世界遺産・五箇山の合掌造り集落で、日本の原風景を体感する旅

2017.01.21

富山県南西端に位置する南砺(なんと)市五箇山(ごかやま)は、「合掌造り」と呼ばれる茅葺屋根の建物が点在する、山里の小さな集落です。一年を通して様々な表情を見せる自然と、都会の暮らしからは想像もつかないような先人の知恵が息づく暮らしがそこにはあります。美しい日本の原風景が残る世界遺産・五箇山にいざ出発!

▲夏の菅沼集落(写真提供:五箇山総合案内所)

先人の知恵と工夫が活きた、五箇山の暮らしと合掌造り

五箇山には、23棟の合掌造りの家屋が残る「相倉(あいのくら)」と9棟が残る「菅沼(すがぬま)」という2つの集落があります。1995年12月、岐阜県白川郷(萩町集落)と共にユネスコの世界遺産に登録され、近年では日本人のみならず海外からも多くの観光客が訪れるようになりました。
▲五箇山・相倉の春(写真提供:五箇山総合案内所)
▲田んぼに水が張られ、合掌造りが水面に写り込んだ情景(写真提供:五箇山総合案内所)

雪深い五箇山では江戸時代、加賀藩前田家の手厚い保護のもと、家屋の中で養蚕、和紙製造、火薬の原料となる塩硝(えんしょう)の生産が行われていました。そのため人々が暮らす合掌造りの家屋は、屋内で生活と生業の両方が行える機能的な構造を持っています。
また、特徴的な急勾配の三角形の屋根は、雪を落としやすくするための工夫なのです。
▲雪が降り積もった相倉の冬景色(写真提供:五箇山総合案内所)

なお、この地方は昔から民謡の宝庫と呼ばれ、30近い民謡が残されています。中でも「こきりこ」や「麦屋節」は無形文化財に指定され、秋に「五箇山麦屋まつり」「こきりこ祭り」が開催され、保存会による民謡と踊りの競演会が行われています。

世界文化遺産にふさわしい歴史と文化を持ち合わせる五箇山。そのルーツを探るべく、五箇山の見どころを巡ってみましょう!

五箇山最大の合掌造り「岩瀬家」

まずは、東海北陸自動車道の五箇山ICからほど近い場所に位置する、築300年・5階建ての「岩瀬家」へ。現存する合掌造りの中では最大の規模で、国指定の重要文化財にも指定されています。
▲集落から離れた場所にある「岩瀬家」。屋内は税込300円で見学することができます

建築当時は家族や使用人を合わせ35人もが住んでいたそうで、間口26.4m、奥行き12.7m、高さ14.4mの大邸宅。大きさ、構造、仕上げとも、もっとも発達した形式といわれています。また、加賀の役人の宿舎にもなっていたことから、1階部分は宿泊に適した書院造りに、2階から5階までは養蚕、塩硝、和紙工場の機能を持ち合わせた構造になっています。
▲「いらっしゃい」と囲炉裏で温めた湯でお茶を入れてくださる岩瀬さん

昔から五箇山に根付く「薬草茶」で出迎えてくれたのは、現在もこの家に暮らす18代目の岩瀬幹夫さんです。囲炉裏を囲みながら、岩瀬家の成り立ちや当時の暮らしについてわかりやすく解説してくれます。
▲2階部分は、養蚕が行われていた当時の屋内の様子を再現
▲五箇山の暮らしに欠かせない道具なども置かれている

当時の道具や作業場、建具や構造などの保存状態がとても良く、昔の五箇山の暮らしぶりを後世に伝えるべく、代々大事に守り続けられてきた岩瀬家。厳しい五箇山の暮らしと、先人たちの知恵を間近で体感できる貴重な資料は、訪れる価値ありです。

地元ガイドとともに「相倉集落」へ

さて、ここからは、五箇山の集落を見学します。五箇山を知るには住人に聞くのが一番!ということで、五箇山住人により構成された地元ガイド「五箇山ぐらし案内人」の一人、山﨑友紀恵さんに先導をお願いしました。
「五箇山ぐらし案内人」は現在、菅沼集落、相倉集落合わせて15人程で活動しており、事前申し込み(~10日前まで)を行えば相倉か菅沼どちらか希望の集落を案内してくれるというもの。今回は相倉集落のガイドをお願いしました。
▲とっても気さくな案内人の山﨑友紀恵さん。「五箇山のことなら何でも聞いてね!」

五箇山集落に住む人たちとは、ほとんどが顔なじみという山﨑さん。道行く人と明るい挨拶を交わしながら、街の中を巡っていきます。集落内の小路が実は昔の街道だった話や、相倉と菅沼の違い、五箇山の気候や特産品の話など、幅広い知識のもとさまざまなエピソードをわかりやすく教えて下さいました。
▲旧街道の小路。当時の住人たちは、この道で平野部と往来していたそう

中でも驚いたのが、棚田の「石積み」の話。棚田や路の淵などに積んである石のことなのですが、相倉と菅沼では全く形が異なるそうで、「これは立地の関係からきているものです」と教えて下さいました。後に菅沼にも立ち寄ったのですが、確かに相倉の石積みとは石の形が全然違う!と後から驚いてしまいました。
▲集落のあちこちで見られる相倉の石積み(河原が近い菅沼は丸い石、相倉は砕石状のものが使われている)

歩いていると、昔ながらの生活を続ける人々の暮らしも見えてきました。集落内にある合掌造り家屋のほとんどが、今でも民宿や食事処、土産店を営んでいます。みなさんとてもあたたかく出迎えてくれるので、住人の方々との交流もこの旅の醍醐味の一つと言えそうです。
▲相倉には、当時の住民が使用していた道具などが見られる民俗館や伝統産業に関する物が揃う資料館などもある

五箇山で暮らす人々は、今でも畑で採れた野菜を中心とした食事をしています。春、夏、秋と山里に実る食材で、季節ごとの料理を楽しんでいるのだとか。野菜が収穫できない冬に向けて、保存食を作ることも多いそうです。五箇山の民宿や食事処でも、旬の味覚を食べることができます。
▲軒先で地域の特産品のひとつ「五箇山かぶら」という赤カブを発見!

合掌造りの中で伝統産業「五箇山和紙漉き」を体験!

まち歩きを終え、紙すき体験ができる合掌造りの家屋「山崎家」(五箇山和紙 相倉店)へ案内していただきました。こちらは、五箇山の伝統産業「五箇山和紙」の工房とショップを併設した、相倉集落内にあるお店です。
「和紙づくりは、合掌造り住宅の土間の部分で行われていたんですよ」と山﨑さん。山崎家の中も土間になっており、当時の造りをそのまま活かした店となっています。
▲土間に置かれた材料の入った漉き舟。当時の雰囲気の中での紙漉き作業は貴重な経験!
▲この日はたくさんの観光客が。みなさん思い思いに装飾用の切り紙などを挟み、オリジナル和紙を完成させていましたよ♪

和紙が完成するまでは約10分。当日でも申し込めるので、ちょっと寄り道がてらに素敵なお土産を手作りできるのが嬉しいですね。なお、こちらは残念ながら12~4月まで閉館されるため、冬期の紙すきは車で約5分の下梨にある本店「五箇山和紙」(0763-66-2016)あるいは「五箇山和紙の里(道の駅たいら内0763-66-2223)で体験できますよ。
▲型押し模様と染めの色合いがとても美しい「美術紙」(税込600円)をはじめ、さまざまな和紙製品を店内で販売している

五箇山の名品が一堂に揃うお休み処でショッピング♪

相倉見学のラストは、今回の旅のお土産探しへ。山﨑さんがよく利用するという同集落内の「まつや」さんを案内してもらいました。
▲お休み処・茶店「まつや」は、五箇山のお土産と地元の食材を使った食事が堪能できるお店。コーヒーブレイクにも最適
▲五箇山和紙や特産品などさまざまな商品が並びます。ハンドタオルなどのオリジナル商品も
▲かわいい五箇山和紙の雑貨は、女性に大人気のお土産だそう
▲五箇山の米や名産の赤かぶら、しょうゆなどご当地ならではの商品も並ぶ
▲雑貨のほかにも、もらって嬉しい美味しいお菓子といった味土産も揃う

店内には、五箇山ならではのお土産コーナーのほかに、約60席を用意するお食事コーナーもあります。季節ごとの定食メニューや定番のそばメニューもおすすめですよ!
山﨑さんとはこちらでお別れです。地元のガイドさんならではの情報を交えながら約1時間、歩く先々でいろんなお話をしてくださいました。五箇山集落を散策したい人には欠かせない存在です!「五箇山ぐらし案内人」のお問い合わせは、五箇山総合案内所(詳細は後述)まで。

菅沼集落の食事処で名産「五箇山豆腐」を心ゆくまで堪能

散策を終えると、ちょうどランチタイム。そこで、相倉集落から車で15分ほどの菅沼集落にある「吾郎平」を訪れました。昭和50(1975)年創業、現在2代目の店主が切り盛りする店では岩魚、五箇山豆腐、山菜料理、蕎麦など、五箇山の素材をふんだんに使った料理を提供しています。
▲約180年前に建てられたという合掌造りの店
▲「五箇山とうふ御膳」(税込1,600円)は、刺身豆腐や朴葉味噌豆腐、揚げだし豆腐と豆腐尽くしでボリューム満点

元レストランのシェフだったご主人が作る料理は、一品一品とても丁寧に作られています。優しい味わいを心ゆくまで堪能でき、お腹も心も満たされ大満足!中でも絶品は、しっかりとした重量と食べ応えのある五箇山豆腐を使った料理の数々。とにかく豆腐とごはんが良く合うんです!
▲店内には、岩魚を焼くために使用する囲炉裏も

炭火でじっくりと焼き上げる「岩魚の塩焼き」(税込780円)も人気の一品。品切れの場合もあるため、店を訪れる前には予約をお忘れなく。

冬限定!非日常を感じられる合掌造りのライトアップ

さて、雪深い五箇山集落ですが、毎年3月の金・土曜に行われる「世界遺産・五箇山菅沼合掌造り集落ライトアップ」では、雪に包まれた幻想的な風景を楽しむことができます。日没から20:00までの間、集落の家屋一軒一軒にあたたかな光が灯ります。決してほかでは見ることのできない非日常感に浸れるはず。静寂なるひとときを、どうぞお楽しみください。
▲菅沼集落の合掌造りライトアップ風景(写真提供:五箇山総合案内所)

人々の温かさと昔ながらの暮らしに触れながら、自然の恵みを味わう五箇山の旅。ゆっくりと流れる五箇山時間を身体全体で感じながら、リラックスできるひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
居場 梓

居場 梓

富山県富山市出身。学生時代より雑誌編集プロダクションに在籍、後にフリーライターとして活動。地元・富山に帰還後、情報誌編集者を経てフリーに。現在は企画・編集・コピーの仕事に携わる。趣味は純喫茶めぐりとナポリタンを食べること。

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