醤油発祥の地・湯浅。情緒あふれる町並みを散策!
熊野三山へと続く熊野古道の宿場町として、古くから栄えた和歌山県の湯浅町。醤油発祥の地としても有名なこの町では、江戸~明治時代の風情を感じさせる建物が軒を連ね、趣のある町並みを歩きながら、歴史に思いを馳せることができます。

ここには、平成18年に文部科学省から「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されたエリアがあり、いまでも江戸~明治時代の面影を残したままになっています。近年では、醤油醸造の歴史に触れ、時代を感じられるその町並みが、観光スポットとしても注目されています。
歴史ある町並みを散策!

大仙堀という川から繋がる掘割沿いに醤油醸造蔵らしき古い建物がずらりと並んでいます。



「北の町老人憩いの家」前で出迎えてくれたのは本日の語り部・半邊宗五さん。
半邊さんは湯浅伝統地区保存協議会の副会長もされている方で、「この町並みの良さをたくさんの人たちに伝えたい」と2006年から語り部の活動を開始。現在も湯浅町に住んでいる、まさに「湯浅博士」です。

まずは、町の歴史や概要をていねいに説明してくれる半邊さん。
歴史ある町並みを保存しながら、今もなお現役で人びとが暮らす町としても成り立っているとは驚きです。

立ち並ぶ建物一つひとつ順番に詳しく説明してくれる半邊さん。
「これは、何年頃に建てられたもので、この時代の建物の特長は…」などと思わず「へぇ」と感嘆してしまう情報を、次々と小気味いいテンポで話してくれます。

なるほど。勉強になります。

家の外壁、軒下に格子窓のようにつけられているショーケース。あたりを見渡すと通り沿いの家の至る所に同様のものが。
「町民の方に協力してもらって、中身はそれぞれの家に残っているものを自由に展示してもらっているんです」
年代を感じさせる小さな絵画や、江戸時代の医者が使っていた小道具など、展示物は実にさまざま。
まるで町全体がひとつの博物館のよう。さまざまな展示を楽しみながら町を散策できる粋な演出です。



通りには、ギャラリーや茶店などもあり、町並みや「せいろミュージアム」以外にも見どころいっぱい。どこも観光客が気軽にふらっと立ち寄れるところばかりなのもうれしいポイントです。

老舗醤油醸造蔵「角長」で、醤油づくりの奥深さに触れる
「ここから奥、ずらっと並んでいるのが角長(かどちょう)さんのお店と蔵です。天保12(1841)年の創業以来、ここで醤油づくりを続けている老舗なんですよ」と半邊さん。


まずお話をうかがったのは、6代目 加納誠さん。
「江戸時代、紀州徳川藩の保護を受け、92軒もあったとされるこの町の醤油屋は、醤油づくりの技術が全国に広まったことや、大量生産体制に取り残されたことなど、さまざまな理由から徐々に数を減らしていきました。今では普通、醤油といえば大手食品メーカーの大量生産品が一般的でしょ。それでも、うちは頑なに手作りにこだわり、昔の製法を守り続けているんです」

今回は特別に実際の製造蔵内を見学させていただくことに。
案内してくださったのは、誠さんの息子で7代目の加納恒儀(つねのり)さん。
少しずつ補修をしながら、江戸時代からずっと使い続けているという蔵へと進みます。

蔵の内部の天井や壁・梁、そして使われ続けている樽。これらに付いている蔵付きの酵母菌が角長の何よりの財産。
恒儀さんいわく、長年ここに住みついている酵母菌が角長の醤油の味に唯一無二の個性を生み出す、というのです。
「他の老舗の醤油蔵や味噌蔵なんかを見にいく機会があると、ついつい、蔵の屋根にカビがついているかどうかチェックしちゃうんです。それが、良い酵母菌が住みついている蔵かどうかの指標になりますから」
さすが、職人です。

また、驚いたのはその熟成年数。
「この樽は、4年。これは7年ぐらいかな」
しれっとした顔で語る恒儀さん。
深いコクのある濃口の溜り醤油が特長の角長。樽で熟成された「もろみ」と呼ばれる醤油のもとを絞ってつくられるのですが、角長の「もろみ」は最低でも4年以上熟成されるそう。
長い月日をかけて惜しまぬ手間暇、重労働がつくりだす角長の醤油。そのこだわりには感心しっぱなしでした。

そんな声が聞こえてきそうですが、ご安心を。
角長では、観光に訪れる人たちのために、職人蔵と醤油資料館を一般公開しています。実際の製造風景とはいかないまでも、奥深い醤油づくりの世界を堪能することができるんです。


どちらも、角長、そして湯浅の醤油づくりに関する貴重な展示が目白押し。入場無料で見学できるので、ぜひ立ち寄ってみてください。
角長
和歌山県有田郡湯浅町湯浅7
[営業時間]角長本店9:00~17:00、職人蔵(民具館)9:00~17:00、醤油資料館 毎週土曜13:00~(その他の曜日は要事前予約)
[定休日]なし※職人蔵と醤油資料館は日曜休館
0737-62-2035
最後は銭湯跡歴史資料館「甚風呂」で、懐かしき日本に触れる

「甚風呂は、幕末から昭和の高度経済成長の時代まで、4代にわたりこの地で営まれてきた公衆浴場。建物は、正確な時期はわからないんですが、明治前期に建てられたものだろうといわれているんです」と半邊さん。
なるほど、どおりで和の建築でありながら、ハイカラな塀があるなど独特な雰囲気の建物です。




銭湯跡歴史資料館 甚風呂
和歌山県有田郡湯浅町湯浅428
[開館時間]10:00~16:00(平日12:00~13:00は昼休み)
[入館料]無料
[休館日]水曜(水曜日が祝日の場合は開館、その翌日休館)、年末年始
0737-20-2033
半邊さんたちのさまざまな工夫や努力により、観光スポットとしての見どころがたくさんあるこの「湯浅伝統的建築物群保存地区」ですが、実際に町民が今でも暮らしているためか、おしつけがましい観光地感もなく、ゆっくりと町を散策することができます。
この町並みで歴史と伝統を感じながら、時代とともに変わってきた人びとの暮らしに思いを馳せてみてはいかがでしょうか?
湯浅伝統的建築物群保存地区
和歌山県有田郡湯浅町湯浅
0737-63-2525(湯浅町役場)

James
イギリス人と日本人とのクォーター。大学では工学部、情報システムを専攻したかと思えば、ミュージシャンとしてギタリスト、MC、DJとして活動。TVやラジオなどでも活躍。その後(株)アドビジョンにて、デザインやコピーライティングなどマルチに活躍。バックグラウンドを活かした独自の視点が人気のライター。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
この記事の関連キーワード
こちらもおすすめ
この記事の関連ご当地情報
有田・御坊で体験できるプラン
-
オンライン予約OK
【和歌山・体験ダイビング】オリジナルポイント・無人島「鹿島」…
約3時間|11,000円(税込) / 人
有田・御坊
-
オンライン予約OK
【和歌山・シュノーケリング】美しい海を覗き見♪10歳から参加…
約3時間|11,000円(税込) / 人
有田・御坊
-
オンライン予約OK
【和歌山・湯浅湾シーカヤック】日本一周達成の海洋冒険家が教え…
約6~7時間|12,000円(税込) / 人
有田・御坊
-
オンライン予約OK
【和歌山・湯浅湾シーカヤック】日本一周達成の海洋冒険家が教え…
約3時間|7,000円(税込) / 人
有田・御坊
-
オンライン予約OK
【和歌山・湯浅湾】日本一周達成海洋冒険家が教えてくれるハーフ…
約4~5時間|10,850円(税込) / 人
有田・御坊