風光明媚!特別名勝「六義園」をディープに愉しむSTEP10

2017.10.26

東京駒込・「六義園(りくぎえん)」は、都心の中にありながらも四季折々の風情に満ちた風光明媚な名園。築庭された江戸期からの景観を留め、日本の文化や歴史、和歌の心を伝える六義園は、全国に36カ所しかない国の特別名勝の一つです。春のしだれ桜や、秋の紅葉のライトアップ期間中はとくに賑わう、江戸・元禄時代に生まれた大名庭園を、もっと深く愉しむためのSTEP10をご案内します!

STEP1/まずは文京区駒込へ出掛けよう

JR・東京メトロ南北線・駒込駅から歩くこと約7分。重厚なレンガ塀に囲まれた「六義園」の正門にたどり着きます。 門を一歩くぐると、都心とは思えない時を忘れたような別世界。美しく手入れされた木立が青々と茂り、澄み切った空気が清々しく漂ってきます。開園面積87,809.41平方メートルという壮大な庭園には、日本の伝統や文化、歴史上の人物の足跡や和歌の趣まで見所いっぱい…というこで、今回はあらかじめガイドボランティアさんを依頼。笑顔の案内に導かれて、巡っていくことにしました。
六義園では年間を通じ、土・日曜、祝日にはガイドボランティアさんによるガイドツアーを実施中。11時と14時に出発し、約1時間で園内を巡る「庭園ガイド」(無料)は、解説を聞きながらだと六義園散策がぐんと楽しくなると評判です。 (桜&紅葉のライトアップ期間中は毎日実施)
この日お世話になったのは、ガイドの横山さんです。

STEP2/庭園の成り立ち・歴史を学ぼう

六義園の歴史が記されたパネルコーナーで、まずは名園発祥のヒストリーを学びます。

六義園は、元禄15(1702)年に川越藩主・柳澤吉保(よしやす)が駒込の別邸に築いた庭園で、現存する江戸の大名庭園中日本で屈指の名園。
柳澤吉保といえば、五代将軍徳川綱吉からの信任が厚かったという、学問にも秀でた名君。綱吉より下屋敷として与えられた駒込の地に、自ら設計し7年の歳月をかけて作庭したのがここ六義園なのだそうです。

吉保の没後、荒れ果てていたこの庭園は明治時代に三菱財閥創設者・岩崎彌太郎の所有に。その後、昭和13(1938)年には東京市(東京都)に寄贈されると一般公開も始まり、昭和28(1953)年に国の特別名勝となりました。
江戸から明治、そして平成の現代へつづく激動の歴史を経てなお美しい景観で私たちを迎えてくれるのです。

STEP3/「六義園」という名前の由来を知ろう

▲「内庭大門(ないていだいもん)」をくぐると目の前に、高さ15m、幅約20mのしだれ桜の優美な姿が

「六義園」という名は、中国の詩の分類法「六義(風・賦・比・興・雅・頌)」にならった『古今和歌集』序文にある和歌の分類の六体(そえ歌・かぞえ歌・なぞらえ歌・たとえ歌・ただごと歌・いわい歌)に由来するもの。
すなわちこの庭園はその名が表すごとく、「和歌の庭」。  吉保の文芸趣味を反映し、万葉集や古今和歌集に詠まれた「和歌」の風景を庭造りのベースとしているのです。
吉保は「六義園」と書いて「むくさのその」と呼んでいましたが、現在は漢音読みで「りくぎえん」と言っています。
▲六義園に映し出された和歌山市の景勝地のパネル展示も
庭造りにあたって吉保が目指したのは、「和歌」に詠まれた風景を多く取り込むこと。万葉集や古今和歌集から名所・名勝を選び、園内に和歌にちなむ景観「八十八境」をちりばめています。
なかでも多いのが、「和歌の浦」をはじめとする紀州(現在の和歌山県)の景勝地。園内を巡るうちに、実際に和歌山へ足を伸ばしたくなるかもしれません。

STEP4/回遊式築山泉水庭園の見所をチェックしよう

左手に進んでいくと、いよいよ庭園の全景が現れてきます。その様式は、中心に川や海に見立てた「大泉水」という大きな池を配した「回遊式築山泉水」の庭。水辺の周囲を巡る園路をたどりながら、六義園八十八境の移り変わりを楽しめる仕掛けになっています。
とうとうと水をたたえた「大泉水」、中の島には「妹山(いものやま)・背山(せのやま)」を隔てる玉笹と名付けられた大きな石(紀州青石)が屹立しています。
園内の見所には、目印となる看板が立っています。六義園八十八境の何番目なのか、由緒や解説も記されているので要チェック。
上の写真の風景は、六義園八十八境14【妹山】と八十八境15【背山】。
~いもせ山 なかにおひたる たまざさの 一よのへだて さもぞ露けき~
『新選和歌六帖/藤原信実』
が詠まれた、紀州・和歌の浦の風景を映しているのです。

STEP5/和歌のコードを探しながら八十八境を巡ろう

ガイドさんが指さす先には、江戸時代の儒学者・書家の細井広沢による美しい文字が彫られた石柱が。これは、八十八境を現代に伝えるアイコンで、頭が三角に尖っているものは作庭当時に作られたもの。当初は88カ所あったものの、今残るのは32カ所のみだそうです。

上の石柱に記された文字は、「志るへの岡」。 八十八境55の【指南岡(しるべのをか)】のことを指します。

~尋行く 和歌のうら路のはま千鳥 跡ある方に 道しるべせよ~
という和歌に詠まれた「千鳥橋」がこの先にあります。
八十八境44【水分石(みづわけいし)】と八十八境45【枕流洞(まくらのほら)】を見渡す「滝見茶屋」の中に入ると、木枠越しの眺めはまるで絵画のよう。水音が心地よく聞こえます。
続いて道なりに木々が多い路には、八十八境49【下折峯(しをりのみね)】を示す石柱が。この辺りは山桜に彩られていたらしく、
~よしの山 こぞのしをりの みちかへて まだ見ぬかたの 花をたづねん~
という、桜が大好きだった西行の歌にちなんだ石柱です。
八十八境51【吟華亭(ぎんかてい)】のあたりには作庭当初、山桜がたくさん植えられていて、ガイドさんの持つ絵巻のように、吉野の山桜を思わせるような花見が楽しまれていました。江戸時代の吟華亭跡は別の場所にあり、今残る建物跡は、明治期に岩崎家が建てた吟華亭跡だそうです。

STEP6/「吹上茶屋」の抹茶&お菓子でほっこりしよう

少し道を下って大泉水を見渡す八十八境63【吹上浜(ふきあげのはま)】へ。水辺に悠然と枝を広げるのは、江戸時代からの歴史があるといわれる、八十八境64【吹上松(ふきあげのまつ)】。樹齢をこの庭と共に重ねる老松の姿に悠久の時を感じます。
その先に見えてくるのが、「吹上茶屋」。しばしここで休憩します。
▲ちょうど咲いていた彼岸花越しに大泉水を眺めながら、季節の和菓子と抹茶でほっこり。(和菓子付抹茶/税込510円)
▲夏は限定で、氷が浮いた冷やし甘酒(税込300円※写真の和菓子は別料金・税込310円)や冷抹茶(和菓子付/税込510円)も
茶屋の一角にはお土産コーナーも。六義園オリジナルのお菓子やグッズもいろいろ。一番人気は「ゆず羊羹」(税込550円)なのだそうです。

STEP7/「つつじ茶屋」付近でもみじを愛でよう

休息をとったので足取りも軽く再スタート!
▲四季の草花が咲く庭園内には、とんぼの姿も
起伏がある道をたどり案内されたのは、石段の先にある「つつじ茶屋」です。
つつじ茶屋は明治時代に岩崎家の所有になってから造られたもののひとつで、戦災で焼失することなく現存しています。なんと柱と梁に使われているのが「つつじ」の木。どんなに大きなつつじだったのかと想像するだけで、改めて岩崎家の財力に驚きます。
もみじに囲まれたつつじ茶屋付近は、秋の紅葉シーズンの見所のひとつ。アーチ型の八十八境85「山陰橋」も、もみじの樹木に包まれています。

STEP8/藤代峠で大名気分にひたろう

~わがせこが くべきよひなり ささがにの くものふるまひ かねてしるしも~
衣通姫(そとおりひめ)
八十八境87【蛛道(ささがにのみち)】は蜘蛛の糸のように細い道を言い、「ささがに」は蜘蛛の枕詞。衣通姫は和歌の三神の一人とされ、美しさが衣を通して輝いたといわれています。和歌の道も柳澤家も、蜘蛛の糸が細くとも切れないように、永遠にとだえぬようにとの願いをこめて造られた境です。
さてここからが園内最大の難所。標高35mの築山「藤代峠(ふじしろとうげ)」へ上ります。
紀州、藤白坂にちなんで名づけられた「藤代峠」から園内を一望すれば、すっかり大名気分。いただきは「富士見山」と呼ばれ、江戸時代にはなんと江戸城や大名屋敷群、彼方に富士山も望んだとか。

~ふぢしろの みさかをこえて 見わたせば かすみもやらぬ 吹上の浜~
紀州・和歌の浦を見渡して詠んだ、この和歌そのものの絶景が広がるのを実際に目にして、吉保が造った世界の壮大さに深い感動を覚えました。

STEP9/11月下旬~12月上旬の
紅葉ライトアップを観に行こう

▲藤代峠からは、八十八境37【渡月橋(とげつけう)】も眼下に。2枚の大岩が渡された橋で、昔は水面に映る月を愛でたのでしょうか
秋の紅葉時には、都内でも有数という錦織りなす景観が広がる六義園。例年11月下旬~12月上旬に見頃を迎え、夜は「紅葉と大名庭園のライトアップ」が2017年も11月18日(土)~12月6日(水)に実施されます。

ガイドさんによると、紅葉シーズンのおすすめ鑑賞スタイルは、「3時頃に訪れて、昼間の景観と夜の眺めを見比べること」。陽光が鮮やかに照らす昼間の雅やかさと、幻想的な明かりに浮かび上がる幽玄な趣。両方どちらも素晴らしいとのことでした。
▲闇に浮かび上がる「中の島」は、この世のものとは思えぬ美しさ
▲幻想の世界となる「水香江」
▲「つつじ茶屋」も昼間とはまた違った趣に

STEP10/桜咲く春、つつじ咲く初夏と、四季折々の緑や花を愛でよう

春には、六義園のシンボル・ツリーとして名高いしだれ桜が満開となり、初夏には約30種のつつじがいっせいに花開き、藤、紫陽花と続いた後は、秋の彼岸花、冬の椿や梅…と、一年中艶やかに咲く花々が彩り豊かに日本の四季を物語る六義園。季節が変わるたび訪れてみれば、その日、その瞬間だけの美しい風景が迎えてくれます。
さて、今回紹介したSTEP10だけでは六義園の魅力はまだまだ語り尽くせません。心に沁みる和歌の詩情と和の美が満ちる庭園へ、都心の別天地へ、みなさまもぜひ足を運んでみませんか。
※写真は2016年以前のものです。
ゴトウヤスコ

ゴトウヤスコ

ホテル、レストラン、神社、婚礼、旅、食、暦&歳時記、ものづくりなどの広告コピー、雑誌記事、インタビュー記事などを多数執筆し、言葉で人と人をつなぎ、心に響くものごとを伝える。旅は、基本一人旅好き。温泉、パワースポット、絶景、おいしいものがあるところなら、好奇心がおもむくままどこへでも。得意技は、手土産&グルメハンティング。最近は伝統.芸能、日本刀、蓄音機など和文化への興味を深堀中。読書会なども開催。(制作会社CLINK:クリンク)

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