釧路湿原のシンボル、タンチョウ北の大地を優雅に舞う

2018.01.01 更新

白い羽毛に全身を覆われ、首と羽の一部が黒くて頭頂が赤い鶴、タンチョウ。羽ばたく姿は華麗なダンスをしているかのようで、その姿に魅了されます。タンチョウが数多く生息する釧路湿原の周辺では、おもに冬に観察することができます。釧路湿原周辺の給餌場や畑の上などを優雅に舞うタンチョウの姿を眺めに行ってみましょう。

▲大空を舞うタンチョウ

絶滅の危機を人工給餌で救う

100年ほど前、タンチョウは国内では絶滅したと考えられていました。ところが、1924(大正13)年に釧路湿原で発見され、戦後になると国の特別天然記念物にも指定されました。
1952(昭和27)年に転機が訪れました。雪が降り積もるある日、数羽のタンチョウが上阿寒地区(現在の釧路市内)の畑に積み上げられたトウモロコシの茎をついばんでいたそうです。
この様子を眺めた畑の持ち主、山崎定次郎(さだじろう)氏は毎日同じ時間にトウモロコシの実を畑一面に撒いてみました。タンチョウは警戒心が強いのでなかなか現れませんでしたが、毎日繰り返していくうちにタンチョウの警戒心が解けたのか、実をついばむようになりました。
▲タンチョウ観察センター付近の給餌場に集まるタンチョウ。100~200羽近く集まることも

こうして人工給餌が成功したことで、餌が少ない冬に餓死するタンチョウが減り、生息数が少しずつ増えていきました。現在では釧路湿原をはじめ、霧多布(きりたっぷ)湿原や風蓮(ふうれん)湖、十勝川流域やオホーツク海沿岸など、北海道東部の各地を中心に約1,800羽が生息しています。

人工給餌は必見!

1996(平成8)年、山崎家で代々人工給餌をしてきた畑の隣に、「阿寒国際ツルセンター【グルス】」が開館しました。釧路空港から車で約20分、「道の駅阿寒丹頂の里」に隣接した施設で、タンチョウの生態や行動、習性を研究し、わかりやすく紹介しています。
▲阿寒国際ツルセンター【グルス】。道の駅阿寒丹頂の里などがある「丹頂の里」内にあります

施設内にある分館のタンチョウ観察センターでは、毎年冬期に人工給餌が行われています。11月から3月までの毎日早朝にデントコーンという家畜用のトウモロコシが餌として撒かれ、さらに12月から2月までの毎日14時には川魚のウグイも給餌されます。

早朝の給餌は非公開ですが、14時の給餌は一般公開されているので、餌を求めて舞い下りるタンチョウの姿を眺めることができます。この様子が迫力満点!生命の神秘を感じるような光景なのです!

※2016年12月より北海道内で鳥インフルエンザが発生しているため、環境省より活魚の給餌を自粛するよう指導があり、2016年12月15日以降当面の間、14時の給餌は中止されています。(2017年12月21日現在)
▲求愛ダンスをする様子を眺められることもあります(写真提供:阿寒国際ツルセンター【グルス】)

一面雪に覆われ凛とした空気が漂う中、時折「コォー、カッカッカッ」と響き渡るタンチョウの鳴き声。悠々と歩く姿やふわりと飛び立つ姿、羽を広げてダンスをしているかのような求愛行動の様子など、タンチョウのありのままの姿を眺められます。

給餌場にやってくる動物や野鳥も必見

給餌場にはタンチョウだけではなく、時々珍客もやってきます。給餌場に撒かれたウグイを食べに、周辺の山林や湿原、空からさまざまな野生動物や野鳥がやってくるのです。
▲タンチョウとキタキツネ。お互い存在を気にせず!?(写真提供:阿寒国際ツルセンター【グルス】)

キタキツネはまるで盗人のようにウグイを口にくわえて、給餌場の外へ逃げていくこともあるそうです。
▲タンチョウとともにエゾシカも近年は生息数が増えてよく見かけるようになりました(写真提供:阿寒国際ツルセンター【グルス】)

さらに、タンチョウが食べようとしているウグイを横取りするかのように、オジロワシやオオワシが上空から急降下してあっという間に奪っていくことも。
▲時にはこんな光景に出くわすことも(写真提供:阿寒国際ツルセンター【グルス】)
▲タンチョウもびっくり!お互いの動きに驚き、威嚇し合うこともあります(写真提供:阿寒国際ツルセンター【グルス】)

ありのままのタンチョウの姿、餌をめぐる野生動物や野鳥との争い。ほんの一瞬の表情を狙って、国内からはもちろん、アジアや欧米など世界中から多くの写真愛好家が連日押し寄せます。
▲カメラを片手に見学者がずらっと並びます(写真提供:阿寒国際ツルセンター【グルス】)

厳冬期以外でもタンチョウを間近で眺められる!

晩秋から真冬の間は、川と給餌場を行き来しながら暮らしているタンチョウ。春になると産卵と子育てのためにヨシが生い茂る湿原の奥深くで暮らします。そのため、タンチョウを目にしやすい季節は冬ですが、冬以外の時期に訪れてもがっかりすることはありません。
グルスでは、野外飼育場に人工飼育しているタンチョウがいるので、一年中観察することができます。しかも、すぐ目と鼻の先、至近距離で眺めることができるのです!
▲グルスの館長であり解説員の河瀬さんが案内してくれました

こちらは2002年に生まれたメスの「ムック」。コスチューム飼育という手法で育てられたタンチョウです。嘘のような本当の話なのですが、タンチョウのコスチュームを着た人間が親鳥のふりをして育てる飼育法で、人慣れを防ぐために考えられました。ところが、ムックは生育中に病気に侵されたためコスチューム飼育を中断したところ、人慣れしてしまいました。
▲河瀬さん曰く、「(人間に対して)女性には素気ないのに男性には愛想いいんですよ。やっぱり、メスなんですね~」

柵越しに対面する人間とタンチョウ。もしかしたら気持ちが通じ合い相思相愛になるかも!?
▲見返り美人!?振り返る姿を間近で見るとドキッとするほど綺麗です

グルスでタンチョウの生態を知る

館内にはタンチョウの身体の仕組みを解説した展示物やはく製があるほか、映像や釧路湿原の中の様子を疑似的に再現したコーナーなどがあり、タンチョウの生態を詳しく知ることができます。
▲タンチョウって、意外と背が高いんです
▲羽を広げると2m以上にも!
▲昔の千円札にはタンチョウが描かれていました(千円札は撮影用に用意したもので、展示品ではありません)
▲2階には無料で使える望遠鏡も。氷点下まで冷え込む真冬に屋外での見学がつらい方はこちらでぬくぬくと見学を

タンチョウが数多く飛来する真冬が一番おすすめですが、それ以外の季節でも楽しめます!館内を見学すると、ちょっとしたタンチョウ博士になった気分になりますよ。

タンチョウに出合えるレストラン、「どれみふぁ空」

グルス館内のほかにも、暖かい屋内でタンチョウを見ることができる場所があると聞き、行ってみました。

訪れたのは、釧路市と隣接する鶴居(つるい)村にあるレストラン、「どれみふぁ空」。タンチョウの給餌場「鶴見台」の真向かいにあり、冬はタンチョウ、夏はイングリッシュガーデンを見ながら食事やハーブティーを楽しめる店です。
▲タンチョウを観察できる店、「どれみふぁ空」。グルスからは車で20分少々です
▲テーブル席のほか、大きな窓の下にはカウンター席があります

鶴見台とタンチョウの水飲み場である鶴居芦別川との間にお店があるので、タンチョウがお店の真上を飛んでいくほか、店前に広がるガーデンにも頻繁に下り立ちます。その様子を、店内で食事をしながら眺めることができます!
▲大きな窓の外には飛来するタンチョウが!(写真提供:どれみふぁ空)

窓辺には望遠鏡もあります。ここで、ちょっとした小技を紹介します!

スマホのカメラを起動し、カメラのレンズを望遠鏡の覗く部分にあててみましょう。すると、望遠鏡でのぞいた超アップの様子がスマホの画面に映るんです!もちろんシャッターを押せば撮影も可能!
▲高価な望遠レンズなど持っていなくても、スマホ+望遠鏡で即席望遠レンズになるんですよ~!

この日はタンチョウの姿を目にすることはできたものの、すぐに飛び立ってしまったので残念ながらカメラに収めることはできませんでした…。
▲うまく撮れればこのように。タンチョウの生き生きとした姿をスマホで撮れちゃいます!

「どれみふぁ空」は地産地消をモットーに掲げるお店。野菜は自家農園でとれたものを使用するなど、極力地元の食材を取り入れた料理を提供しています。

いちおしメニューはこちら!
▲「丹頂カレー(サラダ・デザート付き)」税込1,290円

名前のごとく、タンチョウを模したカレーです。ご飯は十穀米と、真ん中の黒い部分には黒米を使用。タンチョウの頭を模した赤い部分はクランベリーです。
ココナッツミルクがきいたグリーンカレーをベースにしたカレーで、ひと口食べるとレモングラスの香りがふわっと広がります。

地元の野菜やハーブ、チーズをたっぷり使ったおすすめメニューも!
▲「野菜いっぱい!どれみふぁピザ」税込1,550円

タイムやセージなどのハーブを練り込んだピザ生地に鶴居村産のチーズと自家栽培の野菜をたっぷり盛ったオリジナルピザ。野菜は季節により種類が変わるので、見た目や味わいは訪れた時のお楽しみに!

ゆったり食事を楽しみながら、大きな羽を広げて優雅に舞うタンチョウを眺められるなんて、最高のロケーションです!
大空を優雅に舞う姿、雪原で華麗に踊る様子。タンチョウが多数生息する釧路湿原周辺では、思わず見とれてうっとりするような光景が広がり、神々しさすら感じます。厳冬期でも寒さを忘れ、夢中にシャッターを切ってしまうかもしれません。
▲タンチョウの求愛ダンスは必見!2月頃に見られることが多いです

※写真は2017年のものではありません
川島信広

川島信広

トラベルライター・温泉ソムリエ・イベントオーガナイザー/横浜市出身、札幌市在住。北海道内の全市町村を趣味で訪ね歩くうちに北海道の魔力に惹かれ、都内での雑誌の企画営業と執筆業務を経て北海道へ移住し独立。紙媒体やweb媒体などで主に観光や旅行、地域活性をテーマにした取材執筆と企画・編集を手がける。スイーツ好きの乗り鉄、日光湿疹と闘う露天風呂好き。

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