スイカと同じ糖度を持つ“にんじん”を厳冬の青森で収穫してきた

2017.02.25 更新

雪の積もった畑の下から掘り起こすブランドにんじん「ふかうら雪人参」。その最大の特徴は、糖度が9度前後もあること。スイカと同じフルーティーな甘さとも言われているにんじんの収穫体験ができると聞き、青森・深浦町を訪れました。

本州最北端・青森県の日本海沿いにある深浦町で収穫されるブランドにんじん

深浦町は、青森県の日本海側、JR青森駅から電車で約3時間の場所にあります。海から吹く潮風により昼夜問わず気温が低い一方で、日本海側にしては積雪が少ないエリアでもあります。
▲冬の深浦町の名所「氷のカーテン」はJR千畳敷駅前にできる。日本海から吹きつける風の強さを物語る

「ふかうら雪人参」は、冬に出稼ぎに出なくてもいい産業を深浦町に作ることができないかと考えだされたもの。元々この地域ではにんじんを雪の中に埋めて越冬させていましたが、元漁師の坂本正人さんが「冬に収穫する」というアイデアを生み出したそうです。そして、坂本さんは1976年に舮作(へなし)興農組合を立ち上げ、「ふかうら雪人参」のブランド化を推し進めてきました。
▲73歳になった現在でも、トラクターなどをパワフルに運転するほど元気な坂本さん

舮作興農組合は、標高200mの高台に畑を所有しています。西方には日本海、南方には世界自然遺産・白神山地を望むことができる立地です。
▲白神山地が見える。雪原はすべてにんじん畑

広がる雪原はすべてにんじん畑です。舮作興農組合では、にんじんだけで東京ドーム10個分以上に相当する60haもの農場を持ち、12~3月にかけて毎日収穫を続けます。その出荷量は年間約1,500t。何本分に相当するのか、想像もつきません。
▲収穫を行う地元の女性たち

なお、12~3月の間は、地元の宿泊施設「ウェスパ椿山」が提供する宿泊プランの一環として、一般の人でも「ふかうら雪人参」の収穫を体験することができます(1泊2日税込12,000円~)。通常は宿泊を含む体験プランですが、今回は特別に収穫だけ体験させてもらいました。

さっそく収穫体験にチャレンジ!

体験の内容は、「ウェスパ椿山」から車で10分ほどの畑まで送迎してもらい、収穫体験を行った後、畑近くにある工場でにんじんの出荷作業を見学。さらに、生絞りジュースを飲んでお土産もいただけるというものです。

通常は積もった雪の下から掘り起こす「ふかうら雪人参」ですが、この日は土肌が見えるほどの積雪です。畑に入ると、足元は雪が溶けかかった10cmほどのぬかるみ。転ばないように気をつけながら歩きます。なお、体験には汚れないように、長靴・上下ウェア・ゴム手袋を無料で貸してもらえます。
▲ぬかるみの畑の中を進む

収穫の前に、まずはショベルカーで畑の表面に積もった雪を掃きます。さらに専用のトラクターで30cm程度、土を掘り起こします。
▲ショベルカーが表面の雪を掃く
▲土を掘り起こすとにんじんの葉が顔を出す

葉の部分は土の外に出ているため、にんじんの居場所はすぐに見つけることができます。そして、掘り起こした土からにんじんを引っこ抜く。力はそんなに必要なく、簡単にスッと抜けます。しかし、中腰で地中まで手を伸ばすため、腰には継続的に負荷がかかります。
▲地元の女性たちが世間話をしながら収穫する

慣れてしまえば楽な作業かもしれませんが、普段慣れない姿勢だからこそ太ももにも力が入ります。そんな中、地元のおばちゃんたちは収穫しながら「どさがら来た?(津軽弁でどこから来た?の意)」と私たちに興味津々で聞いてきます。こんな辛い姿勢の作業をラクラクこなすとは、さすが地元の方々!会話が弾むと姿勢の大変さも意外と忘れてしまうものでした。
▲会話はするが、作業を進める手は止めない

収穫したにんじんは泥まみれなので、手で泥を落とし、カゴの中に入れます。作業はこれでおしまい。20人前後の人手であれば、200~300mの列を1時間程度で収穫してしまうとか。ただし真冬の収穫は天候との闘い。吹雪の中でも収穫することがあり、外気に比べて土の中の方が温かいと感じることもあるそうです。
▲収穫したばかりの「ふかうら雪人参」

収穫体験に制限時間はなく、30分程度を目安に自由に続けてもOK。今回は20分で10本以上のにんじんを収穫することができ、地元の人たちと世間話を交わしながらあっという間に時間は過ぎてしまいました。なお、収穫したにんじんはお土産として持ち帰ることができます。
▲土の中から掘り出すにんじんに思わず笑みがこぼれる(写真提供:ウェスパ椿山)

収穫体験後は、工場見学です。先ほど掘り出したにんじんがどのように出荷されていくのか間近で見ることができました。
▲洗浄したにんじんを最初は人の目で選別し、加工用と生食用に振り分ける
▲5種類の大きさで選別された「ふかうら雪人参」

雪の下から一本一本手作業で抜かれ、丁寧に洗浄され、出荷されていく「ふかうら雪人参」。その様子を見届けると、そのおいしさや注目を集めつつある理由が分かった気がしました。工場見学の醍醐味ともいえるのではないでしょうか。

激甘!工場で飲むにんじんの生搾りジュース

工場見学の後には「ふかうら雪人参」の生搾りジュースを味わうことができます。いただいてみると信じられないほど甘く、にんじんの臭みやえぐみは全くありません。野菜は寒い中で越冬すると糖分が増すのだそうです。つまり、このにんじんの甘みも、にんじんが本来持っている甘みなのです。
▲味はもちろん、鮮やかなオレンジ色の美しさも堪能しよう

種類豊かなにんじんのおみやげや地元住民オススメの食べ方

体験の後は、せっかくなので深浦町で雪人参グルメも探してみましょう。「ウェスパ椿山」の敷地内にあるおみやげ店ではジャムやドレッシング、プリンといった雪人参を使ったさまざまな商品が並んでいました。
▲「ウェスパ椿山」の敷地内にある、おみやげ店「コロボックル」

中でも目を引くのは、パッケージがにんじんそのものの形をした「ふかうら雪人参」を使ったビーフシチューとミネストローネ。こちらは深浦町にある食事処「セイリング」が開発した一品です。
▲「セイリング」が開発した「ふかうら雪人参」のミネストローネ(税込864円)とビーフシチュー(税込1,080円)

「セイリング」の店主・山本千鶴子さんは深浦町で20年以上同店を経営しています。「ふかうら雪人参」を使ったビーフシチューを長い間、お店で提供していましたが、遠方の方にもどうしても食べてもらいたい、深浦を知るきっかけになってほしいとおみやげ用のレトルト品を開発しました。
▲「セイリング」の山本千鶴子さん

山本さんによると「ふかうら雪人参」で作るビーフシチューはルーとの相性がよく、シチュー全体の甘みが強まるだけでなく、にんじんを大きく切ることでホクホクした食感も楽しめ、より一層おいしさが増すと自信を見せます。
▲店内で提供される「雪人参ビーフシチュー」(税込1,300円)

そんな山本さんに、地元民ならではの「ふかうら雪人参」のおいしい食べ方を教わりました。深浦町では正月に出される定番メニューとして「子和え」があります。漁港で水揚げされた真ダラの子(たらこ)と「ふかうら雪人参」を使った子和えは、郷土料理として欠かせないようです。

作り方は、細切りにした「ふかうら雪人参」に出汁としょう油を加えて煮立て、ほぐしたたらこを加えてかき混ぜます。さらに煮詰めたら完成。意外と簡単です。
▲家庭によってさまざまな味付けがある子和え。試してみては?

雪の中での「ふかうら雪人参」の収穫体験。厳冬の青森ならではの、都会では考えられないような体験でした。自分で収穫した野菜だからこそ、おいしさやありがたみがより高まるもの。人間の感じ方もにんじんと同じで、厳しい環境に立てば立つほど深みが増すものなのかもしれませんね。
くどうたける

くどうたける

東京でウェブライターを経験し、2012年に青森へ移住。地域新聞や地域の情報を発信するお仕事をいただきながら、田舎でせっせと暮らしてます。(編集/株式会社くらしさ)

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