有精卵のふわとろ玉子焼きが絶品!築300年の「百姓屋敷 じろえむ」でいただく元祖スローフード

2017.02.09 更新

千葉県・南房総の丘陵に広がる田畑で採れた米と野菜、卵や鶏を使った地産地消ランチをいただけるのが「百姓屋敷 じろえむ」。江戸時代から続く農家は今のご主人で14代目。ランチメニューはすべておまかせ、その日の収穫次第というのだから、スローフードを楽しむ旅にもおすすめです。今日はどんなランチがいただけるんだろう、そんな思いで訪れました。

県道から脇道に入り、のどかな田園地帯をゆるゆると通り抜けていくと、なだらかな山を背にした大きな長屋門が見えてきました。車を降りて門に近づくと「じろえむ」「いなばナチュラルファーム」という看板が目に入ります。
▲大きな長屋門が目印です

レトロな雰囲気に誘われて、百姓屋敷の中へ

門をくぐると中庭を囲むように母屋、台所、堆肥場、蔵が連なり、台所と堆肥場の間の小道をあがった先に2棟の鶏舎が見えます。まるでそのまま民俗博物館に展示されていそうな、旧豪農のお屋敷です。
▲52坪、総2階建ての長屋門は明治17(1884)年に建設。1階部分は馬屋と農作業場、2階部分は使用人の寝床として使われていたそう。今では居住用に改築されています
門の正面奥に見えるのが、江戸時代に建てられたという築300年の母屋。関東大震災で倒れかかったのを補修と改修を加えながら、今に受け継いでいるそう。
14代続くという農家の屋号は「治郎右衛門(じろうえもん)」。それを読みやすく文字ったのが「じろえむ」です。食事は基本的には事前予約制。早速お食事ができる母屋にお邪魔しました。
玄関を入ってすぐの座敷はダイニングとして改築されており、高い天井と大きな梁が印象的。立派な神棚にも驚かされます。小上がりになった広めの和室の先には、さらに引き戸で仕切られた和室が奥へと広がっていて、昔の家ならではの奥行の広さが感じられます。
▲小上がりの和室からダイニング方向の眺め。左奥にはさらに和室が続きます
それぞれが引き戸で仕切られた個室のような造りになっているため、ゆっくりと食事を楽しめます。いたるところに置かれたレトロな小物も、博物館のよう。この日訪れていたお客さんたちも、それらを眺めながら食事までの時間をゆったりと過ごしていました。
▲レトロなミシンも見どころの一つ。まだちゃんと使えるそうです
▲お茶の間を感じさせる昔懐かしい家具調テレビ
▲代々使われてきたという電話もオブジェに。時代を感じます

有機栽培の先駆け。
きっかけは市場のニーズから

何が食べられるかはその日の収穫次第というので、特別に野菜の収穫に連れて行ってもらうことにしました。現在のご主人は稲葉芳一(よしかず)さん。門前に広がる田畑や森、裏山など、代々受け継がれてきた土地で、養鶏を中心に米や野菜を有機栽培する「いなばナチュラルファーム」を運営しています。
1970年代の自然志向の高まりから、当時跡目を継いだばかりの芳一さんが農薬や化学肥料を一切使わない有機農法を開始。以来、約40年にわたって無農薬の野菜、卵などを生産し続けています。
▲まずは家の前に広がる畑で野菜の収穫
房総半島の温暖な気候もあって、冬でも食材には困らないそう。ビニールハウスではキュウリやレタスなどの葉物類、外では大根やニンジン、カブなどの根菜類を収穫します。
▲栄養分がぎっしりつまったニンジンや大根は、冬場の料理の強い味方
▲ハヤトウリも鈴なりに。漬物や炒め物にしていただきます。白いものは癖がなく柔らかいそう
▲本日使う分の野菜を収穫しました

野菜の次は、蔵の裏側にある菌床にシイタケを取りにいきます。蔵の裏側には小川も流れていて適度な湿気があり、よくシイタケが育つそうです。
▲美味しそうな大きなシイタケ!でもこれは育ちすぎなのだとか
▲たくさん採れました!どれも新鮮で美味しそうです
続いて鶏舎に卵を取りに行き、本日の収穫は終了。採れた食材で奥様は料理を、芳一さんはかまどに火を入れ、ご飯を炊く準備を開始します。
▲約1,500羽の鶏を平飼いする鶏舎。鶏が自然に近い飼育環境で生んだ有精卵をいただきます ※安全性や衛生面に十分に配慮して撮影を行っています

料理は二人三脚で。
味噌やチーズも手作り

▲じろえむ特製の有機米。氷を入れて炊くと良いそうですよ

「じろえむ」では、米も生産しています。農薬を使っていないため、丁寧に手で雑草を取るなどしながら大切に育てた有機米はもっちりと粘り気があり、ファンも多いそう。直火で炊くとさらに美味しさが増しそうですね。
▲かまどで火をおこし、鉄製の釜で米を炊きます。炊き上がりが楽しみ!
料理はもちろん、材料となるこんにゃくやチーズに加え、味噌などの調味料も奥様の手作りです。採れたての野菜と組み合わせてどんな料理ができあがるのでしょう。
▲こんにゃくも手作り。原料となるこんにゃく芋も畑から収穫

その日によって違うおまかせ御膳
とろっとろの玉子焼きと新鮮野菜

ダイニングで待っていると、ご飯が炊き上がり、いつの間に着替えたのか、作務衣姿のご主人がお盆を運んできてくれました。メニューは、「じろえむおまかせ御膳」のみ。1,500円から3,000円(すべて税抜)までの500円きざみで4種類あり、500円アップごとに数品ずつ増えていきます。今回は一番品数の多い3,000円のものを注文してみました。
▲まずは玉子焼き、煮物、漬物などがのったお盆がやってきました。一品一品とても手が込んでいます

素朴な感じの前菜の奥に見える白いカッテージチーズも手作り。子牛を産んだばかりの母牛からのみ採れる初乳に酢を加えて作りました。初乳が手に入った日にのみ作れられる特別なチーズなのです。

じろえむ特製の玉子焼きはふわふわトロトロ。お好みを伝えれば焼き加減も調整してくれるそうですよ。玉子焼きは、どのメニューにも必ずつきます。
▲黄色味の強いじろえむ名物、ふわふわの玉子焼き。程よい甘みがあり口の中でとろけます
▲続いては味噌田楽、鶏のつくね、手作りソーセージ、野菜の天ぷら
鶏のつくねとソーセージも、こちらの養鶏場の鶏を使用しています。平飼いのため、身が引き締まり程よい歯ごたえがあります。天ぷらの野菜も先ほどすべて収穫したものなので、シャキシャキ新鮮です。
味噌は国産無農薬大豆と自家製糀(こうじ)に天塩を加えて作られています。昔からある大きなタルに詰めてから、蔵の中でじっくり寝かせて作っているそう。
▲先ほど収穫したニンジン!歯ごたえも甘みもしっかり
▲ご飯、味噌汁、煮物。ご飯は釜炊きならではの香ばしさ。お替わりもたっぷりあります
▲デザートは栗の渋皮煮。自家製糀の甘味が絶妙!糀をシャーベットにする時もあるそうです
品数の多さにも驚きますが、一品一品、これは何だろう?と眺め、味わいながらゆっくりといただきました。

人も土もバランスが大事。
じっくり時間と手間をかけて

自家製の農作物は、味わい深くどれも個性的です。しかし、素人目にも土から作る有機栽培は、時間も手間もかかり大変そう。ましてこれだけの広い土地…。そのあたりを伺ってみると「いいも悪いもバランスが大事」とのこと。

土の中にいる微生物も悪いものをすべて排除したらバランスが悪くなる。人の腸内だって良い菌と悪い菌がバランス良くいることによって自浄作用が働き強くなる。農作物も人も、悪いからダメだと排除せずじっくり長い目で向き合いバランスを保つことが大切だそう。

「男と女だってそうでしょ」と芳一さん。時間をかけて育てた食材を使って二人三脚でレストランを営むご夫婦だからこそのお言葉、深いです。
▲有機農業に関わるさまざまな活動に取り組む芳一さん。海外から視察団も訪れるそう
▲学生時代にボランティアで房総を訪れた際に芳一さんと知り合ったという奥様。農業も料理も結婚後に勉強したのだそう
気づけば、こんなにゆっくりと食事をしたのは久しぶり。たまにはちゃんと素材をしっかり選ぶこと、手間をかけて料理をすること、そしてゆっくりと食事を楽しむことに向き合ってみようと気づかせてくれるお店でした。
房総半島を訪れた際にはぜひ、大自然に囲まれた元祖スローフードを楽しんでみてください。
▲お土産に有精卵をいただいて帰りました。「平飼い有精卵 6個入り」(税込240円)
平間美樹

平間美樹

某広告代理店で情報誌・Webサイト等の広告企画・制作を経て独立。現在、企画制作会社CLINK(クリンク)を運営し、結婚・進学・就職・旅行など幅広い分野で企画・ライティング活動中。テニス・フラ・猫にハマる日々。 テニス観戦でグランドスラムを達成するのが目下の目標。

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