龍安寺 禅の世界に触れ、心に訪れる静寂を眺める

2016.12.23 更新

臨済宗妙心寺派の寺院・龍安寺(りょうあんじ)。世界文化遺産にも登録され、英国女王も絶賛した方丈庭園(石庭)はあまりにも有名。禅の世界観を表したと言われる石庭の謎や、四季折々の表情が美しい庭園、非公開の茶室など、魅力の数々に迫ります。

禅(ZEN)ブームのさきがけ、世界中から注目される「石庭」の世界

数々の名刹がひしめく京都にあって、その知名度・人気ともにトップクラス。海外からも多くの参拝者が訪れる龍安寺。1450(宝徳2)年、室町幕府八代将軍足利義政の時代に創建された古刹で、開基は応仁の乱で東軍の総大将をつとめた細川勝元。応仁の乱で一度は消失しましたが、勝元の子政元らにより再建されています。

有名な方丈庭園(※以降は石庭)は、1975(昭和50)年に英国のエリザベス女王が拝観し、絶賛。当時の禅(ZEN)ブームと相まって世界的にその名を知らしめました。

その歴史的価値から、国の重要文化財をはじめ、世界文化遺産にも登録されています。
龍安寺の石庭といえば、日本を代表する枯山水の庭園。75坪の敷地に敷詰められた真っ白い砂に、大小15個の石が配されています。一見、無造作に石が並べられたように見えますが、実はその作庭の意図も含め多くの謎に包まれているのです。

1.永遠のミステリー。作者はいったい誰?

作庭は室町時代といわれています。一方、作者に関しては、開山である義天玄詔(ぎてんげんしょう)、細川勝元、その子政元、茶人の金森宗和など諸説あります。他にも有力な説として絵師の相阿弥説があったり、また庭石の裏に名の刻印がある「小太郎・口二郎」ではないか、とも言われています。いずれにしても憶測の域を出ておらず、今日まで謎のままになっているのです。

2.石の配置の意図は?禅を表現した世界観

白い砂に刻まれた紋様は、まるで静寂を表現したような静謐な空気を感じます。その上に浮かぶようにポツンポツンと配された石は、大海に浮かぶ島々か、雲海に顔を出した高峰かといった風情。その配置に関しては「心」の文字を模したもの、中国の五岳や禅の五山を表したもの、とも。実際の作者の意図を知る術はもはやありませんが、見る者に自由な解釈を許すそのさまは、まさに禅問答そのものと言えるでしょう。

3.遠近法、土塀の額縁…見るものを惹きつける高度な演出

一見しただけではわからない細かい工夫が随所に施されているのも、石庭の謎のひとつです。写真奥の塀は右から左に向かって低く作られていますが、それは遠近法の錯覚を利用して奥行きを広く見せるための工夫だそうです。
また石庭を囲む油土塀は、菜種油を混ぜて練られた強固な土で作られていてます。風雪や環境の変化からこの美しき石庭を守るのと同時に、モノクロームの石庭のミニマルな美を引き立てる、いわば額縁のような役割を果たしているのだそうです。
見るものの心を映し出すような不思議な魅力を持つ石庭。ただ眺めているだけで、瞑想をしているような静かな心が訪れます。

四季折々の美しき庭園や、歴史を感じるスポット

龍安寺の魅力は石庭だけではありません。
長い歴史の中で培われてきた数々の見所を紹介していきましょう。

本堂をはじめ、庫裏(くり)に至る龍安寺垣、鏡容池(きょうようち)の散策路など、境内では木々や草花が四季折々の表情を見せてくれます。特に秋には見事な紅葉景色を求めて多くの人々が訪れます。
おしどり池とも呼ばれる鏡容池は、石庭と並ぶ有名な景勝スポット。紅葉のほか、初夏に咲く睡蓮の花も見事。鏡のような水面に映る周囲の景色が美しく、思わずみとれてしまいます。
▲散策路の紅葉。この時期は境内のどこを歩いても美しい景色が見られます
こちらの庫裏は、元は寺の台所であったところ。吹き抜けの天井に往時の面影を感じます。
▲現在は一般拝観の入り口として使用されています
続いてはこちらの蹲踞(つくばい)です。

蹲踞とは、縁側近くの庭に備えてある手水鉢(ちょうずばち)のこと。茶室に入る前に手を洗うものですが、その際に這い蹲る(はいつくばる)姿勢になることから、その名がついたといわれています。

龍安寺には蔵六庵という茶室があり(非公開)、その庭園に置かれているのがこの蹲踞なのですが、こちらはかの水戸光圀公が龍安寺に寄贈したものだそうです。
上の写真は、本堂の裏に設置されているレプリカで、本物は蔵六庵と同様非公開です。

今回は特別に許可を頂き、撮影することができましたのでご紹介します。
こちらは蔵六庵。六は仏教で言う「六根(ろっこん)」(眼・耳・鼻・舌・身・意)をさし、「蔵六」は「六根を清浄(しょうじょう)に蔵(おさ)める」という意味だそうです。
こちらが光圀公寄進の蹲踞。中心の「口」をそれぞれの漢字の一部とし、吾唯足知(われただたるをしる)という禅の格言が刻まれています。
いかがでしたか?
とかく慌しい世の中で、ふと頭の中を空っぽにしたくなったとき。禅の世界を体現した石庭の傍らで、心にうつりゆくよしなしごとを、ただ静かに眺める時を過ごしてみては。
妙加谷 修久

妙加谷 修久

京都市在住の旅行系ライター兼ディレクター。全国各地に足を運び、旨いモノを食べ、温泉に浸かる日々。ここ京都を中心に、知っているようで知らない「日本のイイトコロ」を紹介します。日本酒好きが高じて利き酒師の資格を取得しました。

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