現存する日本最古の五重天守!国宝・松本城の魅力をとことん堪能

2017.02.09 更新

全国にある城のうち、国宝に指定されているのは5つだけ。そのひとつが長野県の松本城です。北アルプスを背景とした黒と白のコントラストが見事で、四季折々の美しさを見せてくれる松本城の見どころを、地元のボランティアガイドに教えていただきました。

北アルプスの麓、長野県松本市にある国宝・松本城。戦国時代から江戸時代の初め、日本にはかなりの数の城郭がありましたが、今でもかつての状態のまま天守が残っている「現存天守」はわずか12。そのうち五重天守をもつ城は松本城と姫路城だけで、松本城は現存する日本最古の五重天守なのです。

そんな松本城には、無料で解説・案内をしてくれるボランティアガイドがいて、参加者の希望に沿った所要時間や内容で案内してくれます。そこで、今回は「松本城の見どころを余すことなく紹介してください!」とお願いし、「松本城案内グループ」代表の林喜代子さんにたっぷりとご案内いただきました。
▲平成10(1998)年にガイドグループの一員になった林喜代子さん。グループ自体は平成2(1990)年に誕生したそう

戦国時代から400余年の風雨に耐えた「漆黒の城」

松本城の始まりは、戦国時代初期の永正年間(1504~1520年)に造られた深志(ふかし)城。この地を治めていた小笠原氏の居城を守る支城のひとつとして築城され、その後、戦国の動乱を経て、名を松本城と改めました。

そんな松本城の特徴のひとつは、外壁に黒漆(くろうるし)を塗った「漆黒(しっこく)の城」であること。「これは、小笠原氏のあとに入城した石川数正・康長親子によるもので、豊臣秀吉の大阪城が黒で統一されていたことから、秀吉への忠誠のしるしと言われています」と林さん。それに対し、姫路城のように「白亜の城」は徳川家康の時代の城とされるそうです。外観から時代がひもとけるなんておもしろいですね。
▲漆黒と壁面の白漆喰(しろしっくい)のコントラストが松本城の魅力

北アルプスの山々を背景に、その城郭を内堀に姿を写す様子は、ほかの城では見られない絶景です。かつて城の周りには高い壁があったことから、「この景色は殿様と高級武士しか見られなかったんですよ」と林さん。そう聞くと、特別感もひとしおです。

なお、黒漆は毎年塗り替えられ、美しさが保たれています。また、大天守の外観は五重に見えますが、内部は6階からなる「五重六階」。2層目の屋根裏部分に3階が隠されています。
▲城の西側に架けられた赤い橋「埋橋(うずみばし)」も人気の撮影ポイント。江戸時代にはなかったもので、昭和30(1955)年に架けられました。かつては渡ることができましたが、現在は通行禁止となっています
▲松本城のお堀には白鳥も。かつて彦根城のある滋賀県彦根市や岐阜県高山市から贈られた白鳥から繁殖し、2017年現在は4羽が生息
現存12天守で唯一、平地に築かれた平城(ひらじろ)である松本城は、防御のために外側から総堀・外堀・内堀の3重のお堀が設けられていることも特徴です。総堀は明治時代にほとんどが埋め立てられてしまいましたが、外堀は復元中とのこと。完成が楽しみですね。

「松本城は見れば見るほど形がよくて重みがあり、案内していても楽しんですよ」と林さん。その言葉からは、松本城を愛する林さんの熱い気持ちが伝わってきました。

戦国時代の戦闘に備えた堅牢強固な装備

戦国時代に天守が築かれたことから、戦闘に備え華美な装飾のないシンプルな美しさをもち、銃撃戦に備えた数々の堅牢強固な装備が見られる松本城。そのひとつが「鉄砲狭間(てっぽうざま)」「矢狭間(やざま)」とよばれる壁の小窓です。ここから火縄銃や矢で敵兵を攻撃したのですが、松本城にはなんと115カ所もこうした小窓があるのだとか。これは江戸時代に築城されたほかの城に比べ、とても多い数だそう。
黒壁をよく見ると、鉄砲狭間や矢狭間があるのがわかります。上から3番目の屋根の上の三角形の装飾「千鳥破風(ちどりはふ)」は通常は明かり取りとして使われていましたが、戦闘の際は内側から銃で狙える造りにもなっていて、物見の役目も果たしました。

また、壁面は銃弾を通さないよう、最大約30cmもの厚さ、内堀は当時の火縄銃の有効射程距離ギリギリの設定であるおよそ60mの幅となっています。さらに、石垣上には床を突き出すように設けた「石落(いしおとし)」とよばれる工夫が見られます。
▲石垣の上、床が少し張り出しているのが石落。天守内に11カ所設けられています

「実際に松本城で戦闘が行われたことはなかったのですが、敵が石垣を登り始めると、ここから鉄砲や槍、石などで攻撃できるようになっていました。一般的には、籠城戦になると悪臭を放つものや熱湯などを落としたこともあると言われています」と林さん(ちなみに悪臭を放つものとは…糞尿のことだそう!)。近くで見るとよりリアルに感じられ、想像力が掻き立てられました。
▲天守の内部から見た様子。右の小窓が鉄砲狭間、左が矢狭間で、その下に石落があります

太平の世・江戸時代の築城技術も見られる松本城の魅力

平和な江戸時代に入ると、家康の孫・松平直政が松本城主になりました。幕府は大名の統制を図るために城の新築・増築を禁じましたが、直政は孫の特権で認められます。そして、第3代将軍・徳川家光が現長野市の善光寺に参詣する途中、松本に立ち寄るとされたことから、風雅な雰囲気をもつ「辰巳附櫓(たつみつけやぐら)」と「月見櫓(つきみやぐら)」の2棟を築きました。

このように、異なる時代の櫓が複合された天守群は日本唯一で、松本城の歴史的な特徴のひとつです。
▲赤い欄干を配した月見櫓。閉鎖的な天守に対して大きな窓があって開放的で、戦う備えをもちません。後ろに続いて建っているのが辰巳附櫓
▲内部から見た月見櫓。春の桜の季節と秋の中秋の名月にはここで音楽の演奏が行われ、本丸庭園内にはお茶席が設けられます

大天守を挟んで北側に「乾小天守(いぬいのこてんしゅ)」が「渡櫓(わたりやぐら)」で連結され、後年、東側に辰巳附櫓と月見櫓が複合された構造は、松本城だけに見られるものだそう。この構造は連結複合式天守とよばれています。
▲左から月見櫓・辰巳附櫓・大天守・渡櫓・乾小天守。本丸庭園では5棟を正面から眺めることができます(天守と本丸庭園の観覧は有料)
▲本丸庭園には毎日9:00~16:00の間、甲冑や忍者、姫などの装束をまとった「国宝松本城おもてなし隊」が登場。無料で一緒に撮影もできます

当時の武士気分も味わえる!?お城の内部も見どころ満載

天守の内部に入ると、戦国時代の堅固な仕掛けだけでなく、建物の構造やかつてここで城を守った武士たちの様子も垣間見ることができます。
内部は窓が少ないため薄暗く、柱の数が多く骨組みが強固であることが実感できます。乾小天守は丸太柱があるのが特徴で、築城当時から400年以上残っているものもあるそう。
▲大天守4階から5階の階段はもっとも急勾配。最高61度の傾斜があり、通行には注意が必要
最上階からは、市街地から遠く北アルプスまで一望。ここは敵の様子を見る「望楼(ぼうろう)」として使用されました。周囲に高層ビルがないため、当時の武士気分を味わえます。
▲最上階の天井中央には、松本城のご神体「二十六夜神(にじゅうろくやしん)」が。林さん曰く、このご加護で松本城は今なお現存できていると伝わるのだそう
▲最上階から下り、大天守2階を経て、辰巳附櫓・月見櫓へ。この連結部分を境に、戦国時代と江戸時代の建築様式の違いを感じることができます

こうしてガイドツアーは終了。
なお、松本城は、明治初期に取壊しの危機にさらされ、明治と昭和にそれぞれ天守の大修理が行われるなど、何度か存続が危ぶまれながらも今日まで市民により守られてきました。
▲平成11(1999)年に市民の強い要望により復元された「太鼓門」。傍の門台(写真左側)には城内で一番大きな石「玄蕃石(げんばいし)」が置かれています

こうしたさまざまな歴史背景を知ることができるのも、ガイドさんの案内があってこそ。長野県民として身近に感じていた松本城でしたが、案内していただくことでたくさんの新発見があり、かつての時代や文化に思いを馳せることで、国宝・松本城の魅力を堪能することができました。
▲松本城には今回の「松本城案内グループ」のほかに、外国語ガイドや街なかのガイドを行うボランティアもあります。詳しくはホームページを

季節ごとの魅力も味わえる松本城の魅力

松本城では、春夏秋冬折々の美しさが楽しめるのも魅力のひとつ。季節に応じ、さまざまなイベントも行われています。
▲桜の名所としても知られる松本城。春には多くの花見客でにぎわいます(写真提供:松本城管理事務所)
▲桜の季節と中秋の名月には、通常ライトアップされている天守に加え、本丸庭園もライトアップされます。桜が外堀に映る様子も見事(写真提供:松本城管理事務所)
▲秋の紅葉も目を見張るものがあります(写真提供:松本城管理事務所)
▲冬は雪の白と漆黒の城のコントラストも素敵です(写真提供:松本城管理事務所)

時代に翻弄されながらも、今も威風堂々と佇む松本城。さまざまな見どころがある不朽の名城の魅力を間近で感じてみませんか。
島田浩美

島田浩美

編集者/ライター/書店員。長野県出身・在住。信州大学卒業後、2年間の海外放浪生活を送り、帰国後、地元出版社の勤務を経て、同僚デザイナーとともに長野市に「旅とアート」がテーマの書店「ch.books(チャンネルブックス)」をオープン。趣味は山登り、特技はマラソン。体力には自信あり。(編集/株式会社くらしさ)

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