温泉水で炊いた「嬉野温泉湯どうふ」は、ほろりととろける奇跡の口どけ

2016.12.04 更新

湯豆腐と聞くと“京都の名物”とイメージされる方は多いのではないでしょうか。京都の湯豆腐も有名ですが、ここ佐賀県・嬉野温泉の名物も湯どうふ。しかも、温泉水で炊いたトロットロの湯どうふなんです!初めて味わう食感と味わいに感動必至ですよ。

▲白濁したスープに、ほろほろアツアツ豆腐…寒いこれからの季節にぴったり

いざ、「嬉野温泉湯どうふ」発祥の店
温泉街の真ん中にある「宗庵よこ長」へ

今回うかがったのは、「嬉野温泉湯どうふ」発祥の店である「宗庵よこ長(そうあんよこちょう)」。昼も夜も地元客や観光客で賑わう人気店です。
▲落ち着いた店内には座敷席とテーブル席があります

「宗庵よこ長」は、豆腐店「小野原唐風園」を前身とした昭和32(1957)年創業の老舗。初代店主である小野原勝雄さんが“温泉水で木綿豆腐を炊くと軟らかくなり、とろける”ことに着目し、料理に活用したのが始まり。その後「嬉野温泉湯どうふ」として店で提供し、温泉地ならではの名物グルメとして評判になりました。

そして現在、「嬉野温泉湯どうふ」をいただける飲食店は、嬉野市内に15店舗。旅館や商店も加えると約30軒で提供しており、今や嬉野温泉を代表する郷土食となりました。
▲3代目である博(ひろし)さん、現在の4代目である健(たけし)さん

豆腐は自家工場で毎朝手作り
味の秘密は3代目のみが知る…!

「宗庵よこ長」の豆腐は、自家工場にて製造。季節によって変動はあれど、だいたい300~400丁ほどを早朝より作られているそうです。使用しているのは、嬉野の美味しい水と嬉野産の大豆「フクユタカ」。作っているのは専ら3代目である博さん。その日の気温や湿度などによって微調整しながら、初代から続く味を守り続けています。
▲嬉野産の大豆「フクユタカ」を使用。甘みがありまろやかな仕上がりに

豆腐を温泉水に入れて火をかけると… 見る見るうちに豆腐が溶けていく!

今回特別に調理場で湯どうふの調理過程を少しだけ見せていただきました。
温泉水を入れた手鍋に豆腐を入れて火にかけていきます。
くつくつくつ…。
2分ほど経過。だいぶ白濁してきました…!
まだ煮込みます。くつくつくつくつ…。
表面に浮かぶ白い泡は、灰汁ではありません。これこそが豆腐の旨みなのだそう。
5分ほど経過したら、ご覧のように真っ白の白濁スープに!
豆腐は角が取れて、丸みを帯びたフォルムに。

それにしても、水で炊いても豆腐はそのままなのに、どうして温泉水だと溶けるのでしょう?

嬉野温泉だからこそできた奇跡のグルメ

日本三大美肌の湯と称される嬉野温泉は、弱アルカリ性温泉。科学的に言えば、温泉水のアルカリ成分が、大豆のたんぱく質を溶かしているためこの現象が起きています。「ほかの温泉水だと、多分こうはいかないんですよ」とは健さん談。弱アルカリ性で、かつナトリウムなど様々な成分を含有する嬉野温泉だからこそできた奇跡の料理なんです。
まさに、温泉と豆腐の奇跡の出合い…!

余談ですが、嬉野温泉の湯上りツルツル感は、上記の豆腐と同様。温泉の成分が肌の脂質や角質のたんぱく質を融解しているからなのです。面白いですね~。

さて、炊いた湯どうふは、一人前ずつ土鍋に移して提供されます。
一丁を1/8にカットして炊いた内の4個を土鍋に入れるため、一人前は豆腐半丁です。
▲一番シンプルな「湯どうふ」は450円(税込)

運ばれてきた土鍋を開けると、ふんわりとした豆腐の優しい香りが…!
ん?ネギと生姜はありますが、タレがありませんが?

「うちの湯どうふは、温泉水スープに味が付いているんです。まずはそのまま召し上がってください」との答え。
ええ~っ!こんなキレイな真っ白スープに味が付いているんですか!

では、アツアツの豆腐をそのままいただきます。
▲見てください!このトロトロの豆腐を!

食感と魔法のスープに感動必至
一口で二つの“不思議”を味わう

「……!!」

もう、普通の湯どうふと思って食べたらビックリすること間違いなしです。
まるでクリームのように滑らかな口当たりで、ほろりととろける軟らかさ。そして豆腐の優しい甘みを最大限に引き出す、上品で奥深い白濁スープ…。
じんわりと体の中に素材そのものの味が浸透していく感じです。

この温泉水スープの味付けは、初代から受け継がれたもので企業秘密なのだとか。この味付けをできるのは、代々受け継ぐご主人のみとのこと。現在は3代目の博さんが主に担っていらっしゃいます。

個人的にはカツオや昆布のお出汁が入っているのかな?と思ったのですが、不思議なことに真っ白で余分な色がまったく付いていないんです。そもそも炊く前の温泉水が透明。だいたいお出汁を取ると黄金色になるので、「色が付かないお出汁って何?」と私の料理の知識では限界でした…。

真っ白な味付きスープに、とろける豆腐。まるで魔法のよう、と言っても過言ではないと思います。
この感動を味わうならまずは「湯どうふ」をそのまま味わってみてください。
その後、ネギや生姜などの薬味を鍋に入れて味の変化を楽しむのがお勧めです。
店主である健さん曰く、お酒の肴に食べる際は柚子コショウもピッタリなのだそう。
それも美味しそうですね!

そのほか、「特選湯どうふ定食」も人気です。
「湯どうふ」に、エビ、鮭、しいたけ、いんげん、かにかま、白菜、玉子焼の7つの具材をトッピングし、4つの小鉢、ご飯とお漬物付きの内容ですよ。(季節によって内容は異なります)
「湯どうふ」と具材は別の鍋で煮込み、最後に盛り付けするため、具材用のタレが付いています。
▲「特選湯どうふ定食」1,080円(税込)

そして、最近注目されているのがこちら! 2代目である眸(ひとみ・下は「午」)さんが作る「おからコロッケ」。眸さんは初代勝雄さんの奥様。豆腐を作る際に出るおからを使ったコロッケは、ひじきとニンジンが入った素朴で優しい味わい。食べればほっこり笑顔になれる、おかずにもおやつにもピッタリの一品です。
▲「おからコロッケ」は税込で1個100円というリーズナブルさ

「温泉湯どうふ」はおみやげに持ち帰りも可能。豆腐と温泉水がセットになっており、1丁入りから4丁入りまであります。自宅でも味わいたい方はぜひどうぞ。
▲温泉湯どうふセット3丁入りギフトパッケージ 2,370円(税込)

もともと胃腸に良いとされる嬉野温泉の温泉水で炊いた豆腐料理、体に良いのは自明の理。さらに美味しいとあらば、嬉しいことこの上ありません。寒くなるこれからの季節、魔法のアツアツ「湯どうふ」に感動する嬉野温泉への旅はいかがですか。
桑野智恵

桑野智恵

フリーの雑誌ディレクター/ライター。福岡生まれ、福岡育ちの博多女。3つの出版社を渡り歩き、雑誌編集歴20年弱。食育アドバイザー、フルーツ&ベジタブルアドバイザー。

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