蔦沼の紅葉は息を呑むほどの美しさ!青森の秘境で絶景と温泉を楽しむ旅

2017.09.28

蔦沼(つたぬま)と聞いても、ピンとこない人は多いでしょう。しかし、赤く紅葉した木々が水面に映る写真を見れば、気が付く人もいるかもしれません。観光用のポスターなどで「一度は訪れたい場所」として紹介されることもしばしば。そんな青森県・八甲田山の麓にある美しい秘境で、絶景と温泉を楽しむ旅を紹介します。紅葉が見頃を迎える10月にぜひ訪れてみては?

リピーターが増え続ける蔦沼の魅力とは?

青森県のほぼ中央に位置する蔦沼へのアクセスは、JR八戸駅または新青森駅からバスを乗り継ぎ1時間強。八甲田山の麓、標高約460mの山奥にあります。そこにはブナの原生林やさまざまな野鳥が生息する手つかずの自然が残っており、蔦沼を含む十和田八幡平(はちまんたい)周辺は1936(昭和11)年に国立公園に指定されています。
▲ブナの原生林を身近に感じることができる

蔦沼は「蔦七沼」と呼ばれる7つの沼(蔦沼、鏡沼、月沼、長沼、菅沼、瓢箪沼、赤沼)の1つで、自然遊歩道「沼めぐりの小路」は、赤沼を除く6つの沼を約1時間で散策できるように整備されています。ちなみに7つ目となる赤沼は蔦沼から北西に2kmも離れた場所にあるため、気軽な散策には向かないとのこと。

今回は、蔦沼にほど近い温泉宿の湯守・小笠原正明さんに周辺を案内していただきました。取材に訪れたのは紅葉シーズン前の9月。普段ガイドのお仕事をしているわけではない小笠原さんですが、今回特別に引き受けていただきました。
▲周辺の案内板。「沼めぐりの小路」のほかに、野鳥を楽しむ「野鳥の小路」もある

子どもの頃、蔦沼周辺でよく遊んだという小笠原さん。この土地の魅力は「来るたびにご褒美がもらえる場所」だと語ります。四季折々の自然の美しさに心をつかまれたリピーターが多く訪れるとか。春の芽吹き、初夏にはホタル。また満天の星が水面に映る景色はまさに絶景だそうです。
▲蔦沼の水面に映る星空。天の川が映り込むこともあるという

苔むした道を進み、蔦沼の絶景スポットへ

さっそく「沼めぐりの小路」の散策へ出発。入口には「蔦温泉ビジターセンター」があり、蔦七沼の歴史を知る書籍や資料などが並んでいるほか、遊歩道の状態や野鳥の発見情報を書き込んで他の散策客と共有できるホワイトボードがありました。
▲蔦沼周辺の資料や遊歩道のコンディションを確認できる「蔦温泉ビジターセンター」

遊歩道を歩き始めると、道の両側にある路肩の石にたくさんの苔が生育していることに気づきました。まるで進む方向を示すかのようです。これなら、道の境界線が分からず迷子になってしまうなんてことは無さそうです。
▲散策は遊歩道を歩くのがマナー

小笠原さんは「遊歩道は国立公園に指定された美しい自然を守るために整備された道路。それ以外の森には立ち入らないこと」とアドバイス。マナーを守って散策に臨みたいところです。
▲苔玉のように生育している路肩の石

遊歩道を進んでいくと、蔦沼から流れている川としばらく並走します。川といっても水の流れはかなり穏やかで、ブナの木々が湖面の水鏡に映るほど。夏の夜になれば、ホタルが飛び交うということも納得ができる静けさです。
▲ホタルが飛び交うという川

400mほど進み、いよいよ見えてきたのが蔦沼です。周囲1km、面積は約6haほどの大きさ。
▲奥に見える「赤倉岳」が約30万年前に噴火してできたのがこの蔦沼

紅葉の見頃は例年10月中旬~下旬。この時期になると、湖面に映る紅葉の絶景がここから見られます。ただし、実はシャッターチャンスは頻繁にあるものではないそう。数少ないチャンスは、早朝の日が昇る一瞬。しかも、水鏡をより赤く撮るためには、波立たないように無風でなければいけないことや、晴天時よりも曇が少しあった方がよいなどの自然的条件も影響してくるそうです。

小笠原さんによると、紅葉シーズンには早朝3時くらいから県内外のカメラマンたちがこの場所に集まりその瞬間を待ち構えているそうです。
▲多くのカメラマンが並ぶという桟橋

昼時に見ても十分に美しいですが、最大の魅力はやはり朝日を浴び、燃えるように赤く染まった木々と水面に映る景色です。
▲蔦沼の紅葉。1年に数回しかないと言われるまさに絶景(写真提供:東北地方環境事務所)
▲早朝でなくても美しい蔦沼の紅葉

蔦沼だけじゃない!周辺で見ることができる神秘的な光景

散策道をさらに進むと、岩の上に立つトチの木やブナの木々。そして水と石に生えた苔…。豊かな自然を具現化したような景色が広がっています。
▲同じ国立公園内にある奥入瀬渓谷のような景色

「沼めぐりの小路」には約200mの高低差があり、その高低差があるからこそ川の流れがあります。蔦沼の次に向かった月沼は、6つの沼の中で一番高い場所にあります。蔦沼と鏡沼へ、ここから水が流れていくのです。ちなみに、月沼という名前の由来は水面に月が映ることから。蔦沼と並んでフォトジェニックな場所として、人気スポットになっています。
▲こちらが月沼。奥の茂みから水が湧き出ているという

また、月沼から少し離れて遊歩道を30分ほど歩いたところにある菅沼は、6つの中では唯一の人造の池沼です。かつて伐採した木材を川に流すために作られた集積場だったと伝えられていますが、今ではその面影はありません。水底にうっすらと見える倒木はもしかすると当時の名残なのかもしれません。
▲菅沼にはあずまやがあり、散策の休憩ができる

遊歩道沿いにはこのほか、鏡沼、長沼、ひょうたん沼などがあり、1周すると「蔦温泉ビジターセンター」に戻ってきます。どの沼にも神秘的な美しさがありました。その美しさを実際に目で確かめてはいかがでしょうか。
▲紅葉シーズンには、散策道に落ちた葉が赤いじゅうたんのように見える(写真提供:東北地方環境事務所)
▲もちろん、蔦沼以外の「蔦七沼」の周辺も美しく色づきます。こちらは月沼(写真提供:東北地方環境事務所)
▲紅葉は、自然が作り出すまさに色のアート。まるで別世界に誘われたような景色が広がり、息を呑む美しさ ※写真は菅沼(写真提供:東北地方環境事務所)

散策の疲れを癒す温泉は源泉「涌き流し」?

沼めぐり散策を終えた後は、散策コースの入口、ビジターセンターの隣にある「蔦温泉」で疲れを癒しましょう。「蔦温泉」は平安時代の1147(久安3)年の文献にはすでに湯治小屋があったという古い歴史のある温泉宿。ノスタルジックな雰囲気が漂う本館は大正時代に造られた建物だとか。
▲蔦温泉の本館。冬季(11月下旬~4月上旬)は休館する

立ち寄りで入浴できる温泉は「久安の湯」「泉響の湯」の2つと貸切風呂が1つ。小笠原さんによると、こちらの温泉は全国でも珍しい源泉「涌き流し」なんだとか。つまり源泉の上に湯船があり、湯底に敷かれたブナ材の板からお湯が沸き出すような仕組みになっているのです。
▲久安の湯。湯底からお湯が湧き出しているため蛇口がない(時間帯別に男女入替制)
▲かつては混浴風呂だったと言われる泉響の湯。浴槽から梁(はり)までの高さが12mと開放感のある湯殿

温泉を堪能した後は無料で利用できる休憩所「楓の間」がオススメです。縁側のロッキングチェアに揺られながら贅沢な時間を過ごすことができます。外に見える景色は四季によってさまざまな表情を見せてくれるでしょう。
▲夏には心地よい風が吹き抜ける
周辺の自然を散策したり、温泉を楽しんだりと、季節によって楽しみ方はいろいろの蔦沼。ただし、この自然の雄大さと美しさは、写真ではなく生で見ることに価値があると感じました。なかでも蔦沼の紅葉は、自然が作り出すまさに一瞬の芸術です。ぜひこの自然の雄大さを、間近で感じてみてはいかがでしょうか。

【蔦沼までのアクセス例】
○JR八戸駅または新青森駅よりバスで1時間強
○東北自動車道 黒石ICより車で約1時間

※紅葉の写真は2015年以前のものです。
くどうたける

くどうたける

東京でウェブライターを経験し、2012年に青森へ移住。地域新聞や地域の情報を発信するお仕事をいただきながら、田舎でせっせと暮らしてます。(編集/株式会社くらしさ)

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