灯籠や竹灯りが幻想的!篤姫も旅した「山鹿温泉」をレトロ散策

2017.02.03 更新

熊本で人気のある温泉地の一つが、約800年の歴史を持つ「山鹿(やまが)温泉」。豊前(ぶぜん)街道のレトロな街並みや幻想的な灯籠踊りなど、昔も今も人を引きつける魅力溢れるこの地を、ゆったり散策してきました。

「山鹿温泉」は平安時代の書物にもその名が記される、約800年の歴史があるといわれる温泉地です。その湯は、江戸時代に熊本城で肥後藩を治めていた細川家のお殿様にも愛された名湯です。参勤交代に使われた豊前街道の宿場町でもあり、今も道沿いには情緒溢れる街並みが広がっています。
▲とてもフォトジェニックな豊前街道の風景。熊本市中心部から北に約30km、車なら50分ほどでアクセスできる

山鹿市民いこいの町湯「さくら湯」で、お殿様も愛した名湯を堪能

山鹿温泉の顔ともいえる公衆浴場が、豊前街道の中心にある「さくら湯」です。元々、肥後細川藩のお殿様が参勤交代時に休憩するお茶屋として愛されていた温泉。明治時代に大衆浴場として大改修され、普段使いの温泉として山鹿市民の暮らしを支えてきました。町の再開発により昭和48(1973)年に一度取り壊されたものの、平成24年に明治時代の姿のまま復元されました。
▲唐破風の屋根が印象的な「さくら湯」の外観。瓦には細川藩の家紋・九曜紋も印されています

「まるで化粧水につかっているような美人湯」としても名高い山鹿温泉。泉質は山鹿温泉特有のとろみあるアルカリ性単純泉です。肌に吸い付きすべすべとした肌触りで、入浴後はポカポカが長続き。昼間に訪れたにも関わらず地元の常連さんが多く、とろみ湯につかりながらついつい話し込んでしまいました。山鹿の人は、みんな優しい!
▲昭和初期頃の浴室を、当時の工法で再現(写真は男湯)。柱と梁の軸組み工法など、見事な建築技法は見惚れるほど

入浴後は、せっかくなので敷地内にある「龍の湯」と資料室を見学します。「龍の湯」は、江戸時代のお殿様専用の御前湯を再現した浴室。天井に大きな双龍の絵が描かれています。普段は見学専用(無料)で、ここに入浴できるのは山鹿市民の中でも小学1年生と、金婚式を迎えた夫婦だけなのだそう。
▲市松模様の石張りのデザインは、江戸時代のものとは思えないほどモダン
▲天井には、江戸時代に実際にお殿様の浴室にあった大きな龍の絵のレプリカ。本物は、後ほど紹介する「山鹿灯籠民芸館」に展示されています

さらに、温泉の2階にある「温泉資料室」で、「さくら湯」の歴史を詳しく知ることができます。
▲昭和初期の「さくら湯」。当時は家庭にお風呂がない家がほとんどで、市民のお風呂としての役割を果たしていたそう
▲灯籠師の故・徳永正弘さんが、瓦や柱の数まで一つ一つ数えて内部まで精密に灯籠で再現した、解体前の「さくら湯」。現在の建物を再現する際は、この灯籠に医療用カメラを入れて構造を確認したそう

「こんな所まで!?」明治浪漫を湛える芝居小屋「八千代座」を隅々まで見学

さて、次なるレトロスポットは、豊前街道の坂を上った脇道にある芝居小屋「八千代座」です。明治浪漫溢れるこちらの建物では、歌舞伎公演をはじめ様々なイベントが行われていますが、公演が無い時には中を見学できるのです。
▲「八千代座」の外観。昔ながらの趣ある木造建築の芝居小屋は、多くのアーティストにも愛されています

「ものすごい所まで見られますよ~」と教えてくれたのは、今回の案内人・中原あゆ美さん。期待に胸を高まらせながら中に入ると…
▲華やかな赤提灯と天井広告が大迫力!ハイカラな格好で訪れたい空間です

明治時代にタイムトリップしたかのような空間が広がります。
まずは枡席に座り、「八千代座」の歴史を伺います。明治43(1910)年に町の旦那衆によって建設され、多くの興業で栄えましたが、昭和40年代に閉館。その後、地元の復興運動により徐々に改修され、昭和63(1988)年には国重要文化財に指定されたそう。平成8(1996)年からの大改修を経て、かつての輝きを取り戻し、平成13(2001)年より興行を再開しています。
▲今回案内してくれた中原さん。他にも、案内人は熱く詳しい個性派揃い!

「八千代座」の歴史が分かったところで、次はなんと花道を歩き、ステージへと向かいます。
▲花道に出る役者が舞台の様子を覗く穴。役者気分で、同じように覗いてみます
▲公演時には役者さんしか歩けない花道。枡席との距離の近さにも驚きます
▲廻り舞台に上がります。歌舞伎役者気分で見栄を切るも良し、写真を撮るも良し、贅沢な見学!

客席とステージを堪能したら、そのまま裏手へ。昔ながらの楽屋や奈落など、なかなか見ることのない、舞台裏の仕組みや仕掛けに、驚きの連続です。なかでも奈落は、今も現役で動く手動の仕掛けに驚くばかり。
▲奈落にある廻り舞台の仕掛け。なんと人力で動かすそうで、今でも現役です
▲花道の真下は坑道のよう。花道の上に出られる「すっぽん」という仕掛けがあります

国指定重要文化財の建物を裏側まで全部覗いた、夢見心地の45分。SNS映えするレトロな写真もたくさん撮って、大満足の見学でした。
「公演やイベントでお客さんがギッシリ入ると、また館内の雰囲気が変わりますよ」と中原さん。今度は公演があるときにも来てみたい!ちなみに、平日には見学だけでなく、山鹿名物の「灯籠踊り」の定期公演が開催される日も。開催日はホームページにて確認を!
▲灯籠踊りは、平日の特定日に1日2回公演があります(写真提供/山鹿温泉観光協会)

本物そっくりの「ミニ灯籠作り」で、灯籠師気分を疑似体験

▲大正レトロを感じる、モダンな雰囲気ある建物が目印

次に訪れたのは、豊前街道沿いで存在感を放つ石造りの建物「山鹿灯籠民芸館」。美しい山鹿灯籠がたくさん展示されているこちらの施設では、灯籠師気分で「ミニ灯籠作り」が体験できます。
▲「山鹿灯籠踊り」の奉納灯籠踊りの様子。頭に揚げる金灯籠(かなとうろう)は和紙製なので軽い(写真提供/山鹿温泉観光協会)

山鹿灯籠は、室町時代から受け継がれている和紙工芸です。元々、山鹿地域は和紙の名産地で、和紙で精密に細工した灯籠を神社に奉納するお祭が開催されていました。昭和30年代には灯籠の一種・金灯籠を頭に揚げた地元の女性が民謡「よへほ節」にのせて踊る「千人灯籠踊り」が始まり、山鹿文化の名物となりました。
▲本館には踊りに使われる金灯籠をはじめ、神殿、城、座敷など様々な種類の山鹿灯籠が展示されています。天井には「双龍の絵」の本物も

別館にある工房で「ミニ灯籠作り」を教えてくれたのは、山鹿灯籠制作者の中でも最若手の中村潤弥(じゅんや)さん。金灯籠のミニチュアを、中村さん指導の元で早速制作していきます。
▲山鹿市出身の山鹿灯籠制作者・中村潤弥さん。地元に素晴らしい技術があることを知り、19歳から灯籠の世界にのめり込んだそう
▲中村さんがプロの技を見せながら、丁寧に教えてくれるので安心です

灯籠作りは、和紙の型を整えるところから始まります。あらかじめ裁断された細かなパーツの一枚一枚に手のひらでカーブをつくり、それを貼り付けていって…。その作業を繰り返すごとに、だんだん形になっていきます。ちなみに骨組みも全て和紙製。少しのズレも許されない地道な作業ですが、無心になって熱中できます。子どもの頃の工作の授業のような楽しさ!
▲枠に細い筆でのりを塗っていきます。すぐに乾いてしまうので、1箇所ずつ繊細かつスピーディに!
▲一つずつパーツを貼り、形が見えてきました。本当に全部を和紙とのりだけで作るんですね、驚きです
▲完成!手のひらに乗るかわいい金灯籠です。作業は約90分、プラス税込700円で飾るためのケースもつけられます

繊細な作業も多かったですが、わかりやすい指導のおかげで無事完成。「とても上手でしたよ、才能あるかも」と中村さんも褒めてくれて、大満足。

それにしても、自分の手で組み立てると改めて「和紙とのりだけで作る」ことの難しさを実感できます。山鹿灯籠の価値と職人さんの技術の素晴らしさを、より一層感じられました。
▲本物はこの大きさです。体験後は、憧れの踊り手気分で金灯籠を揚げて記念撮影!

お土産は、金灯籠の姿を摸した「燈籠もなか」で決まり!

最後に訪れたのは、和菓子の名店「西益屋(にしますや)」です。創業は昭和4(1929)年。もとは量り売りの羊羹店でしたが、昭和30年代に山鹿で灯籠踊りが人気になった頃に当店で誕生したのが、「燈籠もなか」でした。これが新名物となり、今でも豊前街道のお土産の定番になっています。
▲「山鹿灯籠民芸館」となりの、趣ある店舗が「西益屋」

特殊な金型で香ばしく焼いた灯籠型の皮に、自社で練った程よい甘さの粒あんがギッシリ入った「燈籠もなか」。食べ応え十分の美味しさが魅力です。
▲「燈籠もなか」小型3個320円、12個1,300円。中型36個4,600円もあり(いずれも税込)

金灯籠のデザインがかわいい「一口燈籠もなか」(24個入り税込900円)もオススメ。抹茶と小豆の2つの味がありますよ。

毎年2月と8月に行われる、幻想的な灯りの祭典

山鹿温泉では、灯籠をはじめ灯りにちなんだ行事(お祭り)が、年2回開催されています。なかでももっとも有名なお祭りが、8月15・16日のお盆の時期に開催される「山鹿灯籠まつり」。金灯籠を頭に揚げた千人もの女性が、民謡「よへほ節」にのせて「千人灯籠踊り」を踊ります。これを目当てに、県内外、さらには海外からも毎年多くの観光客が訪れる大人気のイベントです。
▲「千人灯籠踊り」の様子。暗闇の中で千人もの女性が踊る様子は、美しく神秘的(写真提供/山鹿温泉観光協会)
また、2月の毎週金・土曜に開催される「山鹿灯籠浪漫・百華百彩」も見逃せません。夜の山鹿温泉と豊前街道が、和傘と竹灯り、ロウソクの神秘的な灯りに彩られるイベントです。期間中は、屋台や写真コンテストなどのイベントも開催されます。

豊前街道商店街をはじめ地元大学の建築科、山鹿市観光振興課、山鹿温泉観光協会などの人々による手作りの幻想的な灯りに包まれて、ロマンティックなひとときを過ごしてみては?
▲和傘の大産地だった山鹿の歴史を写す、傘と竹灯りの美しい灯り。情緒ある和のイルミネーションは一見の価値あり!(写真提供/山鹿温泉観光協会)
▲街道の各所で様々に趣向を凝らしたイルミネーションが出迎えてくれます。フォトジェニック!(写真提供/山鹿温泉観光協会)
江戸時代から明治、大正、昭和とさまざまな時代の風情を感じられる、レトロな豊前街道と山鹿温泉の名湯。山鹿の街の人々の熱意によって、古き良き時代の情緒が守られている様子に感激しました。どこか素朴で懐かしくて心温まる、そんな温泉&街道巡り。味わいある大人旅を求める人に、オススメのスポットです。
中川千代美

中川千代美

長崎生まれ、熊本在住。地方出版社に勤めたのち、「チヨミ編集事務所」として独立。地域の子育て情報誌や生活情報紙をはじめ、幅広いジャンルの編集・ライティング・企画を手がける。食欲・物欲・お出かけ欲・温泉欲・ビール欲が赴くままに熊本・九州を駆け回る日々。趣味は二胡。(編集/株式会社くらしさ)

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