方法
▲き、切れた!切れた瞬間のムニュっとした感触が面白い

賢治ゆかりの地や童話のモチーフをめぐってみよう

他にも、花巻市中心部には賢治ゆかりの地や童話のモチーフが数多くあるので、地図片手に気になる場所を散策してみよう。
▲新しい農村の形を目指して賢治が設立した私塾「羅須(らす)地人協会」(場所:花巻市葛1-68 花巻農業高校内)。賢治は畑で珍しい海外の野菜や花を取り寄せて育てていたそう
▲協会の建物内で、賢治は農民たちとレコードコンサートや演劇を楽しんでいた
▲賢治が命名した「イギリス海岸」ほとりにある無料お休み処「くるみの森」(場所:花巻市上小舟渡ほとり)。その横には、童話『月夜のでんしんばしら』をモチーフにした電信柱もある
▲賢治が教鞭をとった花巻農学校跡地の「ぎんどろ公園」(場所:花巻市若葉町3-16)には休憩する賢治のモニュメントがある

花巻市内には賢治ゆかりの地が数十カ所点在している。今回散策したこれらのスポットはJR花巻駅を中心に5km圏内に有り、ゆっくり巡っても40分程で見て回れる。街中にあふれる童話モチーフを探して歩くのも楽しい。
▲実際のバス停に建てられている、『銀河鉄道の夜』に登場する白鳥の停車場
▲賢治の愛した田園風景。賢治はこの地を理想郷とし、「イーハトーブ」と呼んだ

賢治を知っている人も知らない人も一度は訪れてみてほしい。知れば知るほど、その多彩な魅力にひきつけられていくだろう。

撮影:前川寛子
八木絵里

八木絵里

劇団ゼミナール所属。飛び道具系女優として活躍する傍ら、声の仕事やライターにも挑戦。好奇心旺盛な獅子座のB型。(編集/株式会社くらしさ)

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