日本地ビール0号と呼ばれる厚木のブルワリー サンクトガーレン

2015.06.18 更新

今でこそ日本各地で見かけるようになった地ビール。その歴史は思いのほか浅く、日本で地ビール醸造が解禁になったのは1994年のことでした。当時日本で禁じられていた地ビール造りに風穴を通したのは、神奈川県厚木市に拠点を置く小さなブルワリー「サンクトガーレン」。ビール職人、岩本さんが醸造するビールは、個性の強いイキなものばかりです。

エールビール一貫主義のブルワリー

ビールにも2つの違った種類があることをご存じでしょうか?ひとつは、日本人にはお馴染みの「ラガービール」。10度前後でゆっくり発酵させるもので、すっきりとした味わいが特徴です。もうひとつが「エールビール」。20度前後で一気に発酵させるため、フルーティーな香りに満ちたビールになるんだとか。

「1種類のビールしか知らないなんて、もったいないと思いませんか。僕は日本にエールビールを根付かせたいんです」
そう話すのは神奈川県厚木市にあるマイクロ・ブルワリー、「サンクトガーレン」の岩本伸久社長。日本で地ビール醸造解禁の波をおこした、いわば日本地ビール界のパイオニア的存在です。

岩本さんが初めてエールビールを味わったのは、1993年、サンフランシスコでのこと。日本のビールにはない芳醇な香り、しっかりとした味わい。「こんな美味しいものを知らなかったなんて、今までの人生損していた!」そう感じたんだそうです。同時に沸いたのが、「なぜ日本にこんなビールがないのか…?」という疑問。というのも、当時の日本では、小規模でのビール醸造が認められておらず、一般的なラガービール以外は造られていなかったのです。

日本で地ビール解禁の波をつくる

仕方なく岩本さんは、サンフランシスコで独自のビール造りを開始。日本に逆輸入するかたちで、エールビールを広めようと仕掛けたのです。するとその様子を、アメリカのメディアが皮肉たっぷりに取り上げます。

「岩本のビール造りの夢は叶った。ただしそれは、日本ではなくアメリカで」

そのニュースはたちまち日本の政界にも飛び火。そして1994年、日本における小規模での地ビール醸造が認められるようになったのです。俗にいう、“地ビール解禁”です。
岩本さんが地元の厚木に戻って地ビール造りを始めたのは、それから3年後、1997年のこと。
世界で一番最初に醸造免許を取得した、スイスの「サンクトガーレン修道院」に習って、蔵名は「サンクトガーレン」と名付けました。

飲む相手のことを考えて生まれたスイーツビール

はじめは、自分が飲みたいと思うビール造りだったという岩本さんが、そのスタンスを変えたのは、今も一緒に働いている社員の一言だったといいます。

「ビールは苦いから嫌い」

さすがに社内の人間に、「だったら飲まなければいい」とは言えなかったという岩本さんは、そこから多くの人に飲んでもらうためのビール造りを手掛けるようになります。

こうして、苦さが嫌いな人向けのスイーツビールが誕生。「スイートバニラスタウト」は、2007年度の「ジャパン・ビア・フェスティバル」で来場者人気投票1位を獲得しました。
また、地元・神奈川県が12年かけて開発した幻の柑橘、「湘南ゴールド」を使ったフルーツビールは、かくいう私も大のお気に入り。果汁のみならず、皮も実も丸ごと使って発酵させるため、ジューシーな風味に加え、香りはオレンジ、後味にマーマーレードのような柑橘特有の苦味を感じる逸品です。
「海外でビールを頼んだら、必ず“何のビールにするか?”って聞き返されます。ラガーなのかエールなのか?はたまた銘柄は?日本でも色んなビールが指名される文化をつくりたい。そのために、これからも肉に合うビール、魚に合うビール、デザート向けビールと、様々なビールを造り続けます」

岩本さんがそう話す通り、ワインのように「次はどんな風味のものにしよう?」と2杯目、3杯目まで楽しめてしまうサンクトガーレンのビール。この夏も各地のビアフェスに出店されるようなので、ぜひこの機会に味わってみてはいかがでしょうか!?

サンクトガーレンのビールが飲めるお店(厚木市内)

サンクトガーレンのビールが飲めるビアフェス

長谷川浩史・梨紗(株式会社くらしさ)

長谷川浩史・梨紗(株式会社くらしさ)

広告出版社を退職後、世界一周、日本一周を経て「くらしさ」を設立。全国各地のモノ・コト・ヒトを伝え、つないでいく活動に尽力している。全国の仕事人に会いに行ける旅「Life Design Journey」も運営。http://lifedesign-j.com/

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