銘酒「獺祭」の酒蔵と直営ストアへ!世界規模の美味しさに迫る

2017.01.11 更新

山口県岩国市周東町の山里にある「旭酒造」。今や、日本で最も有名な日本酒銘柄の一つである「獺祭(だっさい)」が醸造されている蔵元です。杜氏を置かない蔵元としても知られ、あの美味しいお酒がどのように醸されているのかとても興味深いところ。実際に蔵見学に参加して、その醸造工程をたどります!

純米大吟醸酒のみを醸造する、杜氏が存在しない酒蔵

旭酒造で醸造されているのは「獺祭」ただ一銘柄のみ。酒米「山田錦」を使用し、そのすべてが精米歩合50%以下で醸造アルコールは一切不使用、つまり純米大吟醸酒のみを醸している酒蔵なのです。
▲「獺祭」はそのすべてが純米大吟醸酒。あえてコストをかけて美味しい酒造りを追求している

しかも、同社には酒造りの総指揮者ともいえる杜氏が存在しないというから驚きです!国内屈指の人気銘柄がどのように醸されているのかは、なんと蔵見学によって目の当たりにすることができます。蔵見学は全国各地からはもちろん、海外からの申し込みもあるそう。

見学は予約制で午前と午後の1日2回のみ。各回の定員は5人までとなっており、当然ながら土日や祝日は狭き門、3カ月先までの申し込みができるので早めの予約がおすすめです(実費として衛生服代税込200円が必要)。

なんと本社蔵は12階建てのビル!?

旭酒造は、「獺越(おそごえ)」という地区にあります。ちなみに「獺祭」という銘柄は、この「獺越」という地名と、歌人・正岡子規が称した別号「獺祭屋主人」に由来しています。
▲2015年に建て替えられた12階建ての本社蔵。まるで企業のオフィスビルのような、蔵元らしくない外観にまず驚く

そして、清流を挟んだ向かいにはスタイリッシュなデザインが目を引く木造建築「獺祭ストア・本社蔵」があります。こちらも2016年8月末にリニューアルされたばかりで、元は築100年を超える古民家なのだそう。
▲「獺祭ストア」のデザインは、新国立競技場などのデザインで知られる建築家・隈研吾氏!和を基調とする美しい建物は周囲の山里の雰囲気に見事に溶け込んでいる

見学者はまずこのストアに集合し、受付の後に本社蔵へと案内されます。ストア内部については後ほどのお楽しみとして、さっそく蔵見学へ出発です!

社長自ら熱い思いを語る!本社蔵で酒造りへのこだわりを目の当たりに!

本社蔵の建物内へ入ると、まず説明があるとのことで椅子に座って待っていると…、そこに登場されたのは、なんと旭酒造代表取締役社長の桜井一宏さん!

酒造りにおいて「美味しく味わえる酒」であることを追求している理由や、世界20カ国へと「獺祭」が輸出(商業ベースにおいては日本酒の中で最多!)されていることなど、「獺祭」とともに同社が目指す将来について聞くことができます。さらにこの日は、フランス料理と「獺祭」を味わえる店の出店が進められているという、リアルタイムの情報までお話しいただけました!
▲出張などが重ならない限り、まず桜井社長か桜井博志会長ご本人からの説明がある

「ぜひ酒造りに込める思いを見てください」と結ばれた言葉の節々に「獺祭」にかける熱い気持ちを感じることができました。その後、蔵内をご案内くださる担当者の方から醸造工程についての説明を聞きます。
▲今回ご案内くださるのは、醸造チームのスタッフの一人、菊本峻介(しゅんすけ)さん

桜井社長と菊本さんの説明を聞き終えて、見学者たちのワクワク感は最高潮に!「獺祭」への興味をいっそう増幅させたところで、いよいよ醸造現場へと足を踏み入れます。
▲まずは衛生帽と白衣を着用し、靴も工場内専用の物に履き替える。カメラやメモ帳などの持ち込みはOK

最初に案内されたのは本社蔵10階。「洗米」と「蒸米」が行われるフロアです。ぱっと見、目に入るのは機械類…杜氏がいない代わりにオートメーション化がなされているのかな?と思いきや、菊本さんの説明によると、洗米や、その後の蒸し釜への張り込み、蒸し上がりの掘り出しなど、重要な工程はすべて手作業によって進められているとのことです。
▲酒米の水分を厳密に保つために、手作業によって糠(ぬか)を洗い流す。米の状態をつぶさに見極めるために、15kgずつに小分けして作業が進められる
▲酒米は強い蒸気で「外硬内軟(がいこうないなん)」な状態に蒸し上げられる
▲蒸し上げられた酒米は、この後、二昼夜半をかけて手作業で「麹造り」の作業が行われる

「麹造り」は見学後のプロジェクターによる説明となるため、さらにその次、「仕込」を経て「発酵」が進められているフロアへ向かいます。

扉を開けると冷気とともに、ふんわりと米麹の甘い香りが~。目の前には高さ3mのタンクがなんと100本も!当たり前ですが、これ全~部が「獺祭」です!
▲フロア内は常時6度に気温が保たれている。旭酒造全体で300本の発酵用タンクがある
▲発酵状態も逐一目が届くように、あえて小さめのタンクが使われている

すべてのタンクにおいて毎日欠かさずデータ確認が行われており、一本一本が人の手でつぶさに管理されています。100本のタンクが並ぶ同フロアにおいても1日あたり7、8本ずつ、40分間櫂入れ(撹拌)しながらの仕込み作業が行われており、さらに正規データに比べて発酵温度に異常があれば、タンク個別に櫂入れ(撹拌)したり水を足したりと、反応を見ながら丁寧に作業が進められます。
▲櫂入れの様子。タンク一つ一つ、発酵状況のデータを確認しながら作業を進めていく。0.1度単位の精密な温度調整は人の手でなければ不可能なのだとか
▲空調によって蔵内の気温、湿度を徹底管理。年間を通じての酒造りを可能にしている

旭酒造では、醸造工程のすべてにおいて詳細にデータが採取、分析されており、酒造りはそれに基づいて進められています。これこそが、杜氏が存在しない理由の「解」なのです。

しかし、蓄積されたデータ通りに醸造を進めれば、必ず美味しいお酒ができあがる…というわけではありません。見学で目の当たりにした要所要所での丁寧な手作業こそは、酒造りにおける伝統技法が応用されたものであり、最新鋭のデータ分析とともに「獺祭」の醸造を支えているのです。
▲最後に、「麹造り」など立ち入ることができない工程は、プロジェクターで説明を受ける

酒造りの現場で改めてその熱い思いを肌で感じ、「酔うため」「飲むため」ではない「味わう酒」として、多くの人に「獺祭」が愛される理由が分かったような気がしました。

獺祭ストアで試飲!「アイス」「せんべい」「石鹸」など、多彩な獺祭製品も!

見学を終え、お待ちかねの「獺祭ストア」へ。ここで希望者は試飲(税込300円、本社蔵見学者のみ)が可能です。
▲ストアの建物全体には「ルーバー」と呼ばれる細長い羽板が張り巡らされている
▲内部も「和」を基調に、照明や壁などに酒造りをイメージしたデザインが施されている

試飲できるのは4種類!「獺祭 純米大吟醸50」「磨き二割三分」「磨き三割九分」「発泡にごり酒スパークリング50」の飲み比べが楽しめます。
▲テーブルに並べられた4種類の「獺祭」。見学のあとだけにその味わいもひとしお!

「50」は「獺祭」の中でいわば根幹的な位置づけなのですが、それでも日本酒ならではの吟醸香がひときわ豊かで、口当たりが優しい~。「三割九分」は、「50」よりも淡麗な味わいで、口当たりのまろやかさはさらに増したように感じます。

お米を7割以上も磨いて醸される「二割三分」は、まさに“フルーティー”といえるほどの優しい口当たり。そして特筆すべきは、ふんわりと鼻腔に残る吟醸香!「50」も「三割九分」も素晴らしかったのですが、わわわ…「二割三分」の余韻は別格、日本酒を飲んで、その美味しさに絶句してしまうなんて初めてです…。

最後の「スパークリング」は、スッキリしたと甘さと酸味が絶妙、これも美味しい~。4種とも、香りの豊かさとともに味わいもしっかりしているというのが何よりも印象的でした。
▲見学に参加したワインソムリエ有資格者の女性。「ぜひワイングラスで味わいたい」と豊かな吟醸香に感動した様子
▲精米歩合「非公開」の「獺祭 磨き その先へ」(720ml税込32,400円、DX箱入)。会長、社長、醸造に責任を持つスタッフ利き酒のうえで品質が認められなければ販売されない

ストアには「獺祭」各種のほかにも、醸造工程で生じた米粉や酒粕を使用したスイーツなども並びます。中でも、ストアで購入してその場で味わえる「獺祭アイス」がおすすめ。アルコール分はありませんので、ドライバーさんでも未成年(見学は中学生以上)でも安心して味わえます。

一際きめ細かな「獺祭」の酒粕が使用されるため、食感はと~ってもなめらか。その味わいたるやレアチーズを思わせるような美味しさです。
▲「獺祭アイス」(写真)や「獺祭シャーベット」(各税込378円)のイートインも可能
▲左より、精米で削られた米粉使用の「獺祭せんべい」(30枚入税込756円)、「獺祭 磨き二割三分」が練り込まれた「獺祭ショコラ」(税込1,296円)、未成年NGの「獺祭50」を染み込ませたアルコール分2%の「酒ケーキ」(税込1個200円、1本1,620円)
▲酒粕で造られた「獺祭石鹸」(税込1,080円)も人気

旭酒造では、万人に受け入れられるさらに美味しい「獺祭」を醸すべく、挑戦が続いています。いまや世界へと広がりをみせていますが、本社蔵見学でその熱い思いにふれることで、その美味しさはさらに格別なものになるはずです!
兼行太一朗

兼行太一朗

フリーライター・カメラマンとして、山口県を拠点に活動中。 主に旅行、グルメ、歴史、地方創生などについての書籍やウェブサイトを中心に取材・執筆を行っている。拠点とする山口市では、歴史資源を生かした地域活性化に取り組むNPO法人「大路小路まち・ひとづくりネットワーク」にも所属し、守護大名大内氏や幕末に関する史跡、ゆかりの場所や人物についての取材を担う。(編集/株式会社くらしさ)

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