昔ながらの囲炉裏で焼く、信州の郷土食「おやき」作りにチャレンジ

2017.01.05 更新

長野県一帯の郷土料理として親しまれている「おやき」。味付けした野菜などを、小麦粉やそば粉で作った生地に包んで焼いた、おまんじゅうのような素朴な食べ物です。そんなおやきの発祥の地とされる小川村では、囲炉裏を囲みつつ昔ながらのおやき作りを体験できます。

信州に今も息づく郷土食・おやき

山に囲まれて寒冷な信州北部。稲作に適さない土地が多く、その分、古くから小麦粉やそば粉を使った独自の「粉もの」の食文化が育まれてきました。

そのひとつが「おやき」。小麦粉やそば粉を水で溶いて練った生地に、調理した野菜や山菜、小豆などの具材を包み、囲炉裏の灰の中で焼いたものです。農作業や夜なべ仕事の傍らで作られ、日常食として親しまれていました。
▲囲炉裏で焼かれるおやき。今では灰の中に入れて焼くことが衛生上から難しく、灰の上に置かれた渡し(鉄の網)の上で焼かれます

時代とともに、より簡単に作られる「蒸(ふ)かす」という調理法も誕生し、今では、地域ごとに焼きや蒸かし、焼き蒸かし、揚げ焼きのほか、笹の葉や大葉を巻いたおやきなどさまざまな種類が作られるようになっています。
▲蒸かしたおやき。焼くおやきよりも手間がかからないため、今では長野県全域で一番見られるタイプです。焼いたおやきよりもしっとりとしています

そんなおやきの発祥の地とされるのが、長野市から西へ車で30分の地に位置する小川村。北アルプス連峰を望む風光明媚で静かな農村です。一説によると、村内にある縄文時代の遺跡から雑穀の粉を練って焼いた跡が発掘され、これがおやきのルーツだと言われているのだそう。こうしたおやきの文化を伝え、「縄文おやき」と名付けた昔ながらのおやきを食べられるのが、「小川の庄おやき村」です。こちらでは、囲炉裏で焼くおやき作りも体験できます。
▲山あいの農家の建物を改修した趣ある建物

いざ、「小川の庄おやき村」でおやき作り体験!

▲車のすれ違いができないほどの狭さなので、一方通行で進めるように道が整備されています

主要道路から山あいの坂道に入り、道を間違えたのではないかと不安になるほどグネグネとした細道を登ると、素朴な雰囲気の「小川の庄おやき村」の建物が見えてきます。
▲ところどころに「がんばって」「あと少し」などと書かれた看板が立つ坂道を登りきると建物があります

引き戸を開けて建物の中に入ると、右側が畳敷きの食堂、左側に囲炉裏へと続く廊下があります。こちらを進むと、竪穴式住居が再現された建物に到着。囲炉裏では薪が燃え、そのいい香りと温かさが漂います。おやき作り体験はこちらの囲炉裏端で行います。
▲穴を掘って底に床をつくり、柱を立てて屋根を葺いた竪穴式住居。中央に囲炉裏があります

まずは、囲炉裏の脇でおやき作り体験の申し込みを。1人2個を作って、体験料は540円(税込)。予約なしでも体験は可能ですが、土日や祝日、長期休暇の期間は混雑する可能性もあるため、予約をしたほうが安心です。
▲受付カウンターの表示。左端の「住民票」とは、「小川の庄おやき村」で発行している会員カード(登録無料)のこと。おやきを1割引で購入できるなどの特典が受けられます

具を落とさないよう、少しずつ生地を広げるのがコツ

ビニール製のエプロンを着けたら、おやき作り体験スタート。教えてくれるのは、毎日500~600個はおやきを作っているという萱津(かやつ)昭子さん。この日作るのは、定番の具材の野沢菜と、季節の具材であるうの花のおやきの2種類です。
▲多い日には1日1,000個以上も作っているという、この道15年のベテラン、萱津昭子さん

最初に小麦粉を手につけたら、あらかじめ作ってある耳たぶほどの柔らかさの生地を手に取り、10cmほどに平たく広げます。「穴があかないように、周りは薄く、真ん中は厚めに仕上げるんですよ」と萱津さん。
▲親指を使い、生地の中心部は厚めに残して端を広げていきます

ちなみに、今回作るのは「焼きおやき」。蒸かすおやきはふっくらもっちりさせるよう、生地にイースト菌が使われることがありますが、焼くタイプには使いません。また、蒸かすおやきは生地を寝かせますが、焼く場合は寝かせる必要もないそうです。
▲油で炒めた野沢菜の具材。スプーンで生地の上にのせます

生地の上に、大さじで山盛り2杯ほどの具材をのせます。思っていた以上に具だくさんで、本当に入りきるのかと不安になりますが、萱津さん曰く「生地を少しずつ伸ばしていくから全部入りますよ」とのこと。
▲こんなに具材が山盛りに!生地を少しずつ伸ばして包んでいきます

生地を両手で包み込むように持ち、反時計回りに回転させながら親指を使って伸ばし、口を小さくして閉じていきます。穴を開けないように慎重に進めますが、もたもたしていると次第に生地がベタベタになって手にはりつく上、野沢菜の具材がポロポロと落ちそうで難しい!
▲萱津さんのやり方を見ながら進めますが、具材を落とさないように包むのが大変です
▲最後にちょっとつまんで、なんとか包み込むことができました。閉じた中心部のツノを指で押し潰して、この面を下にして焼きます
▲完成したおやきは、最後に生地を閉じた部分を下にして並べておきます

ふたつめは、キャベツや大根、ニンジンなどが入ったうの花のおやき作りを。「こちらのほうが具材がしっとりとまとまっているので、作りやすいですよ」と萱津さん。ひとつめの経験を生かし、素早く仕上げていきます。
▲萱津さんにアドバイスをいただきながら進めます。要領をつかんで、少しずつ慣れてきました!
▲今度は萱津さんに褒めてもらえるほどうまくできました

それにしても、萱津さんの作るスピードの早いこと。こちらが1個作っている間に、倍以上の速度で仕上げていきます。まさに職人技!
▲萱津さんの手にかかると、あっという間におやきが出来上がっていきます

囲炉裏端で焼くのも楽しいおやき作り

それでは、次に「焼き」のステップへ。焼くのは、これまたベテランの中澤嘉道(よしみち)さん。
▲最初は囲炉裏の上に据えられた大きなほうろく(鉄鍋)に5分ほど置き、両面に焼き色をつけます。この作業は中澤さんにお任せ
▲焦げ色がついたら囲炉裏の端の渡しの上に移して両面を焼き、さらに側面部分も焼き上げていきます。ここからは体験可能です
▲トングや軍手を使い、焦げすぎないようにまんべんなく焼き上げます

それにしても、囲炉裏が近くて顔が熱い!1個焼き上がるまでには、トータルで25分ほどかかりました。
▲少し生地が破れてしまいましたが、いい感じ!でも、奥で焼かれている萱津さんが作ったおやきのほうが、大きくて具材がたくさん入っていますね
▲ざるの上に盛り付けたら完成!サービスのお味噌汁やひたし豆、漬物などと一緒に、その場で食べることができます

いざ、実食!自分で作ったおやきの味わいは?

では、いよいよ自分が作ったおやきを食べてみます!ふたつに割ってみると、湯気がもわっと上がって、我ながらとてもおいしそう!
▲アツアツのおやき。湯気が食欲をそそります。それにしても熱い!
▲できたてアツアツのおやきは格別のおいしさ!特に、うの花はこれまで食べたことがないほどしっとりしていて、感動的な味わいです

おやき作り体験は、焼き時間も含めて30~40分ほど。焼きあがるまで、萱津さんや中澤さんとおしゃべりしながら待つのもまた楽しいものでした。

信州の郷土食の魅力は、土地の恵みを生かした素朴な味わいにありますが、その中でもおやきには、たくさんの地元素材が詰まっていることが改めてわかりました。季節によって、ナスやきのこ、山菜などの旬の味わいを楽しむこともできます。

信州そばなどの郷土食もいただけます

「小川の庄おやき村」の食事処では、信州そばなどの郷土食もいただくことができます。おやきはもちろんのこと、実はこちらのそばもおいしいと評判なのです。タイミングが合えば、食事処の隣で職人さんがそばを打つ様子を見ることもできます。
▲掘りごたつが置かれた畳敷きの食事処。囲炉裏で焼いたおやきをここに持ち込んで食べることもできます
▲じっくりと石臼で挽いたやや太めの信州そばに、自分でおろした生わさびを添えて。新そばの時期のおいしさは、また特別の味わいです。「ざるそば」(税込750円)
▲売店もあり、冷凍おやきのほか、漬物や豆、味噌、醤油なども購入可能。スタッフの皆さんが気さくで親しみやすいのもここの魅力のひとつです

なお、こちらの「小川の庄おやき村」の他に、長野駅から徒歩15分ほどの善光寺門前には支店「おやき村大門店」もあります。そちらにも囲炉裏があり、焼きたてのおやきを食べたり、おやき作りを体験することが可能。蔵造りの建物が並ぶ商業施設「ぱてぃお大門」の一角にありますよ。
▲街なかの喧騒を忘れるほど穏やかな雰囲気が漂う「おやき村大門店」の囲炉裏端

素朴な雰囲気の中でのおやき作り体験。ぜひ、長野旅のプランに加えてみてはいかがでしょうか。
島田浩美

島田浩美

編集者/ライター/書店員。長野県出身・在住。信州大学卒業後、2年間の海外放浪生活を送り、帰国後、地元出版社の勤務を経て、同僚デザイナーとともに長野市に「旅とアート」がテーマの書店「ch.books(チャンネルブックス)」をオープン。趣味は山登り、特技はマラソン。体力には自信あり。(編集/株式会社くらしさ)

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