脂のり抜群の「金華さば」を食べ歩き。港町・石巻で出合う絶品サバ料理

2016.12.18

全国でも十指に入る水揚げ量を誇る宮城県・石巻港で、水揚げ量の約4割を占めるのがサバ。なかでも、秋から冬にかけて穫れる「金華さば」は、脂のたっぷりのったブランド魚として知られています。「金華さば」を使ったおいしい料理を求めて、現地を歩いてみました。

石巻が誇るブランド魚「金華さば」とは!?

宮城県石巻市の東部、太平洋に突き出た牡鹿(おしか)半島のさらに東の海上に浮かぶ島、金華山(きんかさん)。周囲17.3kmの小さな島には「黄金の神」「生産の神」として信仰を集める金華山黄金山神社があり、「3年続けて参拝すれば一生お金に困らない」と言われています。
▲牡鹿半島から見た金華山。その向こうに広がるのが「金華山沖」です(写真提供:石巻市)   
金華山の沖合を含む三陸沖は親潮と黒潮が出合う潮目となっていて、世界でも有数の好漁場として知られる海域です。また、金華山黄金山神社には石巻地域の漁業関係者が毎年大漁祈願に訪れるなど、金華山は石巻地域の漁業にとって重要で身近な存在であり続けてきました。

金華山の周辺海域では例年10月頃になると、脂のたっぷりのった大型のサバが穫れるようになります。「金華さば」と名付けられたこのサバは、テレビの料理対決で紹介されて以降、全国から注文が殺到する人気ブランドになりました。

11月、「金華さば」の水揚げを見せてもらいに石巻魚市場にお邪魔しました。
▲石巻魚市場。年間に200種類を超える魚介類の水揚げがある

石巻のサバ漁は午後に出港して夜に操業し、朝に水揚げする巻き網漁が主流なのですが、前日の強風のため、この日は巻き網船の水揚げがありませんでした。代わりに、当日未明に出港した定置網船の水揚げを見せてもらうことに。
▲操業を終えて魚市場に向かう定置網船。獲物を狙う海鳥が船を取り巻きます
▲対岸に見えるのが巻き網船。1日で200~300tのサバを水揚げするそうです
▲この日に水揚げされた魚はイワシがメインでしたが、大ぶりなサバの姿もあちこちに
▲石巻魚市場で入札にかけられるサバ。サイズごとに分けられています

石巻魚市場では、「金華さば」の定義を「南三陸金華山周辺海域で定置網、一本釣、巻き網によって漁獲された高鮮度で脂のり抜群の大型マサバ」としています。サイズ等の厳密な制約はありませんが、大体500g以上で「大型」とされ、脂肪率は15%以上というのが一応の目安になっているそうです。大きいものだと1kgを超え、脂肪率は25%にもなる上物も揚がるとのこと。
ただし、シーズン真っ盛りでも「金華さば」の称号を得られるのは揚がったサバの1割にも満たないという、なかなかの狭き門です。
▲専用の計器で脂肪率を計測。800gほどのこのサバの脂肪率は約18%。正真正銘の「金華さば」です
まるまる太ってピカピカ光るサバを見てしまったら、やはり食べずにはいられません。もともとサバは足が早い魚種の代表格。新鮮でおいしいサバを食べるなら地元で食べるにこしたことはありません。ということで、「金華さば」を使った料理を食べられる人気の3店を訪ねることにしました。魚市場の職員の方に店名を伝えてみると、「その3店は間違いないでしょうね」と太鼓判。これは期待できそうです。

「富喜寿司」で、地元素材を熟知した職人の握りを堪能

まず訪れたのは、JR石巻駅前のロータリーを左に回って角を曲がるとすぐに見えてくる「富喜(ふき)寿司」です。店に入ると、親方の大場英雄さんがにこやかに迎えます。
▲JR石巻駅から徒歩1~2分ほどの場所にあります
▲気さくな人柄の親方。石巻寿司業組合の組合長も務めています
大場さんは、石巻で寿司を握り始めて50年以上という大ベテラン。2016年に大阪と東京で開催された、石巻の寿司と魚介をPRするイベントで腕前を披露するなど、石巻の寿司職人を代表する存在です。

石巻の魚介の魅力を知り尽くした大場さんが用意してくれたのは、「金華さば」の締めサバの握りです。
▲サバの大きさや状態を見極め、締める時間や塩の量を加減します
500gを超えると「大型」とされるサバですが、大場さんはなるべく800g以上のサバを使います。「大きい方が脂もしっかりのっていて、締めて寿司にしたときにサバの旨みをたっぷり味わえますから」と大場さん。
ちなみに今日のサバは?と聞くと、「1kgはありましたね」とのことでした。
▲「金華さば握り(1カン200円・税込)」。シャリには宮城県産ササニシキを使用
大きめにカットした締めサバの豊かな旨みと、パラリとほどけたシャリの甘味とが、噛むたびに口いっぱいに広がります。鼻に抜ける香りを感じつつすべてを飲み込むと、控えめな後味が「スッ」と消えていきます。思わず次の1カンに箸が伸びます。 

そして大場さんが次に出してくれたのが、富喜寿司の一番人気、「金華寿司」です。「金華さば」のほか、アワビ、タイ、ヒラメ、シャコなど、石巻産を中心に旬のネタが並びます。「鯨の町」として知られる石巻市鮎川に揚がったミンククジラを握りで味わえるのも石巻ならでは。
▲親方厳選の握り8カンが並ぶ「金華寿司(2,000円・税込)」。この日のネタは左上から時計回りにクジラ、タイ、中トロ、アワビ、シャコ、サバ、ウニ、生エビ
「石巻に揚がる魚介は種類がとても豊富。だから、四季折々のネタを楽しめるのが石巻の寿司の魅力です。旬の魚介で季節を感じてもらえたらいいですね」と語る大場さん。いつ訪れても、鮮度抜群の旬のネタが揃います。
▲テーブル2卓とカウンターのみの店内。親方との会話も楽しめます

明治創業の老舗「大もりや」で味わう刺身は喉越しトロリ

次に向かったのは、明治26(1893)年創業という老舗、「大もりや」です。
▲JR石巻駅から南に向かう大通り沿いに店舗があります
東日本大震災で店舗が全壊した大もりやは、仮店舗での営業を経た2013年1月、旧店舗と同じ場所に再建を果たしました。現在はその新店舗で、以前と同様の会席料理店(完全予約制)と和食堂を営んでいます。
▲旧店舗にあった時と同じ位置に設けたという坪庭
今回訪れたのは、建物の2階にある和食堂です。シックな内装の店内は、しっとりと落ち着いた雰囲気です。
▲テーブルが10卓で48席、ほかに座敷が10席あります
老舗らしい上質感の漂う店内ながら、コンセプトはあくまで「食堂」。ランチメニュー(680円~・税込)などお手頃なメニューも揃い、昼時になると地元の人や近所で働く人でいっぱいになります。もちろん、今回のお目当ては「金華さば」。刺身と丼で楽しめるとのことなので、その2品をオーダーしました。まずは刺身でいただきます。
▲「金華さばの刺身(880円・税込)」。わさび醤油で
大もりやでは、鮮度の落ちやすいサバを安定した品質で出せるよう、急速冷凍したサバのみを使用します。脂のたっぷりのった「金華さば」を、完全に溶けきらないうちにテーブルに届けるのがポイントです。さっそく一切れ口に入れると、確かにほんの少し凍っています。そのため口当たりはあっさりしているのですが、口の中の熱で溶けると同時にフワッとサバの旨みが立ち上がり、トロッと喉に流れていきます。
▲「金華丼(2,600円・税込)」。具材は季節や仕入れの状況で変わります
次に運ばれてきたのは「金華丼」。まずはその豪華さに圧倒されます。載っているのは「金華さば」のほか、石巻産のブランド銀鮭「金華ぎん」、アワビ、イクラ、ウニなど15種類!食べる順序に迷いつつ食べ進めます。どの魚介も鮮度がよく、それぞれの味わい、香り、食感を存分に楽しめます。酢飯との相性もバッチリ。箸を休める間もなく一気に平らげました。
▲店主の信頼も厚い料理長の丸田浩之さんは勤続15年
「魚介は石巻産を中心に、状態が良いものを厳選しています」と話すのは、板場を任される丸田さん。そんな丸田さんにとって「金華さば」は、「脂がたっぷりで味わい深く、臭みがない。とても魅力的な食材」だそうです。大もりやでは、料理人の工夫で、「金華さば」を通年で楽しめるように用意しています。

サバを愛する「島料理 友福丸」の料理人がサバの味わいを引き出す

この日最後に訪れたのは、石巻駅から約1km離れた場所にある「島料理 友福丸」です。昭和27(1952)年に北上川沿いに旅館として創業し、のちに地元産魚介を生かした料理店を営んでいましたが、東日本大震災で店舗は流失、2011年9月に現在地で営業を再開しました。
▲石巻バイパス沿いに設置したトレーラーハウスで営業しています
定食メニューが豊富で特にランチタイムが人気の友福丸ですが、「日高見(ひたかみ)」「墨廼江(すみのえ)」などの地酒も揃い、夜は居酒屋として利用されることも多いそう。今回の訪問は夕方になりましたが、夕食を食べにきた家族連れや、一人飲みに訪れた男性の姿も見られました。そんな友福丸の「金華さば」料理は、酒の肴にもってこいの締めサバと塩焼きです。
▲ピッカリ光る「金華〆鯖(800円・税込)」
まず締めサバをいただきます。短時間で手早く締めているため、見た目は刺身に近く、口に入れるとプリプリの食感を楽しめます。脂のたっぷりのったサバの旨みが口の中を満たし、スルリと喉に消えていきました。 調理したのは、食材選びをはじめ板場のすべてを任される料理長、半澤裕一さんです。
▲半澤さんは石巻市の隣町・矢本町(現在は東松島市)の出身
もともと青魚が好きで、なかでもサバが大好きだという半澤さん。「修業時代、最初に得意になったのもサバ料理」だそうです。そんな「サバ愛」あふれる半澤さんにとって、金華サバは夢のような食材。「脂ののりが、ほかのサバとは全然違いますね」と目を輝かせて話してくれました。

その「金華さば」をよりおいしく食べてもらうため、半澤さんは仕込みで生サバを触る際には必ず手を氷水で冷やし、鮮度を落とさないように一気に作業を進めるそうです。
▲「金華鯖塩焼き(800円・税込)」。定食の場合は1,150円(税込)
半澤さんが次に出してくれたのが、「金華鯖塩焼き」です。
肉厚の「金華サバ」をふんわり焼き上げ、サバの旨みを閉じ込めてあります。塩味はやや軽め。まずはそのままで、サバ本来の味わいを噛みしめます。そのあとは、醤油や大根おろし、レモンなどで味を変えながら。ボリュームがあるので存分に味わい尽くすことができました。
今回訪ねた3軒、調理の仕方はそれぞれですが、地元の誇りともいえる食材を最大限に味わってほしいという料理人の強い思いが、どの料理からも伝わってきました。石巻には「金華さば」を扱う飲食店が他にもたくさんあります。どんな料理が出てくるか、まだまだ楽しめそうです。
加藤貴伸

加藤貴伸

編集者・ライター。高等学校教諭、編集プロダクション勤務を経て、出身地の宮城県塩竈(しおがま)市に戻りフリーで活動中。

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