極上のしらすに舌鼓。和歌山・湯浅の「しらす丼」3選

2016.11.25 更新

和歌山県の湯浅町は、全国有数の「しらす」の水揚げ量を誇る町。ご当地グルメとして「しらす丼」を提供するお店が町内にたくさんあります。今回は、和歌山を訪れたらぜひ食べて欲しい「しらす丼」をご紹介します。

スーパーなどで、目にすることも多い「しらす」。日本人にとってとてもポピュラーな食べ物ですが、いったい何の魚かご存知でしょうか?

しらすとは、ウナギ・アユ・イワシなどの稚魚の総称のこと。なかでもとくにカタクチイワシ・マイワシ・ウルメイワシなどの2~3cm程度のイワシの稚魚を指すのが一般的だそう。
ここ湯浅町にある湯浅漁港では、一年を通してたくさんのしらすが水揚げされ、なかでも10月~12月頃は、脂が乗って身がしまった極上のしらすが獲れるんだとか。

そんな湯浅漁港で獲れた極上のしらすをご飯にたっぷりのせた「しらす丼」。湯浅町では、たくさんのお店がそれぞれに独自のこだわりで「しらす丼」を提供しています。
▲「しらす丼食べ歩きマップ」を見ながら、「しらす丼」めぐりスタート
筆者一同は、まずは湯浅町が発行している「しらす丼食べ歩きマップ」とにらめっこ。掲載されている10以上のオススメ店の写真はどれもとてもおいしそうで、見ているだけでよだれがでてきます。贅沢な悩みに頭を抱えながら、まずは、一軒目へと向かいました。

まずはお城で?「湯浅城」で絶品しらすを!

やってきたのは、湯浅のランドマーク的存在「湯浅城」。康治2(1143)年に湯浅宗重(むねしげ)によって築城されたお城です。
なんでお城?と思われた方。なんとこのお城、現在では、食事・宿泊・温泉入浴ができる国民宿舎になっているんです。
▲その名の通りまさにお城です
町の高台にそびえる「湯浅城」。奥には、立派な天守閣がそびえています。
▲フロントロビーは、鎧や番傘などが飾られたおしゃれで落ち着きのある雰囲気
お城に泊まれるなんてワクワクしますね。スタッフの方によると、日本で唯一本物のお城に泊まれる施設ということで観光客に大人気だそう。もっといろいろ見て回りたいところですが、今日のお目当ては「しらす丼」。
広々とした趣のあるロビーを抜けて、食堂へと進みます。
フロントからまっすぐに延びる廊下を進んだ先にある食堂は、とても広々としたスペース。
きれいな庭を眺めながら、ゆっくりと食事を楽しめるお座敷席もあります。
そして、早速…
▲釜揚げしらす御膳(税込1,512円)※しらすのかき揚げ付きは税込2,000円
こちらが「湯浅城」のお昼の一番人気メニュー「釜揚げしらす御膳」です。お皿にこんもりと盛られた「釜揚げしらす」。そしてそのほかにも地元の旬の魚のお刺身や小鍋に、小鉢、お味噌汁付き。

でもそれだけじゃないんです。さらに「湯浅城」特製の「しらすのかき揚げ」を付けることもできるんです。
お昼からこんな贅沢コースを食べちゃっていいんでしょうか?
不安を覚えるほどのいたれりつくせりな御膳です。
こちらでは、自分でご飯に「釜揚げしらす」をのせて、丼にしていただきます。
あったか~いご飯の上に、そぼろ状の玉子、刻まれたしそといっしょになった「釜揚げしらす」をたっぷりと。そして、きざみ海苔とお好みで梅干しを少々。
口いっぱいに頬張ると、もっちりプリプリのしらすの食感。ほんのりとほどよい塩味が、海を感じさせます。そしてそこに、そぼろ玉子のほのかな甘みと、刻んだしそや梅干しのさっぱりとしたさわやかな酸味が混じり合い、後味がさわやかに。とてもあっさり、さっぱりとしています。

お好みで、しらすと並ぶこの地域の名産「湯浅醤油」を使った湯浅城特製の出汁醤油をさっとひとまわしかけると、味にまた深みが。飽きる暇なくさらりと一杯完食です。
そして、「しらすのかき揚げ」は、釜揚げではなく新鮮な生のしらすと玉ねぎ、刻んだ大葉をシンプルにかき揚げにした一品。素材の味を存分に堪能できる上品な味付けで、甘い玉ねぎの合間合間からしらすの風味が顔を出します。
心もお腹も大満足で「釜揚げしらす御膳」を完食した筆者一同は、すっかり湯浅のしらすのとりこに。
お腹はもうすでにいっぱいですが、お店によってどんな違いがあるのか食べ比べを楽しむため、次のお店へと向かいました。

「横楠」で、古き良き地域のあたたかさを感じながら、しらすを堪能!

次にやってきたのは、JR湯浅駅からほど近い日本料理「横楠(よこぐす)」。
趣きある2階建ての和風の建物です。玄関には料理の写真や湯浅地区の写真に、なぜだか「スカイツリー」の写真がこっそりと混じっています。
「?」
「ごめんくださ~い」
▲どこか古き良き時代を感じさせる「横楠」の外観
「は~い。いらっしゃ~い」
▲「横楠」のおかみ、茶売陽子(ちゃうり ようこ)さん
「ようおいでくださいました。さあ、どうぞどうぞ」
のれんをくぐった筆者たちを、出迎えてくれたのは、女将の茶売陽子さん。
くったくない笑顔で、とても親しみやすい「田舎のお母さん」といった印象です。
▲2階お座敷の個室
「横楠」は、創業明治33(1900)年。お寿司と新鮮な魚が味わえる日本料理店として、地元の方の各種宴会や法事、慶事でのお料理、また仕出しなどを長年提供してきたお店です。カウンター席に個室に大宴会場。京都の某料亭を参考にして建てたという落ち着きのある店内。

さっそく「しらす丼」を注文します。
▲しらす丼 しらす天ぷらとお造り付(税別1,500円)
「昔は、しらすというと、地域の人が家で食べるようなもので、お店で出すようになったのはわりと最近。うちも観光でくるお客さんのためにって始めたんよ。まぁ冷めないうちにどうぞ」と女将。

「では、いただきます」
横楠の「しらす丼」は、ご飯にしらすと大葉と海苔のみ。そこに、お馴染み「湯浅の醤油(自家製ブレンド)」をさっと垂らしていただきます。
親戚からその日の朝獲れた鮮度抜群の生しらすを仕入れ、均一に火が通るように特大の釜で一気に釜茹でするという「釜揚げしらす」は、まさにプリプリ。おいしく炊き上がったお米のことを「ご飯が立っている」などと言ったりしますが、それのしらす版。「しらすが立っている」といった感覚です。

もちろん臭みなどはまったくなく、湯浅醤油との相性も抜群。「湯浅城」のさっぱりした後味に比べるとしらすの味を噛みしめることができるといった印象の一杯でした。
そして、こちらは「しらすの天ぷら」。中身はしらすと大葉のみ。かじると「サクッ」とした食感。先程のかき揚げとはまた違う軽い印象で、大葉の香りがふわっと広がります。これまたしらすの新しい魅力発見です。
▲「また来たい」そう思わせる居心地のいい空間を提供してくれる女将
お昼時を過ぎたにもかかわらず、ちょこちょこと訪れる地元のお客さんたち一人ひとりの相手を丁寧にしながらも、常に筆者たちのことにも気を配ってくれる女将。

ご自分の趣味の旅行のお話(店の入口のスカイツリーの写真はその時のものなんだとか)や、ご主人とのエピソードなど、興味深い話をたくさんしてくださいました。

ややもすると落ち着いた店内とはアンバランスなアットホームな雰囲気。
とても居心地のよいお店でした。

最後は生で!「かどや食堂」の「生しらす丼」

湯浅の「しらす丼」めぐりの旅。最後に筆者一同が訪れたのがここ「かどや食堂」です。
▲「かどや食堂」外観
「かどや食堂」は、これまたJR湯浅駅からほど近いお店。地域に根ざした食堂といった外観で、いかにも夜には近所のお父さん方が「ちょっと一杯」と集まってきそうな気取らない雰囲気のお店です。
▲「かどや食堂」のご主人、宮井功(いさお)さん
のれんをくぐると、期待を裏切らず、味のある店内。
カウンターといくらかのお座敷席という決して広いわけではないのに、それが逆に妙に落ち着きます。

そんな一見どこにでもありそうなこのお店ですが、「しらす丼」には並々ならぬこだわりが。
何を隠そう「かどや食堂」のご主人・宮井功さんは、湯浅の「しらす丼」を全国に知らしめた立役者のひとり。
湯浅町ではじめて「しらす丼」を出したのがこの「かどや食堂」なんだとか。
「せっかく地元でこんなに水揚げされているんだから、しらすを使って何か、まちおこし的なことができないかなって」
一見、おだやかで、大人しそうなご主人ですが、内にはしらすに対する熱い思いが。
これまでにも全国のグルメグランプリに出場するなど、お話を聞いていると「湯浅のしらすの良さをひとりでも多くの人に伝えたい」という思いがひしひしと伝わってきます。

そして、このお店では、今までのお店で食べてきた釜揚げの「しらす丼」とは別に「生しらす丼」なるメニューが。

なんと釜揚げ前の生のしらすを丼で味わうことができるんです。
▲「生しらす丼」味噌汁付き(税込1,100円)
それが、こちら。
こちらも自分で、ご飯にのせて丼にするスタイルのようです。
「生のしらすが温まっちゃうんで、食べる直前にお客さんにのせて食べてもらうんです」とご主人。

湯浅の朝獲れの「生しらす」が堂々とお盆の真ん中を陣取っています。
特殊冷凍技術の進歩により、最近は、徐々に他のお店でも生のしらすを味わえるところが出てきたようですが、まだまだ少ないとあって、この「生しらす丼」を目当てに訪れる観光客の方も多いのだとか。

想像よりも厚みがあり、大きい生しらす。半透明でキラキラと輝いています。
「海苔はしけっちゃうんで、最後の最後に入れるのがオススメです」
ご主人のアドバイスのもと、ご飯の上に、生しらすと刻みネギをのせ、特製のタレをかけたあと、仕上げに刻み海苔をパラパラとまぶしたら、「生しらす丼」の完成。

「それでは、いただきます」
「!」
釜揚げのしらすをプリプリと表現するなら、この生しらすはトロプリ。トロトロしていながら、それでいて弾力のある食感。みずみずしさもあり、ちょっと濃いめの醤油ベースのたれとの相性も抜群です。

これは「釜揚げしらす丼」とはまったく別の食べ物。どちらも甲乙付け難いですが、素材の新鮮さがいやがおうにも伝わってくるのがこの「生しらす丼」。湯浅だからこそ味わえる贅沢な一品かもしれません。
お店ごとにいろいろな味を楽しむことのできる「しらす丼」。湯浅を訪れた際は、一軒のみならず、二軒、三軒とお店をめぐって、自分好みの「しらす丼」を探してみてはいかがでしょうか?
James

James

イギリス人と日本人とのクォーター。大学では工学部、情報システムを専攻したかと思えば、ミュージシャンとしてギタリスト、MC、DJとして活動。TVやラジオなどでも活躍。その後(株)アドビジョンにて、デザインやコピーライティングなどマルチに活躍。バックグラウンドを活かした独自の視点が人気のライター。

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