真田幸村の隠し湯?信州の鎌倉「別所温泉」をそぞろ歩き

2016.12.06 更新

「信州の鎌倉」と呼ばれている上田市「別所温泉」は長野県最古の温泉郷のひとつ。JR上田駅から電車・バスで各30分ほどの閑静な温泉街で、国宝や重要文化財をはじめ数多くの文化財が点在することで知られています。『真田太平記』に登場する、真田幸村ゆかりの温泉もあると聞き、歴史情緒あふれる温泉街散策を楽しんできました!

▲上田電鉄別所温泉駅前に立つ看板

まずは別所温泉の顔「北向観音」の観音様にご挨拶

鎌倉幕府の重職だった北条義政によって約60年間統治されていたことから「信州の鎌倉」と呼ばれている別所温泉界隈。鎌倉時代から室町時代にかけて造られた古刹があちこちに残ることから、散策が楽しい温泉街としても知られています。
まずは、別所温泉の顔とも言うべき「北向観音(きたむきかんのん)」の観音様にご挨拶!
▲別所温泉の中心部にある北向観音の参道入り口
▲参道には土産物屋が立ち並ぶ。奥に見えるのが北向観音
▲参道沿いにある飲泉塔。龍の口からは温泉が出ていて飲むことができる。独特の硫黄臭はあるが、苦みやしょっぱさ、鉄臭さなどがないので飲みやすい
▲北向観音の手水も温泉なので温かい。泉質はこちらも硫黄泉

「北向観音」の名前は、その名の通りご本尊が北向きに安置されていることから名付けられたそう。実は、長野市にある国宝「善光寺」の本堂と北向観音の本堂が向かいあうように立っていることから、どちらか一方の参詣では「片詣り」といわれ、両方お参りするとご利益が倍増するといわれています。
▲北向観音のご本堂には「千手観音菩薩」が祀られている。この日も厄除けの法要が厳かに行われていた
ちなみに、北向観音の本坊は「常楽寺」という由緒正しきお寺。北向観音と同じく天長2(825)年の建立で、天台教学の拠点として鎌倉時代に大いに栄えました。北向観音から徒歩8分ほどの距離にあるので、散策がてら足を延ばしてみるのもいいかもしれません。
▲立派なかやぶき屋根が目をひく常楽寺のご本堂

信州最古の温泉は美肌の湯!共同浴場でその効果を実感

温泉街には3つの外湯(共同浴場)があり、温泉街の散策に疲れたらふらりと立ち寄ることができます。
大河小説『真田太平記』で真田幸村の隠し湯として描かれている「石湯」をはじめ、そのほか2つある外湯「大師湯」「大湯」も源泉かけ流し。今回は石湯に向かいました。
▲左側の石碑に書かれた「真田幸村公 隠しの湯」の文字は『真田太平記』の作者・池波正太郎がしたためたもの

『真田太平記』の中では、幸村と女忍者・お江が出会った場所として出てくるこちらの温泉ですが、実際のお風呂は残念ながら(?)混浴ではありません。
▲建物の脇に立つ看板には、『真田太平記』での石湯の描写が書かれている

別所温泉は弱アルカリ性単純泉。弱アルカリ性の湯には、肌をやわらかくして古い角質を洗い落とすピーリング効果があるため、つるつる効果や美肌効果が期待できるといいます。
足先を入れた瞬間は「ちょっと熱いかな」と感じましたが、慣れてしまえば実に心地よく、ついつい30分も入ってしまいました。美肌効果を聞きつけてか、若い女性客が多かったのも印象的でした。
▲大きな岩が配された小ぢんまりとした湯船。何人もの方が入れ替わりで湯を楽しんでいて、その人気ぶりが伺えた。効能は神経痛、筋肉痛、五十肩など

かつては、「お嫁に行く前に別所通いをし、肌を整えてから嫁入りしていた」という風習もあったという別所温泉。湯上がりは、一皮むけて、なんだか肌がしっとりやわらかくなった実感がありました。さすが「美肌の湯」!その評判は伊達ではありませんよ!
▲小さいものの、外湯には珍しい露天風呂も付いている「大湯」

なお、石湯から650mほどの場所にあるのが、あふれるほどの湯量の多さからその名前が付けられた「大湯」。信濃源氏の武将である木曽義仲が愛妾・葵の御前と入浴していたことから、かつては「葵の湯」と呼ばれていたそうです。
▲北向観音を開創した「慈覚大師(じかくだいし)」に由来がある「大師湯」

また、もうひとつの外湯「大師湯」は、平安時代の天長2(825)年に、慈覚大師が北向観音建立のためこの地を訪れた際、好んでよく入っていたことからその名が付けられたお風呂です。

これら3つの外湯は各150円(税込)、6:00~22:00まで入ることができます。周辺には2つの足湯(無料)もあるので、こちらも合わせて楽しんでみて下さい。
▲写真は足湯「ななくり」。[営業時間]9:00~18:00(11~2月)、6:00~21:00(3~10月)[定休日]なし[入浴料]無料

由緒正しき古刹が点在!必見!国宝「八角三重塔」

温泉でカラダがポカポカに温まったところで、町歩きに出発!
まずは国宝「八角三重塔」がある「安楽寺」を目指し、街の中心部から北へ向かって7分ほどてくてく。こちらでは、重要文化財「大坂夏の陣図屏風」の複製品も展示されていて人気です。
▲信州最古の禅寺・安楽寺。その佇まいは、どっしりしていて貫禄がある

安楽寺の歴史は古く、日本で最も古い禅寺の一つ、鎌倉「建長寺」と並ぶともいわれています(1246年創建)。境内には、鎌倉時代の文化を伝える貴重な文化財が数多く残されていますが、中でも必見なのが、国宝に指定されているこちら。
全国にたった一つしかない木造の「八角三重塔」!
▲長野県で最も早く国宝に指定された「八角三重塔」。鎌倉時代末期(1290年代)に建立されたものだそう

一見、四重のように見えますが、一番下のひさしは裳階(もこし)と呼ばれる飾りで、実際は三階建ての構造になっています。
繊細な木組の美しさに思わず目を奪われてしまいました。
▲細部に至るまで禅宗様の形式が見てとれる

重要文化財「大坂夏の陣図屏風」の複製品は本堂に常設展示されています。大河ドラマ『真田丸』の影響もあってか、屏風の前は終始見物客で大にぎわいでした。
▲貴重な歴史資料を無料で鑑賞することができる

目を凝らして真田の軍を探してみると、屏風の中央部分にありました!赤い幟と赤備が一際目をひきます。トレードマークの鹿角の兜をかぶり、指揮をふるう真田幸村の姿も確認することができました。
▲一番上に描かれた白馬の下で指揮をふるっているのが真田幸村。たてがみが黒い白馬にまたがっているのが幸村の嫡男・真田大助

真田氏のシンボル甲冑・赤備とご対面!

温泉街の中心部に戻って歩いていると、なにやら真田の家紋・六文銭が掲げられた建物を発見!ここは、お隣にある温泉宿「上松屋旅館」が運営している無料の歴史展示館「武屋御殿」。真田昌幸・幸村をモデルにした鎧や陣羽織、真田十勇士の人形などが展示されていて、誰でも自由に見学することができます。
▲六文銭の家紋が目印。外湯「石湯」のはす向かいに立つ
▲左側の赤備が真田幸村、右側の黒い甲冑が父・昌幸の着用モデルのレプリカで、どちらも上田市在住の前島英憲(まえじまひでのり)さんによる作品

細部にいたるまでよく作られていますが、実はこの甲冑、ベースが“厚紙”でできていると聞いて二度びっくり。
▲館内には陣羽織が置いてあり、自由に着て記念撮影ができる。気分は勝手に戦国武将!

温泉街で見つけたおいしい“六文銭”をいただきます!

たっぷり歩いておなかがすいたので、真田の六文銭にちなんだメニューがあるという「食事処 大島館」へ。
▲「武屋御殿」の向かいにある食事処。外湯「石湯」のすぐ隣

真田の家紋「六文銭」をイメージした「真田六紋そば」は、一口サイズの6種類の具入りそばがお盆にのって出てきます。そこにそばつゆをかけていただきます!
▲「真田六紋そば」1,080円(税込)。左手前より時計回りに、おろし大根、おろしりんご、なめ茸梅肉、山菜、とろろ芋、くるみ味噌の6種類の具がのっている

そばはやや太めの二八そば。コシがあり、のど越しも抜群です。
特に印象に残ったのが東信州名物の「くるみ味噌」。濃厚で甘いくるみのタレと出汁の効いたそばつゆの相性がよく、あっという間に食べきってしまいました。
▲「くるみ味噌そば」。すってペースト状にしたくるみと味噌を和えた濃厚なタレでいただく

なお、大人気の「真田六紋そば」ですが、準備に手間がかかるため、グループで来店の場合は、人数によっては提供に時間がかかったり、オーダーできないこともあるそうです。
▲地元産コシヒカリを使ったもうひとつの名物「五目釜めし」(1,080円・税込)もオーダー。出汁の効いた品のいい味わいで、人気メニューというのも納得のおいしさ。鶏肉やホタテ、エビ、山菜、アンズなどたっぷり10種類の具がのっていました
国宝や重要文化財など見どころ満載、良質な温泉が気軽に楽しめる別所温泉。温泉街の情緒を感じながら、のんびり外湯めぐりと歴史散策を楽しんでみてはいかがでしょうか。
松井さおり

松井さおり

出版社勤務を経て、フリーランスのライター&編集者に。雑誌や書籍を中心に、主に、食・旅・くらしなどにまつわる記事を執筆している。現在は、東京から長野県長野市に拠点を移し、県内外を奔走する日々。(編集/株式会社くらしさ)

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