小豆島の「迷路のまち」で、迷いながら楽しむアート巡り

2016.11.26

香川県の小豆島にある「迷路のまち」。古くからの入り組んだ路地が残る、全国的にも珍しい場所で、路地歩きをしながらアート巡りを楽しんでみませんか?迷うほどに出会いがある、そんな旅の醍醐味を存分に味わってきました。

「迷路のまち」のルーツは、なんと南北朝時代!

「迷路のまち」があるのは、小豆島の土庄(とのしょう)港から徒歩15分くらいのところにある、土庄本町(とのしょうほんまち)中心部。
▲小豆島のメインの港、土庄港。高松からは、1時間に1本くらいの本数でフェリーが出ています

のどかなこの島も、今から700年近く前の南北朝時代には、両軍の合戦の場となりました。島に陣を構えた南朝方の軍勢が、敵の侵入を防ぐために、迷路のように複雑な道を作ったのだといいます。

そんな路地が今も残る周囲約2.4kmのこのエリアは、歴史ある建物や昭和のレトロな街並も点在する、とっておきの散策スポット。のんびり歩くだけでも、思わぬ風景に出会えます。
▲風格たっぷりの「元屋(もとや)商店」は、文政12(1829)年創業の、小豆島で一番古い醤油蔵
▲道がカーブしていて先が見えないので、余計に迷ってしまいます
▲とにかく三叉路が多い!方向感覚がある人も、自信は禁物。レトロな消火栓は現役だそう

迷ったときの目印になるのが、小豆島八十八ヶ所巡りの五十八番札所、「西光寺(さいこうじ)」の三重塔。高台にある華やかな朱塗りの塔は、町のどこからも見えるので、自分の居場所の見当がつけられます。
▲町のシンボル、西光寺の三重塔。石壁越しに見える姿は、定番のフォトスポット

謎解きしながら、アートと路地巡りを楽しむ

この「迷路のまち」を舞台に、ユニークな活動を展開しているのが、アートプロジェクトチーム「MeiPAM(メイパム)」。古い建物を活かしながら、アートギャラリーやカフェ、ショップを運営し、島の賑わいを創り出す試みを行っています。

「ただのアート鑑賞ではなく、迷路のまち自体を楽しんでほしい。そんな思いから、点在するギャラリーを謎解きしつつ巡るという、アトラクション的な提案をしています」と、広報の野村充史(あつし)さんは語ります。
「迷ったり予期せぬ発見をしたりしながら、路地の雰囲気をたっぷり味わってもらえるとうれしいです」とのこと。
▲巨大アート「迷路の塔(HEISEI MAZE SPIRAL)の前に立つ野村さん。表面には、迷路のまちの地図がデザインされています

この謎解き、題して「迷路の塔を開放せよ!」。MeiPAMが運営しているギャラリーは、MeiPAM1~5まで5つありますが、まず2~5を巡って、入口近くに提示されている問題を解きます。

最後に1の受付に行って正解を告げると、1のギャラリーにつながる「迷路の塔」の鍵が開く、というもの。つまり、2~5を全て巡って問題を解かないと1は鑑賞できないのです。がぜん挑戦意欲が湧いてきました。
▲MeiPAMの施設各所、港の案内所などでもらえる、迷路のまちマップ。MeiPAMのギャラリーはもちろん、ショップやスポット情報が満載

まずはMeiPAM1の受付で、無人のギャラリーであるMeiPAM2のカードキーと地図、解答用紙をもらって出発!商店街を通っていくので、2は簡単に見つけられました。
▲かつて醤油や米を蓄えていた倉庫だった、MeiPAM2の建物

入口近くの壁で、最初のクイズを発見。ヒントはもらった地図に隠されているので、よく見ながら正解を解答用紙に書き込んでいきます。
▲MeiPAM2の入口にあるクイズ。問題はすべて、迷路のまちやMeiPAMに関するものばかりです

カードキーをかざして中に入ると、壁や天井が抜かれた広い空間。土壁や木組みが、建物の歴史を感じさせます。

ここでは、デンマークの作家、パニール・パギルドの「The Ship and the Death」展が催されていました。ヨーロッパを目指しつつ、海の藻屑と消えていった多くの難民をテーマにした、深く考えさせられる展示です。
▲MeiPAM2の展示空間。「The Ship and the Death」展は、2017年2月26日まで開催
▲小豆島やヨーロッパの島々で作者が見つけた漂着物が、色合い別に並べられた展示

続くMeiPAM3は、曲がりくねった裏の路地を通り抜けていくので、見つけるのが難しかったですが、迷う楽しさはたっぷり。このときは、瀬戸内国際芸術祭の展示会場のひとつになっており、会期終了後の展示は未定とのことでした。

MeiPAM4は、1階が駄菓子屋さん、2階が2014年から始まった「妖怪造形大賞」というコンテストの全応募作品642点の展示会場になっています。子どもからプロの造形作家まで、豊かなイマジネーションから生まれた妖怪たちに魅入られました。
▲旅の案内所も兼ねるMeiPAM5の入口。アルバイトスタッフの向山采花(さきやまあやか)さんが、道案内もしてくれました

コンテストが生まれた背景には、小豆島が生んだ妖怪画家・柳生忠平(やぎゅうちゅうべえ)さんの存在があります。2016年2月にオープンしたMeiPAM5では、柳生さんの巨大妖怪天井画を展示。

大庄屋の屋敷だったという建物は、「島タビ家」という旅の案内所にもなっています。キャンドル型のほのかな灯りをもらって2階に上がると、20畳ほどの部屋は真っ暗!目が慣れてくると、暗闇の中に巨大な天井画がぼんやりと浮かび上がってきました。
▲MeiPAM5の巨大妖怪天井画「モノノケマンダラ」を描画する、作者の柳生忠平さん。実際はもっと暗く妖しげな雰囲気が漂っています(写真提供:MeiPAM)

白く光っているのは妖怪たちの目、目、目。「カンシシャ」というこの妖怪たちは、邪気を吸い込んでくれるのだそう。そんな話を聞いたからか、畳の上に寝転んで妖怪たちに“見られて”いると、不思議と心が落ち着いて軽くなってきました。
▲1階には、柳生さんの作品を販売しているショップもあります

さて、ひと回りしてMeiPAM1に戻ってきました。MeiPAM1のギャラリーは、明治時代に建てられた呉服屋の蔵を改装したもの。3階建ての建物は、島には当時ほとんどなかったため、憧れの的だったといいます。
▲左の建物が呉服屋の蔵を改修したギャラリーとショップ、中央が受付、右にそびえるのが迷路の塔

受付で、4つのギャラリーのクイズの解答から導き出した、最終の答えの指示に従うと……。詳しくはヒミツですが、迷路の塔の鍵をゲットできます。
▲受付で答えを伝えたときの、スタッフの佐藤秀司(しゅうじ)さんのリアクション。面白すぎます

迷路の塔の鍵を開けて中に入ると、真っ白ならせん階段が上に向かって伸びています。床も天井も鏡張りなので、階段が永遠に続いているような錯覚に。
▲迷路の塔の内部のらせん階段。上へ上へと登ります

階段を上りきって扉を開けると外に出ます。通路を歩いた先に、ギャラリーの扉が。こんな仕掛けも、迷路探検気分でワクワクさせられます。
▲ギャラリーへの通路。外から見たときは、生い茂るグリーンに隠れて、通路になっていると気付きませんでした

開催されていたのは、アーティストの和泉侃(いずみかん)さんによる「小豆島のかおり展」。和泉さんが体験した小豆島での時間を、2種類の香りと島の自然音、調光可能な照明、iPhoneで撮影した写真で表現しています。五感を刺激される、心地よいひとときを過ごせました。
▲2階は夜をイメージした展示。中央のボトルに入った香りを楽しめるほか、タブレット操作で照明の色合いを変えることもできます

小豆島の美味しいもの&素敵なもの、大集結!

ギャラリー巡りを堪能した後は、ランチブレイク。MeiPAMが手掛けた「セトノウチ」というスポットには、MeiPAM5や「島タビ家」を始め、食堂の「島メシ家」、お土産が揃う「島モノ家」が並びます。
▲MeiPAM5と同じ建物内にある「島メシ家」。テイクアウトもできるのがうれしい

「島メシ家」は、小豆島を始めとした瀬戸内の幸がたっぷり味わえる、デリスタイルのごはん屋。カレーにも惹かれましたが、選べる4種類のデリにご飯や汁物が付く「4品デリセット(1,250円・税込)」をチョイス。
▲ショーケースに並ぶデリから、好きなものを組み合わせるスタイル。悩むこと必至!
▲モダンなインテリアと、外の古い壁がしっくり調和。カウンターやテラス席もあります

選んだのは、「白菜とイリコの煮びたし」「自家製ベーコンときのこの燻製煮」「本日のサラダ」「オリーブ牛のローストビーフ(+300円・税込)」。どれも、素材の旨みが身体に染み渡るような味わい。歩き疲れた身体も、見る間に元気回復です。
デリセットの手前中心のローストビーフは、小豆島のオリーブの搾りかすを飼料にした、特産の“オリーブ牛”を使用。旨みがまろやか!
「島モノ家」は、小豆島を始め、瀬戸内生まれの選りすぐりの特産品を集めたショップ。商品セレクトも手掛けるスタッフの牧浦知子さんは、「ほとんどが量産できない手のかかる品だけに、ひとつひとつに物語があって愛着が湧きます」と語ります。
▲コージーなウッドデッキがある「島モノ家」。瀬戸内ならではのドリンクで喉を潤しながらひと休みもできます

オリーブオイル、素麺、佃煮、柑橘系のドレッシング……。目移りしていると、「小豆島の醤油ソムリエールが選んだ醤油コーナーもおすすめですよ」と牧浦さん。
▲小豆島の特産品、醤油が並ぶコーナー。「昔ながらの杉樽仕込みを行う蔵も多く、味の深みが違います」と牧浦さん

他の土産店では扱っていないものや、デザインコンシャスなパッケージのものも多いので、ギフト用にも喜ばれそうです。
▲ショップの中心には今月のおすすめコーナーがあり、旬の品がずらり。訪れた10月には、オリーブの新漬けが並んでいました

まだまだ尽きない、路地歩きの楽しさ

迷路のまちの魅力は、まだまだ尽きません。ぶらぶら歩いていると、立派な石垣のある建物の前を通りかかりました。

ここは、豊臣秀吉から命を受けた加藤清正が、採石奉行として滞在していた陣屋敷跡だそう。大阪城の石垣の一部に、小豆島の石が使われていたとは初めて知りました。
▲味わい深い石壁が残る陣屋敷跡

採石されたものの、活かされず残された石も島内にゴロゴロあり、「残石」とか「残念石」と呼ばれているのだそう。迷路のまちを歩いていると、そんな残念石にもたびたび出会いました。
▲MeiPAM3のすぐ近くにも、残念石を発見。行灯式の照明には、尾﨑放哉(ほうさい)の句が

街を歩くと、道端や商店の店頭で、しばしば行灯型の照明を見かけます。灯りの部分に書かれているのは、俳人の尾﨑放哉(ほうさい)の句。

「咳をしても一人」などの自由律句で知られる放哉は、小豆島の西光寺近くで晩年を過ごし、膨大な句を残しました。そんな放哉にちなんだお菓子を作っているのが、2016年で創業160年になる老舗和菓子店「長栄堂(ちょうえいどう)」です。
▲「セトノウチ」の向かいにある「長栄堂」

放哉の句が焼印で押された大判焼(110円・税込)は、白あんと小豆あん、冬季限定のクリームチーズの3種類。「入れものが無い 両手で受ける」という句にしみじみしながら小豆あんの大判焼きを頬張ると、たっぷりのあんと素朴な生地がベストマッチ。
▲大判焼に押されているのと同じ句が、長栄堂の店頭の照明にも書かれていました

迷路のまちの外れにあるかつての放哉の住居は、現在は「尾﨑放哉記念館」として公開されています。
何でもない路地にも、面白い出会いがありました。
▲しばしば猫にも遭遇。島時間が流れているからか、近づいても平然とくつろいでいました
▲とある三叉路での昭和な光景。どちらのスナックも、現役で営業しているそう

歩けば歩くほど発見がある「迷路のまち」。ぜひ、たっぷり迷ってたっぷり楽しんでください。
puffin

puffin

東京でのライター生活を経て、現在は縁あって香川県在住。四国のおおらかな魅力と豊かな食文化に触発される日々。取材で出会うモノ・コトの根幹に流れる、人々の思いを伝えたいと願っている。

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