世界遺産「石見銀山」でワンコインツアーとレトロな町並みを楽しむ

2016.12.20 更新

平成19(2007)年に世界遺産に登録された島根県大田市の「石見銀山(いわみぎんざん)」は、戦国時代から江戸時代にかけて世界最大級の産出量を誇る銀鉱山でした。銀生産の中心地だった「仙ノ山(せんのやま)」には、およそ980の旧坑道や製錬所跡が周囲の自然に溶け込みながら今も残っています。今回はガイドの案内で遺跡を巡り、かつて銀で栄えた周辺のレトロな町並みとともに満喫してきました。

▲江戸時代の面影を残す石見銀山ふもとの大森地区の町並み

まずは世界遺産センターで、石見銀山を「知る」!

JR出雲市駅から特急電車で約30分の場所にある日本海沿いの町、大田市。更にそこからバスで30分ほど山奥へと入っていった所に石見銀山遺跡はあります。
▲まずは「石見銀山世界遺産センター」へ

世界遺産登録エリアの中心部にある「石見銀山世界遺産センター」では、模型や映像を通して遺跡の価値や魅力、全体像などを分かり易く学ぶことができます。
▲当時の鉱山の様子や暮らしぶりが復元品や再現品等で解説してある

石見銀山は大永6(1526)年に発見されて以来、大正12(1923)年の休山まで約400年にわたって採掘されてきた世界有数の鉱山遺跡です。最盛期には世界の産銀量の約3分の1を占めていた日本銀のうち、その大半が石見銀山で産出されたものだったと考えられています。
▲世界遺産登録エリア全体の模型。ここに来て初めてその規模を知る人も多いのだとか

環境に配慮し、自然と共生した鉱山運営を行っていたことが評価され、2007年「石見銀山遺跡とその文化的景観」として世界遺産に登録された石見銀山。その登録エリアは総面積約530haととても広く、鉱山遺跡の他にも銀を運んだ街道と積み出した港や港町、政治経済の中心だった鉱山町などのすべてが対象です。
▲館内では、「実寸大プレミアム丁銀づくり」をはじめ、さまざまな丁銀づくりが体験できる(実寸代プレミアム丁銀づくり体験は所要約45分・税込3,000円)

こちらの施設では、1名からでも施設内を案内してもらえるほか、月に1回、鉱夫とその家族を描いた寸劇を上演するなど、石見銀山を知ってもらうための工夫がたくさん。ガイドツアーや町歩きをより充実させるためにも、出発前にここで全体像を把握しておくことをおすすめします。

いよいよ遺跡へ。ワンコインガイドツアーへ出発!

石見銀山遺跡の概要を把握したら、いよいよ遺跡に足を踏み入れます。地元ガイドによる説明を聞きながら遺跡を巡る「石見銀山観光ワンコインガイドツアー」(大人500円、小中学生100円※税込)に参加することにしました。
▲ガイド歴10年の太田文子(ふみこ)さん。歴史にも詳しく、戦国武将の名前などを挙げながら表情豊かに語ってくださる

ワンコインツアーは、大森の町並みを散策するコースと、石見銀山遺跡群の中でも有名な「龍源寺間歩(りゅうげんじまぶ)」を徒歩で目指すコースの2種類(間歩とは、銀の採掘用に掘られた坑道のこと)。今回は「龍源寺間歩コース」(往復2時間)に参加しました。
スタート地点の銀山公園から龍源寺間歩へ向かう途中、銀鉱山で栄えた当時の面影を残す遺産が至るところに見られました。
▲この日は霧で隠れていたが、普段は写真中央奥に見える仙ノ山が、銀色に光ったことから銀山が発見されたという伝説が残っている

この仙ノ山のふもとの銀山地区は16~20世紀にかけて銀生産の全作業が行われていた場所で、最盛期にはたくさんの住居が並び、2~4万人が暮らしていたそうです。
▲銀鉱石を砕く作業で使われた要石(かなめいし)。当時のものが無造作に残されている
▲下河原吹屋跡(しもがわらふきやあと)。17世紀初頭の銀精錬所の遺跡

30分ほど歩いたのち、龍源寺間歩に到着しました。石見銀山に1,000近くあるといわれる間歩のなかで唯一、常時見学できるのがこの龍源寺間歩です。江戸時代前半に開発され、200年以上にわたり稼働していた間歩です。
▲龍源寺間歩の入口。ここから坑道の中へ入ります。間歩の見学料(大人410円、小中学生200円※税込)はツアー料金に含まれていないので、間歩の受付で別途支払いが必要
▲間歩の中は狭くて暗く、ひんやりとしている。気温は1年中ほぼ同じ温度(約12度)

龍源寺間歩は全長約600m。そのうちの273m(新坑道を含む)が公開されています。現代のような機械が無かった江戸時代、真っ暗な闇の中を人の手で地道に掘り進められた間歩。ノミを使って1日に掘れるのはせいぜい30cmほどだったそうで、岩の削り跡からはその執念が感じられました。
▲坑道を掘り進めたノミの跡

坑道は鉱脈(こうみゃく)に沿って全て手作業で掘り進められました。鉱夫たちは「螺灯(らとう)」と呼ばれる、サザエの殻に油を入れて火を灯したものを手に持ち、坑内を照らしながら作業をしたそうです。

「坑道は換気が悪いから病気になる人も多く、30歳になると長寿の御祝いをしたそうです」とガイドの太田さん。

しかし、山を崩したり森林を伐採することなく、狭い坑道を掘り進んで採掘するという環境に配慮した生産方式だったことが評価され、世界遺産に登録されたそうです。

なお、石見銀山で最大級の間歩の一つといわれる「大久保間歩」では、毎年期間限定(3~11月の金・土・日・祝日・お盆期間)にツアーが実施されています(要予約・大人税込4,000円)。
▲周囲にも小さな間歩があちらこちらに残されている。銀鉱山で膨大な数の人々が働いていたことが想像できる
帰り道でも、歴史に詳しい太田さんは、石見銀山を巡って攻防した戦国武将の名前を挙げながら、ゆかりの墓や寺社などをひとつ一つ教えてくださいました。
▲豊榮(とよさか)神社。16世紀後半に石見銀山を支配していた毛利元就が祀られている

一人で回っていたら見落としていたであろう小さな遺跡や寺社も解説してもらえるので、ワンコインガイドの利用を是非おすすめします!

大森地区にある古民家を再生したカフェ&ショップ「群言堂」へ

大森地区は、江戸時代初頭に石見銀山の政治経済の中心地として栄えた場所。古い町家や武家屋敷が残る一帯は、重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。
▲民家も店舗も統一感のある日本家屋。玄関先に季節の草花が活けられていたり、観光客をもてなすさりげない心遣いが嬉しい

古い町並みの中でもひときわ目を引くお店が「群言堂(ぐんげんどう)」です。築150年の古民家を再生した店内には、カフェ、ショップ(衣料品、雑貨、寝具)、ギャラリーが併設されています。
▲「群言堂」石見銀山本店
▲暮らしの道具や器、食品が並ぶショップ
▲一つひとつ表情の違う刺し子のブローチ。すべてが一点もの

地元の旬の素材を活かしたごはんやスイーツが食べられるカフェも、女性に人気。ちょうどお昼どきだったので、こちらでランチをとることにしました。
▲カフェの客席は緑鮮やかな中庭に面している。天井に落ちる雨音にも癒される
▲「里山おむすび」(お飲物付で税込1,000円)。3種類のおむすび、しじみのお味噌汁、おからサラダ、旬野菜のぬか漬けがセットに

人気の「里山おむすび」をオーダーすると、おむすびが風呂敷に包まれた状態で登場。開けると更に竹皮にくるまれていました。
向かって左から「新しょうがの炊き込み」「塩むすび」「人参とおかか」の3種類(おむすびの種類は時期によって変わる)。お米は出雲市の結(むすび)地区産のもの。縁結びの里で栽培されたこのお米は、一粒一粒がつやつやしており、噛み締めるほどに米の甘みと旨みが広がります。
江戸時代の面影が残る大森地区は、群言堂をはじめ、カフェ、パン屋、和菓子店、銀細工のお店など、こぢんまりした素敵なお店が立ち並び、町歩きが楽しいエリアでした。大森地区も世界遺産登録エリアの一つなので、是非ゆっくり散策してみてください。

重要文化財「熊谷家住宅」で江戸時代にタイムトリップ

「群言堂」でランチをとった後は、石見銀山で鉱山を経営し、大森町内で最も有力な商家の一つだった熊谷家の屋敷「熊谷家住宅」を訪れました。こちらの建物は国の重要文化財に登録されています。
▲重要文化財「熊谷家住宅」。町の中でもひときわ立派なお屋敷

部屋数は30室以上。鼠漆喰(ねずみしっくい)の壁や太い柱、芸術的な欄間などに目を奪われます。各部屋には熊谷家が日々の生活で使っていた家財道具が展示され、銀山で栄えた有力商人の暮らしぶりが伺えます。
▲涼しげにしつらえられた夏の座敷。奥には美しい中庭が見える

熊谷家住宅では季節に合わせて襖や障子、飾物などを替える「しつらえ替え」によって日本住宅の美しさが表現されています。
幕末~明治初期の姿に復元された台所には、今となっては珍しい土間や竃(かまど)が。月に一度は実際に薪をくべて火入れをするそう。
▲玄関から土間続きの台所には大小10基の竃が。奥のちゃぶ台にはある日の夕食が再現されている

喫茶コーナーもあり、飲みものやアイスクリームが頂けます。「熊谷家住宅の甘酒がおいしい!」そんな噂を聞いていた私は、迷わず甘酒を注文。
糀(こうじ)の粒が残るとろりとした甘酒は、雨で冷えた体を温めてくれました。
▲優しい風味の甘酒(税込300円)。器とお盆も素敵
江戸時代の人々が命がけで採掘した銀鉱山と、当時の繁栄を今に伝える大森の町を散策してみると、まるでタイムスリップしたかのよう。江戸時代の息づかいを感じられ、歴史ロマンに浸ることができました。
賣豆紀有加里

賣豆紀有加里

島根県在住のグラフィックデザイナー。島根県の観光情報サイト、フリーペーパーなどでライターも務める。山陰のおいしいもの・楽しいこと・素敵な場所を発掘するのが趣味。(編集/株式会社くらしさ)

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

こちらもおすすめ

もっと見る
PAGE TOP