沖縄「ぜんざい」を食べ尽くすかき氷旅/小池隆介のかき氷あっちこっち食べ歩きvol.13

2016.10.30

ご当地もののかき氷と言えば、沖縄の「ぜんざい」は外せないだろう。「ぜんざい」と言えば一般的には小豆を甘く炊いた温かい食べ物だが、沖縄の「ぜんざい」はそれとは全く異なり、黒糖で甘く炊いた金時豆の上にたっぷりのかき氷をのせた冷たい食べ物なのだ。秋の風が吹き、かき氷の旗が少なくなって来たこの季節に、沖縄で生まれたかき氷をとことん味わう旅に出てみることにした。

▲「ぜんざいの富士家 泊本店」の「黒糖ぜんざい」420円(税別)

沖縄の「ぜんざい」のルーツを調べると、「あまがし」という粥状の食べ物に行き着いた。旧暦の5月4日、子供の健やかな成長を願う沖縄の行事「ユッカヌヒー」に食べられる伝統食「あまがし」は、緑豆と大麦を甘く煮て冷やしたものだった。

緑豆は、食べ過ぎや食欲がない時に用いられた漢方の材料でもあり、様々な場面で好んで食べられていたようだ。しかし、戦後に米軍物資として出回ったカリフォルニア産の金時豆が、煮崩れせずさっぱりと仕上がることから人気があがり、「あまがし」の豆は緑豆から金時豆に徐々に変わっていったのだそうだ。

この「あまがし」がルーツとなり、沖縄の「ぜんざい」が誕生したのだ。

️昭和にタイムスリップ、懐かしい佇まいの専門店「千日」

那覇市久米にある「千日(せんにち)」は、「ぜんざい」といえばここ!という人も多い地元の人気店だ。提供しているのは、沖縄そばと沖縄では珍しい今川焼きにたい焼き。それから、「ぜんざい」4種類とかき氷2種類というシンプルなメニュー構成だ。
▲「アイスぜんざい」300円(税込)

「千日」のかき氷はとにかく安い。シンプルな「アイスぜんざい」はなんと300円(税込)。イチゴシロップがかかった「ぜんざい」も400円(税込)という安価で、ボリュームは沖縄の中でもトップクラスの大きさだ。机からかき氷のてっぺんまで、20cm近くある圧巻の巨大「ぜんざい」なのだ。
▲「いちごミルク金時」500円(税込)

氷は少し粒子が大きい粉雪状でフワッ、シャリッとした食感が楽しめる。白玉は入らず、豆だけを楽しむシンプルな王道「ぜんざい」だといえるだろう。一人で全部食べられるだろうかと心配になったが、金時豆の煮汁に氷が絡むとなめらかな食感になり、するりするりと心地よく喉を通っていく。
家族で訪れる人も多く、買い物の帰りだろうか、嬉しそうに子供達がかき氷をかきこんでいる。「頭がキーンとしたあ!」という子供の声に家族みんなが笑い合い、そしてまた4人でかき氷を食べ続けていた。

昔見た、懐かしい光景を思い出すような空気の満ちた空間で「沖縄ぜんざいの旅」を緩やかにスタートさせた。

若者が集うダイナーのようなぜんざい屋。「富士家 泊本店」

「千日」と同じく那覇市にある「富士家 泊本店」は、「千日」とは対極にあるような店構えだ。カラフルに彩られた楽しげな看板に、アメリカンダイナーのような雰囲気の客席には閉店ギリギリまで若者が集い活気に満ちあふれている。
「ぜんざい」の他にタコスやタコライス、フライドポテトなど軽食のメニューも多く、観光客だけではなく地元の若者たちにも気軽に行ける美味しいファストフード店として愛されているようだ。
▲「タコス」2ピース340円(税別)

「富士家」では、金時豆の煮汁で氷を作りその氷を使ってかき氷を作っているので、氷が溶けても「ぜんざい」の味が薄くならず最後の一口まで美味しく食べることができるのだ。小さめの白玉がたっぷり添えられていて、ツヤツヤ茶色の豆に真っ白な白玉を合わせるとなんとも旨そうではないか!

氷はやや粗めのフワシャリだが、氷自体に砂糖が入っているので口溶け柔らか。氷の横には沖縄名物の「亀の甲せんべい」が添えられていて、最後のお口直しにしょっぱさが心地よい。

なんだか駄菓子屋で食べた昔のかき氷の記憶が蘇ってくるような味わいに、ほっと気持ちが緩む。
▲「富士家ぜんざい」370円(税別)

もし、この店の近くに住んでいたら、部活の後に仲間と一緒にここに集まるだろう。毎日のように「ぜんざい」を注文し仲間と笑い合いながら食べるのだろう。そして大人になってもまたこの店に戻ってくるのだろう。

絶対食べたい、糸満名物の白熊ぜんざい「いなみね冷し物専門店・お食事処」

那覇からしばらく車を走らせ、やってきたのは糸満市の「いなみね冷し物専門店・お食事処」。ここで絶対に食べたいのは、煮豆の上に大きなミルク氷と果物がのった「白熊」だ。

以前、沖縄を特集した雑誌の写真でこのかき氷を見た時に、いつかこのかき氷を食べに行ってみたい!と思い続けていたあこがれの氷とついにご対面だ!インパクトのあるビジュアル、想像以上のその大きさに驚きの声をあげながら、自分の顔を横に並べて写真を撮りたくなってしまう。
▲「白熊」620円(税込)

ちょっと黄色味がかったミルクがたっぷりかけられた氷は、口に含むと懐かしいミルクセーキのような味がする。氷のキメはとても細かく、舌にのせるとサラサラと溶けてゆく。

沖縄の「ぜんざい」は煮豆の汁と素氷を混ぜながら食べるのが普通なので、上の氷の部分は味がないことが多い。しかしこの「白熊」は、ミルクが全体にかかっているので、まずはミルク味の氷を、次はフルーツを一緒に食べてミルクフルーツ味を、最後には自慢の煮豆を一緒に、三つの味の変化を楽しむことができるのだ。

金時豆は形は煮崩れてないが、柔らかくねっとりとした豆の甘みが感じられる。「他では絶対に出せない味」と胸を張る店主の言葉通り、極上の”沖縄白熊”を楽しむことができた。

「沖縄に着いたらどこにも寄らずに一直線に飛び込んでくる常連さんもいるのよ」という店主はとても誇らしげで、かき氷愛に満ちているなぁと感じる言葉だった。
▲「宇治金時」640円(税込)

お食事処と店名に入っているだけあって、ソーキそばやチャンプルーをはじめ、沖縄らしい定食がメニューにずらりと並んでいて、厨房からはなんともいい匂いが漂っていた。かき氷だけでなく、沖縄の普段の食事も楽しんでみてはいかがだろう。

素朴な白熊と懐かしい沖縄そばの店「丸三冷し物専門店」

糸満ロータリーの近くに店を構える「丸三(まるみつ)冷し物専門店」では、昔ながらの素朴な「ぜんざい」を提供している。沖縄の建物によく見られる、風通しの良さそうな大きな窓を持つ店舗に入ると、アメリカンテイストのテーブルや昭和風情の木のテーブルが並んでいたり、真っ赤な椅子があるかと思えばレトロなビニール椅子があったり、様々な歴史を感じる小物が店の中にあふれている。この店の長い歴史をそれら皆が語っているような気がした。
ここで提供される「ぜんざい」は、20時間かけてじっくりと炊くという柔らかな金時豆に弾力のある白玉、その上にパウダースノーのような細やかな氷がかかった沖縄の素朴なかき氷だ。

金時豆の甘さはかなり控えめ。これなら甘いものが苦手な人でも甘ったるく感じることもないだろう。ミルクは沖縄で有名なコンデンスミルク「ワシミルク」を使っていて、これが沖縄っ子には慣れ親しんだ地元の味なのだという。

最初は「少しクセがあるな」と感じたけれど、食べ進むうちにこのクセがたまらなく美味しくなってきて次から次へと匙が進む。
▲「ぜんざい」350円(税込)

気がつくと沖縄に到着してからこれで4軒目のかき氷。甘いもの続きでそろそろ塩味が欲しくなってきた。タイミングよく他の客が注文した「ソーキそば」が横を通り過ぎ、カツオだしのいい香りが漂ってきた。たまらず、今回初のソーキそばをこの店で頂くことにした。
▲「軟骨ソーキ」650円(税込)

窓からは糸満ロータリーのせわしない車の流れが見える。ソーキそばを啜りおかわりの「ぜんざい」を注文しながら「あぁ、沖縄にいるんだなぁ」とふと感じた。東京を出発してから半日足らずなのに、沖縄の街を走り、数杯のかき氷を食べ、もう沖縄の空気に馴染んできている気がする。なかなか近いな、沖縄。これなら日帰りで食べにくる事も出来るんじゃないか?と馬鹿な事を考えたりしてしまった。
沖縄の「ぜんざい」を食べ歩いてみると、想像していた以上に甘ったるくなく、豆のおいしさを改めて感じることが多かった。

本州の温かい「ぜんざい」の甘さを想像しているなら、沖縄の「ぜんざい」は全く違う食べ物だと考えたほうがいい。子供も大人もお年寄りにも愛されている「ぜんざい」は、どの店のものもとても美味しくそれぞれ魅力的だった。

次は、今回食べ歩いた那覇市~糸満市から足を延ばし、中部~北部の沖縄ぜんざいを食べ比べてみようと思う。
小池隆介

小池隆介

かき氷のフードイベント『かき氷コレクション』実行委員会代表。かき氷専門ガイド本『かきごおりすと』の編集・発行者。一般社団法人日本かき氷協会代表。日本中のかき氷を食べ歩いて取材し、日本古来の食文化で伝統食でもあるかき氷を広く伝える為に活動。かき氷にとどまらず、氷雪業(氷の卸しや販売、製造)全体にも精通している。

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