最も大阪的な活気と喧噪の道頓堀通

2016.11.25 更新

ここ数年、外国人観光客であふれかえる道頓堀。この大観光地は、大阪ミナミのど真ん中にあって、歴史、川、文学、食べもの、観劇、お寺、看板……と、てんでバラバラな魅力の要素にあふれている。だからこそ街歩きがいちばんオモロい。歌謡曲にも唄われた「そぞろ歩き」で、いざ道頓堀へ。

喧噪の真っ只中を食べ歩く

水の都・大阪のいちばん“らしい”エリアが道頓堀だ。
道頓堀川の開削工事の完成は江戸初期の元和元(1615)年。成安道頓(なりやすどうとん)と安井道卜(どうぼく)の手によるもの。のちに大坂城主の松平忠明により「道頓堀」と名付けられた。
芝居小屋を中心に、歓楽街としてにぎわった。
アプローチは御堂筋側から堺筋方面に東へ歩くのが一番わかりやすい。
御堂筋にかかる道頓堀橋に立つと、いきなりグリコの巨大看板がお出迎え。すぐ東の戎(えびす)橋は大阪で一番賑わうスポット。
▲戎橋から見た道頓堀の北岸にある「ドン・キホーテ」の観覧車。これもド派手色
▲一番便利なのは地下鉄御堂筋線なんば駅。近鉄、南海のターミナルとつながっているので、地下街が結構複雑。心斎橋寄り(北)の14番出口を目指そう

戎橋南東角の「かに道楽本店」。カニの脚が動くでっかい看板はド派手さナンバーワン。店頭では着ぐるみ人形のパフォーマンスが。
〝浪花のモーツァルト〟の異名をとるキダ・タローが作曲した「と~れとれ ぴ~ちぴち かにりょうり」のCFソングでおなじみの大宴会もできる大型カニ料理店。その1階屋台のダントツ人気が「タラバかに炭火焼」、1パック2個入り900円(税込)。
昔ながらの歌舞伎に芝居の「松竹座」は堂々たる欧風近代建築。そこから戎橋筋をはさんで斜め向かいに「かに道楽」がある。
道頓堀の飲食店で一番多いのがたこ焼き店。2店並んでいるなんていうのはザラ。
御堂筋側から道頓堀に入ってすぐの全然ムードが違う隣同士の2店は「#AKATAKO」と「くくる」。どちらも堂々とNo.1をうたっているのがおもしろい。

事情通によると、生地の具合、天かすやネギ、タコの大きさ、トッピング、ソース…の違いや、8個650円か700円かの違いなどいろいろあるそう。
▲「#AKATAKO」の見事な銅製たこ焼き器
▲たこ焼き店「くくる」の巨大たこキャラクター看板。店の間口からはみ出ている

注意深く見ていると、イイダコが丸ごと一匹入った「踊りだこ」なる店を発見。4個500円(税込)といささか高級で、券売機は日英中韓の4カ国語併記。

精肉店直営の肉料理、洋食グリル、カレーショップ

道頓堀で一番有名な老舗が、道頓堀と御堂筋南東角にある精肉店の「播重(はりじゅう)」。
タクシーにも「播重の前で」で通る、一等地にある渋くて堂々たる建物。道頓堀側1階はすき焼き、しゃぶしゃぶのお座敷料理店と洋食グリルの2つの入口が並んでいる。
注目すべきは御堂筋側に設置されている「カレーショップ」。
カレーライスからカツ類、定食の店で、一人でも気軽に入れる雰囲気でいつも賑わっている。
ユニークな人気メニューが「ビーフワン」864円(税込)。
「牛丼の玉子とじ」とカッコ付きで表されるこのメニュー、牛丼や他人丼とはひと味違った、少し洋風のニュアンスがする丼。

さすがミナミ屈指の精肉店直営とあって、毎日出る和牛上部位の端肉を「おいしいところは余すとこなく」使った逸品。
「ビーフワン」といった、まことに大阪的なネーミングとともに、ファストフードとは一線を画した「気軽なごちそう」だ。
ド派手看板、屋台風飲食店が並ぶ道頓堀の喧噪とは違う、昔ながらの佇まいに昭和モダンな内装。
店名の通りの小さなカレーショップだが、「大阪の名店」としてよく知られている。

法善寺横丁に迷い込む

千日前との三叉路あたりが道頓堀の中心地。
ラーメンに餃子、フグ料理、寿司…と巨大看板がここぞとばかりに並んでいる。
▲「金龍ラーメン」は御堂筋沿い、「はり重カレーショップ」の南にもあるが、もちろんこんなに派手な看板ではない
▲地元大阪で人気の餃子専門店「大阪王将」。大阪各地にあるがこの店の看板がナンバーワン
▲これも地元の回転寿司のチェーン店「元祖廻る 元禄寿司」。道頓堀に出店するとこうなる

一番人気の「くいだおれ人形」がある中座くいだおれビルには、大阪グッズ・大阪みやげのメガショップ「いちびり庵」があって、ものすごい人だかりだ。
▲くいだおれビルの「くいだおれ人形」。記念撮影の名所
▲大阪の伝統的な菓子、「あみだ池大黒」のおこしが人気アイテム
▲このところ伝統的なお菓子や「リアルな大阪」が人気みやげ

コナモノ店や屋台の店もこのあたりは何でもござれだし、激増する外国人観光客向けのそれとわかる店も多い。
▲「コナモンミュージアム」とは大きく出たもんだ
▲この屋台は中国人観光客向けとみた。道頓堀の人気ぶりが分かる

店先に柳がそよぐ昔ながらのうどん店「道頓堀今井」が目に入る。
「だしの今井」と評判の店で、客層は昔からの馴染みが多い。
ここだけ時間が止まっているようで、その横には法善寺横丁に通じる「浮世小路」が。人ひとりすれ違うのもぎりぎりの広さだ。
道頓堀から南へ折れて千日前に入ると、喫茶店「アメリカン」があるので、ひと息ついてお茶にするのも良い。
ゴージャスだが落ち着いた昭和のムードが漂う空間で飲むコーヒーは格別だ。
そのあとは法善寺横丁に入り込もう。
狭い石畳の路地にしっとりと飲食店が並び、その途切れたところに「法善寺水掛不動」がある。
ちょっとおどろおどろしい苔むした不動明王に水をかける参拝者が後を絶たない。
▲「行き暮れてここが思案の善哉(よしや)かな」の織田作之助文学碑や「包丁一本、晒(さらし)にまいて~」の昭和の大ヒット曲「月の法善寺横町」の記念碑が

忘れてはならないのが「水の都・大阪」を道頓堀で感じること。東の相合橋(あいあうばし)から西の大黒橋までは、川沿いにプロムナードが整備されている。
▲約20分かけて道頓堀を川から楽しめるミニクルーズ船「とんぼりリバークルーズ」900円(税込)も北岸の「ドン・キホーテ道頓堀」前の太左衛門橋船着場から出ているので、余裕があれば乗ってみるのもいい

大阪広しといえど、道頓堀の喧噪と活気の強烈さは他所では経験できない。庶民的な手触りも独特のものだ。
江弘毅

江弘毅

編集者。京阪神エルマガジン社時代に雑誌『ミーツ・リージョナル』を立ち上げ、12年間編集長を務める。著書『街場の大阪論』(新潮文庫)、 『「うまいもん屋」からの大阪論』(NHK出版新書)、『飲み食い世界一の大阪』(ミシマ社)など、主に大阪の街や食についての著書多数。最新刊は7月15日発売の『濃い味、うす味、街のあじ。』(140B)。編集出版集団 140B取締役編集責任者。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
PAGE TOP