見た目は唐辛子なのに辛くない?ハンガリーの多彩なパプリカ料理/東京で楽しむ世界の料理Vol.14

2017.01.18 更新

フランスで最も権威ある美食ガイドにて、世界一のグルメ都市として評価されている東京。世界各国津々浦々、あらゆるジャンルの料理が集まっています。それも、現地の味わいを完全に再現していたり、もはや本場よりもクオリティが高かったり。海を越えて異郷の地へ出向かずとも、ここ東京は素晴らしい美食との出会いであふれているのです!

食の宝庫、ハンガリーってどんな国?

中欧に位置する広大な平原の国、ハンガリー共和国。「ドナウの真珠」、「ドナウの薔薇」と呼ばれる首都ブダペストは、その美しい街並みが観光客に人気です。
また、世界三大貴腐ワインのひとつである「トカイワイン」や、高級食材フォアグラの産地としても知られる、世界有数の食の宝庫でもあります。
ハンガリーはウラル山脈より移動してきたアジア系の遊牧民族、マジャール人がルーツの国であるため、ヨーロッパにありながら、苗字と名前の順や、赤ちゃんに蒙古斑があるところ、温泉好きなところなど、日本人との共通点が多い国でもあるのです。

そんなハンガリーの料理に欠かせないといわれているのが「パプリカ」。パプリカといって思い浮かぶのは、赤や黄、緑などカラフルでピーマンに似たあの野菜ですが、いったいどのように使われているのでしょうか。
そこで今回は、都内にある数少ないハンガリー料理店「パプリカドットフ」を訪れることにしました。
▲お店の看板。「.hu(ドットフ)」は「.jp」などといったインターナショナルコード

家庭的なあたたかみを感じる「チャールダ」スタイルの店内

東京メトロ・白金高輪駅から徒歩3分ほどの閑静な通りにお店はあります。店頭に掲げられたハンガリーの国旗が目印です。

明るく出迎えてくれたのは、ハンガリー出身のオーナーのアティラさんとシェフのエリックさん。日本に来る前は、ハンガリーで歌手をしていたというアティラさん。面白い経歴の持ち主ですね!
▲オーナーのアティラさん(右)と、ハンガリー人シェフのエリックさん(左)

一歩店内に足を踏み入れると、そこにはなんとも素敵な空間が広がっていました!
椅子や天井に飾り付けられているのは、本物の馬車の車輪。これは「チャールダ」と呼ばれるハンガリーの昔ながらの居酒屋レストランの内装を再現したものです。この店内を見ただけで、祖国を思い出し涙するハンガリー人留学生もいるのだとか。
よく見ると、窓辺に大量の唐辛子を吊るした飾りのようなものが!実はこれこそが、ハンガリーのパプリカなのです。このように吊るして乾燥させたものを粉末状にして、いろんなお料理に使うのだそう。

15世紀にコロンブスが新大陸より持ち帰り広めたとされる唐辛子。ハンガリーではその品種改良をおこない、現在では辛いものから甘いものまで約130種類ほどもあります。同じトウガラシ科ではありますが、日本のスーパーで見かけるパプリカはハンガリーではアメリカのパプリカ「カリフォルニアパプリカ」と呼ばれ、別のものと考えられているのだとか。
カーテンにも、パプリカのかわいらしい刺繍がほどこされていますね。これは「カロチャ刺繍」というハンガリーの伝統工芸のひとつ。白い布に刺繍された色鮮やかな草花が特徴で、世界中にファンがいるのだそうです。

ハンガリーの唐辛子「パプリカ」で作る、バラエティー豊かな料理

素敵な店内の様子に、気分はもうハンガリーにいるかのよう。すっかりリラックスして椅子に座っていると、どこからかいい匂いがただよってきました。
カウンター横の大鍋でグツグツと煮こまれていたのは「グヤーシュ」と呼ばれるハンガリーを代表する煮込み料理。グヤーシュのグヤとは「牛飼い」という意味で、放牧をしていた人々が昼食を作る時間を省くために、外に大釜を設置して作ったのが起原とされています。

牛肉とニンジン、玉ねぎ、じゃがいもを粉末状のパプリカや香辛料で煮込んだグヤーシュ。各家庭によって材料や使うパプリカの種類が違うため、味わいもずいぶん変わるのだそうです。日本でいう味噌汁のような“おふくろの味”ということですね。
▲「グヤーシュ」(1,200円・税別、2人前)

ひとくち食べると……全然辛くない!パプリカ=元唐辛子ということから辛めのスープを想像していましたが、大間違いでした。野菜の甘みにパプリカのコクが加わり、優しく奥深い味わいです。それでいて唐辛子に由来するカプサイシンという栄養素が豊富に含まれているため、体をあたためる効果もあります。寒い時期には、マイナス10度にもなるハンガリーで暮らす人々にとっては欠かせない食材なのですね。

このグヤーシュの他にも、ハンガリーには川魚のスープや、ワインのスープ、きのこのスープなどさまざまな煮込み料理があります。なかでも特徴的なのが「ヒデグ・メッジュレヴェシュ」(600円・税別)と呼ばれるさくらんぼの冷製スープ(夏季限定)です。
可愛らしい見た目からデザートのように思われがちですが、ハンガリー人は食事のスターターとして食べます。サワーチェリーで作るため、そこまで甘くない爽やかな味わいで、食欲が湧くのだとか。

お次は、ハンガリーの定番料理「パプリカチキン」(900円・税別)をいただきます。こちらは、パプリカソースで煮込んだ鶏の胸肉に、ガルシュカと呼ばれるハンガリーのつぶ状パスタを添えたもの。仕上げにサワークリームとパプリカの粉をふりかけます。
さっぱりとした鶏の胸肉がコクのあるパプリカソースと絡み合い、やみつきになる美味しさです。

続いていただいたのは、シェフのオススメ「ハンガリー風ロールキャベツ」(1,900円・税別)。キャベツで豚の挽肉とスモークドベーコン、お米、ガーリック、そしてパプリカ粉の肉種を巻き、トマトソースで煮込んだもので、ほんのりと甘いトマトソースが特徴。お米のプチプチとした食感に箸が止まらなくなります。
さて、お次はお肉料理です。今回ご用意いただいたのは、”ハンガリーの食べられる国宝”と言われる「マンガリッツァ豚」のステーキ「マンガリッツアチガニーペチェニェ」。香ばしい匂いが、食欲をかき立てます。

マンガリッツァ豚とは、全身がクルクルとした巻き毛でおおわれた、ハンガリー国有の希少種の豚。もこもことした可愛らしい外見もインパクトがありますが、その美味しさにも驚かされます。高級牛肉のような霜降り肉は、とてもやわらかく濃厚。A5ランクの牛肉と並ぶほどの価値があり、一流レストランなどで使用される食材です。
▲「マンガリッツアチガニーペチェニェ」(2,600円・税別)

全体的にさっぱりしていながらも、ほんのりと甘く上品な脂のくちどけがたまりません。この余韻をお水でかき消すのはもったいない!さらに味を重ねるマリアージュを楽しみたいと心がざわつきはじめました。
ということで、紹介してもらったのがこちらのハンガリーワイン。日本ではなかなかいただくことのできない銘柄ばかりですが、中でも左から3番目の「エグリ・ビカヴェール」(1グラス1,200円・税別)というワインは別名「雄牛の血」とも呼ばれ、濃いルビー色と力強い味わいが大変人気なのだとか。

お店には、この他にも美味しいハンガリーのお酒がたくさん。最近、ハンガリーの若者に人気の「レモンビール(800円・税別)」や、200年以上の歴史をもつ秘伝のレシピで作られたハーブ酒「ウニクム(1ショット1,000円・税別)」、そして上品な甘さが特徴の「トカイワイン(1グラス1,500円・税別)」などさまざまなお酒を味わうことができます。
▲自家製レモンビール

最後にいただくのが、デザートの「パラチンタ(800円・税別)」。これは、フランスのクレープの原型ともいわれており、小麦粉を使ったモチモチとした生地にチョコレートソースをかけ巻いたものです。
ハンガリーでは主食として食べられることも多く、チョコやフルーツの代わりに、野菜やパスタを包んだものもあります。首都のブダペストにはたくさんの専門店があるのだとか。ハンガリーを旅する際は、ぜひ訪れてみたいものですね。

味わい深いパプリカ料理や、食の宝庫ハンガリーならではの食材を使用した数々のごちそうに、大満足なひとときでした!
今回紹介したお料理のほかにも、特産のフォアグラを使用したフォアグラとリンゴのソテー「エザレベルリバマイ(1,500円・税別)」や、ハンガリー特産サラミのプレート「サラミタル(1,000円・税別、1~2人前)」など魅力的な料理がたくさん。一度ならず、二度三度と訪れたくなるお店です。
▲ジプシーバイオリンの生演奏の様子

もともと日本人にもっとハンガリーのことを知って欲しい、という想いのもとに開かれたこのお店では、美味しい料理の他にもハンガリー文化を体感できるイベントもあります。月の最終木曜日に開かれるジプシーバイオリンの生演奏会(ミュージックチャージ1,500円・税込、ワイン1グラス付き)や、第3土曜日の14:00~16:00に開催されるハンガリー料理のクッキングクラス(お一人様3,000円・税込)など、どれも面白そうです。

お店の方の温かい人柄とともに、ハンガリーの美味しいパプリカ料理を心ゆくまで堪能できる「パプリカドットフ」。都内で体験できる、ちょっとした中欧旅行に出かけてみてはいかがですか?
立岡美佐子

立岡美佐子

編集プロダクション・エフェクト所属の編集者&ライター。好きなものは、旅行とごはん。おいしいものやステキな景色のためならば、日本といわず世界各国どこへでも! 住まい、旅、食、街などジャンルを問わず執筆中です。 編集:山葉のぶゆき(エフェクト)

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