それはまるで“洞窟風呂”。伊豆・修善寺の温泉がすごかった!

2017.01.07

1人の男が、たった1本のドリルを使って掘り抜いた「岩窟風呂」があるのだとか!まるで洞窟のようだと聞きどんなものか気になって、早速その温泉がある伊豆の「ブリーズベイ修善寺ホテル」へ行ってきました。

伊豆の温泉街・修善寺。日本百名湯の1つに数えられ、開湯から1200年もの時を重ねてきました。その温泉街の中心を流れる桂川沿いの道を上流に向かって歩いていくと、目指す「ブリーズベイ修善寺ホテル」があります。ホテル内にある「岩窟風呂」は、13:00~15:00の間なら、宿泊者以外でも立ち寄り湯として楽しめるそう。
▲庭園から眺めると、建物が奥へ向かって広がっていることがわかる

坂の上にある建物は、モダンな雰囲気。庭園のあるほうから眺めると、木の温もりあふれるインテリアが見え、建物が山に向かって広がっているのがわかります。
第一印象よりもずっと広そう……。そんな予感がします。

早速中へ入ってみましょう。ホテルの入り口で靴を脱いでスリッパに履き替え、フロントで入湯料1,000円(税込)を支払います。
▲まるでリゾートみたいな雰囲気の館内

さっそく「岩窟風呂」へ!

吹き抜けが開放感いっぱいのホールの壁に、お風呂の案内板がありました。
目指す「岩窟風呂」は、ホールの右手にあるようです。矢印に従い、進みましょう。
▲重厚な木の扉の先に、自然光に照らされた廊下が出現

やわらかな光に包まれた渡り廊下を抜け、客室のある建物へ。
壁伝いに竹が並ぶ趣ある廊下を歩いて行くと、「岩窟風呂」の看板が突然出現!
▲威厳を感じさせる文字に、圧倒される

2013年頃まで、夕方の女性専用の時間以外は混浴だったという「岩窟風呂」。現在は、真ん中を仕切り、男湯と女湯に完全に分けています。
▲右下に見える建物は、女湯への入り口

廊下から男湯へ続くガラス戸を開けて外を見ると、目の前に迫る大きな岩山が見えます。ゴツゴツとした岩の山の中へ入っていくように、温泉の入り口があることがわかります。「温泉に入りにきたはずなのに岩山へ入っていくみたい……」。そんな何とも不思議な感覚に陥ります。
▲レトロな雰囲気の脱衣所

脱いだ服をカゴに入れて、お風呂の中へ向かいます。貴重品はフロントに預けると、安心です。
▲洗い場の椅子も石!

扉を開けると、洗い場の先に湯船が見えます。その先には一体どんな光景が広がっているのか……ゴツゴツとした石が濡れた床を、そろりそろりと歩いていきます。
▲天井は低いけれど、広い

右に広がる空間は、まるで異界のよう!ゴツゴツとした壁や天井が荒々しく、想像以上の「岩窟風呂」!

この「岩窟風呂」は、初代社長がたった1人で掘り抜いたもの。わずか1本のドリルで掘ったと聞いて、さらに驚かされます。
▲壁や天井に、ドリルの痕跡が克明に残る

初代社長が「岩窟風呂」を掘り始めたのは、バブル景気真っ只中の1987(昭和63)年のこと。当時、純和風の旅館だったこのホテルでは、女将が訪れるお客のお出迎えやお見送り、夕食時の客室や宴会場への挨拶などで毎日多忙。一方、時間にゆとりのあった初代社長は、仕事の合間を縫ってこっそりと裏山へ行き、ドリルを使って穴を掘り始めました。

「最近、社長はよく裏山へ行っているなぁ」

従業員たちが初代社長の行動に気づいたのは、しばらく経ってからのこと。一体何をしているのだろうと見に行くと、すでに大きな穴が開いていたそうです。
▲灯りは裸電球。ソケットや配線は当時のまま

バブル期に流行した娯楽といえば“カラオケ”。実は、初代社長は当初ここをカラオケルームにしたいと考えていたそうです。とはいえ、完成してみないことには、広さすらわかりません。用途は二の次。まずは、この穴の完成を目指すことにしました。

掘り始めたのは、現在の男湯側の入り口から。さらに大きな空間を目指して、反対側からも掘ることになりました。それが現在の女湯の入口に当たる場所なのだそう。
▲女湯の入り口。男湯側よりも少し天井が低い印象

2つの入り口から掘り進めた穴が貫通したのは、およそ1年半後。1989(平成元)年のことでした。行く手に光が見えた初代社長は、たった今完成したばかりの洞窟を見せるため「ちょっとおいで!」と従業員たちを呼び寄せました。
▲女湯側からの眺め。ベンチも石でできている

洞窟の完成後「ここを宿の魅力にするためにはどうしたらいいか」と、初代社長をはじめ当時の従業員みんなで話し合ったそう。その結果、カラオケルームではなく、お風呂として完成を目指すことになりました。

お湯は、元々あった内湯へ引いていた温泉を分岐させ岩窟へ引き込むことで解決。安全を確保するため、業者に仕上げを依頼しました。その後、各種許可を取得。「岩窟風呂」として営業をスタートすることができたのは、1990(平成2)年のことでした。
▲こんこんと湯が湧き出る。泉質は弱アルカリ単純泉
▲無色透明でやわらかいお湯。効能は筋肉痛や関節痛、疲労回復

湯船は全部で3つ。真ん中にある一番大きな湯船を半分に仕切り、男湯と女湯に分けています。

天井は手が届きそうな高さ。圧迫感があります。天井も壁も湯気で濡れたゴツゴツとした岩肌が露出していて、本物の洞窟を訪れているような気持ちになります。

自然のダイナミックさを味わえる独特の雰囲気に包まれてお湯に浸かっていると、時間を忘れるほど心地よく、心からリラックスできます。伊豆のジオパークを肌で体感できる、貴重な温泉とも言えるでしょう。

宿泊者のみが利用できるお風呂もチェック!

「ブリーズベイ修善寺ホテル」には全部で3つのお風呂があります。「岩窟風呂」以外の2つは宿泊者専用。今回は特別に、この2つのお風呂も見せてもらいました!
▲2つの温泉は別棟にある

ホールから左手のほうへ続く渡り廊下の先にある別棟へ向かいます。
▲扉を開けて石畳の廊下を進むと、目指す温泉がある
▲貸切温泉の「満天星風呂」。天気のいい夜に空を見上げれば、瞬く星が美しい

「満天星風呂」は貸切風呂。チェックイン時に予約をして楽しむ温泉です(1組1回40分)。1941(昭和36)年からあるこのお風呂は開放感にあふれ、四季折々の自然を感じながら湯浴みを楽しめます。天気のいい夜に空を見上げれば、瞬く星が美しいですよ~!

もう1つの「桂谷岩風呂」は、土日と休前日のみ入湯できる特別な大浴場。広々とした内湯で湯浴みを楽しめます。
▲「桂谷岩風呂」の男湯。荒々しい岩肌が印象的
▲こちらは女湯。修善寺温泉ならではの柔らかなお湯を楽しめる

洞窟を掘った“ドリル”をロビーで発見!

お風呂を堪能したら、再びホールへ。
階下を見下ろすと、重厚で大きな木の箱が見えます。一体あれは何だろう?気になって近くに行って見てみることにしました。
中を覗き込むと、使い込まれたドリルがありました。これこそが、「岩窟風呂」を掘り抜いたドリル。実際に初代社長が使っていたドリルが、大切に保管されていました。
▲ドリル本体と実際に使用した刃が展示されている

体が大きくて眼光鋭く、頑固な性格だったという初代社長。1年半かけて掘り抜いた洞窟が温泉として営業を始めた翌年、天国へと旅立ったそうです。完成から2016年で25年。初代社長がたった1人で掘った「岩窟風呂」は、今も「ブリーズベイ修善寺ホテル」を訪れる多くの人びとを癒し続けています。

日本百名湯に選ばれるほどの修善寺の名湯を、幻想的な雰囲気のなか堪能できる「岩窟風呂」。入浴のみなら予約は不要なのだそう。修善寺を観光するなら必ず訪れたい名物スポットです。
永井理恵子

永井理恵子

日大芸術学部写真学科卒のフリーライター。食いしん坊(飲んべえでもある)。東京の荒波に15年揉まれて気づいたのは、生まれ育った静岡県と御殿場市が思いのほか素敵な場所だったってこと!地元のいいところを発信すべく鋭意活動中。

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