まるで生きた日本画!魅惑の日本庭園を誇る足立美術館の楽しみ方

2016.11.02 更新

島根県東部、鳥取県との県境に位置する安来(やすぎ)市に、世界中から年間50万人が訪れる人気の「足立美術館」があります。目玉はアメリカの専門誌で2016年までに13年連続日本一に選ばれている日本庭園。横山大観(よこやまたいかん)をはじめとする日本画コレクションも豊富です。日本の美が凝縮した足立美術館の楽しみ方をご紹介します。

スケールが違う!庭園日本一の秘密

松江市内から車で40分、出雲大社からは1時間20分と島根県の主要な観光地から少々離れた場所にある足立美術館。しかし、平日でも朝から多くの人が詰めかけ、外国人客の姿も目立ちます。
▲5万坪の日本庭園が美術館を取り囲む

人々を惹き付けているのが足立美術館の代名詞でもある日本庭園。フランスで権威のある旅行ガイドにおいて、山陰唯一となる三つ星に選出されています。また、アメリカの日本庭園専門誌が実施する日本庭園ランキングでは、2003年から「13年連続日本一」に選ばれているのです。(2016年時点)
▲背後にある山々と調和した日本庭園は毎日違う表情を見せる

6種類ある日本庭園のなかでも最大の見どころとも言えるのが「枯山水庭」。なんと、ここから見える山も、美術館が一部を所有。借景も作品の一部として大切に管理されており、伸びすぎて景観をそこねる木があれば、わざわざ剪定しに行くこともあるのだとか。
▲右上に写る15mの「亀鶴(きかく)の滝」は人工。庭作りへのこだわりが伺える

こちらは横山大観の名画「白沙青松(はくさせいしょう)」を日本庭園で表現した「白砂青松庭」。敷地奥に築かれた人工の滝はなんと落差15m。この滝水が手前の池に注がれるイメージで作られています。白砂も専属の庭師が手洗いし、ゴミなどを取り除き、砂の粒の大きさを選別することで美しい白さを保っています。足立美術館の庭園が海外でも高く評価されているのは、それだけ手をかけられているからなんですね。

日本庭園を「生きた日本画」として楽しもう!

昭和45(1970)年に開館した足立美術館。創設者である足立全康(あだちぜんこう)は「庭園も一幅の絵画である」という信念のもと、平成2(1990)年に亡くなるまで庭作りに心血を注ぎました。
▲美術館の中から観た庭園。窓枠が額のような役割を果たし、まるで絵画のよう
▲同じ庭園でも雪が積もると景色が一変!季節ごとに訪れてみたくなる

館内には、鑑賞者を楽しませる工夫がちりばめられています。季節、天気、時間帯などによって印象が変わる日本庭園を「生きた日本画」として鑑賞してみましょう。なお庭園は、館内または建物の周りの廊下やテラス風の場所から鑑賞できるようになっており、庭園の中に立ち入ることはできません。
▲床の間の壁をくりぬいて作られた「生の掛軸」

足立美術館では掛軸も生!「生の掛軸」がある仏間は、もともと足立全康の生家でした。まだ居住している頃に、自らのアイディアで壁をくりぬいたそうです。それが今では同館の人気鑑賞スポットになっています。
▲窓枠越しに見た「茶室 寿立庵(じゅりゅうあん)の庭」。素敵な鑑賞スポットを発見するのも楽しい

また、スギ苔と赤松を主体として作られた苔庭も必見です。取材に訪れた日は、前日に雨が降っていたので、苔がしっとりとして鮮やかな緑色に輝いていました。

圧巻の横山大観コレクション!

足立美術館で日本庭園と並び高く評価されているのが近代日本画コレクションです。なかでも横山大観の作品は120点と、量・質ともに日本一を誇ります。
▲横山大観特別展示室。音声ガイドを聴きながら鑑賞すれば初心者でも楽しめる

毎年秋季特別展で展示される「紅葉」(昭和6年)は、足立美術館の大観コレクションの中でも最大の作品。その大きさと迫力を目の前で感じてみてください。
▲横山大観「紅葉」の左隻。横3.61m、縦1.63mもの大きさ!
▲横山大観「霊峰四趣・夏」(昭和15年)

富士山を題材にした作品も多数所蔵されています。「霊峰四趣・夏」(昭和15年)は雲の切れ間から一瞬覗いた富士山の美しさが描かれていて、鮮烈な群青が印象に残りました。

その他にも、足立美術館には地元・安来市出身の陶芸家・河井寬次郎や、料理家としても知られる芸術家北大路魯山人らの陶芸作品をはじめ、子供も大人も楽しめるほのぼのとした童画展示コーナーなどがあり、総数1,500点もの美術品が所蔵されています。

池庭に囲まれてランチを楽しむ

庭園と美術品をたっぷり鑑賞してお腹がすいても大丈夫。館内には2つの喫茶室があります。そこで、鯉の泳ぐ池庭に囲まれた「喫茶室 大観」でランチをいただきました。
▲ガラス張りの喫茶室は鯉が泳ぐ池庭にぐるりと囲まれている

今回チョイスしたのは「笹巻きおこわ」(税込1,200円)。奥出雲産のもち米や、島根和牛など地元食材を使ったおこわです。
▲池の鯉を眺めながらの食事。女性でも食べやすい小さめサイズで味噌汁もついている

もちもち食感のおこわの上には、島根和牛・赤貝・うなぎの3種類の具がトッピングされています。赤貝とうなぎは、島根県を代表する湖・宍道湖(しんじこ)で獲れる代表的な魚介類。島根和牛はしぐれ煮に似た甘辛い味付けでご飯によく合います。
▲おこわは3種類の味が楽しめる

池に浮いているような「喫茶室 大観」でのランチは優雅なひとときでした。

日本庭園に囲まれた茶室で、日本画に溶け込むひととき

日本文化を語る上で外せないのが茶の湯。足立美術館には「寿立庵」と「寿楽庵(じゅらくあん)」という2つの茶室があります。「寿立庵」では庭に囲まれた空間で、「寿楽庵」では「生の掛軸」を眺めながら実際にお抹茶をいただくことができます(寿立庵:見学料・抹茶料1,500円、寿楽庵:見学料・抹茶料1,000円 ※いずれも税込)。
▲「寿立庵」に続く延べ段

今回は「寿立庵」で一服をすることにしました。茶室へと続く延べ段を渡って門をくぐると、そこには茶室を利用する人しか立ち入ることのできないプライベートな庭園が広がっています。
▲茶室内からゆっくりと庭園を鑑賞することができる

館内の他の庭と違い、寿立庵の庭だけは庭石伝いに庭園を散策することができます。離れになっているので、静かに過ごすことができます。
▲茶庭を眺めながら一服。鳥のさえずりが心地良い

お茶菓子は2つの茶室で半年ごとに入れ替わります。寿立庵で4~9月(寿楽庵で10~3月)に出されるのは、松江の老舗「風流堂」の「緑風(りょくふう)」(上写真)。上品な甘さの栗ようかんで、足立美術館オリジナルだそうです。

一方、寿立庵で10~3月(寿楽庵で4~9月)に出されるお茶菓子は、同じく松江「三英堂」の「日の出前」という小豆餡の和菓子になります。なお、いずれも足立美術館のミュージアムショップで購入することができます。
▲紅葉の時期の寿立庵。真っ赤に色づいた紅葉が美しい

寿立庵の庭園もまた「一幅の絵画」。紅葉の美しさは目を見張るものがあります。紅葉のピークは毎年11月中旬から下旬頃。茶庭に囲まれて、まるで日本画に溶け込んだようなひとときを楽しんでみたいものです。
▲館内には日本の美を感じることのできるしつらえが至るところに

最後にミュージアムショップにも立ち寄ってみました。足立美術館のミュージアムショップで販売されている商品は、そのほとんどがオリジナル。ここでしか購入できないものばかりです。なかでも目に止まったのがこちら。
▲和三盆(税込1,200円)

足立美術館の庭園のモチーフが象られた和三盆。紅白の水引がおめでたい印象で、ハレの日の贈り物にもぴったりですね。

足立美術館は、日本庭園と日本画という2つの柱が相互に影響し合って唯一無二の魅力を作り出している美術館でした。趣向を凝らした庭園の魅せ方は、日本庭園に馴染みの薄い若い世代をも魅了しています。想像を越えるスケールと美しさを、ぜひ一度その目で確かめてみてください。
賣豆紀有加里

賣豆紀有加里

島根県在住のグラフィックデザイナー。島根県の観光情報サイト、フリーペーパーなどでライターも務める。山陰のおいしいもの・楽しいこと・素敵な場所を発掘するのが趣味。(編集/株式会社くらしさ)

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