往年の勇姿をCGで再現!歴史体感アプリで巡る「丸亀城」

2017.02.06

全国に残るお城は数あれど、江戸時代からの歴史ある天守が現存しているのは、わずか12城。その貴重なひとつが、香川県丸亀市の「丸亀城」です。「石の城」とも称される風格たっぷりの名城を、充実の機能が搭載されたアプリと共に巡ってみませんか?往年の勇姿を鮮やかに復元したCG画像でのバーチャル体験など、ライブ感あふれる城の魅力がたっぷり味わえます。

日本一高い石垣の上にそびえる、日本一小さな天守

遠くからもよく見える、きりりとした佇まいの天守。小高い亀山の上に築かれた「丸亀城」は、香川県丸亀市のシンボルです。

内堀から天守へと、4層に渡って重ねられた石垣は、約60mもの高さ。日本一の高さを誇る石垣の上に建つ天守は、現存木造天守としては日本一小さなものですが、その姿は凛とした風格に満ちています。
▲何層もの石垣の上にそびえる丸亀城天守。「日本の100名城」にも選ばれており、年間10万人以上の観光客が訪れます

丸亀城の歴史の始まりは、慶長2(1597)年。讃岐国の領主、生駒親正・一正(いこまちかまさ・かずまさ)父子が築城を手掛けますが、徳川幕府の一国一城令によって廃城。その後、讃岐国は東西に二分され、西の丸亀藩を治めることとなった山﨑氏が城を再築します。山﨑氏が断絶した後は、京極氏が幕末まで城主を務めました。

現在の丸亀城は、東西約540m、南北約460mの内堀に囲まれた範囲が、史跡に指定されています。外側から順に、山下曲輪(やましたくるわ)・帯曲輪(おびくるわ)・三の丸・二の丸・本丸という5つの区画から成っています。中心の本丸には、権威の象徴である天守があります。
▲場内の観光案内所でもらえるパンフレットの地図。中心の赤い部分が本丸、オレンジが二の丸、黄色が三の丸

「石の城」と称されるほど、石垣の名城としても知られる丸亀城。城が再築された江戸時代初期は、城郭石垣を築く技術が最高水準に達した時代でした。城内の様々な石積みの中でも、曲線美を描きながら高くそそり立つ石垣には、技術の粋が尽くされています。
▲三の丸の北側には、美しい曲線を描く高い石垣がいくつもそびえています

堂々たる威容を誇る石垣の上には、かつて12の櫓(やぐら)が建ち並んでいました。櫓とは、石垣の隅々に配された、見張りや武器庫の役割を担う建物です。当時はさぞ、凛々しい建築美を誇っていたことでしょう。

復元CG画像で蘇った、かつての勇姿

「残されている江戸時代の絵図や木図(木型模型)からは、往年の勇姿がありありと伺えます。ぜひ、多くの人に知ってほしいと思いました」
こう語るのは、丸亀市教育委員会文化財保護室の後藤幸功(ごとうゆきのり)さん。
▲江戸時代初期に檜材で作られた、丸亀城の木図。木図が残っている城は全国的にも他になく、とても貴重なもの(写真提供:丸亀市教育委員会文化財保護室)

2015年、丸亀市を含む香川県中讃(ちゅうさん)地区で、AR(拡張現実)画像を活用した観光促進の計画が立ち上がったことをきっかけに、アプリによるバーチャル体験で、当時の城の姿をリアルに体感してもらおうというプロジェクトが始まりました。

その後、城郭研究のスペシャリストである、広島大学の三浦正幸教授らの協力を得て、丸亀歴史体感アプリ「よみがえる丸亀城」が完成し、2016年4月に公開されたのです。
▲アプリは無料。iOSで1.75GB、Androidで728MBと、データ容量が多いので、Wi-Fi環境下でのダウンロード推奨です

アプリはスマートフォンやタブレットの位置情報と連携していて、城内で画面を見ると、高精度CGによる復元画像が自由なアングルで楽しめるとのこと。当時の姿が画面を通してどんな風に迫ってくるのか、想像するだけでワクワクさせられます!
後藤さんいわく、「ほかにも多彩なメニューがあるので、ぜひ現地で城の魅力を体感してみてください」とのことです。

専用アプリ画面をかざし、江戸時代にタイムスリップ!

さっそくアプリをダウンロード。内堀に架かる橋のたもとに立つと、大手二の門越しに、遥か高く石垣の上にそびえる天守を仰ぎ見ることができます。
▲正面が大手二の門、右手が大手一の門、奥に見えるのが天守

この辺りから大手二の門、一の門周辺と、三の丸にかけては、歩きながら自由自在なアングルで復元VR(バーチャルリアリティ)画像が楽しめるとのこと、さっそくアプリのトップメニューから「丸亀城復元VR」を、続いて地図画面から「丸亀城VR」をタップしました。

目の前にかざしてみると、画面上に同じアングルのCG画像が出現!幾つもの櫓が建つ堂々たる姿に、一気に江戸時代にタイムスリップした気分になりました。左右に画面を動かすと、アングルに合わせて画像も動き、歩みを進めると城もどんどん間近に迫ってきて、ライブ感満点です。
▲鮮やかなCG画像で再現された、江戸時代の丸亀城(写真提供:丸亀市教育委員会文化財保護室)

橋を渡って、まずは大手二の門をくぐります。こちらは、高麗門(こうらいもん)と呼ばれる、開いた扉を雨から守る切妻屋根をもつ門で、京極氏の時代に完成しました。
▲瀬戸内海が近いだけあって、大手二の門の屋根の上には、カモメが羽を休めに来ます

二の門をくぐると、風格ある櫓を備えた大手一の門が右手に現れます。最初の門を敵に突破されても、次の門から攻撃して撃退する作りになっているのです。2つの門に囲まれた四角いエリアは、枡形(ますがた)と呼ばれています。
▲分厚い欅の扉の上に立派な櫓が作られた、威厳たっぷりの大手一の門。石垣の石も大きくて立派です

枡形の中でアプリ画面をかざしてみると、四方をぐるりと石垣や土塀に囲まれ、一の門も画面上では閉じているので、すっかり包囲された感覚に。……と、次の瞬間、四方から白煙が!壁面の狭間(さま)から、銃による攻撃が始まりました。

さらに、画面を一の門のほうに向けると、櫓から大きな石が次々と落ちてくるではありませんか。バーチャルならではの遊び心に、思わず笑みがこぼれました。
▲丸亀城の守りは堅い!ひとしきり攻撃が終わった後は、一の門が開いて奥の景色が見えました(写真提供:丸亀市教育委員会文化財保護室)

さて、一の門をくぐったら、「見返り坂」と呼ばれる山道を登っていくと、三の丸に到着です。ここも、歩きながら360度で復元VR画像が楽しめるエリア。三の丸は高く美しい石垣が多いので、復元画像の迫力もひとしおです。気が付いたら、ぐるりと一周していました。
▲北西の戌亥櫓跡(いぬいやぐらあと)の辺りから、石垣越しに見上げる天守はとりわけ壮観
▲同じアングルをVR画面で見ると、石垣の上に櫓が建ち並び、惚れ惚れする勇姿です(写真提供:丸亀市教育委員会文化財保護室)

三の丸から石段を登ったところにある二の丸には、現在も水を湛える井戸があります。この「二の丸井戸」は、絵図によると深さが約65m!日本一深い井戸だと言われています。
▲二の丸井戸の囲いの凹んだ部分から覗き込むと、かなり下にある水面に、自分の顔が映って見えます

さらに石段を上ると、最高所の本丸です。間近に見上げる天守は、小さいながらも意匠を凝らした作り。

高さ約15m、三層三階で、南北面には唐破風(からはふ)、東西面には千鳥破風(ちどりはふ)が配されています。破風とは屋根に施された山型の装飾で、唐破風は曲線の弓形、千鳥破風は直線の三角形なのが特徴。
▲本丸に建つ天守。南側1階の屋根に唐破風、西側2階の屋根に千鳥破風が作られています

二の丸や本丸では、地図画面の中心地点に立つと、360度のVR画面が見られます。さらに、天守内にあるマーカーを認識すると、窓越しに復元画像が臨めるそうなので、さっそく天守に登ってみました。

急な階段を登って最上階の3階に着くと、四方の窓からの眺めは絶景!とりわけ北側の窓からは、瀬戸内の島々と海が広がる光景を見晴らすことができます。
▲北側の窓からの眺め。かつてはここから、交通の要衝だった瀬戸内海を見張っていたそう

この階には、四方にマーカーが設置され、画面上の「天守VR」をタップしてからマーカーを認識すると、VR画像が出現します。
▲北側のVR画像。櫓越しに、江戸時代の街並みと瀬戸内海が見渡せます(写真提供:丸亀市教育委員会文化財保護室)
▲本丸北側の階段からは、三の丸まで降りていけます。ここから見上げる天守と石垣の光景も絶品

なお、VR画像のほかに、AR画像のメニューもあり、ボタンをタップするとVRとARを切り替えることができます。AR画面にすると、建物を含む近景はCG、遠景は現実の景色となります。
▲三の丸の南東にある月見櫓跡(つきみやぐらあと)からは、讃岐富士の別名がある飯野山を見晴らせます
▲AR画面にすると、近景の櫓はCG画像、飯野山を臨む遠景は現実の風景。ちなみにVRに切り替えると、遠景は復元CGです

アングルが自在なのは、思った以上に楽しくて、時間が経つのはあっという間。注意事項としては、歩きながらのアプリ使用になるため、周囲や足元には十分に気をつけること。柵のない高所もあるので、くれぐれも夢中になりすぎないように!
▲夕刻の丸亀城も情緒豊か。内堀に映る夕日は、ずっと眺めていたくなります

“扇の勾配”と呼ばれる、美しい石垣は必見

冒頭でも紹介したように、丸亀城は石垣の名城でもあります。石垣にフォーカスして巡ってみるのも楽しいもの。

石垣の積み方にはいろいろあり、大手門で囲まれた枡形は、「切り込みハギ」と呼ばれる技法が使われています。石の表面をきれいに削り、隙間なく精巧に積んだ“見せる石積み”です。
▲切り込みハギを用いた枡形には、高さ2mを超える「鏡石」が夫婦で配され、まさに城の顔といった風格

そして、石垣の技術の結晶といえるのが、三の丸北側に見られる高石垣。石垣の隅角部は、直方体に加工した石を、長辺と短辺が交互になるよう積み重ねて強固にする、「算木積み(さんぎづみ)」と呼ばれる技法が使われています。
▲三の丸の北西は、屏風を折ったように幾重にも連なる石垣が迫力の美しさ。算木積みの角の、エッジの利いたラインもたまりません

また、緩やかに反り返った曲線も、崩れにくくするための機能美で、「扇の勾配」と呼ばれています。

いっぽう、南側で裏口に当たる「搦め手(からめて)」は、山﨑氏の時代は大手だった場所。美しく丁寧に積まれた石垣が連なります。
▲搦め手の石垣の中でも、三の丸の石垣は、大きな石の隙間に間詰め石が詰められ、非常に丁寧な仕上がりです

アプリのメニューでも、石垣に関しては地点ごとに詳しく解説されているので、ぜひ参考にしてみて下さい。
▲充実しているアプリの石垣解説。読みながら巡ると、石垣への興味もぐんと深まります

遊び心たっぷりの、アプリメニューを堪能

ほかにも、遊び心に富んだメニューが満載のこのアプリ。「丸亀城クイズ」では、該当地点に来ると、自動的にその場所に関するクイズが出題されます。全部で10問あり、正解すると徐々にランクアップしていくのがうれしいところ。最初の「足軽」からどこまで出世できるか、ぜひチャレンジを!
▲本丸で出題されるクイズ画面。回答後に、正解と解説の画面が現れます

ARを活用したメニューも多彩です。丸亀城に関する歴史上の人物がARで現れるスポットでは、シュールな光景が楽しめます。
▲大手二の門と天守を臨む歩道上では、初代領主・生駒親正のAR画像が出現。一緒に記念撮影することもできます(写真提供:丸亀市教育委員会文化財保護室)

AR画像やクイズ、石垣の解説などが現れるスポットは、アプリのマップ画面で一覧できます。
▲アプリのマップ画面。ピンクのアイコンが歴史上の人物のAR、Qマークがクイズ、石垣のアイコンが石垣解説のスポット

友達と何人かで行くなら、ぜひトライしてみたいのがおまけメニュー。ひとりが観光案内所や天守の受付にあるハガキ大のマーカーカードを持ち、もうひとりが「おまけARカメラ起動」ボタンをタップしてマーカーを映すと、京極家秘蔵の名刀「ニッカリ青江(あおえ)」が、実物大AR画像で現れるのです。これは楽しい!
▲マーカーをこんなふうに持つと、刀を交える場面が撮れちゃいます(写真提供:丸亀市教育委員会文化財保護室)

また、名刺大のマーカーカードもあり、こちらを手にしてカメラを起動すると……手のひらの中に、丸亀城の天守が出現!角度を変えると向きも変わる、3Dモデルです。
▲手乗りサイズの丸亀城天守、可愛いです!カードを水平にしてしまうと画像が消えるので、角度をいろいろ工夫してみて

2017年2月12日と3月12日には、ヘッドマウントディスプレイを使った、360度完全復元CG体験ができる「丸亀城VR無料体験会」も開催します。興味がある方はぜひ参加してみてください。
リアルな体感イベントの情報もあります。その名も、「丸亀城鉄砲隊砲術実演披露」。甲冑姿の武者たちが、江戸時代の古式火縄銃を操る様を、間近で見学できます。鳴り響く爆音と共に立ちのぼる白煙は、迫力満点!月1回くらいの間隔で開催されるので、日にちが合えばぜひ。
▲大迫力の鉄砲隊砲術実演。アプリ体験と合わせれば、江戸時代の城を満喫できます(写真提供:丸亀市教育委員会文化財保護室)
様々な切り口から“体感”できる丸亀城は、にわか城マニアになってしまう魅力に溢れていました。今までお城に興味がなかった人も、体感後はぐっと身近に感じられるのではないでしょうか。
puffin

puffin

東京でのライター生活を経て、現在は縁あって香川県在住。四国のおおらかな魅力と豊かな食文化に触発される日々。取材で出会うモノ・コトの根幹に流れる、人々の思いを伝えたいと願っている。

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