箱根・小涌谷で明治創業の歴史と四季折々の名園を楽しめる「三河屋旅館」

2017.11.12

箱根湯本駅から車を走らせ元箱根方面へ約15分。小涌谷の雄大な景色の中に、明治16(1883)年の創業以来130年以上の長い歳月を重ねる「三河屋旅館」の姿が見えます。箱根山の中腹にたたずむこの老舗宿は、紅葉とつつじの名所・蓬莱園を見渡せる絶景スポット。訪れると、源泉かけ流しの湯と歴史の香り、そして季節の情景とおもてなしの心が、懐かしくて温かい時間をくれました。

自然豊かな箱根・小涌谷で
130年以上の時を重ねる老舗旅館へ

箱根外輪山の浅間山(せんげんやま)や鷹巣山(たかのすやま)の雄大な姿、優美な千条ノ滝(ちすじのたき)、桜やつつじなどが咲く自然豊かな景勝地・箱根小涌谷温泉。かつては荒涼とした土地だったという、この温泉地の発祥が、ここ明治16(1883)年創業の「三河屋旅館」です。
折しもこの時代は、東京から箱根への交通網が急速に発展し始め、宮の下に「富士屋ホテル」が誕生したころ。牧場にしたいと考え土地を購入したところ良質な温泉が湧いたことから、創業者・榎本猪三郎(えのもといのさぶろう)・恭三(きょうぞう)父子によって、小涌谷は温泉場として開発され始めたのだそうです。
▲唐破風屋根の構えに凛と漂う歴史の重み。木彫装飾や菊水窓の意匠にも、当時の匠の技が発揮されて
玄関から一歩入れば、たちまちタイムスリップ。どこか懐かしい時の流れに包まれていきます。創業期、小涌谷の駅から宿までの移動で使用されていた籠(かご)が玄関で出迎えてくれます。
▲かつて逗留したという、大正浪漫を代表する画家・竹久夢二。宿で描かれた絵のモデルは、当時働いていた地元の娘さんだとか

リラックス度重視で選んだ部屋は、
眺めのいい天空のスイート

創業期の面影を留める「三河屋旅館」の広大な敷地の中には、【松竹館】【月梅館】【霞館】の3館と【九重荘】、4つの【離れ】が点在。どんな滞在を望むか、誰と行くか、予算はいかほどかなど、様々な条件に沿ってセレクトできる客室のバリーションが多彩なのも、歴史ある旅館の懐の深さ。

今回チェックインする部屋は、モダンな和のエッセンスに満ちた【霞館】の最上階にあります。どの部屋も眺望自慢。自然の風景と溶け込むような開放感を存分に味わえます。
1階が花、2階が雪、3階が風、そして4階が天(そら)と、【霞館】の各フロアに付けられた名も雅やか。
テラス越しに浅間山をはじめとする箱根連山の稜線と、広大な庭園への眺望が開けた和のスイートルーム「天恵」。創業者が植えたという一目万本(ひとめまんぼん)の桜、つつじ、紅葉など、四季折々の眺めの良さが圧巻!
和室の隣にはベッドが置かれた洋室が。ふかふかのベッドがリラックス感を誘います。この部屋にはお風呂も併設され、プライベート感いっぱい。ベランダ越しに広がる絶景を眺めながらゆったり過ごす…そんなおこもりステイができるのも、天空のスイートルームならではです。
1階・花にある、テラス露天風呂付きの客室も大人気。自然の息吹に包まれて、湯船につかったり、バスローブ姿でチェアで寛げば、身も心もとろけそうに…。

竹久夢二や孫文が泊まった
【松竹館】の建築美や【離れ】を見学

ノスタルジックな雰囲気が色濃く漂うのが、大正期のままの面影を留める【松竹館】。ここには、かの竹久夢二や中国革命の父・孫文など、多くの文人墨客たちが逗留した部屋が現存し、当時の気配に包まれながらの宿泊が叶います。

せっかく訪れたので、大正ロマン薫る室内をスタッフの案内のもと見学させてもらいました。
▲部屋をとりまく廊下が、時間旅行へと誘います
▲ガラス窓の装飾や空気抜きの引き窓のデザインも遊び心いっぱい
▲孫文直筆の書が架けられた5号室。時空を超えたひとときをここで
隠れ家めいた【離れ】の滞在なら、ぐっと落ち着いた癒しのひとときに。チェックイン・チェックアウトもお部屋でOK。両親を誘って家族みんなで湯につかり、食卓を囲んで寛いでみてもいいですね。
【離れ】の4棟すべてがプライベートガーデン露天風呂付き。四季折々の庭園が目の前に広がり、森林浴や紅葉も楽しむことができます。

宿の向かいに紅葉の名所が。
隣には美術館がある好立地

山の中腹に建つ宿から眼下に望むのは、「三河屋旅館」の初代が造ったという名園「蓬莱園(ほうらいえん)」の見事な景観。無料で公開されているので、滞在時はぜひ散策して四季の風情を味わってみましょう。秋の紅葉シーズン(例年11月中旬ごろ)には、もみじ狩りに多くの観光客が訪れます。
大正時代に東京の大久保から移植したという、霧島つつじや琉球つつじなど、約40種3万株のつつじが艶を競うのは、4月下旬~5月上旬ごろ。夏の宵は、幻想的な光が舞うゲンジボタルの生息地でもあるそうです。

ほか、ファミリーで楽しめる「小涌園ユネッサン」がはす向いに。日本の美術品を中心に東洋の美を収集する「岡田美術館」が隣に。宿泊の前後や滞在中に、宿から徒歩圏内で様々な体験が楽しめます。

季節の美味が彩りも美しく登場。
宿自慢の料理をじっくり堪能

三河屋旅館に宿泊するお楽しみの一つが、板長が腕をふるう料理のおいしさです。季節ごとに変わる献立は、その時期だけの新鮮な旬の食材本来の味を、最大限に引き出した逸品揃い。器選びにも、盛り付けにもこだわった四季のおもてなしに、目も心も舌も躍ります。

今回いただいたのは、晩秋の特別会席膳。【松竹館】【九重荘】【離れ】ではお部屋で。【月梅館】【霞館】宿泊の場合は(+税別4,000円のアップグレードで)会食会場にて提供されるメニューです。
まずは、食前酒と前菜を。もずくの秋錦寄せや燻し鮭親子掛け、柿ゼリーなどが、秋ならではの艶やかさで盛り付けられています。
椀の代わりに、豆乳仕立ての鍋でいただく「ずわい蟹のしゃぶしゃぶ」が登場。
木更津出身の板長は魚介の目利き。その目と舌で選んだ「お造り」には、本わさびと鮫皮おろしが添えられて。
鮫皮でおろしたまろやかなわさびを、ぷりぷりの刺し身にのせて煮きり醤油をつけていただけば、まさに至福の味わい。三日月型の器も華麗です。
金色の器の蓋を開ければ、蕪やしめじなど滋味豊かな「煮物」が。
かますの柚庵焼き、松茸の茶碗蒸し、栗や銀杏などを大ぶりなカゴに2名盛りでアレンジした「進肴」の登場に思わず拍手!
割烹出身の板長による粋な演出は、「お客様を楽しませ喜ばせたい」という心の現れです。
「国産黒毛和牛しか使いません」と言い切る板長。使う分だけすりおろす岩塩とわさび、レモンで、陶板焼き霜降り肉をいただきます。
日本料理の中にスパイシーなエッセンスとなるひと皿「鴨饅頭」は 、なんとカレー味。
土鍋で炊き上げた秋のご飯は、鮭とイクラと茸が満載。自家製のつけものと赤だしで、お腹いっぱい、大満足です。
季節の果物とチーズケーキ。フィナーレの水菓子も手作りで。

会席料理をベースに季節の彩りと板長の感性が息づく料理は、ひと皿ひと皿がおいしい感動とサプライズの連続。部屋の窓から望む季節の趣が、食卓のうえでもより鮮やかに美しく、映し出されてゆきました。

翌朝まで幾度でも入浴できる
源泉掛け流しの湯をとことん満喫

▲自然の息吹に包まれた大浴場の露天風呂

各部屋に併設された貸切露天風呂をはじめ館内の湯はどこも源泉かけ流し。裏山から引いた5つの自家源泉から、たっぷりお湯を引いています。透明で柔らかい湯の泉質は、単純温泉弱アルカリ性低張性高温泉。泉温は53.8度で、ストレス、神経痛、疲労回復、健康増進などに幅広い効用があるとされ、ほっこり暖まり、お肌もすべすべに。
▲こちらは、降り注ぐ自然光が眩い大浴場の内風呂
【月梅館】の1階には、昔のままの入湯風景を今に伝える「明治風呂」が。めずらしい唐傘天井が今も残り、レトロな雰囲気を楽しめます。
大浴場や明治風呂も15:00~翌朝9:30まで、何度でも入浴できるのもうれしい限り。お湯にのんびりつかっていくうちに、日ごろの疲れも、ストレスも、全部流れていくよう。
天然温泉の癒しに加えて、本格的なアロマテラピートリートメントをうけてみるのもおすすめ。入浴後に部屋にゆったり寝そべって、リンパやツボを意識した優しいタッチのオールハンドトリートメントを受ければ天国にいる気分に。そのままぐっすり寝てしまいそうになるはず。トライアルのフェイシャル&ボディコースで40分6,300円(税込)から受けられるので早めに予約を。

温泉に癒されぐっすり眠った
翌朝のお楽しみは絶品朝ごはん

ふかふかのベッドやふとんで寝た翌朝のお楽しみは、心づくしの朝ごはん。手作りのお豆腐に、アジの干物、暖かいお鍋に朝からほっこり。ついついご飯のおかわりをしてしまいます。
チェックアウトの前に、レトロな趣漂うおみやげコーナーへ。
チェック柄がモダンなオリジナルの浴衣やボトルが可愛いヘアケアコスメなど、気になるグッズがいろいろと揃うのでぜひ立ち寄って。
▲春に咲くしだれ桜も見事

130年以上もの間、人々を暖かくもてなしてきた「三河屋旅館」。そんな歴史の温もりと懐かしさに包まれ、お湯に癒され、美しい庭の眺めを堪能したひとときは、忘れられない思い出に。また再び訪れたときには、“ただいま”と言いたくなるような、箱根・小涌谷の宿でした。
※写真は2016年以前のものです。
ゴトウヤスコ

ゴトウヤスコ

ホテル、レストラン、神社、婚礼、旅、食、暦&歳時記、ものづくりなどの広告コピー、雑誌記事、インタビュー記事などを多数執筆し、言葉で人と人をつなぎ、心に響くものごとを伝える。旅は、基本一人旅好き。温泉、パワースポット、絶景、おいしいものがあるところなら、好奇心がおもむくままどこへでも。得意技は、手土産&グルメハンティング。最近は伝統.芸能、日本刀、蓄音機など和文化への興味を深堀中。読書会なども開催。(制作会社CLINK:クリンク)

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